魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第七章――――――おおっ、遂に来るか。

きのこの偉い人が頑張った甲斐がある! 新規サーヴァントに期待しつつも物語が、どう動くのかを期待する。

というわけで新話お送りします。


第341話『魔法の宴 開幕』

 

 

ラストナイト(昨夜)のオルゴンマテリアライゼーションはサイコーだったわぁ……」

 

机に顔を横置きしてニヤけた顔をする金髪の少女。それに対して対面に座る同世代の同じく金髪の少女は、苛立ちを見せる。

 

「なんだって男女相部屋なんて不純すぎるものを許しちゃってるんですか!? お姉さまの上司は何を考えてるんです!?」

 

「私に言われても―――!!! ま、まぁこういう風な大会形式だから、せめてそこは融通してあげようというココロなんじゃないかなー?」

 

対面に座る少女が怒ると、その隣りにいる少しだけ年上の金髪の美女―――姉は、困惑してしまう。

 

ココロとしては、怒る少女……一色愛梨と同じなのだが、それでも上司である響子のことをあまり批判もできない。

 

「愛梨ちゃん。アンジェリーナさんに、そういうことを聞きたかったわけじゃないでしょ?」

 

「そ、そうでした! 怒りのあまり本目的を忘れるところでした!! アンジェリーナ、私が聞きたいことは……タチエちゃんのことなのです」

 

「セツナを睨んできたアノ娘ね。ワタシも聞きたかったケド…… Understanding(理解出来ている)ことは、アノ娘はサーヴァントに『生かされている』(LIVING)ってことダケ」

 

刹那からの受け売りだがと前置きして、伝えた端的な情報。しかしそれだけでも彼女たち一色姉妹にとっては衝撃的だった。

 

まさか自分たちの懐にそんな存在が知られずにいたなど、考えたくはなかったのだ。

 

「ケド、ドーイウ状況でそうなったのかはまだワカラナイそうよ。まぁアノ娘ズイブンとセツナに敵対的だから何かビミョーよ」

 

「懇親会の後に聞いてみたのだけど、『言葉に出来ない苛立ち』が出来たそうなのです……全くライバルが増えるのは歓迎出来ませんが、嫌われる女子が出来るのも困りものですね」

 

「カノジョ面しないで」

 

「彼女になりたいものですので」

 

その瞬間、険相を見せる少女2人の視線から稲光が飛び打つかりあったように見える。

 

傍目から見ていた華蘭としては、なんとも言えぬ。自分とて刹那と一発シケ込みたい。女としてそういう欲求は持っているというのに……。

 

(サーヴァントに魔力をやるのは理解出来るけど、せめて現在に生きている女をもうひとりぐらい相手してもいいんじゃないかな?)

 

愛人として愛梨()と情を交わしてくれてもいいのに……などと姉心を出していた華蘭だが……。

 

そうしていると強烈な魔力圧が自分を貫くのを感じた。その圧は2つ。

一つは覚えがある。遠坂刹那だ。

一つは覚えがないが、刹那に似通いながらも違うものだ。

 

一体、何故―――と思う間もなく妹とそのライバルは走り出した。カフェでの支払いを即座に終えた2人の姿を少しだけ遅れて追うことになる。

 

ここまで強烈な魔力の発露。

どう考えてもトラブルであり、『イベント』の類であると1年間の付き合いで理解していたわけで―――。

 

魔力の方向に対して向かうと、そこは学生たちに開放されている体技場であった。

 

すでに人だかりが出来ているが、構わずに最前列に飛び込むように天地を逆さにした歩法で壁走りを行って入り込んだリーナと愛梨が見たものは……。

 

「「アンサズ、エワズ、イングズ!!!」」

 

空中より滑るように飛び蹴り―――ライダーキックを放つ美女と、それを迎撃するように上回し蹴りを放つ刹那の姿であった。

 

ルーンの輝きを四肢に宿したケルトグラップラーの戦いは熱狂を与えていて、周囲にいる人間たちをも湧き上がらせていた。

 

((バゼット・フラガ・マクレミッツ!?))

