魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
スポーツとか勝負事ってのは、下馬評通りになるとは分からんのですよ勝負は下駄を履くまでわからない
試合をする場所が実力を100%出せる環境じゃ無いとか色々とあると、中々にね。
まぁどういったところでジャイアントキリング!!!
ヘビリピで聴いているぜ!!!
九亜たちのフライトと共に十文字克人の解説が加えられていき、それによると……。
『かなりハードな競技である』
という共通認識が全魔法科高校に生まれる。魔法を使ってのトライアスロンであり、そしてバトル競技であることは間違いなかった。
「へぇ、都市一つ、巨大戦艦一つが丸ごとコロッセオってことか」
「随分とデカイモノをこしらえたもんだ……」
都市、巨大戦艦……などとレッドが言うが『本当』の意味でそれらが存在しているわけではない。要はハリボテのセットではある。
だが、それでも一部は最新型のホログラフィなどを用いて現実味を存分に与えている。
「その巨大戦艦に設定されているゴールフラッグまでのレースも十分にハードだけどな」
「けれどやっちゃいますよ!!! レティシアやっちゃいますよ!!!」
まだ選手選考やどういう器具で飛翔するかも決めていないのだ。心意気は買うが……何はともあれ……。
「ワルキューレたちが帰ってくるまでにごちそうを作っておくか」
ホテルの厨房に入る許可をいただき、その上で料理を作っていく。特に何かリクエストがあるわけではないが、ちょっと前に食べて四亜たちが好んだ料理を知っているだけに、それを作ることにするのであった。
七割がたを終えると―――。
「それじゃ後は任せて大丈夫でしょうか?」
「「「「はい!!! シェフ・紅閻魔もいますので!!!」」」」
ホテルシェフたち(男女混合)の威勢ある声に少しだけビックリするも、まぁ彼らの職場に無遠慮に入っただけに、長居することも出来なかったのである。
「助かったよ。レッド、レティ」
「なんの。この程度はな」
「女の子にご馳走するわけですから、センスは必要ですよね」
それを見越して、『レモン』の扱いに長けた2人に協力を求めたのだった。そして汗などの臭いを魔術で消して懇親会会場に戻ると……。
そこでは喧々囂々の言い合いが続いていた。
これは一体何なんだ? その疑問が胸をつくのだった。その疑問に答えるように―――。
「おおっ、遠坂いいところに!」
「どうしたんですか? 服部会頭」
一高の会頭が、顔を明るくしてこちらに近づいてくる。こちらとしても何事かと思っていただけに、その疑問が解決されることを願うのだった。
「ああ。新競技の名前に関して話していたんだ」
「それで喧々囂々のアニメ
その様、まさしく副会長のおっぱいのイメージに関して言い争うアニメ制作関係者のごとくだったりした。
「ソノ通り!! そして俺としては―――――」
一高会頭の意見は……。
「俺としては、TV版では評価低くも劇場版でV字回復を果たしたマクロスΔでいきたいと想っているんだ!!」
「わだつみちゃんたちもワルキューレですからね! 美雲・ギンヌメールは小清水さんを代表するキャラ! というわけでレオ先輩も一票どうぞ」
「うやむやで仲間にされたっ!!」
部活連の1、2、3年ズがそんな調子の中……。
「しかし! あえてその意見には物申させてもらう!! 服部!!」
「Δの前にマクロス復権を果たしたマクロスFこそが至高!!!」
「三角関係をしっかり描き、マクロスの王道を貫いたFこそが最高だ!! トライアングラー!!」
「残念ながら私も中の人の関係上……フロンティアに傾倒せざるをえません!!」
「ただの声優自慢じゃないか!!!」
アホな言い争いに参加したレティに対して頭を抱えるのであった。
そんな中……。三高の参謀役が少しだけ自慢げにしてやってきたりした。
「甘いですね。一高の皆さん……本当の意味で歌を主題にした超時空シリーズといえば―――『マクロス7』に決まっているじゃないですか!!溢れる想いは流線型!! 俺の歌を聴け―――!!!」
「「おまえもかーい!!!」」
レッドと一緒に
((ダメだコイツら……もう手遅れだ……))
「むっ、親父からだ」
