魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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本当に今更ながら知ったことだが……アーバンラマ編をやるのか。

ということは最後には聖域まで行くわけだが――――――大丈夫なのかアニメオーフェン、俺は嬉しいけど、売り上げとか色々大丈夫なのか不安にもなる。

無用な心配をしつつ新話お送りします。


第338話『魔法師たちの群像劇』

 

 

懇親会にてどうしても手持ち無沙汰な人間というのは存在する。

特に魔法競技部活に入っているわけでもなければ、何かの名家でも無い限りは、繋がりが無い限りはそうなるのが常なのだが……。

 

「―――………」

「ど、どうしましたか香澄さん……?」

 

まさか、睨みつけるように一高での同級生から見られるとは思っていなかった刹晶院霧雨は、どうしようもなくなる。

いや、本当のところの理由はよく分かる。

 

「日にちはあるけど、キリ君と戦うために、僕も男女のつらら『新人戦』に登録したから!」

「そのようですね……」

 

既に出場する競技に対する選手登録は終わっていた。事実、霧雨もまたちゃんと登録されているかどうかの確認は終えていた。

一応は、これで終わりなのだが、何かしらのアクシデントで選手変更ということもあったりする。そういった余剰は確保されているわけで……。

 

「スミス君が、パートナーですか……負けませんよ」

「こ、こっちだって負けるつもりは無いから!」

 

若干、涙目になりながら反論する香澄。だが、それに対して慰めを掛けるわけにはいかない。

遠坂刹那を大将にして戦う以上、情で以て振れるわけにはいかないのだから。

 

そんなわけで―――。

 

「キリー! こっちに金沢名物の金沢カレーあるから一緒に食べよー♪」

「七草さん。あちらに美味しそうなパフェがありましたよ」

 

それぞれのパートナーがやってきたわけで……。

 

「この加賀の泥棒猫がぁ!! 僕の、私のキリくんをよくも寝取ってくれたなぁ!! 三高 尼利ミサオ、お前だけは許さん!!」

 

拳を握りながらの勢いある発言。それを見た霧雨は―――

 

「スミスーーーいやケント、まぁよろしく頼む」

「いやいやいや!無茶だろ!! この状況で何を頼まれてるんだよ僕は!!」

 

やはり自分が隣にいないことこそが香澄の心の棘であったと判明したが、自分ではどうしようもないわけで、香澄のパートナーたる金髪の君に任せてしまうのだった。

 

そんな言葉を受けて尼利ミサオは……。

 

「アナタに魅力が無いから、キリーは私とコンビを組んじゃったんだよ〜。それをイマサラどうこう言われても〜」

 

手のひらを口の前に持っていく、嘲笑の仕草で言われる。

言葉と同時に、挑発するように自分の女性らしい魅力を見せつけてくる尼利に対して、香澄は気圧され気味だ。

桃色の髪がきれいにさらさらと流れて、口元に黒子を持つ少女は―――どうしても、中学出たてで、まだまだ『もやし』な香澄の上をいっているのだから……。

育ちすぎだこのアマと、罵りたい気分にもなる。

 

睨むようにしている香澄の援護射撃として、それは無いとして霧雨は言葉を発する。

 

「ただのチーム編成上の都合だろ。そりゃ、僕が『つらら』に出ますとは言ったけど……ペアで出るように言われるとは思っていなかったけど」

 

ミサオの言葉に呆れるように返すと……ケントと香澄は少しだけ驚いていた。

 

「刹晶院くん、チーム・エルメロイは……上役に指示されてその競技に参加したんじゃないのか?」

 

「うん、遠坂先輩やエルメロイ先生は、あんまり『適正』に応じた振り分けはしなかったんだ。というか全然、出たい競技、やりたいこと皆して言いたい放題だよ」

 

当時のことを思い返して、苦笑せざるをえない。

 

「唯一、絶対にダメだといったのはぺぺの『ミラージバットで妖精のように飛び跳ねたい』というリクエストだったもんね」

 

ミサオの口からぺぺという人物が出てきて、誰ぞや? という疑問を顔に出すケントと香澄。

 

「我がチームのメイクアップアーティストにして、漢女だよ。まぁその内に分かるさ」

「教えてくれないの?」

「あまり手の内を明かすのも、どうかと想うので……」

 

