魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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というわけで久々の外伝更新。

かなり短いですが、まぁ読んでいただければ幸いということでアップします。




夢十夜――参『スレイヤーズ02(偽)』(原典:DVD特典『ドリームゲーム』より)

その日、ベルベット市に衝撃が走った。

 

魔導の都として知られており、数多もの結界を用いることで外敵の脅威に負けることが無かった。

 

そんな都に、凡そ300年ぶりに『外敵』が現れたのだ。ただの盗人程度ならば簡単に撃退出来るが、その外敵は格が違っていた。

 

迫りくる魔獣の群れを退けて、召喚したゴーレム百体を退けて、ついでに言えばゲイザー系統の敵を各所に配置した上で罠も設置していたというのに……。

 

「前・陛下が設置されたこれだけの魔術防御を突破するとは、並の敵ではない!!」

 

「ではやはり敵は――――」

 

「ああ、四将姫様たちをお呼びするのだ!!!」

 

城壁の上に立ちながら門兵たちは、土煙の向こうに見える姿を遠見の眼鏡で確認する。

 

城壁の外にはゴーレムの遺骸に魔獣の死体―――それらを全て退けた、死屍累々の戦場を作り上げた存在を直に確認する。

 

煙に映る六つの影が明確な輪郭を作り上げる。

 

土煙の向こうに見えた六つの影。

性別もバラバラ、格好もバラバラ。されど、その六人に『共通するもの』が門兵たち全員を緊張させる。

 

 

「ま、間違いない! あれが、近頃この辺りを荒らし回っている冒険者パーティー。

数多もの有力者達を倒して、その力を奪ってきた恐るべき英雄殺しのアベンジャーズ!!

付いたアダ名は――――――」

 

アサシン・タツヤ、マーチャントシスター・ミヅキに至るまで、この日のために己を高めてきたのだった……。

 

六人は構える。己の『最強武器』を。

イクイップメント(装備)画面に映る最強武器―――その名は……。

 

タツヤ

E:マルタの石像

 

レオ

E:マルタの石像

 

ミキヒコ

E:マルタの石像

 

ミユキ

E:マルタの石像

 

エリカ

E:マルタの石像

 

ミヅキ

E:マルタの石像

 

 

「付いたアダ名はステゴロマルタの石像パーティー!!

聖人マルタの石像を振り回して、血まみれの惨状(石像も血まみれ)を作り出す鈍器ー魂具(ドンキーコング)ズだ!!」

 

「「「「「なんでだぁああああ!!!???」」」」」

 

「皆お揃いで、私嬉しいですよ。特にお兄様のマルタの石像とは、血まみれ具合が似ていて余計に嬉しいです」

 

外そうとしても外れない最強装備を前に達也は思い出す。

 

こんなことになった原因を……。魔石王イシュタリンとの戦いから自分たちがやってきたことを―――ダイジェストで思い出す。

 

ホワンホワンホワンシバシバ〜〜〜

 

 

『直流こそが至上の電気なり!!』

 

『いいや交流だ!! このガチガチ石頭男が!! そのライオンみたいな頭に我が天雷を受けよ!!』

 

『貴様こそ大統王エジソンの鉄槌を受けるがいい!! ニコラ・テスラ!!!』

 

シティー・オブ・ステイツという場所にて、市中を二分して行われる2人の市長の仲違いを仲裁すれば、レオの最強武器『ジークフリート』が手に入る―――はずだった。

 

選択肢を間違えたのだろうか。

 

ホワイトライオンのような市長と紳士風の偉丈夫市長(なんかいっちゃってる)の仲違いを終わらせたのだが……。

 

『ううむ。すまないな。ミスターレオンハルト、実はキミが欲しているジークフリートという武器は、ある御方が欲しているので、渡してしまったのだよ。

いや、すまない。なんせこの辺りでは有名な、私など遠く及ばない名士でな』

 

『夫婦水入らずの旅行をすると言われては断れんな―――しかも……宇宙旅行と来ては……』

 

誰だよ。そいつらは……そうしてレオに良く声が似ていたホワイトライオンから渡されたのが―――。

 

『代わりと言ってはなんだが、この―――マルタの石像(ルーラーVer)を差し上げよう。きっと拳の威力が倍増するぞう! がんばれ!! ウルトラマンタイガ!!』

 

デロデロデロデロデレレン!!

 

恐ろしい音と同時に渡された石像によってレオは呪われるのだった。

 

次いでマーチャントシスターたるミヅキの最強武器。魔石のランプを取りに行こうと『シバの女王』……名前に少しだけ親近感が湧くお方に会いに行ったのだが……。

 

『ごめんなさーい。あなた達の求めるランプは確かにあったのだけど、宇宙船マアンナ号のパーツとして求められて既に売っちゃったのよ』

 

色々と張り詰めた『媚態』が眩しいケモミミ女王様から言われて、何とも間が悪かった。

 

もしかしたらば、ある程度イベントを進めると、手に入れられなくなるものだったのかもしれない。

 

落胆していたところに―――。

 

『代わりと言ってはなんだけど、この霊験あらたかなマルタの石像をあげるわ♪

キャスタークラスしか今の所適正が無い私にとって、この石像って見ているだけで怖いんですよね―』

 

再びの呪いのモチーフのBGMが流れる。あっけなく渡される形でミヅキも呪われるのだった。

 

