魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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今回、別の作品の『そっくりさん』が出てきますが、ただのオマージュ・パロディでしかないんで悪しからず。

寺沢先生が、同人誌即売会で出したらしいから、そっちでも良かったんですけどね。ワールドステージの将太2人は、いま見ると結構いいキャラしているんですけどね。

巴里にいった将太は現在の日本にもちょっと繋がる教訓を教えていますし。

ではそろそろ新話お送りします




第370話『魔法の宴 ~3日目終了~1』

 

 

シルヴィアというUSNAでの姉貴分との久々の邂逅。そして、その後に会議室に集まってのチーム・エルメロイ全体の反省会及び明日の確認。

 

ハードスケジュールではあったが、それでもなんとかこなして、夕食会が始まっていた。

 

作戦会議とかアレコレと秘匿しなければならないことを話さずに済ませたいという根本的な考えは去年辺りから無くなっていた。

 

色々考えるに『9つの魔法科高校の学生交流会』であるという初心に立ち返ったのだろう。

 

有り体に言えば……刹那がエルメロイレッスンという手法を講じたことが、その枠組をぶっ壊した。

 

そんな刹那のルーティーンともなっていた大会場の夕食会で一鍋振るうという行為は、今日に限って出番はない。

 

何せ……。

 

今日はプロフェッショナルたちの仕事の流儀を見るのだから。

 

いつもどおりに明るくライトアップされた大会場にて、食事は進んでいく。

 

「たまには食うだけってのもいいもんだな。サンジがココヤシ村でアーロン一味を倒したあとの気持ちも分かる」

 

言ってから出された『マグロ尽くし』の盛り込みの中にある中トロを食べる。

スッキリとした脂が、適切な量のわさびによって清冽な快感を舌に味あわせてくれる一品である。

 

「ソコにシンパシー(共感)しちゃうかぁ。うーん! ベリーテイスト!!」

 

大トロのステーキ(半面レア)を食べるリーナが頬を抑えながらオーバー気味にアクションをする。

 

だが、それは無理もない。

 

このホテルにいる寿司職人による豪華絢爛な寿司ざんまいは、中々にイキな仕事であり刹那の腹を満たしていく。

 

生魚とか大丈夫なのかな? とかおもったが、もはや『寿司』(SUSHI)は、グローバルに世界を席巻しちゃっている料理なので、フランス、イギリス、エジプト……とりあえず多国籍な人々も構わず食べているようだ。

 

唯一の懸念事項は……。

 

「四亜も九亜も無理せず『サビ抜き』を食べた方がいいんじゃない?」

 

「無理してないもん!」

 

「お兄さんは私たちの舌の経験値を侮り過ぎなのです」

 

と言いながらも気を使って小中学生たちには、サビ少なめのオーダーは出しておいたりするのであった。

 

大会場でそれぞれのテーブルにて食事をしているわけだが、これでは交流会としては体を為していないが……最初に職人さんが握ってくれた『お任せ』の一人前―――マグロ尽くしを食べた後には後ろにあるバイキング寿司(海鮮丼・鉄火丼などもあり)とも言えるものを食べる形式にはなっている。

 

作り置きとはいえ侮るなかれ。現代の冷凍技術・解凍技術は、そういった時間の経過を感じさせないのだ。

 

「こりゃカマトロか。希少部位まで堪能できるとは……一条殿には感謝だな」

 

「骨に着いていた中落ちの鉄火巻も美味しいです」

 

「これはほほ()かな?―――脂のスジが口の中で蕩けて美味しいわね」

 

もっとも、マグロ尽くしだけでも結構堪能できるわけで、普段からこういうものを食っている人間ならばともかく、こういう時にちょっとだけ自分の舌の貧しさを実感する。

 

などとそろそろテーブルを囲んでいる九亜たちが別のネタとかを食べたいとおもって立ち上がろうとした際に、一人の寿司職人がこちらにやって来た。

 

一枚の和皿、俗に長角皿ともいえるものに小型の透明なクロッシェに被せて持ってきたのだが……。

 

(若いな)

 

まだ20そこそこなんじゃないかと思うほどに若い職人。つけ場に立っていたから実力はあるのだろう。

 

というかかなりの有名人ではあった。

 

そして―――。

 