その言葉で霧雨が、チーム・エルメロイの一員である。一高の同級生としての自分は封印するとしてきたのだ。

 

「分かった。大会期間中は節度を保つよ。僕だって自チームを勝利させたいんだから……だから試合で当たっても、全力でぶつかるよ」

「ええ、それではまた」

 

少しだけ寂しいが、その言葉を最後に尼利ミサオと共に去っていく霧雨。香澄もまたケントと共に、お互いに一度だけ振り返りお互いの顔を見る辺り……

 

 

「何をロミジュリってるんですかね。ウチの姉は」

 

その様子を遠くから見ていた七草の片割れたる泉美は、半眼で呆れるように言いながらもケバブサンドを頬張る。

しかし耳ざとくも泉美の物言いは聞かれていたらしく……。

 

「ロミジュリって動詞か?」

 

後ろから聞こえてきた言葉に、脊髄反射的に返事をする。

 

「往年の名優ジャン・クロード・ヴァンダムの超絶アクションをスーパーヴァンダミング・アクションと称するように、かの名作も動詞形になって、こりゃ大満足! ―――ってなんだ七宝君じゃないですか」

 

どこからともなく言われたレスの主は、ちりちりの天然パーマの少年。七の研究所関係で色々とあったりする家の長子であった。

実家は都内にあるのに石川県の金沢まで行った……なんだか分かりやすすぎる男子である。

 

「何だか普通ですねー。実家から離れたんだから、アナーキーにもっとチャラチャラした感じになっても良さそうなのに」

「俺は、別に一人暮らししたくて三高に行ったんじゃない。三高で自分を鍛えるために向かったんだよ」

 

本音は刹那との相対を嫌っただけだと理解していても、あえてそこは言わないで腹に仕舞う泉美。

そしてから……。

 

「で、そちら―――後ろの方は?」

 

琢磨の後ろにいる男子に注目するのであった。

 

「始めまして、七草さん。自分は伊倉利家と言いまして―――一応、金沢で七宝のダチをやっています」

 

琢磨を押し退けるように出てきた男子から丁寧な挨拶をされる。

 

「ご丁寧にありがとうございます。伊倉さん―――言ってはなんですが、それは何と苦労の多そうな立ち位置を……」

 

そりゃどういう意味だ? という険相を見せる七宝だが、伊倉(ダチ公)の『気持ち』を知っているだけに、そこは呑み込んでおくのだった。

 

「いやいや、琢磨はいいヤツですよ。だから何ていうか、東京にいたときにはいっつも突っかかっているっていう七草さんに会いたかったんですよ」

 

「主に突っかかられているのは、姉・香澄の方でしたけどね。私は特に七宝君には思う所はありませんでした」

 

だが、『突っ張り』体質というか、対抗意識、上昇志向の強い七宝が一高からいなくなって正直、泉美としては万々歳であったりするので……。

 

「今後も七宝君のお世話お願いしますね伊倉さん」

「なんでそんな上から目線なんだよ?」

 

流石に物申したい気分が勝った琢磨は『ぐぬぬ顔』で言うが……。

 

「おまかせを! 東京時代のように琢磨を辺り構わず噛み付くケンカ犬にはさせませんよ!!」

「ぐえっ! おい伊倉、いやトシ!!!」

 

首に腕を回してきた伊倉利家によって、それらは言えなくなる―――そして……。

 

「九校戦、お互いにがんばりましょう利家さん」

「―――はいっ!!!」

 

その言葉に最大級の喜びを得た伊倉利家は、一礼をしてから七宝琢磨を引き連れて、他のところへと向かうのだった。

そんな男同士の近すぎる距離を見ていて……泉美の中に変化が生まれていく……。

それを遠くからそれとなく見ていた刹那は、少しだけ考える。

 

(なんておぞましいオーラ(腐臭)……!! 本人の自覚なく具現化された特質系の霊獣…どんな能力か想像もつかない…!!)

 

儀によって吸い寄せられる守護英霊(サーヴァント)と、本能によって産まれた本人の分身……!