 

だが、そんな周囲とは違い2人の驚愕は小豆色の髪をした刹那の相手……ケルトの英雄特有の『全身タイツ』と言える衣装で戦う女性に目が向いてしまう。

 

対する刹那も魔獣嚇との戦いで発現させていた神話礼装の霊衣を着込んでいた。

 

そして―――。

 

右拳のストレートと左拳のストレートが打つかりあった。

覇王色の激突よろしく、天が割れそうな衝撃波が発生したが……。

 

「ふむ。この辺りでよろしいでしょうね」

「―――羽瀬先生、あんたは……」

 

あっさりと拳を引っ込める2人。対峙しあう2人……。

 

「アナタもシュートボクシングにルーン術を組み合わせるらしいので、一度どのようなものなのかを知りたかったのですよ――――ゆえに理解できた」

 

「?」

 

「チームエルメロイ、恐るるに足らず! 七高の海の戦士!!! 私と共に戦ってきた赤枝の騎士団ならば―――あなた方を倒すことは容易いと気づけましたよ」

 

その言葉が挑発であることは、間違いなかった。

 

「私が何者であるかを知りたければ、この九校戦で優勝してみせなさい―――それこそが、アナタの元に集った戦士たちに対する礼儀というものですからね」

 

「――――――」

 

何故か、その言葉は……訓示めいていて、そして……母親を思わせるのだった。

 

そして、多くの感情の揺れを見せながらも、開幕の時は近づいていき―――。

 

 

翌日 8月5日 朝

 

野外に存在している開会式場、『十校』の選手及びスタッフ全てが整列する場において―――。

 

 

『それでは皆様、大変お待たせいたしました―――これより2096年度 魔法科高校親善試合を開催いたします』

 

そのアナウンスが為されて戦いは始まる。

 

 

「んじゃ、ライネス先生イッパツ気合の出る声掛けお願いします!」

 

チーム・エルメロイに用意されたテントにおいて、チームリーダーとして確認事項を言った後には責任教師に威勢を上げてもらうことにした。

 

「いいだろう我が弟子よ。とはいえ言えることなど多くはないからな。そしてすでに教師である私や兄上に出来るのも、多くはない―――」

 

そう言いながらも既に演説用の言葉は暗唱しているはずである。(確信)

 

「ここから先は諸君の仕事だ!! 自分の為に考えて術を放て!! 自分の為に全てを出し尽くせ!!!」

 

「その上で降り注ぐ勝利の美酒ってモノをサイコーに味わいたまえ!!!!」

 

その言葉で全員に気合が入る。腰に手を当てて腹から放つ言葉は一種の呪文。

なにより外連味たっぷりな軍服の美人教師(CV 水瀬いのり)の姿に否応なくチカラは入るのだろう。

 

言葉を受けて勢いよくファースト・バトルの面子を筆頭に出ていくのだ。

 

「刹那、ロアガンはともかくSAWに関しては、お前のチカラが必要になる。相津、伊達、新島―――用立てる得物は万全にしておくんだぞ」

 

「YES MY TEACHER」

 

最後の方まで残っていた刹那に掛けられた言葉。自分たちの仕事はここまで、あとは自分たちで考えてとことん『戦い』を『道中』を楽しめ―――として2大教師は来賓席へと赴くのだった。

 

(見事な退場ですよ。先生、師匠……)

 

ここから先は生徒たちの時間だ。

試合に出場した人間に好きなプレーをさせたいということなのだろう。

 

頭ごなしに兵隊として扱われるよりも、気合は入るというものだ。

 

「さぁて、戦いの時だ(It's a duel)!!!」

 

そして……先ずはロアガンになるのだが、ここで恐るべきことが起こるのだった。

 

 

ロアーアンドガンナーは、去年までの水上滑走競技たるバトルボードとは様相が違う競技である。

 

まずボードではなくボートで水上を行く。そのボートにも幾らか種類がある。

ボートの形状が主である。

無動力のボートであるが、それでも漕手(ロアー)によって好みの差が別れて、更に言えばペア競技であれば漕手の好みと『射手』の好みが一致しなければどうなるか分からない。

 

「まぁ斉藤はソロだしな。ペアもそれぞれで何とかなったし」

 

「ソーネ、けどゲームの一番手がシー・オブ・セブンってのは、ナーンか不穏よネ」

 

観客席にて昨日の七高教師『羽瀬 真奈』という女との戦いを繰り広げた刹那としては、色々と思うところはある。

 

ルーンを用いた格闘術に興味があるといい、自分とやり合ったアノ人が……この大会にて何もしていない訳がない。

 

(バゼットなのか?)

