魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
なんてこった……そして邪推ではあるがアセティック・シルバーさんのFGO同人小説が一度は禁書扱いだったのは、もしや!!!
などと色々思いつつも、何だか『リング』シリーズの最終章たる『ループ』を思わせるモノも出てきた。まぁ創作において元凶はシミュレーテッドリアリティ的なものは幾つかあるよな。
スターオーシャンの問題作である3とか……。などと考えつつ新話お送りします。
「あえて敗因を挙げるならば、やはりレッドの攻撃力が『単調』すぎたということだろう」
「だな。如何に威力を増大させたとはいえ、レオンハルトの神腕幻手はアベレージで4割を打つバッターのそれも同然、そんなものが六本以上も生えていれば対処は早期に可能だろう」
おまけにレオの選球眼及び対応力の速さが、チーム・エルメロイの予想を超えていた。
更に言えば、ファランクスを防犯センサー代わりに前面展開することで己の反応を補っていたりもした。
つまり……あの時点で、レオは完全にレッドの魔法を『棒球』よろしくする策が展開されていたのだ。
「では西城は最初からモードレッドの魔法を打ち返すべく考えていたんですか?」
来賓席にいた一高OBであり今大会の現場スタッフの一人でもある十文字克人は、自分の後輩の大活躍にご満悦になりながらも、疑問を呈する。
「私ならば、そうする。セイバーに直接攻撃が許されないならば相手の魔法を跳ね返すことで攻撃とするのが策だろう」
そして何より、あのタイミングでまだ勝利を諦めていなかったことが勝利へと繋がったのだ。
ブザービートでのシュートではないが、タイムアップ間近で優勢を取ったエルメロイ側の油断を突いてもいた。
総じて言えば……勝負どころにおけるカンが優れていたということだ。
来賓席にて予め用意されていた菓子と茶を嗜みながらの説明に、全員が感心をする。
「単純なチカラ勝負だけならば、言峰とブラックモアに歴然とした差は無い。やはりセイバーが全てを決めたな……」
ロード・エルメロイII世はそう言いながら考えるのは、西城レオンハルトの幻手に関してだ。
手とは神なり。
その想いで講義して指導をした我が弟子のことを思い出す。
刹那が当初、西城の教導で主にやらせていたのはルーン魔術からの『巨体形成』……俗称『巨人魔術』というものだ。
獣の神秘をなぞる獣性魔術から始まり、鬼への『進化』を目的とした魔術など、こと『上位存在』へと階梯を昇らせるなどといったような実践。
ある種、グノーシス主義的な試みは魔術世界では一般的である。
だが……現代魔法はそれとは別種の所にあるものだ。彼ら、現代魔法師は巨人の膂力も、鬼が持つ『世界の塗り替え』も必要とはしていない。
彼らは、生まれながらにして『物理法則』を捻じ曲げることを当然とした存在だからだ。
もっとも、最近では彼らの認識力では見切れないものが多すぎたりするのだが。
結局の所、刹那が巨人魔術を主体にして教えていく内にある種の『副産物』的に、彼……西城レオンハルトは、己の内側から違う『手腕』を生やすことに成功したのだ。
(刹那は、エルゴのことは半端にしか聞いていなかったからな……)
だからといって自分の弟子―――彼の母親が事細かにエルゴのことを教えるとは考えにくかった。
彼女は、他者の内面に関しては伏せるべきことは伏せる。そういう気遣いという『心の贅肉』を持った優しい子であることは間違いないのだから。
(だからこそ幻手神腕をある種『これ』と『これ』といった塩梅に決めていったからな)
―――神を
ある意味では、英霊憑依を可能とする刹那の特異性が、彼の神を正体不明にしてしまっていたのだ。
刹那の高性能な「うっかり」とも言える。
(もっとも、レオンハルトの幻手は、やはりエルゴと同質のものだ……彼の実家が元・
そんないつもどおりな思索及び『解体』の準備をしていたロード・エルメロイII世ことウェイバー・ベルベットだったが……とりあえず置いておくことにした。