先程からホモォ…┌(┌ ^o^)┐ホモォ…などと、とんでもないものが泉美の周りに発生しているのだ。

同族(?)の誕生に美月が向かったのを見ながら……刹那は全体を見渡す。

 

目立つのは―――モルガンに話しかけるヒカルの姿。モルガンもまた……どういう関係性なのかは知らないが、九島家の研究機関で作られた者同士……あるいは、憑依しているサーヴァントが縁深いのか……。

 

達也と深雪は、黒羽の双子に呼ばれて会話をしている。親戚同士いろいろと話すこととかあるようだ。

―――ろくでもない会話でないことを期待するのみ。

 

我がチーム・エルメロイの面子は、自校同士で話したり、その他の学校との交流に勤しんでいるようだ。

 

ぺぺこと妙漣寺鴉郎くんもまた、2高の辺りで光宣と話したりしている。

 

まぁつまりは―――。

 

「揺るぎない意志とかは持たなくていいんだよな」

「ヨクモワルクモ、個のチームだものね。チーム・エルメロイは」

 

そんなチーム・エルメロイの責任教師は、やはりその伝説が伝説だけに、他教師から話しかけられたり、節操なく魔法師の名士(未講談)たちからも話しかけられているのだった。

 

「エルメロイ教室は基本的には独立独歩だからな」

「ソノ割には、ロードは面倒見がいいわヨネ?」

「そりゃ先生の気質なんだろうさ」

 

リーナの質問に対して、刹那は答えを持っていたりする。あくまで推測に過ぎないが、ロード・エルメロイⅡ世ことウェイバー・ベルベットがああなのは、結局……ケイネス・エルメロイの教室が解体されたことに起因しているのだろう。

 

「先生は、集団(チーム)という名の下で、一人一人が独立した『強さ』(魔術)を持った術者の集まりにしたいんだろうな」

 

伝え聞く所によると、ケイネス講師の没落後……お家没落、権勢瓦解などの憂き目にあったのは、当のエルメロイ家だけではないそうだ。

ケイネスという師匠のツテを当てにしていた、先生の同窓生たちにとっても同様であった。

一部の例外を除けば、『神童ケイネスの弟子』という看板でやっていこうとしたのだから、それが完全にスカになったのだから大慌て……。

 

「ダカラなのね。セツナやウェイバー先生があまり画一的にやらないのは」

「ある程度は、そりゃ基礎などは学ばせるさ―――ただそういう押し付けがましいことで、全員が持てる『独人立ち(ひとりだち)した強さ』を失わせたくないんだろうさ」

 

価値とか方向性を一辺倒にしたくない。例え自分たち(ウェイバー、刹那)がいなくなってもずるずると弱体化させないために……そうしたいのだ。

 

「まぁ理想論さ。どうやっても他人に寄りかからなきゃ生きていけない人間だっている」

 

だが、そうであってほしいからこそ、そういうことだと分かっているからこそ―――。

 

(求めていたのかもしれないな)

 

達也が求める変革の方向性。それは確かに良いことなのかもしれない。ただヤツが打ち捨てたもの、唾棄したものにも一定の価値はあるはずなのだ。

 

だからこそ、達也とは真逆の方向で戦いたかったのかもしれない。

そんな刹那の決意とは裏腹に―――。

 

「ワタシはアナタに寄りかからないと生きていけないオンナよ……支えてくれる?」

「そういうヒトもいるって、俺は知っているからね」

 

額を刹那の背中にあずけて擦り寄るリーナに、後ろ向きのまま、そんな風に言っておく。

分かっていることだ。自分のような生き方ばかりが正道ではないのだから…。

 

そんなズルい女なリーナの行為は、他校の生徒と歓談していたエクレールをこちらに向かわせようとしていたが……。

 

『マシュ!? マシュじゃないのか!!!???』

 

パーティー会場の一角では三高の女子。廊下で刹那に失礼なことを言っていた子が、感性のダ・ヴィンチ、理屈のロマンという一高の名物教師2人に絡まれている(?)のであった。

 

その言葉に対して……陰鬱そうな眼をした女子は―――

 

「人違いです。わたしは光主(こうしゅ)タチエと申します。魔法工学の権威たるダ・ヴィンチちゃん先生と魔法医療のスペシャリスト栗井健一ことロマン先生であるとお見受けしますが、間違いは訂正させていただきます」

 

