魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
観客席からエルメロイ先生の解説付きで、試合を見ていた魔法科高校生徒たちは、改めて刹那を脅威の魔宝使いだと認識していた。
その中でも刹那の母校たる一高は、少しだけ進んだ結論を出していた。
「なんて奴だ。一条がルーンプレートを使って、防御を突破したと思えば、それを『封じてくる』とはな」
「力押しで突破するならば出来ただろうが、それではどんな逆転の一手を打たれるか分からない……その為にあのルーンプレートという『武器』を湿らせたんだ」
一条の防御壁をすり抜けて攻撃を氷柱に届かせた。この事実が一条に示したことは多い。
「戦いのツボが、あのルーンプレートならば、その機能を封じてきたか。相変わらず先見がすぎる」
実際、攻防両面の使用方法。
最前線で飛び回っていたプレートの半数以上が氷柱そのものの『防御』に回っているのだ。つまり、攻撃力と防御力を半減させたのだ。
「空属性の魔力矢……その一手だけで、一条の戦術を封じる―――」
その事実に……司波達也はどうしても身体をうずく想いを覚えるのだった。
そして刹那の怒涛の攻撃が始まる……。
『Anfang―――』
改めて聞こえる刹那の魔術回路の始動の言語。
ギアを入れ換えたな。と思いながら放たれたのは―――。
『穿て!! アンリミテッドカラーズ!!!』
百はくだらず、されど千に満ちようかという万色の魔弾の連射であった。左手と右手を合わせた―――波○拳、かめ○め波のようなポーズからの魔弾の連射が一条を襲う。
(双腕刻印を同調させた上での
一条は防戦に徹するしかない。その中に一条の防御を突破する空属性の魔力弾があっては下手にプレートを使っての進行防御も出来ない。
情報強化した上でプレートで氷柱を防御。
その上でプレートを介しての魔力弾の対空防御で飛来する魔弾を撃ち落とそうとする。
(踏み込ませないという想いが見えるな……)
それではマズイだろう。刹那相手に退いてしまっては……。
「薩摩武士相手にそれは敗着だろうに」
獅子吼しながら刹那の
無限の如き魔弾の発射は、昨年度のシューティングでの戦いを連想させるだろう。
そして一条の氷柱は……5本まで減り……。
驚くべきことに刹那の方も失点が入っていた……。
「あの絨毯爆撃か無限撃ちの中でも反撃していたってのか!?」
誰かが上げた言葉に誰もがざわつく。言葉通りに刹那の方の氷柱が7本まで減っていたのだ……。
その現象に眉をひそめたのは刹那であり、その様子から刹那にも慮外のことと見受ける。
滝のような汗を掻きながらもニヤリと笑う一条の姿が印象的であった。
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Interlude……。
それは遠坂刹那との決勝戦を迎えるだろうとして開かれていた作戦会議でのことであった。
「ここまでは今までの遠坂の攻撃パターンから分かる。そして、ここからが肝要だ」
「おう」
ここまでの
時には4人がかりで、氷柱のスパーリングをしたり。更に言えば相手は24本の氷柱で、将輝の方は3本だけという限定条件で闘うなど、ありとあらゆる状況を想定しての訓練。そしてスカサハ先生のスパルタなどで自分をとことんまで追い込んできたのだ。
「将輝がルーンプレート……あの魔導器を使えば、遠坂は将輝のルーンプレートを『封じてくる』と思う―――」
「封じるってどういうことだ?」
抽象的な言葉で言われた将輝としては相棒の言葉の意味を考える。
「砕くとか?」「割る」「打っ千切る!」
「それじゃ破壊するだけだ。アイツは、そういうことを極力しない……上から目線だが、珍しい術式、あるいは自分もかつては開発しただろう術式に対しては、それより上のものを見せてくるだろうね」
三高三人娘の言葉に呆れながらジョージは言う。言われてみれば刹那は確かにそういう奴だ。
全ての分野で自分こそがNo.1であろうと。傲岸不遜ではないが、相手の術式を上回ることをしてくる……そういう男だ。
弱点を突く戦いをするならば、もうちっと楽な戦いも出来るだろうに……。
(アイツ風に言えば『心の贅肉』なんじゃなかろうか?)
