魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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私事ですが、怪我をしてしまった
骨まではいかなかったのですが、まぁ注意一秒、怪我一生ですからね
暖かくなるとやっぱりね。

というわけで新話お送りします。


第351話『魔法の宴 氷柱激闘編Ⅱ』

 

 

かつてここに、自由と勇気。そして飽くなき探究心を持つ者が立っていた。

 

彼は、戦嵐吹き荒れるこの星で、平和のために立ち上がった。

 

そして彼は、戦いを終結へと導いた後、旅立っていった。

 

『彼の愛したものは、風と、雲と、冒険だった……』

 

「いや、いきなりお前は何を言っているんだ?」

 

はっきり言って、意味不明なことを宣うアンティークな携帯電話に緑髪の女子は『ドン引き』であった。

 

『くー! 千鍵さんには分かるまい!この胸の高鳴り!震える電子回路!! ああっ全細胞が震えるほどのこのSHOW DO(衝動)!! ドッキュンドッキュンしちゃうんですねー!!! きっとジーク(?)も漫画版みたいにハートの形になってZiユニゾン……は別作品!! まぁつまり合体は愛のメガロマックスファイヤーー!』

 

最後の方は野太い声で叫んだりするとベネ。

 

「いや、本当に分からん」

 

いつにもまして妙なことを猛烈な勢いで語るケータイに辟易しながらも、桂木 千鍵はやってきたこの場所に魔法師ではない人間、自分は場違いかなとか思いつつも、渡されたチケットを消費しないのもあれだろうと思えた。

 

(ウチのガッコーはそりゃ何か夏の全国大会とか出れるようなとこじゃないけどさ。まぁ不義理かな?)

 

夏の予選は既に終わり早々に部活では代替わりは行われたりしている。

女子校部活の定番たるダンス部やマーチングバンド部などもラ・フォンは地区予選を突破できず夏を終えていたりする。

 

そんな訳で、三年は受験勉強に走ったり芸能活動も行っているものたちは、それ一辺倒で食っていけるかを考えたりする。つまり進路相談である。

 

(ある意味、魔法師ってのはズルいかな?)

 

地区予選もなくすぐさま全国大会……そもそも学校数が少ないというのも分かるが……。

 

「妙な話だよな」

 

それは私立の学校に通っているからこその感覚なのかも知れないが、ともあれ千鍵は―――。

 

「チカちゃん!! はやくはやく!! せっちゃんの試合も始まっちゃうよ!!」

 

「分かった。分かったってば!!」

 

どこぞの水星たぬきのような調子で自分を引っ張るオレンジ髪の日比乃ひびきに引っ張られる形で、今日の試合会場……バイト先の常連である刹那などが戦うアイスピラーズブレイクと呼ばれる競技会場へと向かうのであった。

 

 

「第六試合がセツナの出番―――なかなかに焦らすワネ」

 

「別に何時でも構わんさ」

 

男女二面ずつ計四面での進行ではあるのだが、それでもやはり遅い試合順と言える。

 

「シズクのイトコからは挑戦状(チャレンジ)を叩きつけられてもいたし」

 

「色々と思う所はあるのだろうが、あのヒトが上がってこない限りはどうしようもないさ。リーナこそ、試合が無くてヒマしているのか?」

 

「ソーネー。けど別にヤキモキしているわけじゃないワ……こうしてアナタと二人っきりになれるんだモノ」

 

膝枕をしている。されている男女の姿。お互いに毛繕いをするように、髪の毛をいじり合う姿が見えており―――。

 

バカップル! という罵倒が無言であちこちから言われた気分だ。

実際、選手控室にてこの二人だけが、他とは違うのである。(自慢)

 

と思っていると控室に設置されていた巨大モニターに第四試合、第五試合の様子が映されており、第四試合が終わったことで、第六試合の会場が空く。

 

「二三草が勝ったな。となれば」

 

名残惜しいが柔らかなリーナの膝枕から起き上がって、準備を始める。

 

「出番ネ! キャプテンセツナ!!マイダーリン! バッチリ頼むワヨ!!」

 

「アイアイマイハニー!!」

 

背中を叩いて自慢のダーリンを送り出すリーナ。送り出された刹那はCAD検査委員の場所へ行く―――。

 