光主……直訳すれば『キリエライト』とも読める名字を持つ女子生徒は丁寧な一礼をしながら、そう言ってのけた。

その名字とは違い……なんとも正反対に暗い印象をもたせる彼女を……。

 

「そうなのか……だとしても、君は私とロマニの知り合いの少女にクリソツなんだ」

「何か調子を悪くしているならば、僕やレオナルドに言ってくれ。僕は九校戦全体のチームドクターでもあるからね」

「……わかりました」

 

贔屓という程ではないが、必要以上に構われているタチエちゃんは、少しだけ注目の的になっていたが……。

 

「―――」

 

刹那が見ていることに気づくと険しい顔を見せてくる。去年は親しげに謎めいて近づいてくるハーフホムンクルスが自分に視線を集中させていた。

 

義姉であったわけだが……。だが、今年の九校戦で刹那を見てくる新顔は……。

 

(冬木市の人間の『匂い』とでも言うべきものを感じるんだよな……)

 

有数の霊脈地である自分の故郷の人間たちというのは、他の土地とは『違う』という感覚を刹那は覚えていた。人間性の違いとか、そういうものではない。本当にフィーリングに依ったものでしかないのだが……。

 

光主タチエに覚えるものは郷愁……ノスタルジーだが、彼女が自分に覚えているのは、憤怒のごときものだ。

流石に後輩の態度がマズイと思ったのか、愛梨が焦って後輩を諌めるか、刹那に近づくか逡巡した瞬間―――。

 

『お集まりの魔法科高校生徒御一同様、間もなく来賓挨拶が始まります―――――と言いたいところでしたが、全員大画面スクリーン及び外に注目するように』

 

司会進行役なのか『灰色の乙女』がマイクが置かれている場所にて『いい声』で言ってきた。

言葉に従って、本来ならば来賓挨拶などのための登壇場所に巨大なスクリーンが降りてくる。

 

黒色の画面が映像を映し―――。

 

そこには巨大な都市とも船の甲板とも言えるものが見えてくる。ざわめきが広がる。

 

そして―――。

 

『よくぞ! 此処まで来たな魔法の若人たちよ!! その身に滾る熱き思い―――俺にも存分に伝わるぞ!!』

 

巨漢の覆面漢(爆)が、画面中央にてドアップで映し出されてきた。いや、正月特別編かよとかメタなことを想いつつも―――。

 

『前置きは止そう。今回からの新競技! その名も―――』

 

簡潔明瞭な巨漢は言いながらも、カメラワークが変化する。九つの光が軌跡を夜空に描きながら、向こう側―――すなわち、都市に向かっていく。

 

『フライトマジックレース!! ただこれは仮の名前でしかないので、他にいい案があれば、そちらを採用していこう! だが俺的には単純に『ノンストップ・ワルキューレ』とでも名付けたいな』

 

それはつまり……。

 

『『『『わたし達! 終末少女幻想アイドル!!!』』』』

 

『『『『『 ワルキューレ9nineが、皆さんの競技コースをNavigateしていきます!!!!』』』』』

 

刹那など一部の人間たちにとっては知り合いの少女たち……まだJC程度だろう子たちが魅惑の笑顔でカメラに映り、ワルキューレ衣装という割には近代的すぎるものに身を包みながら夜空を滑空していくのである。

 

その様子に真っ赤になった連中(おとこども)は、バックベアード様に怒られるだろう。

 

反応としては、誰もがアメイジングなのだが……珍しいところでは―――。

 

「ワルキューレポーズというかサインは―――こうですよ!!!」

「指痛めるなよカレン、つーかつる(・・)からやめとけ」

 

緑の子(グリーンベレー)! 親近感湧いちゃうネ!!!」

「それに関しては私も同意ですミス・ジェーン」

 

「ワタシは厳しい環境とか訓練についていけず、脱落してしまったダメな子なのよ……」

「何の話だよ?」

 

 

ともあれようやく全貌が明かされつつある新競技……それは、本来の『道』でならば『山』を『野』を駆ける競技からの変更であることなど誰も分からない―――されど、ソレ以上に熱く、燃えるようなものを感じさせる『フライト競技』であることは間違いなく―――。

 

俗に夏の風物詩である『鳥人間コンテスト』にならって『魔法翼士コンテスト』などと、後に言われることになる競技なのだった……。

 

 

 

 

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