 

俄には信じがたいが、あの拳の感触。呼吸。魔力の運用法……に関しては少々『上がって』はいたが、拳を合わせて体をぶつけ合っただけならば、アレは間違いなく刹那の魔道戦闘の師、封印指定執行者のバゼット・フラガ・マクレミッツである。

 

「出てくるよ」

 

二三草の言葉で見ると、水上のスタートラインには七高の男子選手―――ソロでいた。

 

始まる。そして変わるのだった……。

 

滑走していく男子……神奈という名字の男は、その走りで全てを変えていくのだった。

 

 

 

「まさかこんな手があったとはな……!!」

「ルールの盲点だったね……」

 

七高 神奈 光雄という男の『ロアガン』の滑走は、これまでの自分たちの努力を見当違いにするものであった。

 

「滑走だけでもトップだというのに、走りながら全ての的を『砕き抜いた』……どういうトリックなんだろうね?」

 

「恐らく神奈選手の走り、一周目の練習走行の時点で、ルーン魔術が全身に走っていたことに何かがあるのでしょう」

 

ここでルーンに明るい刹那がいれば、『これはこうこう、こういう効果』だとか教えてくれるのだろうが……いないならば、こんな風に五十里と話し合うしかないのだ。

 

「けれどそれだけで水上を移動する的全てを破壊することが出来るんでしょうか?」

 

会長である中条の疑問はもっともであった。

 

 

そしてチームエルメロイ側では……。

 

「可能だ」

 

キャプテンが全てのチームメイトから集まった疑問に対して端的に返すのだった。

 

「恐らく神奈選手は練習走行時点で、ベルカナ……探索のルーンである程度、未来に出現する『的』の位置を見通しておいたんだな。その上で自動追尾というよりも『必中』を確定する術なのか『武器』なのかは分からぬものを発動させながら、『最大船速』で水上を駆け抜けたんだろうな」

 

「必中を確定する術……随分と抽象的だけど、もしかしてアタリは付いている?」

 

二三草の疑問とも確信とも取れる言葉に自信を以て答える。

 

「クー・フーリンで有名な武器『ゲイ・ボルク』だな。放たれれば心臓を穿つという結果を『強制』するアレを再現したんだろう」

 

ざわつきが少しだけ広がる。……進むだけで、的を破壊していくなどチートすぎる。

 

「神奈の超速船移動があってこそなんだろうな……

恐らく最初は『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』な『俺たちと同じ結論』だったんだろうが……」

 

言いながら第4レースを終えて、ボロボロになった三高選手……見事に第一出走の七高にプランを崩されたのを見てから―――。

 

「どちらも取りたいという欲張りプラン、よくばりセットは、俺たちも考えているんだ。後藤! 斉藤!七に有利な潮目を変えてくれよ!!!」

 

『了解した』『言われるまでもないわ!!』

 

―――チーム・エルメロイが誇る海の戦士を出すのであった。

 

そして……潮目が再び変わる。

 

 

「まさか後藤が、ここまでやって来るとは……」

 

「いやいや! なんか後藤君の顔が『さいとう・たかを』先生の『A級スナイパー』じみていたんだけど!? そこに対するツッコミは無いの!?」

 

変身者(トランスフォーマー)、後藤 狼に対して野暮でしょうよ。最終的には『腕マッチョ』で超巨大なカタナでも振るうこともありえますし」

 

もはや人間の枠ではない。などと五十里が思いつつも、遂にチーム・エルメロイの選手……奇しくも第一高校の生徒が来たことで全員が緊張を果たし、そして水上を駆け抜けた最終タイムは―――。

 

 

「男子ソロ一位の七高と0.2秒差の二位!?」

 

テント内に、最大級のざわつきが広がる。現状のランキングでしかないのだが、的当てとボードの走破タイム―――総合で、ここまで来るとは……!

 

予想外すぎる。そして、これと競い合うべく出走を待つ我が校のウマ娘ならぬウマ息子は……。

 

「この後のウチの男子ソロは……」

「確か……五十嵐 鷹輔君だね……」

 

ハルウララ並みにダメかもしれない。という予感がテント内に充満するのであった。

 

(この手の射撃競技ならば吉祥寺が出てきてもおかしくなかったが、彼はソロもペアもエントリーしていないんだな)

 

別に大して興味があるわけではないが、それでもいないことに気付き、二校が考案した作戦は彼の胃を引き攣らせているに違いない―――。

 

そして……。

 

(現在進行系で胃をやられている中条会長がちょっぴり気の毒だな)

 

この後は女子ソロ、そしてペアに続くわけで……。

 

今から作戦変更しようとしても、中々に難しい。

そして会長もグロッキーになっていく。

 

(悪循環だ)

 

神奈も後藤も……その固有スキルで完全にロアガンにおける潮目を変えてしまった。潮流を変えようにも、ここから先はどうしようもない。

 

エイミィと久美子のペアも、この流れに巻き込まれる可能性があるならば―――。

 

「し、司波副会長ぉ……」

 

呼びかけてきた小動物の涙目。そして役職だけで何を言わんとしているのかを理解して―――。

 

「……分かりました。ただ今更……本当に、何が出来るか分かりませんが、とりあえず明智・国東の方はレクチャーしてきます」

 

「お、お願いしますぅ……!!」

 

その心を安堵させるべく達也は動き出すのであった……。

 

 

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