仮にもしもレオンハルトの中に『アイツ』の何かがあろうと、なかろうと……結局、自分の教え子であることに間違いはないのだから。
「しかし、初日から波乱が起きすぎているが……毎年、こんな感じなのかね?」
イングランド・プレミアリーグなどサッカーの本場でクラブチームのハイレベルな戦いを見ていたウェイバーは、何気なく問いかけたのだが。
「実を言えば昨年までは……どうにも、低調というか何というか……」
「はっきり言いなさいよ! つまり十師族である私達が同年代の魔法師の頭を抑え込んでいたんです!……まぁ去年は、若干違ったりもしましたけどね」
口ごもる克人に代わり、きっぱりと断言した真由美の言葉、しかし最後の方は同じく口ごもる調子になる辺り……どうにもこうにも。と兄妹そろって思う。
「物申すことでもないかもしれないが……どうにも君たちは隠すということをしないな。いやまぁ国防を担う立場であるというのも分かるのだが」
直截すぎるやり方である。それが良いか、悪いかは外様である自分たちには論じられない。だが、そうであるならばもう少し『多くの人間』と戦うべきだろう……学校対抗戦である意味は、少々薄れる。
「こればかりは我々の不見識ですよ……遠坂が、あなた方、ご兄妹の弟子が、世界をひっくり返した」
怒涛の日々は色濃すぎた。たかだか一年で、彼はこの世界に変革を齎した。
無論、彼がこの世界……北米に訪れた時点から徐々に種子は撒かれていた。だが彼の故国……この日本に来てから全ては始まったとも言える。
「そのひっくり返す手段とやらが、諸君からすれば『エルメロイ・レッスン』などという胡散臭いものだったと思うのだがね」
苦虫を百匹は噛み潰したとも言える顔のままに言う2世。反面、義妹の方は悪魔的な笑みを浮かべている。この2人の関係性が実に分かりやすかった。
「まぁ……成果は確実に出ていました。悔しいことに、衝撃的なことに、あらゆる意味で……真実―――飢えを覚えていた人間たちを掬ったのです」
七草真由美の顔が2世と同じくなったことは妙な対比ではあった。
結局の所……ベクトルは違えど、刹那のやりようが、色々と人間を妙な心地にさせたのは間違いなかったのだ。
「―――成程、ところでだ十文字君……あちらにいる制服軍人は、キミの知り合いかね?」
「いえ、自分も知りませんね」
40代ほどの壮年の男。自分の職位を示す服を着込んだ男が、少し離れたところからこちらを見ていた。
だが決して無関係ではいられないのも事実。
実際、ウェイバーが参加をした冬木聖杯戦争においては
その後年……十年以上も経った後の北米において行われた偽りの聖杯戦争は始まりからして
並べて魔術師絡みの戦いが尋常の世に漏れれば、こうなることは当たり前なのだ。
(だが、この世界におけるソーサラスアデプトは、当初から軍の兵器として使用が規定されていた)
古式はまた違うのだろうが、ともあれ……男は近づいてきた。
「ご歓談中のところ、割り込むようで失礼いたします。ミスタ・ミス ロード・エルメロイ」
「レディはともかく私は2世をつけていただきたいですな。とはいえ、何かご用件ですかな」
「見ての通り、私と兄上は我が弟子の弟子――言うなれば『孫弟子』とでもいうべき男女との歓談中ですので、できることならばお引取り願いたいですね」
礼節を持って近づいてきた軍人に対して冷たい対応。とはいえ、そこで大佐―――酒井も引き下がる訳にはいかなかった。
「少しでいいのです。不躾であることも理解しています。ですが……少々お話したいことがあります。これは、十師族であるそちらのお二人にも関わることですので―――お願いしたい。不肖、この酒井なる男の下らない話を聞いていただきたい」
そうして、この魔法大会……ロード達の故国の創作
たる『ハリー・ポッター』にちなんでトライウィザード・トーナメントならぬ『ナインウイザード・トーナメント』(今回は10校だが)の裏側で蠢くことが明かされるのだった……。