何となく将輝が思ったことだが、それは刹那というより遠坂の生き方からすれば的はずれな指摘なのだ。
「それでこそロード・トオサカなのですよ。魔導の最古を辿りながらも最新であろうとするセルナの生き様ですから」
一色愛梨の自慢げな言葉にジョージが少しだけ白けた顔をする。
「……まぁそんな訳で、遠坂の攻撃パターンを分析・解析してみた……一段目は、将輝の爆裂速攻を封じるためにあの女神の魔眼あるいは強力な防御術を
攻撃を封じられる。ここで決められればラクだけどね」
「続けてくれ」
むやみなヨイショや希望的観測はいらないのだ。
受けてジョージも答える。
「そしてまず『小手調べ』の術が入る。とはいえ、その情報量と圧はこちらの想定を上回る……攻撃術に対して将輝はルーンプレートで防御してくれ」
「ああ」
「そして、そこから先は魔眼であるか防御術であるか……どちらかだけど、将輝はとにかく攻撃に転じてくれ。そのルーンプレートは二三草に見せたとはいえ、遠坂の興味を惹く……あるいは、動体で魔眼や防御術の照射範囲がブレるかもしれない」
「ふむ」
作戦参謀の言葉はとりあえず納得はできた。希望的観測かもしれないが、想定されうる状況は理解できている。
「可能ならば、この段で出来る限り攻撃を奥にまで及ぼして遠坂の氷柱を攻撃してくれ」
「鳴瀬さんのように前面に対しての攻撃ではダメ?」
想定されうる状況では確かに刹那の四列✕3の氷柱
の内の、前部分の防御が疎かになる。
一色の疑問は当然であるのだが……。
ソレに対してジョージは首を横にふる。
「駄目だ。なるたけ、ここで列の内―――どこかで奥にまで将輝の攻撃……チカラを及ぼして欲しい。意味は分かるかい?」
「ああ……『布石』で『楔』なわけだ」
「うん、そしてここから先の反撃手段は僕にも詳細には分からない。けれどアイツの心理的パターンから多分、将輝も観客も驚きのミラクルマジックを使ってくると思う」
ミラクルマジックという単語に三人娘の内の2人が、少しだけうっとりする……。
(駄目だ。こりゃ)
と思いながらも、その後の展開は自分の苦境も含めてジョージは言う。
「そして、ここで遠坂は物量作戦……恐らく多量の魔弾や宝石弾などの連発で将輝を圧倒してくると思う……」
「そいつはハードだな……長篠・設楽原で織田・徳川連合軍に3千以上の鉄砲でやられた甲斐武田の気持ちだな」
言葉にしたあとに四葉の本拠は山梨辺りにあることを思い出して、一人の少女を思い出したが……。
今は置いておくだけの理性が一条将輝にはあった。
「だから、そこで将輝は―――遠坂に……」
そこから先の言葉は吉祥寺真紅郎の奇計・機略が披露された。そこから先のことも、未来を見通すようにして諸葛孔明よろしくだったのである。
(まぁモノホンの孔明はエルメロイにいるのじゃから、せいぜい徐庶軍師がいいところじゃろ)
などと四十九院沓子だけはそんな風でいながら、果たしてどうなるのか……自校の選手の戦いという点を抜いても注目の一戦ではあった。
interlude out……。
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・
・
「―――アンカーか」
右腕の魔術刻印が、刹那の陣に打ち込まれた『楔』を発見するのだった。
気付いたからに当然、消去しにかかろうとするのだが……。
「させるかよっ!!」
偏倚解放による空気砲の連射。別に刹那の氷柱を狙ったものではなく、こちらの術の発動を妨害するためだけのものだ。
とはいえ、氷柱の防御も疎かには出来ない。となれば……。
(真正面から打ち合うしかないか)
投影宝石を設置した上で、カウンタマジックで相手に相性勝ちをしていく。