「君に対してこのチェックが必要なのかどうか、少々僕ら疑問だよ……」

 

「不労所得だの税金泥棒だの言われたくないならば、四の五の言わずにやっとけば良いのでは? 国家公務員どの」

 

昨年度の検査委員は色々と袖の下を受け取っていたらしくて本年度は国防軍の士官が、それを行う手筈。

そしてそこにいたのは昨年度は何かと顔を合わせることもあった真田さんだったりする。

 

「言ってくれるねぇ……」

 

苦々しい顔をする真田さんだが仕事だけは、きっちりこなしたようで、自分の装備品が全て返ってきた。

 

「まぁ昨日の七宝との戦いで手の内は晒しているわけですからね」

 

極限まで努力してくれた方が刹那としては嬉しい。上から目線かもしれないが……。

 

(気力のない魔術戦なんてさせないでほしいよ)

 

そういう心なのだ。

 

ルーングローブを嵌め込み、遠坂秘伝の宝石ネックレスを首から下げ、鞘込めのアゾット剣を手に決闘に赴く準備は整う。

 

(相変わらず……この姿を見ると、本当にゾッとするよ)

 

国防軍の魔法師である真田繁留は、この姿こそが遠坂刹那のバトルフォームであると知っている。昨年度のピラーズではプリズマキッドのコスチュームが主だったが……。

 

(キャプテンとしての自覚かな?)

 

などと考えながらも真田としては、今年は技術屋としてだけの参加でいる達也が、どうしても不憫に思える。

 

いや別に強制されたわけではないとの言葉は聞いていた。だが、それでも。

 

遠坂刹那の去りゆく背中。

その赤い聖骸布のコートを纏う姿が、少しだけ寂しそうに見えるのは真田の期待でしかないのだろうか。

 

―――そう見送られてから辿り着いた会場は既に満員御礼。歓声が雷鳴のごとく轟く。

 

(千秋楽かよ)

 

以前、両国国技館でみた横綱の取組を思い出す。

 

まだ最終日じゃないんだからさ。と思いながらも向こう側の台にいる九高の選手 小松 吉久の姿を見据える。

 

戦意を失わずこちらを睨みつける姿に、真剣な顔を作りながら内心でのみ答える。

 

(いいねぇ。九州男児はそうでなくっちゃ)

 

自分の中に流れる遺伝子を再認識する。試合開始前の口上がアナウンスされていく。

何某と何某がどこの誰それであるかが説明されていく……。

 

そして、最後には開始が宣言されてスタートの為のランプが順次点灯していく。

 

あちらは起動式の読み込み、こちらは両腕刻印と背部刻印の起動を開始。魔術回路が物質界との接続を開始。

 

青いランプが点灯した時。戦闘開始となる。

 

 

初めに動いたのは小松の方であった。

魔術師だか魔法使いだか知らないが、こちらは速度で勝る現代魔法師なのだ。

 

奴が動く前に全ての氷柱をぶっ飛ばしてやる気概を―――なんて考えでは負けるとは分かっていた。

 

(昨日の七宝琢磨との戦いの通りならば、遠坂の宝石魔術は確実に『後の先』を取るものだ。先んじて動けば容易にカウンターを食らう)

 

既にいくつもの宝石が遠坂の周囲に滞空している。

 

色彩もカッティングもバラバラながらも、それが見出すものとは……。

小松が選んだのは、自陣の強化であった。

 

(お前が全力で攻撃してきたとしても耐え抜くぐらいの防壁をっ!!!???)

 

という思惑を砕く形でついでに氷柱も砕いたのは刹那が『手』から放った『魔弾』である。

 

大玉の魔力弾の連射が、小松の氷柱を2本砕いた。

 

(油断っ!! ヤツは宝石を使った術者でもあるが、それ以上に魔弾使いなのだ!!!)

