魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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オルガマさん、いたわしや。

しかし異星カルデアスというものを考えれば考えるほど、何というかリングシリーズやスターオーシャンのシミュレーテッド・リアリティな装置を想像させるんだよな

並行世界を数多観測するゼルレッチと同様に『地球によく似た環境の世界』を『条件』を与えて『観測』することで色々なもの、環境負荷がどれだけならば大丈夫か、蜘蛛に現生人類が勝てるかどうか、勝てたとしてそれはどういう条件をそろえればなのかを知る。

アトラス院が協力したのは、路地裏ナイトメアを考えるとこういうことなんじゃないかと思う。ただアレはマリスビリーが根源へと至るためとか……うーむ謎は深まるばかり


第367話『魔法の宴 氷柱死闘編 女子決勝Ⅰ』

 

 

 

「さーや! がんばって!! 私はレティに負けてしまったけど、さーやならば優勝できるから!!」

 

「ありがとうエリちゃん。けれど、ヒカルさんは強敵だから」

 

本当に勝敗はどうなるか分からないのだ。シールダーで、土と泥にまみれたエリカがべそべそ顔のままに帰ってきて、優勝への希求・欲望を自分に託してきたことを少しだけ嬉しく思う。

 

控室から出て試合場に行くまでの廊下の左右に整列する一高生から『勝利への念』か『勝利への気』を込めたタッチがされていく。

 

怨念かもしれないが……。

 

だがそれでも素直に紗耶香は応じていく、最後にいたのは……。

 

「壬生……」

 

「そんな心配そうな目をしないでよ。まぁあんまり期待しないで観客席で見守っていて」

 

「無茶だけはするなよ。本当にそれだけが気がかりなんだからよ」

 

(無茶せずには九島ヒカルには勝てないんだけど)

 

桐原の不安をこめた言葉に苦笑気味の皮肉を思い浮かべてから、『戦ってくるよ』とだけ言ってから試合場に向かう。

 

光の向こう……外の試合場に赴く壬生のキレイな黒髪が何故か違う色に見えた。光の加減で変化したのかもしれない。

だが、桐原武明にはなにか違うものを感じさせるのであった。

 

……勝利への道筋を……

 

† † † †

 

「さぁて、どうなるやら……」

 

女子決勝アイスピラーズの観客席に来た刹那は、繰り広げられるだろう戦いの様子を予測する。

 

「遠坂先輩、一試合やって疲れているのだからテントで見ていても良かったのでは?」

「そうなるとリーナの膝枕で威厳ナッシングな姿を晒してしまう」

「その辺はもう手遅れなんじゃなかろうかと想います」

 

刹晶院後輩はかなり辛辣ではある。ただ左腕に抱きつくリーナを見たらば、誰もがそう思うか。

 

「で、遠坂はどちらを応援するの?」

「内心の自由に関してはノーコメントだ」

「「壬生先輩を応援すると言え!!!」」

 

剣術部の2人(相津、斎藤)から言われるも、この場合どちらであっても角が立つのだ。

 

ヒカルは、その出生に謎は多いが、名前の通りに九島家の人間であり、それなりに付き合いは持っていかなければならない。

 

方や壬生は当たり前のごとく一高の先輩であり、如何に現在は違うチームだからと不義理も出来ない。

 

要は、どちらも刹那は応援できないのだ。

 

「応援はともかくとして、キャプテンはどちらが勝つと思う?」

 

「8−2でヒカルだろうな。当たり前のごとく一高の女子エースの深雪を真正面から破ったんだ。地力の差がデカすぎる」

 

桜小路の疑問に対して冷静でかつ現実を見据えた分析を伝える。

 

「2割の勝率はどういうところから?」

 

「この決勝戦に来るまでにヒカルも流石に削られていると思っての分析。才能とチカラは抜群であっても、まだ一年だからな」

 

当然、これは少々『盛った嘘』である。疑似サーヴァントである彼女にそんな仮定は意味がない。

 

(だが、もしかしたらば……『賭け』に勝ってしまう可能性とてなくはない)

 

自分の父親が、アルズベリで絡んできた『上級死徒』にモナコの船宴にてギャンブルゲームで勝ったということを知っている。

 

詳細は自分も知らないのだが、それでも俗の社交界でもギャンブラーキングとして知られている『あの魔()使い』相手に、『あの怪物(死徒)の領域』で勝ったということは、親父が持っていたある種の天運なのかもしれない。

 

(それと同じことが出来るか? 壬生紗耶香)

 

剣製と剣聖の違いはあるかもしれないが、それがあることを期待するしかない。

 