それをしながらも、楔に対して干渉をしようとする刹那だが……。
「させるかよっ!! ソレはお前に勝つためのヨスガなんだからよ!!」
そうしようとした矢先に将輝からの圧が強まるのだ。それは、片手間で対処できるようなものではなく刹那としても注意をルーンピラーから離さざるをえない。
「それを言っちゃうか」
気楽に言いながらもまるで『女神を殺そうとする絶対死の影』のように、刹那の氷柱の奥陣に打ち込まれた『ルーンピラー』とでも言うべきもの(サイズは氷柱の4分の1ほど)は、影響力を発揮していく。
自陣にあるというのに、傍にあるというのに、もう目の前にあるというのに、なかなか処理出来ない。
(一条将輝が苦心して築いた毒棘だな)
ルーンの赤槍の連射において、これを作っていたってことか。というよりも『前もってそういうもの』をCADの中に組み込んでいた。そんなところだろう。
だが、これがとにかく厄介だ。こちらが魔力で以て干渉する度にルーンピラーは、刹那に対してインタラプトを仕掛けてくる。
それは大したものではない。無視しようと思えば無視も出来るが、なんというか喉に刺さった魚の骨のような感じでイラつく。
織田家の領土にある
そんな感じ。
(愚痴っていても仕方ないな)
こんなのは遠坂的ではない。
ゆえに、ちょっとばっかり
「Anfang―――
言うやいなや、投影宝石の七つが形を変えて生物的なものへと変化する。
それは俗に『蛇』と呼ばれるものであった。
七匹の宝石蛇が刹那の指へと絡みつき、そのまま互いに絡み合いながら一つの『祭弾』を形作った。 それは、七匹の蛇を繋げた宝石の矢である。
そして当然―――弓に番えられる。
(星宙の魔眼は
ベル・マアンナと呼ばれるものが完全に刹那の氷柱陣地に造られていた。その情報圧に魔眼を持たない一条であっても理解してしまう。
そして……。
「──
放たれた祭弾は、祭壇の霊威も孕んだままに、弓弦から勢いよく解き放たれて直進していく。
だが、そこから物理法則の枷を全て解き放ち『直角』に急上昇。そして急降下―――。
「
気付いた時には急降下する過程で、七つに分かたれた蛇たちはその眼を輝かせる。
それぞれのチカラを解き放ち将輝の氷柱に襲いかかる。
その蛇たちがいわゆる『化成体』のような弱い術ならばともかく、そんなものではないわけで、全力で防御するためにルーンプレートで防御術を練り上げる。
3層、4層もの魔法陣でしのぎきろうとする。
まるで武田の赤備えの進撃を馬防柵で止めるがごとく―――。
迎撃の火線も放たれる。
しかし、刹那の魔蛇の顎からのスネークバイトはとんでもなくてルーンガードを突破して将輝の氷柱を砕きに砕いた。
「マサキっ!!!」
『『『一条ク────ンッ!!!』』』
遠くに、シールダーファイトソロで優勝を決めたジョージの声と、応援してくれている三高の女の子の声が聞こえる。目も開けられないほどに盛大な爆発。
そして生き残った氷柱の数は2本。
(ここまで来るともはや窮地……それでもルーンピラーは生き残っている……魔力を発している!!)
刹那の残存数は6本……しかし―――。
(最後の奥の手をやる!!!)
何処かで刹那の『怒涛の攻撃』はやってくると理解していた真紅郎の予言の通り。
そして、その予言を覆せるかどうかこそが、ここからの戦いのキモ。
それを解き放つ!!!
そんな一条将輝のチカラの高まりを見た刹那は何かをやろうとしているのだと気付く。
相手が
刹那の様子からそれを予想した連中は多いわけで―――だからこそ一条将輝がルーンプレートを利用して『黄金の爆光』を放ってきた時には、刹那も驚き、観客席にいるほぼ全員が驚くのであった。
終結の晩鐘は、この時に鳴り響き始めた……。