いきなり鳴り響く達也の端末。もはや誰から何を言われても驚かない気持ちであった刹那は、達也の端末に表示された文章を読ませてもらうのであった。
『達也、俺も吉祥寺君と同じで7に一票だ! ただ小百合の方はお前と同じでFに一票みたいで、夫婦の危機だぞ!(涙) リトゥン by 異世界帰りのダイヤモンドフォースZAZEL社長』
どこで見ているんだよ。と言いたくなる達也パパのメール文章。その間にも『波乗り大天狗』なる相手からのメールも受信して、もうオチは分かりきったので――――。
「―――もうキスダムでよくね?」
「いや、GALAXY ANGEL一択だろ」
メンドクサイのでそんな意見で締めたいところだった。ちなみにロマン先生は、「すべての発端! マクロスゼロもよろしく!!」などと叫んではいた。
そんな中―――。
「キッドー♪ リーナーおひさしぶりー!!」
わたつみちゃんたちが会場にやってくるのであった。先程までフライトをしていた少女たちの登場に、懇親会にいた人間たちが驚く。真っ先に駆け寄ってくる四亜を受け止めることになる。
「ワルキューレの霊基に随分と馴染んでいるようだな。カッコよかったよ」
「むー! 女の子に対する褒め言葉じゃなーい!」
「可愛くて可憐だったよ」
「ならばヨシッ!」
駆け寄り抱きついてきた四亜ではあるが、あの南楯島の一件より一年が経過しているわけで、筋肉も体重もついてきたし……何より骨格が変わって……女の子らしさが増えてきて、まだ幼童程度だった頃と比べて、無闇に抱きつかれると、ちょっとばかり困ってしまう。
一番おませな四亜に続いて、各所で知り合いや親しい相手を見つけては、それと歓談するマギソングユニットたち……ワルキューレの面子。
なんやかんや言っても、桜井や四葉先生などは話をしたかったようで向かっているのだが……。
(
珍しいというわけではないが、どういう繋がりなのだろうか? そう感じざるをえない。
「当然ですよ。アムはわたつみシリーズとしては珍しく、私達『アトラス』の『六源』に近い性質を持っていますからね」
「予測するなよ。というか遠距離で声を届けないでくれ」
いきなりなネタバレに成程と想うも、アムが嫌がっていないならばいいのだが。
「大丈夫です。私も自分の魔道を進めたいですよ」
「そうか」
シオンに連れられてやってきたアムは、そんな風に刹那に言う。それならば何も言わない。
(アトラスか……)
今さらながら、アトラス―――というよりもエジプトの海底に存在している『図書館』に対して考える。母とも関係が深かった「神を食らったもの」エルゴさんのことを少し調べたくもなった。
「相変わらずだな遠坂。女子が周りにいるのがお前の日常であると再認させられる」
「お勤めご苦労さまです……が、あの覆面は何なんですか?」
などと述懐していると、今回の大トリ競技の施工を請け負った会社の長男がやってきた。今は覆面をしてないが、先程までは妙な仮装をしていたのだから、それに対して少しだけ疑問を呈する。
「ただの演出だよ。わたつみ君たちが、あんなふうなアーミーコスプレをするならば、俺がスーツじゃ間尺に合わないだろ」
「さいですか……まぁこの競技の裏側とかはともかくとして、人物が揃ったので、そろそろスペシャルディナーを出させてもらいましょうか」
抱きついていた四亜を下ろしてから、紅に念話。返答から察するに、どうやらナイスタイミングだったようだ。
「わぁっ! 刹那お兄さんってば気を遣えるいい男!!」
「惚れ直しちゃいます!!!」
「子作りしたくなっちゃう」
「キッドは私のダーリンだっ!」
カートに乗せられてやってきた料理はまだクロッシュ……フタを掛けられている状態だが……それでも―――。
「まぁとりあえずご賞味あれ。英仏の協力を得て作った『レモンカード酢豚』さ」
フタを開けた瞬間見えた黄色い酢豚に誰もが感嘆を覚える。
トングを持ち、小皿に取り分けて、まずは四亜たちに賞味してもらう。
「彩り豊か、そしてレモンのいい匂いも立ち込めて……」
「そして豚肉がしっかり揚げられて美味しそうです」
「はい、十文字先輩と『秘書さん』も」
「いただこう。ヒルトさんも」
「ええ、ありがとうございますカツトさん」
そういう呼び方なんだ。というか、事情を知らない人間の多くは『十文字家の長男はゲルマン美女と結婚するのか!?』などと邪推するほど。