そう考えていると、(やぐら)の昇降機が動き出す。

どうやらファイナリストが、やって来たようだ。

 

現れたファイナリストはどちらも和装と言えるものを纏っている。

 

「十二単衣とは、随分と動きづらそうなものを」

「ケド、ピラーズでは動きは無いカラ、ワタシも明日はグッドドレスで戦うワヨ!」

「明日はリーナが主役だから任せるよ〜」

 

戯けるように言ってからリーナの肩に体重を少しだけ預けると、それを更に懐に呼び込む辺りに恋人の優しさを感じるのだった。

 

ヒカルの衣装は蒼と薄紫を基調とした単衣の重ね。更にその髪も和紙で出来た元結などで纏められており、かなり艶やかな装い……しかし、持っている得物は剣呑すぎる『槍』だ。

 

ヒカルの身長よりも長いそれは、正しく魔力武器のたぐい……。

 

「一年女子は良く見ておけ。アイツを倒さない限り、新人戦アイスピラーズブレイクの勝利は無いんだからな」

 

「「「「はい!!」」」」

 

恐るべきことに九島ヒカルは新人戦の方のピラーズにも登録しているわけで、二度も氷柱であのエンシェント・妖精・ドラゴンは立ちはだかるのだ。

 

対する壬生の方を見ると……。

 

衣装は和装…深い赤を基調としたものは、去年の決勝戦と同じだ。だが違う点もある。

 

「―――二刀流か……」

 

シオンと戦った時には一刀で以て、ビームを放出していたのだが……。ソレ以外の狙いもあるのだろうが。

 

「何かはあるだろうな。というか先生は嫌だったんじゃないかな?」

 

日本刀―――風属性の空気打ちなどの術を発動出来るもの。

 

西洋剣―――黄金の装飾を施した何とも仰々しいものも携えている。

その形状は間違いなく『アーサー王の武器』だ。

 

「へぇ、サヤカパイセンもアルトリア陛下の基盤と接続するか。まぁそういうもんだが……やれるかぁ?」

 

ナメたセリフにも聞こえるが、実際のモードレッドの口調はどちらかといえば心配するような声音だ。

 

アルトリア・ペンドラゴンという魔術基盤を打ち付けたこと自体は、当然でありそれを利用するものがいることは織り込み済み。

 

だが、やはり『土地』の相性というものがあるのか、この日本でかのエクスカリバーに代表されるようなものを使うには、それなりに『適正』というものがあるのである。

 

実際、魔獣嚇との戦いで千葉道場の剣士たちも、近場に『仮縫い』された基盤でエクスカリバーを放ったが、それでも放った剣士全員が疲労困憊の身だったらしく、実戦使用を考えると、これはダメだろうという結論だった。

 

よって剣からビームを出すというのは『別口』でのものを模索しているようだ。

 

(その一端が、今回の九校戦SAWでの俺の魔力武器を見たいということに繋がったわけか)

 

国防軍の野望というものを少々気付かされつつも、そんなことは戦う人間たちには関係ない。

 

『本日のラストゲーム! 2人の選ばれしヴァルキリー(戦乙女)が、ここに集う!! サヨナラノツバサをはためかせながら! 女子本戦ソロ・アイスピラーズ・ブレイク決勝戦!! ここにスタートです!!』

 

水卜の煽りまくった実況のあとにスタートランプが点灯していく。武器を構えながらそれぞれに先制攻撃をとるべく己の身体にチカラを充足させて、それを武器に伝播。

 

古典的ではあるが銃に弾丸と火薬を詰め込むフランスの竜騎兵(ドラグーン)のような様子をイメージさせた。

 

片方は本当の龍ではあろうが……壬生もまた『赤龍』(アルトリア)の基盤に接続している。

 

つまりは……。

 

竜王決戦(ドラゴンドライブ)、か」

 

レッドランプにいたりスタートブザーが鳴ると同時に、槍と剣が振るわれ互いの破壊力が、互いの陣地の境界で、ぶつかり合うのであった。

 

 

一撃を交わした後に―――互いの力量を察知する。

 

口角を上げて笑みを浮かべるヒカル

口を真一文字に引き結び締めるサヤカ

 

完全な臨戦態勢―――放たれるはドラゴンブレス。

それも予選までに使っていたような『雷鳴の息吹』(サンダーブレス)ではなく『閃光の吐息』(レーザーブレス)

 

超高出力の生体魔力炉を持つ竜種にしか許されぬ絶対の暴力。

人間(ヒト)が、様々な器物と大出力源と多くの物理的な理論を用いなければ『実現』できぬ光による熱と圧の限りを、竜種は腹に力を込めて息を吐き出すようにできるのだ。

 

