魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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サムライレムナント――――――各所で言われているが、やはりライダーは頼光ママンなのだろうか。

買いたいと思いつつもどうしようか悩みながら新話お送りします


第369話『魔法の宴 氷柱死闘編 女子決勝Ⅲ』

 

 

放たれたドラゴンブレスの威力は広範囲(ごん太)超高熱(激アツ)で紗耶香の氷柱全てを焼き尽くさんとするものがあったのだが―――。

 

(凌ぎきれない!!)

 

ならば被害を最小にするべく光線斬撃の角度を調整する。

コンマ何秒もない高速の思考。

身体は既に動いており、氷柱が生き残れるだろう角度で斬撃を入れるのであった。

 

目も眩むような、網膜が焼き付きそうなその閃光(フラッシュ)が紗耶香を敗北に導く……その瞬間は先送りされる。

 

紗耶香の放った光線斬撃とその他の紗耶香たちが放った攻撃術が、ホロウハート・アルビオンを『削り取り』なんとか生き延びた……だが。

 

「生き残った氷柱は2本だけ……」

 

誰かが出した絶望的な言葉に対して―――。

 

「まだ終わってないぞ! 壬生先輩はまだ戦っている!! 声を出せなくても顔を上げろ!!」

「俯くな!! 戦いは氷柱の一本が砕ける最後まで分からないんだ!! 壬生の戦いを最後まで見るんだ!!」

 

誰かが放った言葉に思わず気付かされる。特に一年生が眼を逸らそうとしていたが、その言葉で顔を上げる。

 

そうだ。戦うものたちの戦いを見届けなければならない。

まだ勝負は下駄を履くまでわからないならぬ、櫓を降りるまで分からないのだ。

 

スコアは。

 

九島 5−2 壬生

 

決して負けてはいない。

逆転の芽がないわけではない。

 

壬生は諦めず攻撃を続けている。そして―――。

 

2本の氷柱が砕けていた。

 

「ぬっ!?」

 

砕けたのは全て九島ヒカルのもの、そして攻撃を通したのは壬生である。

 

「潮目が変わったな」

 

見ると、あれだけやりたい放題だった正しく『(オレ)こそがこの世全ての王!!』とどこぞの慢心王よろしく言わんばかりだった着物姿のヒカルが少しだけ息を激しくしている。

 

「遠坂先輩の予言が当たりましたね!!」

「ああ……そうだな」

 

体力の限界という『真っ当過ぎる弱点』が露出したことに一年女子の言葉も遠く感じられる。

 

だが、あえてそこで本当のことを言わないというのは刹那なりの意地というかライト・スタッフ(正しい資質)というものだ。

虚勢というかある種の大物イメージを守るのもボスの役目である。

 

だが、この状況に苦悩を深めている人間がいる。ヒカルの兄をやっている光宣である。

 

(ヒカル……君の魔力が僕を健康に生かしていたのは理解している。それが、ここで重荷になってしまうだなんて―――僕はマスター失格であり、ダメな兄貴役だ……だから―――)

 

「最後まで気張ったらんかい!! ヒカル――!!!ここで俯いたらば二高最強の名が廃るわ―――!!」

 

「竜や!最強の竜になるんや!!!ヒカルちゃん!!!」

 

「「「ヒカルちゃん!!! ファイト!!」」」

 

多くの二高生の声援が届く。それが力になったわけではないだろうが、ヒカルも最後の攻撃が繰り広げられる。

 

単衣の裾が巻き上がりそうになるほどの魔力の猛りが、攻撃の激しさに繋がる。

 

それらをビームで相殺していた壬生だが―――。

 

カゲブンシン(影分身)が消えていく!!」

 

リーナが気付いたそれは、本体(分身主)の余力が無くなっていくサイン。

 

今までは幻体分身の攻撃もあったからこその攻撃手段の増加だったが、遂に砲門が焼き付いてきたのだ。

 