黒色のスーツを着た美女に皿を渡した克人の様子は、それを想起させるものだったようだ。
「美味しい!!!」
「最近食べた酢豚の中ではトップだわ……」
どうやら好評の様子。紅閻魔が食いやすいように出してきた『おにぎり』も、食を進めるものだが……。
「うーん……けれどなぁ」
「刹那お兄さんらしくないです」
「ああ、遠坂にしてはおとなしすぎて『可憐』すぎる料理だ」
四亜と九亜、そして十文字先輩から不評というわけではないが、微妙なことを言われる。
「むぅ、中々に舌に敏感なちびっ子たちですね。刹那、アナタの奸策は必要なかったようですよ?」
「女の子向けのそれを考えたんだが……レモンカードを使ったものではない方が良かったか」
下に2人ほど妹がいるというレティ、英国発祥のレモンカードという調味料。レッドの協力を得て作った新機軸の中華だったが、舌が肥えたわたつみ達を満足させることは出来なかったようだ。
「いや、これはこれで美味しいんだけどさ。キッドらしくないよ! 最大火力で万人を圧倒するほどの料理こそが!!」
「お兄さんの中華の極なのです!!」
料理に使うべき形容詞ではないが、四亜と九亜の熱い言葉に、全員が頷いていたりする。
そんなわけで―――。
「それでは、私―――シオン・エルトナム・アトラシアとマイスター刹那とで作り上げたものをお出ししましょう」
「シオンも作ったの!?」
「ふふふ、チアキ。技術者というのは、いつでも『こんな事もあろうかと』というのに備えておくべきなのですよ」
ドヤ顔で平河に返すエジプトニーソと作った『酢豚』を披露するのだった。
「ますたー、やはり小手先の小技よりも必要なのは、食べるものを圧倒するものでちよ!」
「そうだね。肝に銘じるよ」
紅閻魔女将からのありがたいお言葉。しかし持ってきた巨大な肉塊……。
「ドネルケバブか? いやこれで酢豚って―――」
「安心しろい達也。俺とシオンの合作! 岩石酢豚を見せてやらぁ!!」
舌が肥えた魔法科高校生徒たちを相手にするには、四亜の言う通り確かに『火力』が足りなかったようだ。
そんな訳で紅と一緒に巨大な肉塊を切り刻んでいき―――巨大で分厚いステーキのような肉片に黒酢仕立ての甘酢あんかけを掛けて―――。
「さぁ完成だ。オリエント文化を発展させてきた砂漠の神秘との融合!!!」
アラビア語を使う美少女から言われたことで、全員が意を決してその岩石のような肉塊に口を着けた。
瞬間――――。
「「「「「「――――!!!」」」」」」
圧倒的なまでの味の破壊力に全員がその『酢豚』に酔いしれる。
「よく見れば、この肉塊……様々な肉の部位が揚げられた上で野菜と共に固められ、また揚げられている……肉と野菜の塊を包む『皮』もまた肉……そしてそれを繋げる黒酢をベースとした甘酢あん……野菜も食感に変化をもたせるべくレンコンやタロイモなど酢豚の定番ではないが、旨い……旨すぎる」
「まぁフランス料理で言うところのテリーヌみたいなもんさ」
刹那の言葉に確かにそう言われればそうだが、、テリーヌにしては大きすぎるし、何より……厚みが違う。
だが何より疑問なのは……。
「揚げられている。揚げられているというのに―――油っぽさが全く無い!!!」
「素揚げされた野菜・肉もまたそうだ」
外側の内臓皮も衣をつけて揚げられている。
中の野菜・肉も十文字OBの言う通り揚げられている。
なのに……それらが全く無い。
四亜と九亜などわたつみ姉妹たちが、夢中になり、これだけのボリュームあふれるものを食っている辺り、やはり普通の揚げ物ではない。
「―――どんな術法を使ったんだ刹那?」
「簡単に言えば『砂』で『揚げた』のさ」
砂で揚げる。どういうことなのか、それは映像で説明されていく。
シオンと刹那が共同で細かな白砂に『超高温』をため込ませていき、その砂の中に野菜や肉を入れることで、『素揚げ』していく様子が見せる。最後のドネルケバブのような巨大な肉塊には、『掛け砂』していくことで、一切の油を使わずに『揚げ物』を行ったようだ。
「まさか、こんな調理法があるとはな」
だが、個人的には超人的な魔法技能がある人間ならば出来ることであり、他の連中ではまず無理ではないかと思う達也だが、旨いことだけは間違いなかった。