光による隔断が、壬生の氷柱を襲う。

 

常人や尋常の魔法師では見えぬ虚空に浮かぶヒカルの竜が、それを吐き出す様子は見えたものにとっては恐怖の限りであった。

 

だが、見えていない壬生にとっても恐怖の限り―――ではなかった。

 

その眼が光り輝く。そしてその光に対して放たれたものは―――。

 

「一意専心、勇往邁進、一撃鉄心!!!」

 

光が放たれる刹那、秒にも満たぬ中でも聞こえてきた声に伴う音を置き去りにした壬生の斬撃の連続による―――光の拡散であった。

 

「―――は!?」

 

驚きしか出ないヒカル。拡散された光熱による少しの融解もあるが、その隙を見逃す壬生ではなく、黄金の宝剣を使っての飛翔斬撃が自陣を飛び越えてヒカルの氷柱を直撃する。

 

当然、防御も掛けられていたはずだが―――心の動揺が術の『ゆらぎ』に繋がり、失点を許したのだった。

 

「そっちに振り切らせたかぁ……ロード・エルメロイII世(マイティーチャー)

 

先生のやったことを壬生のとんでもない動きからの斬撃で察する。そんな刹那のつぶやきは耳ざとく聞かれていた。

 

「壬生先輩は最初からアレだけの身体駆動が出来たのでしょうか?」

 

刹晶院の疑問はもっともだ。

レーザー()を『切り裂く』なんて芸当は本来的な人体のスペックでムリだ。向けられた銃口や砲口から『予測』なんてことをやるにしても、サーヴァント級の身体強化が必要である。

 

だが、自らを『強化』するという一点において壬生は一度だけサーヴァント級の強化(人類種限界突破)を受けたことがある。

 

根源接続者マナカ・サジョウによる『雷切』の英霊(立花道雪)定着。

その伝承……雷を斬るというところを先生は『呼び醒ました』のだろう。

 

「まぁ(人間の)限界を振り切ればな。単純だが剣圧と魔力の合成した攻撃で飛び来る術を切り裂くことで防御。そして攻撃は従来どおりだ」

 

「九島ヒカル対策で一番重要なのは、あのとんでもない『攻撃力』をどうするかということですか」

 

「そうだ。単純な防御術では完全に『撃ち負ける』。かといって防御に徹していても勝てない。となれば……攻撃そのものを『相殺』することで対応するのが最善策だ」

 

「む、無茶苦茶ですね!!」

 

エルメロイの一年女子の1人が恐れおののくように刹那の説明に反応する。要は相手の出したパンチに更に同じ威力かソレ以上ののパンチを合わせろと言っているようなものだ。

 

直接戦闘ではなく氷柱を砕くという戦いである以上、そんな風な直接的な放出術ばかりが飛んでくるとは限らないが……。

 

「現代魔法に振れた所で、壬生先輩は簡単に破るしな」

 

「あっ! 斬撃による魔法式の消去!!」

 

斎藤の言葉通りに、ここまでの試合で実は壬生紗耶香は、ビーム以上に『飛翔斬撃』による『術式破壊』をやっているのだ。

 

「となれば自分の地力で出したもの……九島家に代表されるスパークなど『電圧系統』(エレクトロ)の術での直接攻撃(ぶん殴り)しかなくなるわけだ」

 

「それに武器……宝具級の槍も用いた攻撃に対しても、やはり剣による斬撃で対応する。だが防御が疎かになりすぎじゃないですか?」

 

「一回斬られたらば、二回、三回斬ることで対応するってことじゃないかな?」

 

そんな無茶な。と全員が思うも、実際のところ壬生には特筆した防御術は無い。

 

ここ(・・)までは。

 

シオンとの戦いまでにそういったものは見えてこなかった。流石に、達也辺りならばその辺りを補強してくるとは思っているのだが。

 

攻撃力というか生徒の長所を伸ばすという点に対しては傑物だが、まぁ魔術師なんて人格とか色んなものが破綻したダメ人間ばかりなので、弱所に対しては中々に矯正させにくい点もある。

 

現に護身術の単位が取れずに長いこと教室にいたOB

もいたのだし。

 

そんなわけで先生がやったことは、壬生紗耶香に『雷切』のチカラを『思い出させ』、そして刹那の定着させた『騎士王』の基盤に接続させた。その引き出し先は(かたな)なのだろう。

 

ここから戦いの趨勢がどう定まっていくのかはまだ分からず、されど男子決勝にも引けを取らない名勝負があるのだった。

 

 

 

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