「寿司を楽しんでいるかい?」

「はい。美味しいですよ。堪能させてもらっています松田シェフ」

 

寿司職人 松田()吾。

 

少し前に東京で行われた寿司職人グランプリとでもいうべきもので、栄冠に輝いた御仁だ。

 

バレンタイン付近でアレコレ(切った張ったの乱痴気騒ぎ)あった東京のイメージ回復の為に都が主催した盛り上げイベントであったが、宇佐美がMCをやるということと、後学のために視聴はしていた。

 

「それは何より、実を言うと君の為のスペシャルメニューを考えたんだが、食べてくれないかい?」

 

「松田シェフ。皆さんが握っていたデカイ本マグロ(300kgOver)を獲ってきたのは、あちらにいる赤毛のイケメン。一条将輝君の御父上なんで、自分が先んじてそういう逸品ものを食べるのは、ちょっと……」

 

皿の上にあるのが赤身であることは間違い無さそうなので、とりあえず『そういったこと』を言っておかなければならない。

 

両手を使って将輝を示したのだが……。

 

「大丈夫。他の人にも握らせてもらう。けれど、まずは―――魔法科高校の料理人と呼ばれるキミに、俺は挑戦したいんだ(Challenge)

 

真剣な顔。それを見て稀代の寿司職人にも数えられるだろうプロの挑戦に受けて立つことを決めた。

 

 

「―――エンジョイ!大トロの握り・極です」

 

洒落た快活な言葉と同時に蓋を開けて出されたものは拍子抜けするぐらいにただの『大トロの握り』であった。

 

だが美しいトロの握り。

3貫あるうちの一つに手を伸ばし、醤油をつけ―――口の中に入れた瞬間。

 

(酔いしれそうになる……スゴイ―――マグロを超えたマグロとも言える)

 

「ただただ呆然となるしかない。美味いですよ……」

 

「マハロ! 楽しんでくれたようで何より!!」

 

「しかし、一条さんが持ってきたマグロは活けのマグロだったはず。こんな熟成トロを作れるだなんて……」

 

「Unbelievable!? あっさり見抜かれた!」

 

驚いた松田さんからすれば渾身の寿司だったようだが、見抜けるものは見抜けてしまう。

だが、美味いものは美味い。シャリの量とワサビの量が絶妙でマグロのどっしりとした脂を清冽に味あわせるのだ。

 

「まぁ松田シェフの魔法だと思ってエンジョイさせてもらいますよ。料理人は誰しも魔法使いですからね。方法は分かりませんが」

 

「ある種の熟成装置を使ったんだよな松田。ほれ、さっさと他のお客さん方に関口親方など考案のスーパーマグロを振る舞うぞ」

 

()島さん―――俺の手法は先駆者が居ると知っていたんですね!!」

 

「くっくっく。先人の歩みを知るのも一興だからな。お待たせしました紳士淑女の皆様方―――どうぞご賞味ください」

 

メガネを掛けたオールバックの髪型の男性。

ストイックな求道者を思わせる職人が、テーブルの他の人間に『マグロ極 3貫』とでも言うべき皿を載せていくのだった。

 

どうやら他の職人さんたちも握っていたようで、既にその皿は他のテーブルにも行き渡っていく。

 

ちなみにいえば鬼島という寿司職人の声は達也にそっくりだったりする。

 

寿司職人たちの掌心(たなごころ)を込めた手技の限りを味わいながらも、他の寿司も食べたいということで、話しがてら後ろに向かうことになる。

 

「今日はお前たち、チーム・エルメロイに負けたな」

 

「八岐怒涛の勢いで向かっていけとは言っておいたからな。それに『後々』のことを考えたんだよ」

 

最初に絡んできたのは達也であったりする。衛生面を考えてなのか3貫ずつ特殊なパックに包まれている寿司や盛り込み寿司の寿司桶を見ているのだが。

 

「ふむ。ちなみに言えば壬生先輩は中学剣道のライバルの声が聞こえていたそうだ」

 

「大久保 薫さん。確かに見えられていたな。何かエリカが入学初期に話していた評価よりも美人だったが?」

 

ウエイトが必要なスポーツではないだろうが、当時の写真などを少しだけみたい気分になるのだ。

 

「それじゃお互い―――腹減りを待たせているみたいだから戻るか」

「やれやれ。ゆっくり話も出来ないな。今日は」

 