 

宝石魔術という『変化球』に頼らなくても、その手から放たれる時速160km超えの『高速ストレート』のような魔弾があったことを失念していた。

 

術の幅が違う。使っている軸が多い。

そしてなにより、昨夜の戦いのイメージを引きずり過ぎていた。刷り込まれていた。

 

計画的犯行。

 

そんな言葉がおもいつく。

 

「引き出し多すぎるだろお前っ!!!」

「母子そろってよく言われてきたよ」

 

こちらの泣き言に、聞き飽きているとでも言いかねない言葉が反対から聞こえてくる。

自陣の強化をそこそこに、遠坂の陣に攻撃を仕掛ける。

 

完全に踊らされた結果だが、それでも勝機を見出すならば、『先の先』なのだった。

 

系統魔法の一つ『火炎砲車』(フレアキャノン)を放つ。強力な熱線ビームを一直線に解き放つこれは単純極まる収束・放出の魔法である。

 

もっとも、これは対 遠坂に作り上げたとっておきである。

通常の汎用型CADでは辛いものだが……。

 

(お前がやりすぎたお陰で、今年は『大型』の砲型CAD(ホウキ)も使えるようになったんだ!!)

 

ある種、特定の魔法を使う上で汎用型よりもイメージしやすいホウキを持ち込めたのは僥倖だった。

 

だが、放たれた魔法がその効力を発揮することは無かった。

 

「蒼の8番」(Blaue acht)

 

その言葉が、魔法が放たれた『後』に『聞こえた気』がした。おかしすぎる現象。だが、聞こえたのだから仕方なく。

 

後追いの言葉に従い『アクアマリン』『トルマリン』の宝石から『蒼色の光波』が放たれた。

 

当然、小松の魔法と相殺された。攻撃は不発。

 

その上でそのアクアマリンと刹那の顔―――正確に言えば目線とが一直線になり。

 

小松の陣の氷柱に変化が現れる。突然の蒸発!気化現象を起こす氷柱に小松は混乱する。

 

何かをされた!? だがそれが分からない。

 

未知の現象を前にして混乱はとめどなく増えていく……。

 

 

 

「エルメロイ先生、これはどういうことなんでしょうか?」

 

「ふむ。少し長い説明になるが、まぁ答えてやるのが人情というヤツだな。一高の生徒には前に説明したが、刹那が展開した『疑似宝石』は、ある種の『後出しジャンケン』的に相手の術に対して相性勝ちするように出来ている」

 

「極論すれば相手が火を使えば水の魔力が相手に襲いかかり、風を使えば雷が相殺する。そういう手段なんだ」

 

その説明は魔術師的な観点ならば納得出来るものだが、現代魔法師としての観点では納得できないものもある。

 

「けれど、現代魔法はそういった術式に対して明確な『属性』()があるものではありませんけど」

 

一概に言えるものではない。エアブリットは明らかに空気の弾丸だから風属性とも言えるし、ヒートストームなど炎と風の複合属性とも言える。

 

質問をした真由美の持つ『魔弾の射手』のように氷の弾丸を飛ばすものもあるのだが、そうではない魔法もいくつかあるわけで、その辺りのことを聞きたくなった。

 

「いや、それはないな。確かに現象としては、時にただの物理現象的なもので収まるものもあるが……果たして、その物理現象は本当に何の色もないものだろうか」

 

「魔術的には『空属性』というものもあるしな。対応は可能だろう。そもそも私見だが、どうにもキミたち現代魔法師の魔法は『空気』『大気』あるいは、『気圧』などを操作するものが大体だと思うのは気のせいだろうか?」

 

Ⅱ世の言葉を継いで言ったライネスのからかうような言葉に、少しだけ思うところはある。

自分のドライブリザードや深雪のニブルヘイムだのとて極論してしまえば大気中にある『水素』や『二酸化炭素』を利用したものだ。

 

領域内の物質を冷却するとはいえ、その冷却する『振動』対象と『減速』対象は、やはり大気中にあるものなのだ。如何に深雪が人間を氷漬けに出来るとはいえ、そのための『水素』はやはり大気中あるいは、その人間の表皮から持ってくるものなのだ。

 

ある意味では、一条将輝の爆裂が水分子を持つものの内部に対して干渉するものならば、自分たちのは外部に関して干渉するものだ。

 

「空気はそこらへんにあるものだし、地球の表面積の4分の3は海水だ。触媒としては大変に結構なものだが……それはさておき、説明を続けると結局のところ全ての属性に対応可能なレーザー砲台を刹那は設置、あとはそれを適宜発動させているだけだ」

 