もはや強制イベントとしか思えない。

 

こうなれば地道なレベル上げで装備の差など無くしてしまえばいいということで、それなりレベルのモンスター狩りを行っていたのだが……。

 

『フハハハ―――!! 貴様のジェット三段突きなど我が三段撃ちで撃ち落としてくれるわ―!! うてーい!!! 鳴かぬならば殺してしまえホトトギス―――!!』

 

『おのれノッブ!! 最近キング○ドラとコラボした、私の宇宙熱線三段撃ちで対抗する愚を教えてくれる!!』

 

いくつもの火縄銃をドローンのような遠隔兵器として操る女に対して、背中のジェットから熱線を打ち出すストラップビキニ姿のビキニサムライとが戦っている風景に出くわしてしまう。

 

何を言っているんだか分からないだろうが、まぁそうした連中と戦った後には―――。

 

『ギョワー!! この尾張のNo.1ポップスターを倒すとは、お主らタダモノではないな!!』

『ここまでの打ち手は幕末京都にもいなかった!! 我が弱小人斬りサークル!! トバ・フシミ・ホンノウジにて散る!!』

 

色んなものが混ざりすぎている2人のモンスターを倒す(死んではいない)と……悪い予感がしたのでリザルト画面をスキップしたい所だが―――。

 

聖女マルタの石像を手に入れた。

聖女マルタの石像を手に入れた。

 

同時にアイテムの保有数に余裕があったメンバー。奇しくもスロットが一つずつ余っていたエリカとミキヒコに渡るのだった。

 

『『なんか()達だけ雑!!』』

 

そしてなぜか自動的に装備される始末。せめて達也だけは装備しないぞう。と気合を入れていたのだが―――。

 

『ハメシュ・アヴァニム―――!!!』

 

『ミユキッ!!』

 

森の中から投げ込まれた『何か』、石のようなものが光り輝きながらミユキに向かってきた。

 

とっさの判断で、それを『分解』することも出来ずに手で受け止めたタツヤだが……。

 

デロデロデロデロデレレン!

 

アサシン・タツヤはのろわれた。

 

瞬間、一斉に吹き出すパーティーメンバーたち。

 

その手に受け止めたものはマルタの石像であった……。

 

『どういうことだ!!!!????』

 

『その武器こそがキミの未来を照らすだろう。僕が誰なのか今はまだ言えないが、いずれまた会おう! さらばだ!!』

 

『DAVID』と英語で横に書かれた戦車(チャリオット)に乗り込んだ緑髪の青年が、森の中から出てきて、戦車を牽いている『十匹もの羊』を手綱で叩くとーーーー。

 

『駆けろ!! ゴーイングメリー号!!』

 

その言葉で虚空に消え去る緑髪の青年……。

 

何となく正体は『バレバレ』な気がするが、それでも『詳しくない』達也たちでは明確には言えず、その疾走を妨げることは出来ないのだった。

 

 

「とまぁそんな経緯で、俺たち全員が呪いのマルタの石像を装備してしまったんだったな……」

 

「ご丁寧にも、ミユキ専用装備ではないマルタの石像という変更が為されている装備だもんねぇ……」

 

全員が涙を流す程度には、とんでもない話であった。

 

マルタの石像を振るって敵を打ち倒す自分たちは、もはや勇者パーティーとは言えないものだった。

 

「ううっ……私、こんなキャラじゃないはずなのに、最近じゃ街に入る度に『おっぱいお化けが石像で殺しにきた』とか言われている始末で―――」

 

一部は割と「事実」を突いている気がするが、まぁ今のミヅキには、何の慰めにもならないことは確かだろう。

 

泣いているミヅキと同じく、自分たちも悪評が立ってしまっている。

 

他の攻撃手段を用いてもいいのだが、MPが切れてしまえば、通常攻撃をせざるをえなく……そういうことである。

 

「けれど、こんなにまでもマルタの石像があるとか、どんだけ呪いのアイテムが蔓延しているのよ。この世界」

 

「まぁ最近判明したことですが、『外の世界』では、脳みそクラゲの主武器であるブラストソードは、かなり大量に存在しているらしいですからね」

 

何で、そこに関してはスレイヤーズ基準なんだ。現実の世界では実妹たる『せっかち勇者様』に無言でツッコミつつも―――。

 

「とにかくウェイバー・ベルベット市の『蒼眼の魔王』を倒せばいいんだ。やるぞ―――ッ!!!」

 

そんなタツヤの気合を挫くように―――色彩豊かなレーザーの雨が、パーティーが陣取っていた『丘』に降り注ぐ。

 

まだ市の壁からは4kmは離れている―――もちろんその間はおおよそ平地ではあるのだが、それにしても正確無比過ぎる攻撃が……丘陵地帯を完全に崩した。

 

「この距離から撃ってきた!! 間違いない!! 魔宝四天王だ!!」

 

盛大なまでの爆撃の正体は、城壁の上に立つ四人の美女だとミキヒコは気付いた。

 

宝石弓携える魔石王イシュタリン。

 

巨炎呪槍の冥府王エレシュキガリン。

 

正義と天秤を司る審判者アストラヴィア。

 

愛欲と耽溺を旨とする女神サクラカーマ。

 

ベルベット市が誇る四強の存在を前にして―――。

 

全員が気合を入れ直すのであった……。

マルタの石像(血まみれ)を握り直しながら――――。

 

 


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