本日の総合得点、総合成績は張り出されており、色々と反省することとか今後のことを考える必要があるのだろう。

 

それがあろうがなかろうが……。

 

―――須らく人間は腹が減るのだ。

 

「そして何より寿司である。とにかく腹いっぱい食いたいのだろう」

 

「キャー! セツナ!! ナイスなチョイスよ!!」

 

「普通に盛り込みを持ってきただけだよ!」

 

無理やりアゲなくてもいいので、ともあれテーブルにいる人間たちに配っていく。

ちなみに九亜と四亜―――リーナには甘い厚焼き玉子の寿司を追加しておいた。

 

怒るかと思ったが、どうやら気遣いは必要だったようだ。

 

そうして、自分の分を手前に置こうとした時に既に寿司桶一つがあったことで混乱する。

 

「あれ? 人数分持ってきたつもりだけど」

 

間違えたかな? と疑問を呈そうとする前に答えは横から来るのであった。

 

「いいえ、間違いではありませんよ。私の方でセルナの分を持ってきましたので」

 

いつの間にか刹那の右隣に少し狭いが、椅子が一つ増えているのだった。

 

「愛梨」

 

その椅子に座している少女は、三高のエースなのだったが……。

 

「狭いからほかに移ってもいいんじゃないかなー……とか思わなくもないけど?」

 

「まぁまぁ遠慮せずに、今日のMVP―――モーストバリュアブルプレイヤーを歓待したくて、ついでに言えばその勝負運を私に分けてほしくて、ここまで来たのです」

 

オタク(三高)の一条君や吉祥寺君も結構な成績だと思うけど? 女子ではヒカルや壬生先輩だってスゴイと思うが」

 

「謙遜なさらないでください。この九校戦で最大の勝運を持っているのは、アナタでしょうに」

 

言葉を放つごとに身体を寄せてくる愛梨に、どうしようもなくなる。

 

「イヤ、まだセツナには勝負があるカラ、勝手にラックを持ってかないでくれる?」

 

(剣呑な)リーナの言う通り、明日は男女ペアでのピラーがあるわけである意味、休みなしでの連日登板。

 

楽天ゴールデンイーグルスの田中将大が日本シリーズで、読売巨人軍相手に無茶な登板したようなものだ。

高いレベルのプレイヤーには『常識』(セオリー)は通用しない。

 

「実力だけでは勝負のアヤは決まらんが、というか明日は君一人じゃないだろ? 盾打ちの女子ペア競技ならば、君の後輩である光主タチエさんも来なきゃ不味くない?」

 

などと言って諌めるも……。

 

「もうっ! セルナってば女たらしなんですから、タチエちゃんにまで接待を要求するだなんて♪」

 

そういう意味じゃなかったのに! という反論の言葉を吐く前に―――。

 

「遠坂先輩のスケコマシー!」

「女ったらし!」

「三高の女を攫うチンギス・ハーン(アンゴルモア)か!」

「「「後ろから刺されろ!!」」」

 

などなど散々な言われようである。主に三高の七宝が囃し立てたわけだが、最後の言葉は少しだけ左腕が痛む気がしたのだ。

 

そんなわけで話は三高一年生 光主タチエに移るのだが……。

 

「生憎ながら、私は遠坂さんにあまり好意を持てませんので、そちらには行きません。一色先輩だけで歓待してください」

 

コウノトリのような赤い目で軽蔑するように見られたことで、何とも言えぬ居心地の悪さを覚える。

 

テーブルが近かったのが仇となった形だ。

 

まぁ愛梨をそういった目で見ていないのは目の動きで分かったが……。

 

「「「フラレた―――!!!」」」

「よくぞ言ったわ! 光主さん!!」

「あんまりこういうディスコールやめとけよ。ラッキー(幸運)が逃げるぜ……」

 

一番目は三高男子による大合唱『こんちくしょう』と思いつつも、『非モテ男子の遠吠え』と切り捨てておく。

二番目は、もうひとりの一色である翠子なのだが。

どうやら、ヒカルにやられたことによるテンションダウンは無くなったようで、明日の女子ペアのピラーは、問題無さそうだ。

 

そして三番目の言葉は魔法科高校のプリンスである。困惑した表情を見るに彼としても、どうしたらいいのか分からないという所か。

 

