魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
そして私は車のバッテリー上がりでローテンションだったりしました。
たまには遠乗りしないとダメですね。いや通勤で使っているんですが短距離だからなぁ。
不覚。そんなこんなで久々のこちらの更新です。
「随分と厳重に監禁されているものですね」
「君がサーヴァントのマスターで、そして『軍の演習場』にいた以上、多少は不自由な思いはしてもらわなければならないんだよ」
「弁護士を呼ぶ権利は無いので? というかサーヴァントって『高位の使い魔』ですよね。生憎、俺は十の研究所で『不要』とされた『遠上』の人間ですよ?」
そんなものと契約できるわけがない―――わざとらしく嘯く青年。自分を下にすることで上に噛み付くケンカ犬……そういう印象を持った真田であったので……。
「成程、つまり合衆国のFEHRという団体は、そのような己を引き合いに、人類社会の
「―――ミレディはそのようなことをやっていない!! 我々は、魔法師としての正しい権利と正しい魔法の在り方を探求してそれを非魔法師に認めさせていきたいだけだ!!!」
大学生程度の男が監禁されている鉄格子を掴みながら叫ぶ。その訴えは……確かに、虐げられているものならば考えることかもしれない。
だが……。
「まぁ君の政治スタンスに公務員たる僕が、どうこう言う資格はないが……少なくとも、『今』は違うんだ。例え軍に入らなくとも、何かはあるだろうに」
「―――誰も彼もが、アナタや『あの男』のようにはなれないんだ」
不貞腐れるように、実際不貞腐れながら言う青年の心に少しだけ思う。
それは持たざるもの達が抱いてきた『ささくれ』であり、持っていたものにはどうしようもできない、共感することすら出来ない心の病だ。
時節が悪かった。時代が悪かった。時の流れが来ていなかった―――そんな言葉で慰めることは出来ない。
(遠上遼介……)
彼の抱いたものは、かつて魔法大学付属第一高校の生徒たちの多くが抱き、そして強硬な事態になったものだ。
魔工科のダ・ヴィンチちゃん講師曰く……。
『恐らくだが、第一高校での事変というのは『固定』された事象だ。ここを契機に世界はどう変わるかが決まるはずだね。その事態がどこまでの規模に膨れ上がり、どういった終結を迎えるかで、人理のプラスマイナスが決まるんだろう』
人理定礎……どうやっても変えられない世界の流れの一つ。仮にそれが、何の言い分も聞かずに『反動主義者』であるというだけで十把一絡げで殺すならば……それは平安時代におけるレッテル。
『鬼』などと『まつろわぬ人々』を称して迫害した時と変わらないのだろう。
人類の精神性を退行させる病である。
ともあれ……この青年との対決を任せるにたるのは……並行世界からのカレイドライナーだけだろう。
監禁場所にて、そんな風に様子を見てから外へと出ると……。
「クイーン・モルガン、お手数お掛けしました」
「礼には及びません。我が夫があなた方へ助力するように申したのですから」
幼女の姿を取っているサーヴァントの1騎に礼をしたのだが、モルガンは平淡な顔をしながら空中に投影した九校戦の試合映像を見ている。
その試合は、
「―――我が夫は知らぬ間に勝ち筋を得ている……しかし、果たしてそれだけで勝てるか?」
意味は分からない。だが、画面の中で戦いは思いもよらぬ展開を見せていた。
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怒涛の如き攻撃を食らわせて風前の灯と化していた栞の氷柱であったが……。
(攻撃が止んだ?)
何があったのかは分からない。だが防御を司る『竜』も少しだけ薄れている気がする。
故に、敵失につけこむ形ではあるが栞は攻撃を開始。防御に回らざるを得なかった魔法使用を攻撃に転換していく。
妖精の羽翅。そうとしか言えないものを背中から発生させている栞の攻撃は果敢だ。
「悪いけどいただくよ!!!」
左のロングフックに苦慮したミドル級世界王者の如く、何が彼女を不安定にさせたかは分かる。
栞の発生させている
刹那としては急場をしのぐだけの『擬似妖精』の霊衣であり、ちょっとした仕掛けだったのだが……。
「お前は引きが良すぎるな。遊城十代か」
「別にシャイニングドローしているわけじゃないんですが」
そっちは
ーーーこのままいけ!
今まで以上の圧を発生させてヒカルのピラーが崩されていく。
そんな中――――――。
「ヒカルちゃん!!!!!!」
一際大きくて通る声が響く。それは、北山 航という少年の声。心配して放った声で言葉が……停止していた少女に力を取り戻す。
そして現れる。夜闇色をした
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Interlude……。
―――連れていって■■■ジーヌ―――
―――こんなもう終わりを迎えた■■よりもきっといいところなのよね―――
―――そこでならばまた私は■■るもの―――
それは無理だ。キミは、キミの目的は『向こう』側では果たされないよ。
キミは自分が一番でなければ自分を保てないんだ。
それは賢しくも『善悪』をちゃんと理解して『繋がり』を重視している複雑な『世界』では無理なんだ。
清濁を併せ持つ『ヒト』という種の前でキミは邪悪にしか映らないんだ。
だから―――
―――だからアナタは私を■■たのね―――
幻影が有り得ぬ言葉を放った瞬間、だがそれでも―――。
―――醜くて、汚らしい■■■ジーヌ。その爪剣でどれだけ多くの妖精を殺して、そしてついには―――
そうだ。僕はキミを■■た。
キミを愛していたから。
キミが生きていけない世界で、汚らしくなる姿を見たくなかったから!!!