輪郭が虚ろになっていく壬生紗耶香の分身―――4つが3つ、2つ――――1つ。

 

決死の剣戟によるディフェンスだが、限界は近い。

 

「「「「壬生先輩!!! ファイト―――!!!」」」

 

「「「アナタのサムライレムナントを見せて勝つんだ!!!」」」

 

一高側からも声援が飛んでくる。そんな最中に―――。

 

「アナタが面構えだけでない剣士であることを、私に見せて!! でなければ私は世界大会に行けない!!!」

 

などと一際通る声で壬生紗耶香に言っているのだろう相手がエルメロイの近くの観客席から聴こえてきた。

 

そこにいた女子は魔法科高校の制服ではないが―――。

 

「大久保さん!?」

「薫パイセン!?」

 

剣術部の2人には、その人物が分かったらしいが、彼女の目は壬生紗耶香だけに向けられていた。

 

そして、その言葉に触発されたわけではないだろうが、黄金の剣……途中から鞘に入れていた方のものを引き抜いた。

 

「そう言えば途中から一刀だけで対応していましたよね……」

 

「そうか。この終局の為に今まで抜かずに溜めていたんだな」

 

赤き衣を纏う少女が黄金の剣を抜く―――。

その姿に感想を漏らすものが出る。

 

「何処かの線での私の母と同じね」

 

VIP用の客席にて、昨年度の優勝者である銀髪の女はつぶやく。

小学生で魔法少女をやっていた母という奇態な世界を知っているリズリーリエは、そんな風につぶやいてから言う。

 

「メリュジーヌの持つ『龍因子』の魔力を溜め込ませていたのか……途中から剣を一本だけで対応していたのは、その為」

 

引き抜かれる黄金の大剣の一本。

 

最大魔力―――引き抜かれたと同時に壬生紗耶香の『場』に粛清防御が掛けられる。

 

アルトリア・ペンドラゴンの守護の魔力。もしかしたらば、あの壬生紗耶香には『何処かの世界』でアルトリアとの強いつながりがあったのかもしれない。

 

それこそ源頼光と同じく『母親』としての彼女がいたのかもしれない……。

 

受けて立つメリュジーヌもまた最後の攻撃を開始する。

 

『少し、乱暴しようか―――』

 

今までの攻防は何だったのかと思わせるような言葉の後に放たれた攻撃は―――。

 

『打ち鳴らせ、僕の心臓―――其は、『誰も知らぬ、無垢なる鼓動!』(ライブハート・アルビオン)

 

己の心臓が裏返るほどの痛みを伴いながらも胸の前でボールのようなものを両手で持つ動作をしていた。出来上がる精緻な魔法陣……。

 

多くの人間には詳細が分からないものだが、それが時空(じかん)を表すものだと理解できている面子もいた。

 

放たれるドラゴンブレス―――しかし、颶風(かぜ)を孕んだそれが、壬生の陣を襲おうとするも。

 

勝利決約・招雷源頼光(げんじさいきょうぶしん)!!』

 

黄金の大剣から放たれた極大ビーム……雷を孕んだ色は黄金ではない。どちらかといえば、紫色のどこか……優しさも感じさせるそれが、ヒカルのブレストぶつかり合う。

 

「お互いに氷柱に『無敵』『粛清防御』が掛けられている」

 

「相手の防御を突破するだけのパワーがどちらにあるのか……」

 

「だが、『難しい判定』になりそうだ」

 

源頼光(日本の武神)アーサー王(ブリテンの王)とを照応させるという何とも無理やりなやり方ではあるが、それでもそんな無茶苦茶な術式を通すぐらいには、壬生先輩も自らを鍛えてきたのだ。

 

光の圧、網膜が焼き付きかねないぶつかり合いの前に遮光の術式が広範囲に展開された。

やったのはモルガンであったりする。

 