結局の所、押しのけることも出来ずに、いつもの如くハーレム系主人公よろしくなってしまうのだった。

本当、江戸前寿司の職人という硬派な職業の方々の前では勘弁してほかったのだが。

 

「……若旦那みたいな男子ってどんな業界(オールジョブ)にでもいるんだな……」

 

誰と比較されているのか分からないが、松田シェフのさみしげな独り言が耳に入ってしまうのだった。

 

「アナタはいつも、こんな感じなのですか?」

「まぁそうですよ……」

 

そんな刹那の様子に一家言あったのか七高の長谷先生……刹那の養母(バゼット)にしか見えない御仁が、厳しい顔で食後に現れて言ってくるのだった。

 

本当にこの人は何者なのだろうと考える。その来歴は……探ろうと思えば探れるのだろうが……。

 

(我が夫よ。この女は疑似サーヴァントだ)

 

先程まで寿司を堪能して『わんこそば』よろしく盛り込みを何枚もカラにしたモルガン(ヒカルと競っていた)が念話で言ってきた。

 

やはり……と思いつつも、七高生に呼ばれてそちらへと戻る長谷先生は―――。

 

「アンジェリーナさんへの愛を貫き通しているのは、満点としておきましょう。ですが浮気は良くないですよ」

 

「ムシロ略奪愛をやろうとしている『コッチ』を諌めてください」

 

「それは……私も昔、子持ちの聖職者に懸想をしてしまっていたので、何ともそちら(女性の愛)に関しては何も言えないのです」

 

リーナに対する返答は理不尽過ぎる! という想いを刹那は覚えたが、ともあれ困った調子で人差し指を突き合わせる様子に、こんな姿も養母にはあったのかもしれないと思うと、ソレを言うのは野暮に思えた。

 

「それでは。また」

 

そうして長谷先生を見送ると次にやって来たのは二高の光宣と桜井、そしてヒカルである。

 

「ようやく来ましたね。戦いの日が」

 

「ああ、だが既にトーナメント表を見た通り。決勝までお前さん方との戦いはない」

 

「上がっていきます。玉座で待ち構えていてください―――と言いながらも、ちょっと気になっていることが」

 

「なんだい? 作戦とかは教えられんぞ」

 

「百も承知です。聞きたいのは明日の試合のコスチュームに関してです」

 

真剣な目で問われたが、それに対して刹那は気負いなく応える。

 

「ソロでは少々お硬い衣装で通したが、四亜にもリクエストもらっちゃったので、明日はプリズマキッドの衣装でいかせてもらうさ」

 

言いながらどこからともなく白いシルクハットを出した刹那は、それを手に口元を隠す仕草を取る。洒落た仕草の効果は抜群であった。

 

「キッド! いや、刹那お兄さん!! ナイス!! ベリークールだよ!!」

「何かワタシみたいな言いようヨ!!」

 

四亜の興奮気味の声と様子は、もしかしたらばリーナの真似っ子なのかもしれないが……それを受けた光宣は……。

 

「嬉しいですよ。用意した衣装が無駄にならなかった」

 

果たして何を用意したのやらと思い、聞こうとする前に光宣はヒカルに担がれて連れ去られる。

 

「ちょっ! ヒカル!! 刹那は教えたんだから僕も教えないとフェアじゃない―――」

 

「ハイハイ。それは大変結構だけど僕の見立てでは―――」

 

ドップラー効果よろしく二高生たちも大会場から出ていく。

 

そのタイミングでエルメロイもお暇することにした。一応、『おみや』というわけではないが各自で夜食用の寿司もいただいたことで昔懐かしのサラリーマンよろしく、喪黒福造に誘惑される前に帰ることにするのだった……。

 

そんな様子を見ていた一高勢力は……。

 

「緊急ミーティングを開きましょう。このままでは色々とマズイですよ」

 

『『『『イエッサー』』』』

 

明日一日で潮目が変わらぬことをなんとなく察した中条会長に全員が静かに同意する。

 

前人未踏の4連覇という偉業を達成したいわけではないが、それでもこのまま『流れ』を『風向き』を『潮目』をエルメロイだけに持っていかれるのはマズイと感じたのだから、その反応は納得なのであった……。

 

 

 

 

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