年数はあっただろう。幾らかは保っていたとしても……。
「無理なんだよ。だから―――」
キミがもういない現実を。キミを■■た現実も。
全て受け入れなければいけないんだね。
きっと、此処に、この
誰かが僕の仮初の名前を呼ぶ声がする。それこそが着名された僕の名前、光宣の
『僕は進まなければならないんだ』
いなくなった妖精……自分を拾い上げてくれた彼女の幻影を切り裂いた上で、ヒカルは覚醒をする。
自分を忘失させたもの。正直に見据えながら言う。
―――キミは『ペリーダンサー』じゃない―――
勝手なイメージを重ねたことで呪いを受けたようなものだったが……。
(もうみっともない姿は見せるもんか)
最大規模の竜光槍を形成。鎧の硬度を上げる。
こちらの覚醒に気付いた栞だが―――。
「真名解放―――
竜光槍を思いっきり振り抜いた事で発生した多くのカマイタチのような斬撃のラッシュの後には魔風の豪嵐が栞の陣を襲う。
「こ、こんなチカラ!!!」
あり得ない! その感想を栞が言う前に、勝敗は決する。
蟠る風が晴れた後には、栞の氷柱は全て無くなっており、そして……生き残った氷柱3本で、勝ちを拾ったヒカル。
同時に膨れ上がる歓声。劇的な勝利を掴んだ九島ヒカルを前に、それは当然であった……。
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そんな観客席の歓声の凄まじさとは逆に九校戦の当事者たる選手及び技術スタッフは頭を悩ませる。
「三高の栞さんは、刹那の支援も受けていた。あの装備の数々は正しくそれだったからな」
「そんな彼女でも九島ヒカルには勝てなかった……」
重くのしかかるものを感じつつも、深雪は覚悟を固める。
(聖女マルタの『竜封印』の
あのエンシェント・妖精・ドラゴンに勝てるはず……と信じたいのだが、果たして……。
ともあれ大会2日目は色々なものを残しつつも概ね各競技ベスト8までのプログラムを終了して、明日へと持ち越しになるのである……。
「そう言えばお兄様、今回は男子も手伝われているんですよね?」
「本来ならそれが普通だと思うぞ……まぁ、黒子乃が主だけどな」
「……『意外な相手』の調整もしていると伺っていますがね」
「別にいいんじゃないかな。 割と面白いしな。それに頼まれたことはある意味、エルメロイ先生の御業を知る端緒だ」
ジト目を向けてくる深雪に返しつつ、今日の反省会を行うことは必定であり、呼び出されるように一高会議室に向かうのであった。
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「頼む!刹那!! どうか、なんかこう十七夜と翠子の気力を持ち直すような料理を作ってくれ!!」
勝って兜の緒を締めよということで開いたチーム・エルメロイの反省会。それを終えたあとにやってきた三高のチームリーダーにして、明日のトーナメントの『どっか』で当たることは必定なイケメンの頼み。
「いきなり何を言うかと思えば……」
「や、やっぱりダメか?」
そんな将輝とてこの要請を素直に受けてくれるとは思っていなかった。
そもそも、昨日・今日の試合だけでも負けた選手はいたのだ。
確かに異次元の能力ともいえるヒカルに負けたことが瑕疵となることも理解できるだろうが……。
それでも贔屓がすぎるとも取られかねない要請だと分かっていたのだが……。
「了解だが、そんなものが……ああ、あったな。悪いが将輝、あとでリーレイに手伝ってくれるように言ってくれないか?」
「ああ、恩に着る!……が、俺が言っといてなんだがいいのか?」
「三高から預かっている人間もウチのチームにはいるんだ。その辺の義理立ては俺とてするさ」
そもそも栞に勝ち筋を立てられなかったのだ。
その辺りの責任は覚える。
などと考えていると念話でリーナが懸念を示してきた。
(セツナ、大丈夫なの?)
(心配か?)
(今日の夜は、響子から呼び出しを食らって遠上家の
アサシンのマスターであり、色々と訳ありである男との対面を約束されている以上、オーバーワークであることをリーナも感じているのだろうが―――。
「俺にとって料理はバイアス調整なんだ。戦いのあとに美味しいものを作ってこそ、なんというか持ちなおせるんだよ」
「ソレ、前にも聞いたワ……しょうがないからワタシも手伝うわヨ」
「いや、今日作るものはかなり複雑な工程を踏むからブッキーなリーナの」
「て・つ・だ・う・ワ」
「OH……」
一音ごとに怖い笑顔を近づけてきたステディのその様子に、思わずオーマイゴッドと言いそうになるのを耐えながら、せっかくだし手伝ってもらうことにする辺り……贔屓かもしれないが。
(達者に出来るやつばかり集めても上手くいくとは限らないのが、集団の不合理なところだしな)
結論としては、料理上手よりも愛情上手な方がいてくれたほうが刹那は嬉しいのだ。
よって手伝いを申し出た他のメンツには、少々ご遠慮いただくことに。
「特にシオンとレティは、今日お疲れだろう。休んどけ」
「あなたとて似たようなものでしょうに」
「グラチチュード♪ 今日はお言葉に甘えましょうシオン―――明日は私達も正念場なんですから」
「レティシア……」
フランス女子の言葉に苦笑するシオン。事実、各競技でベスト8に駆け上っている選手はチーム・エルメロイには多い。
その分、疲れも相応に溜まっているのだ……。
などともっともらしい理由を着けつつ魔法科高校の料理人らしく最高の料理を作ることにするのだった。
色々と間違っているような気がするも、本人が乗り気ならば、何も言わんでおこうと思うぐらいの気持ちをチーム・エルメロイ一同は持つのであったりするのはご愛嬌である。