「メリュジーヌも迷惑な限りだが、アルトリアの基盤直接利用も厄介だ。だが……あの子、サヤカとやらには祝福があれば良いなと私は願うばかりだ」

 

「妖精眼で見ちゃったか」

 

「その通りだ。我が夫―――私は……頑張って、頑張った人間には報われてほしいのだ。それでも無情なことに対決の場において、その『がんばってきた両者』がぶつかり合う無常も、今ならば分かる」

 

刹那の右腕に抱きつく幼女もブリテンの王権を求めてアーサー王と戦った。選ばれなかったものに肩入れしたがる気持ちは分かる。

 

だが、それは『結果』が出たあとだからこそ言える言葉、それも理解している。

 

だからこそ……。

 

「「この戦いに―――勝者はいない」」

 

モルガンの言葉と刹那の言葉が重なると同時、変化が起きる。

 

―――中央で光が弾け合い、天空へと登る。正真正銘―――最後のぶつかり合い。

 

永久に続くかと思われたその戦いは……呆気なく終わり、勝敗は……どちらにも着いていなかった。

 

決着の判定は……一目では分からない。

 

『両者の氷柱がどちらも消滅しているぅうう!!!こ、これはリプレイ再生で確認せざるをえない!!!』

 

実況の通り、委員会は即座にビデオによる映像を大型ディスプレイに映す。

観客たちにも明朗に、勝敗を理解してもらうためだ。

 

一高の方の観客席では、桐原が祈るように両手を組み合わせている姿を確認。

 

(両者の生き残っていた氷柱は、どちらも『手前』、相手からすれば『奥』にあった……)

 

自身の放ったエネルギーで壊れることは無けれども、ジリジリと相手から届く余波が……氷柱に影響を及ぼしていく。

 

タイムラプスなどで時折見る草花の萌芽、開花の様子のようにそれらは時間経過と共にそれは見えていき……。

 

委員会の判定は―――。

 

『両者のピラー同時全破壊を確認。よって今試合の結果は『ドローゲーム』となります』

 

『『『『引き分け!!!???』』』』

 

客席全体が驚きの声を上げるほどにアナウンスの声は中々に、物議を醸し出しそうだが……見えた限りでは、そうとしか判定できない。

 

「こういうコトだったのネ。「この戦いに勝者はいない」(THIS BATTLE IS NO WINNER)ってのは」

 

「昨年度、俺と君も似たようなことをやったしな」

 

「アー、あったワね。ワタシとセツナの石破ラブラブ天驚拳が、ミユキとタツヤの氷柱を砕いたものネ♪」

 

「そういうこと。こういうエネルギーを直接ぶつけ合う戦いとなると、判定は難しい。特に総量が同じぐらいならば、な」

 

「あの時は同チームだから、特に得点勘定(ポイント)に変化は無かったわけだけど、今回はどうなるのカシラ?」

 

言われてみれば確かにそうだ。

 

一位のポイントを分割したとしても、三位のポイントを上回るわけはない。

 

しかし、準決勝の組み合わせ次第では『こんな結果じゃなかったかもしれない』。

 

たら・ればを考えれば、両者に凝りが残るのは同様。また三決を戦った選手も同様の気持ちだろう。

 

委員会の裁決は……20分ほどの間を置いて再びのアナウンス。

その間、ドクターロマンは両者のメディカルチェックを行っていた。2人とも息が少しだけ荒いが、判定が出るまで緊張を切らさないためか、剣と槍を杖代わりに立っていた。

 

そんな2人に下された判定は。

 

『壬生紗耶香と九島ヒカルの試合は、引き分けの判定 ―――延長戦の規定は今大会にはありません。よって異例ながら1位の得点(ポイント)を両校に与えることを通達します』

 

その言葉を聞いた瞬間、一高と二高の反応は、ほぼ同じであった。

 

首の皮一枚つながった。とでも言うべき安堵の声。その後には盛大な拍手が送られながら、いろんな声が上がる。

 