「砂のジャリジャリ感とかは無いだろ? 魔法とかを使ってそれらは全て取り除いたさ。まぁ現代のジャーレンは結構いいものだから、そこまで神経質にならなくても良かったかもな」
だが、細心の注意を払って『砂揚げ』した揚げ豚肉と野菜の詰め合わせは、とことん旨すぎた。
「中華においても富貴鶏……またの名を乞食鶏なんていう『土中の泥』で鶏を丸ごと蒸し焼きにした技法もあるくらいだしな」
十文字の言う通りだ。世の中には土料理なるものを出すレストランもあるほど、砂こそが新たな熱媒体として料理に使われることも、いずれはあるかもしれない。
映像の中で各種の砂を『操砂』して最適な揚げ方をしているシオンと刹那の手で油を使わずに、酢豚の具材は全て揚げられていくのだ。
「ミス・シオンが砂を操ることに長けているのは、エジプトの神秘基盤ゆえだな。しかし刹那の方は老婆のロードに時折料理を振る舞っていたのだが、老婆が『そろそろ油モノもキツイな』と言ったのを契機に、インドなどで行われている砂揚げという技法に辿り着いた」
エルメロイ先生の言葉に、全員が傾聴する。
「砂というのは、時に厄介なものとして人々に立ちはだかる。だが、それを利用しようと考えるのも、またヒトの知恵ゆえだ。ガラスの精製にはかならず珪砂が必要。研磨する上でも同様だ」
「皆のものたちが、どれだけ輝けるかを期待しておくさ。私達もチーム・エルメロイをとことん鍛えてきたからな―――簡単に砂地獄に呑まれるなよ」
その言葉……岩石酢豚を食いながら言う軍師兄妹に、全員がゴクリと息を呑むも―――。
「まぁそれはともかくとして、この
「久々に食べたがやはり美味い!! 黒酢に黒砂糖で甘みをつけたこれがたまらなくな!!」
ただの味の品評であった。しかし―――。
「だが、刹那、こっちもまた美味いな。特に交互に食うと一層進むぞ!」
言いながら岩石酢豚と檸檬酢豚を交互に食べることで、新たな発見をしてくるのであった。
「なんと、私とレッドへのフォローも考えての黒酢豚だったとは……」
「正しくBLACKSUNとSHADOWMOONだな……」
「いや、ただ単に作ったものならば最後まで食ってほしいなと想っただけだ」
結論としては、留学生とのコラボレーションを大事にしたかったということなのだが……。
そんな発言の裏を読んだ2人の美少女が抗議の声をあげる。
「セツナ!! なんで北米とのコラボはしなかったのよぉ!? ワタシのお国ならば、バッファロー肉を使った
「バッファローの肉ならば俺は普通にステーキにして食いたいよ! っていうかこの国にバッファローがいるわけないだろ!!」
「粗野な舌しか持たぬヤンキーとのコラボなんてそんなもの!! ならば金沢の名産とのコラボこそが、王道なんですから!!!」
「いや、普通に金沢名物として出せばいいと想うんだが……」
そんな風な言葉のあとには大宴会となり、魔法師界の名士たちの挨拶は物凄く―――雑に流れていき……気づくものは気付いたが、今年は老師こと九島烈の挨拶は無かったりするのであった。
だが……挨拶が無いからと―――本人が『来ていない』ということでは無かったのだ。
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「断ろう。私のマスターは宝石の魔法使い。セツナなのだからな」
冷たい返答に対して、部屋の中にいる面子の反応はそれぞれだった。
「だから言ったじゃないか。グランパ・クドウ―――彼女は、女王様だから従わないってさ」
呆れ顔で言うヒカルだが、その言葉を受けても諦めが悪いのが、烱々とした眼を向けながらスコッチウィスキーを呑むご老人であった。
その他に、国防軍の女性軍人―――サゲマンと、そして九島ヒカル……その他の九島家の関係者が最高級のスイートルームにいたりするのであった。
幸いにも光宣はいないようだ。彼はこういう陰謀なことには関わってほしくない想いは刹那にある。
モルガンごと呼び出された刹那は、小型化させて待機させている武蔵ちゃんとジェーンが、敵意剥き出しなのを抑えるしかない。
「聞きたいことがいくつかある……答えてくれるかな?」
「俺を一高から追い出してまで直孫を勝たせようとしているアンタに、快く答えると思わないでいてくれるなら」
優しい答えは期待するな、と釘を刺してから真夜中の会談は始まるのであった……。