・
・
・
戦い終わって日が暮れてではないが、それなりに反省会やら何やらをやっている内に、日は暮れてしまった。
「初日はいい調子で終わったもんだ。この調子でいければ万々歳なんだがな」
「勝って
こちらの顔を覗き込みながら面白がるように言ってくるリーナに、少しだけ笑みを零しながら言う。
「実を言えば……慢心王ほどではないが、明日で大体の所は決まってしまうのではないかと想っている」
九校戦の花形競技たるアイスピラーズ・ブレイクは、その競技の派手さに伴い配点も他の競技よりも高めに設定されている。
ゆえに……どの学校もここにエースを送り込んでくる。そして、そのエース達を倒すだけの実力を―――『チーム・エルメロイ』は備えているのだ。
「以心伝心ネ。ケレド、今年のピラーズは競技数が多いから競技日を分けるのよネ」
「とりあえず明日で最低でもベスト16、最高でベスト4までを進めたいようだ」
この明確な所を定めない点は、やはり『氷柱』の準備に時間がかかることと、相手との実力差次第では『速攻』で勝負が決まってしまう点にある。
要はステージ設定が面倒くさいということだ。
実際ペア競技は昨年と同じく氷柱の数が増えるのだから。それはしゃーないのだが……。
「まぁ楽しませてもらおうか。 はぐれものらしく、な」
他校とは違う逆張り戦法を行う刹那のやり方は、いまのところ効果を出している。
苦しいときこそ大きく張ることも重要なのだ。
よって――――――。
「すみません。厨房お借りします!」
―――厨房に許可を取って入った後には、今日を戦った戦士たちと明日戦う戦士たちの為の料理を作るのであった。
「遠坂シェフ!!」
「刹那くん!!」
「ますたー、疲れてないんでちか?」
「今日は競技種目は無かったからな。明日は殆ど紅に任せちゃうけど」
殆ど、ということはそれでもやるつもりなんだろうと想ったコックコート姿のリーナは、半ば諦めの境地であったりする。
この男は、自分が愛したダーリンは―――魔術師というよりも料理人でありたいと思うヒトなのだから。
ゆえに―――。
「なんでミナミとミノルはここにいるの?」
しかも本格的なコックコートを着て。心中でのみ付け加えてそんなことを言ったのだが。
「愚問愚答ですね。アンジェリーナ先輩、ズバリ言えば!! ココア、シアなどにも料理を振る舞う以上!! 私が手を掛けなければいけないのです!」
この子が四葉のガーディアン候補だったとは思えないぐらいに、我を出す様子に少しだけ思い悩むも―――。
「まぁ人手はあっていいものだからな」
特に今日のスペシャルディナーは、男手よりも女の手の方がいいかもしれないのだ。
「それで―――刹那、どういうものを作るんですか?」
「『コロッケ』と『エクレア』というところか」
光宣の質問に答えつつ、取り出した『巨大な塊』を使うことを企図する。
そして料理の全景を示すと厨房にいるシェフたち全てが感嘆の声を漏らす。
「成程……アナタが作るものはいつも大作ですね。何より……僕には分かりますよ。アナタの意図がね」
光宣の言葉に、そこまでバレているならばということで種明かしをしておく。
「童心に帰りたい高校生もいるだろうからね。そういうことだ。中学生たちもいることだからな……単純に、ただのチャーハンじゃつまんないだろう」
何より、十文字家の関係者が集まっているならば、これを使わない手は無いのだ。
「んじゃ始めるか―――」
そうしてもはや恒例となってしまったクーレ・デ・ラ・マギ……料理魔術などと口さがなく言われているものを刹那は披露するのだった。
・
・
・
・
「しかし、今日は危なかったぜ。完全に時間切れ間近でシールドを5枚砕かれたんだからな」
「だが、そこで逆転の一手を放てたんだから、お前の勝負カンが良かったんだよ」
「そうです。誇ってくださいレオ先輩。現在一高が3位に着けているのは、先輩が諦めなかったからなんですから」