「彼の生家、遠坂家は流動と転換を主眼としていてね。これは基本にして万能の性質だ。だったら、あらかじめその五つの属性、あるいは『それ以上』を眼前に浮かべておけば、魔力のパターンだけは事実上あらゆる種類を構築できる。魔術というよりも、単なる『チカラ』の垂れ流しではあるがね。どんな悪魔がこんなことを仕組んだってぐらいに、魔術の性質が『アベレージ・ワン』と相性が良すぎる」

 

沈黙が真由美と克人。その会話を盗み聞きしていた他の来賓席の客たちに齎した。

 

「もっとも私が彼の母親に教えた時にはそれなりに複雑な詠唱も必要としていた。だが基本的にはあの術式における詠唱は疑似宝石を『初期化』するためのものだからな。それすら必要とせず、それよりも格段に発展している……くそっ魔術使いとしての研磨がこのような形で伸ばすとはな」

 

「ミス・バゼットは義兄上よりもいい師匠だったということじゃないかい?」

 

「キミよりもな。レディ」

 

悔しげに、羨ましそうに、髪を掻いてからそんなことを言うエルメロイⅡ世。それをからかうライネス。返す言葉も少しだけ忌々しげだ。

 

それを見て2人して思うのは……。

 

((……こんなチートなカウンターマジック破れるのか?))

 

返す返すも、こんな男がいたこと。こいつが一高で戦っていないことに頭を痛めるのであった。

 

更に痛いことが、エルメロイ先生の口から放たれる。

 

「そして、刹那にはまだ隠し矢が存在している―――」

 

 

「あの蒸発現象はアクアマリンを透過させる形で『略奪の魔眼』を放ったからだろうな」

 

「そういえば去年の三高火神クンとの戦いでも使っていましたね……けど何故、宝石を透過させたので?」

 

去年はリーナのサポーターを務めていて、刹那の試合解説を聞いていた中条会長が、達也の解説に疑問点を覚えた。

 

「単純に、照射範囲と照射効力を拡大させるためでしょうね。どうやら去年、アイツも火神側の氷柱を溶かすのに難儀していたようなので―――言うなれば『魔貫光殺砲』ならぬ『魔眼光殺法』というところです」

 

だから他の現代魔法も併用しての戦いだったのかと思う。

最後のギャグに関しては、応援席にいる全員が聞かなかったことにしておくのだった。

 

スベった感を覚えて、それでも達也は構わず話を続ける。

 

「そもそも去年の刹那は、シューティングでのことが原因で、ピラーズでは十八番の魔弾放射を封じられていました。刻印神船の展開も出来ませんでしたからね。だが、今回は最初っから全力です」

 

魔眼が全力開放しているのか、煌めく宝石のように眼は輝きを増していく。小松の攻撃を後手で受けてから反撃に転じる様子。全てが規格外すぎる。

 

「見れば分かりますよぉ……そして対策はあるんですか?」

 

「――――――中条会長」

 

もはや泣きそうな会長に具体的な対策など言えないが、一つ言えることは……。

 

「ガッツでガッツンガッツンするだけです」

 

それは作戦とか技術ではなく根性論でしかなかった。我が校が誇る司波達也も拳を握りしめて、それぐらいしか無いのかと後ろにいる後輩一同は諦め気味に思ってしまった。

 

「司波先輩! 刹那先輩に動きが!!!」

 

「とどめに行く気か―――」

 

泉美の声で中条に向けていた視線を向けると刹那の後ろに巨大な魔法陣とあまりにも巨大すぎる式が投射されていく。

 

『『『『ゴーゴー!!! キャプテンセツナ――!!!』』』』

 

チーム・エルメロイの面子も意気を上げてその瞬間を今か今かと待ち望む。三高では金髪の少女が、その声に合わせていたりするのだが……。

 

――Es ist nicht alles Gold was glänzt.

――Aber das Leben hat einen Sinn.

――Es gibt Stolz in diesem Körper.