よくやった。本当は勝ってたぜ。グッドファイト。

 

その声と拍手に両者は、手を振って答えてから櫓を降りていく。

 

「さて本日のプログラムは、これにて終了だ。反省会などもあるが、5時30分までは自由時間だ。節度を守って行動するように、集合時刻は忘れるなよ」

 

時間厳守だ。と全員に言いつつも、そうはならんだろうとは刹那はいつもおもっている。

結局の所、元の学校やら親族やらとの面会もあるのだから、どうしても話は長くなってしまうのだ。

 

現在時刻は4時30分……ミラージバットのように夜中まで続かない辺りは、少しだけホッとする。

 

「さて、どうするかな」

 

「セツナ、シルヴィが来ているそうだから会いにいきましょ」

 

「そうか。んじゃそうするか」

 

ここ暫くは、怒涛の如く過ぎ去る日々に追われていた。そのうえで退役軍人が、あまり現役の軍関係者と接触を持つのは良くないとしていたのだが……。

 

「シルヴィアが来たってことは、何かあるんかね」

 

「ソンナ陰謀の虫を疼かせなくてもイイんじゃない? マァ―――何かあるんでしょ」

 

知り合いのお姉さんがやって来ただけであったとしても、何かあるのではないかと考えてしまう自分を自重する。

 

だが、リーナと2人そろって赴いた先にいたシルヴィアの様子はハッキリと違っていた。

 

 

「そろそろ5ヶ月というところですかね」

「「相手は誰!?」」

 

妊婦に大声を言うのはどうかと思えたが、ともあれ久々にあった姉貴分は、母親になろうとしていたのであった。

 

大きくなったお腹を少し擦りながらも、朗らかな笑顔が少し違うものに見えていたのは、そういうことであった。

 

髪型も変わった。別に散髪を面倒くさがっているわけではない―――まぁそれはともかく。

 

「とりあえずお目出度うシルヴィア。けど、本当に相手は誰なのさ?」

 

「ソウですよ。も、もしかして望まぬ相手との子供(チャイルド)とか……」

 

「違いますよ。もう、リーナは結構ヒドイこと考えますね。怒りますよ」

 

「ソーリー……」

 

カフェのテーブルにて、紅茶を飲む軍時代の世話役のお姉さんが、姉貴分が、母親になる―――そんな事態に学生カップルは気が動転しているのだ。

 

「相手は……内緒です。お互い色々と立場がありますからね。もちろん、リーナが想像しているような事はないですから」

 

だが、その短い言葉からシルヴィアがシングルマザーとして子供を産み育てようとしているのは、分かってしまった。

 

(大人の恋愛ごとにガキが口出すのは野暮かもしれんが……)

(何というか、いいのカシラ?)

 

シルヴィアがそう決断したとしても、少しばかり自分たちは、その膨らんだお腹に想うところはあったりするのであった。

 

「まぁ私のプライベートはいいとして、どうやらFEHRの構成員がやって来たそうで」

 

「色々とデリケートな経歴の人物だからな……引渡しか?」

 

「いいえ、私が来たのは、そういうことではないんですよ。ただ後々の厄介ごとの解決のために―――あとでお願いしますね」

 

記録端末を寄越されて、その際にシルヴィアはいつもの『ウィスパリングマジック』で驚きのことを伝えてきた。

 

―――死の教主レナ・フェールが来日している。

 

それは最大の凶事とも言えたが、今のところはどうしようもないのではないかと思えた。

 

だが、狙いが絞れないわけではない。

遠上の身柄などではないのは理解している。

 

(あの女の出番は早すぎないかね……)

 

少なくとも、メリットがないと思うのだが……。

 

(この世は分からんことばかりだ)

 

そうして四方山話をシルヴィアとやっている内に時間となり、キャプテンなのに遅刻ギリギリであったことを少しだけ責められることになったのはご愛嬌である。

 

 

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