言いながら三人は、メロンを食っている。メロンの果肉自体を食べているわけではない。
メロンの中にあった冷製煮こごりを食べているのだ。恐らく鶏と白身魚……多分ヒラメかスズキか。そんな所を利用して出たゼラチン質のスープは上品な塩味と酸味……恐らく梅干しだろう。
メロンの微かな甘味が口溶けに爽やかなそれは正しく絶品であり全員が舌鼓を打つものだ。
事実、タマモキャットがカートに乗せて持ってきたそれは当初はおっかなびっくりであったのだが(キャットにビビっていたのもある)、それの味が知れる度に全員が山積みされたメロンに殺到するのであった。
(これは前菜ということなのだろう。あの東京オフショアタワーで振る舞われたコース料理のメインを張れるスープ 『佛跳牆』ではない)
本当の意味で『胃を開かせる』為のものであり、この後に来るメインに対して達也は気を引き締めることにした。
だがゼリースープは、確実に嚥下していく。食べ物は余程のこと(悪くなる)が無い限り、粗末にしてはいけないのだから(食欲優先)
「お兄様、今更ですけど随分とヒトが多すぎませんか?」
「観戦に来た各選手・生徒の弟妹・兄姉たちがいるからな。別に構わなくないか?」
用意された大会場。宿泊施設は別だが食事料金自体は徴収している。
ぶっちゃけ来年以降の新入生たちを確保するべく、スカウティングじみたことも行われているのだ。
高校部活のグレーゾーンなスカウトのように意味があるかどうかはわからないのだが……。
「色々と聞きたいこともあるんだろ。何か困ったことでもあるのか?」
泉美のように深雪に妙な慕情を向けているものがいたり、生意気にも中坊のくせにナンパを試みた人間でもいたのだろうかと思っての質問に対して……。
「いえ、その……五十里会計の妹さんが、こう……スゴイ顔で私を見てきまして」
「絡まれているんですか?」
「そういうわけじゃないのだけど……」
カレンの何気ない質問に戸惑いつつ答える深雪。五十里会計の妹……その人間がどの子なのかは分からないが、とりあえずその五十里 啓と話している……眼鏡の女の子、ロングヘアの子を見ることに。
地味な美少女……そんな表現が似合う子だ。以前、刹那の記憶の中で見た故郷の市長。
氷室 鐘という女史を思わせる子がいた。こちらが視線を向けたことを『敏感』に感じ取ったのか、こちらに目を向ける妹君。
深雪と同じく自分に敵意を向けるかと思ったのだが……達也が目を向けた瞬間。
喜色満面。そういう表情としかいえない。口角を開き手を組み合わせて喜びを表現。
そしてから五十里の肩をバシバシ叩く始末。何を言っているのか、精霊の眼を使えば口頭言語を情報として見えるのだが……。
(やめておこう)
その様子から察するに、どう考えても五十里に「紹介して! 挨拶させて!!」などと言っているのは間違いなさそうだからだ。
「モテますね。流石は中○悠一ボイス」
「それがモテの原因とか悲しすぎるんだが……」
カレンのツッコミに返して、戸惑いつつも五十里啓―――五十里先輩が、妹君を連れてこちらにやって来る。
そのタイミングで……。
「出来たぜー。本日のスペシャルメニューだ」
「他のメニューも食べてくださいでちー」
大きなクロッシュに包まれた大皿を何枚も乗せたカートを押してきた刹那と紅閻魔。そしてリーナや水波と光宣たちが同じように後からやってきた。
よって―――達也は速歩きで、向かってきた五十里妹―――のちに五十里
「おのれ!! ロード・トオサカ!! 私の司波達也様を奪いやがって!!!」
鬼のような形相をする五十里妹の言葉から、どうやら『そういうこと』らしいと気付く。
「メイ! ちょっと落ち着くんだよ!! 司波くんのあれはすでにパブロフの犬なみの条件反射なんだから!!!」
とんでもない言いようではあるが別に構わない。事実なのだから―――
そうして……遠坂刹那という魔法師との対話で本当の意味での本日の統括が行われることになるのだ。
当然、美味しいものを食べながらという文言が付くのである。