 

聞こえてきた詠唱。ドイツ語でのそれは一見すれば一瞬で耳に残らないものだ。だが、達也の耳には残り続けて―――。

 

その和訳が聞こえてきたようにも思えた。

 

―――輝きを得ることはなくとも。

―――その生涯に意味はあり。

―――譲れぬ誇りを胸に突き進もう。

 

その詠唱は少しだけ、ほんの少しだけだが……刹那の主将としての決意と同時に……刹那の親父さん、英霊エミヤに対する答えのようにも達也は聞こえていた。

 

小松吉久の陣に、虹色の光剣―――巨人族でも振るうかのようなサイズが天空より降り注ぎ氷柱が砕け散っていく。

 

巨大な魔法陣の効果は、それであったらしく。全ての氷柱が砕けると同時に光剣は消え去る……。

 

あとに残るは、WINNERを告げるアナウンスの声、全ての術の展開を終えて一汗かいたのか前髪をかきあげる刹那の姿。

そこまでセクシーポーズではないのだが、三高の方から聞こえる黄色い声援がひときわ大きい。

 

(……今夏の刹那は恐らく『長期持続型』に仕上げている)

 

前髪をかきあげた際に額の汗を拭いたことから、調子が悪いのかと思いきや大間違いだ。

 

(去年は何かと宝石で魔力の充足をしていたが、どうやら魔術回路の調整を変えたようだな)

 

スタミナと魔力を最後の方まで残す方式とでもいえばいいのか……聖杯戦争にも耐えられるように身体を調整してきた様子。

 

(いますぐもう1試合やっても、アイツは勝つだろうな)

 

確信した。

今夏の刹那は―――最高にキレッキレなのだ。

 

などと友人への評価を下していたところ、一年が少しどよめいていた。

 

「どうした安丸?」

 

気になって話しかけると一年の男子後輩が、焦ったような顔で話しかけてきた。

 

「司波先輩! 女子ピラーズの方の偵察に向かっていた人たちから連絡が!!」

 

† † † † †

 

……同じく、赤い聖骸布を纏った刹那の戦いの様子をテントで見ていた一条将輝はその戦いを眼にしてから己の想いを口にする。

 

「せいぜい今のうちだけは飛び回っていろ刹那……! イケてるお前のその宝石の羽根をむしり取って地上に叩き落としてやる!」

 

既に一回戦を終えて休んでいた将輝にとってその光景は正しく『赤い衝撃』を覚えるそびえ立つ『ターゲット』であった。

 

「別にミラージバットな競技じゃないはずだけど……っていうか台詞が完全に悪役なんだけど、阿修羅みたいなボクサーの台詞、負けフラグだよ!」

 

同じくシールダーファイトの一回戦をこなしてきた吉祥寺真紅郎が、盾を置きつつ相棒の言葉に言っておく。

 

やれやれと思いつつも、ウォーターサーバーから好みのジュースをチョイス。そうして飲もうとした矢先―――テントに勢いよく入ってくる三高生一人。

 

青色の髪を長く伸ばして、昨日のロアガンでは女子ソロ5位でフィニッシュした四十九院沓子という短躯の女子であった。しかし彼女は2人と同級生である。

 

「おおっ! 一条寺コンビがいた! これは僥倖じゃ! というかお主ら!! まだ刹那の試合様子ばかり見ていたのか!?」

 

「ちょっ、落ち着け沓子! 情報量が過多すぎる!!」

 

そんな将輝の言葉に構わずに四十九院沓子は、大型ディスプレイを操作して映像を変更していく。同時に将輝と真紅郎の端末に連絡が入る。

 

『一条くん! ようやく繋がった!! あのね翠子ちゃんの試合は、二高の―――』

 

通話口に耳を当てつつ、沓子が変更した画面を見た時に衝撃的な光景が見えてきた。

 

カメラは俯瞰のアングル。それを認識しているのか、カメラに対してピースをしながらテヘペロポーズ。割と高度でオシャンティーなことをする女子が一人。

 

そこから離れたところでは絶望感を覚えたのか項垂れる翠子の姿。

 

それは本戦女子ピラーズの会場。勝敗は着けられていた。

 

「翠子……!」

『―――二高の一年生 九島ヒカル選手にやられちゃったんだよ!!!』

 

通話口の向こうから聞こえてくる悲痛な声に断言される形で、将輝は驚くような現実を認識。

 

本戦女子ピラーズソロの選手一人……しかも本校の最有力で司波深雪と戦うとまで宣言していた『一色 翠子』が二回戦で負けたのだった……。

 

 

 

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