魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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そうか、つまりサムライレムナントは……型月版『刃鳴散らす』ということだったんだな(爆)

伊織が武田赤音で、セイバーが伊烏義阿……そういうことだったんだ(だからどういうことだ?)

この辺りの元禄時代ってのは浪人が溢れて色々と由井正雪なんかが反乱起こそうとする前段階―――まさか……まぁシバレンテイストってそういうもんだけど、などと色々言いつつ新話お送りします


第371話『魔法の宴 ~3日目終了~2』

 

 

「結局の所、得点勘定が合わなくなるのは仕方ないですよ。トーナメントは一発勝負ですからね」

 

「けれど、何というかすごーく……ダメですよね」

 

「みんなチカラは十分に出し切ってますよ。くじ運の良し悪しも各々でしょう。ただ加点が低調な理由を強いてあげるならば一つあります」

 

 中条会長と司波副会長の会話を全員が聞いていく。決して責められているわけではないが、針のむしろ。なんせその原因はピリッとしない結果ばかりを出している人間たちにあるのだから。

 

 しかし、司波副会長がその原因を言ってきた。

 原因というほど大げさではないが、それでも現在の自分たち一高を縛っている原因は分析出来ていたようだ──それは司波副会長……司波達也も若干陥っていたことなのだから

 

「エルメロイ先生及び刹那たちは徹底的に『地力』を上げてきた。それこそが我々の低調の理由だと思われます」

 

「どういうことだ?」

 

 その達也の言葉に、九校戦全体のスペシャルアンバサダーで一高のスペシャルアドバイザーとして会議室に招かれたOBである十文字が聞いてきた。

 

「我々は多くの学校の生徒が所属しているチームエルメロイをある意味、侮っては来ませんでした。むしろ最大級の警戒をしていましたよ」

 

「むっ、それならば―」

 

「だが、その警戒が的外れだったんです。要するに、エルメロイが一高だけでなく他校の『弱所』を突いてくるのではないかという不信感から、対策を少しばかりズレさせていたんですよ」

 

 その言葉に既に競技を終えた面子とその関係者数名がうめいてしまう。達也も競技選手すべて、くまなく作戦を考えていたわけではない。いや考えていた連中も、呻いていた辺りそういう『不信感』は誰もが覚えていたのだろう。

 

 九校全てから生徒を集めてチームを作る。

 字面だけを見ればドリーム・チームの結成を思わせるが、逆だ。

 

 中核こそ刹那を中心とした国外組の面子だが、大半は九校で選考漏れした生徒たちを集めた『はぐれもの』たちなのだ。

 自校での選考落ちの生徒ばかりとは言え、それなりに対戦校(自校)の『生徒』の情報は持っているわけで、そこが不信感に繋がっていく。

 

「ふむ。そこに真正面から挑みかかるエルメロイに寄り切られて押し負けた。土俵際の粘りが無いのはそれだったか」

 

 ぐさりっ!! 十文字の言葉に、エルメロイの一人、上田武司に敗れた沢木が貫かれた瞬間だった。

 

(確かにあの時、タケシ君との戦いにある種の不信感を覚えていたのも事実だ。これは……ある種の心理戦を挑まれた形だからな)

 

 ベスト8をかけた戦いでやられたのは、沢木にとって傷となっている。次のペア戦でこの借りを返せるのは……。

 

(無理か。彼は男子ペアのピラーズに出場なんだもんな)

 

 悔しさを飲み込みつつ、次の戦いに向けて気持ちを切り替えるのだ。

 

「で、対策はあるのかしら?」

 

「真由美先輩。そんなものは簡単に見つかりませんよ……ですが、あちらが地力でのぶつかり合いを望むならば、こちらはあちらの弱点を突く。カットパンチで出来た相手の傷口……流血しているまぶたを狙う―それならば出来ますよ」

 

 策略戦に持ち込むということ、か。と全員が理解する。確かに去年の九校戦からそういった面はあった。

 特に説明をしている司波達也はそういう相手の陥穽を突くとでもいえばいいのか相手の想定外を繰り出す。

 

 要はルールの穴を突くことが多かったわけだが。

 

「……望む人間にはそれを教授していきましょう。ですが、バチバチにぶつかり合う真剣勝負に、あまり水を差すようなことはしたくないですね」

 

 今日の壬生とシオンの戦いは、ある意味では暫く破られないベストバウトだ。

 

 力と力、技と技、策と策……すべてが噛み合っていたのだ。

 平河はシオンが、壬生先輩を見ていないことを理解していたからこそあの戦いが生まれた。

 

 そう感じるからこそ、そういう策略戦……小賢しい戦いをするのは、どうにも波に乗れない要因になりそうだ。

 

 小兵の戦いをしろといえばそうなのだが……。

 

「ならば私の方から一つ提案を。司波副会長、あなたには最後のマジックフライトレースに『選手』として出場してもらいます」

 

「中条会長……」

 

「本当だったらば、もっと早くに言うべきでした。男女ペアのピラーズ競技もアナタと司波書記を入れて出場させていれば、この流れは少しだけでも変えられたかも知れませんが……登録リミットの関係上そちらはもはや無理なので、最終競技に出てください」

 

「つまり、そこでの逆転を願っていると?」

 

「そこまでは私たちが踏ん張ってみせます。このままチーム・エルメロイの独走を許すわけにはいきませんから」

 

 まだ新競技の得点配分がどれだけかは分かっていない。ましてや、どれだけの困難があるかは分かっていないのだが……。

 

「分かりました。当初は一高の定形に沿って節度を弁えていく気持ちでしたが、会長がそこまで言うのならば粉骨砕身しましょう」

 

 自分のような例が当たり前になると、いずれ辛くなる人間……後輩が出てしまうと危惧していたのだが、ここまで言われては出ざるを得まい。

 

 最後の出番(大トリ)を拝命した以上は仕方ない。少しだけ皆して安堵をしているのは嬉しいが、それでも少しの喝入れが必要だ。

 これだけでは持ち直せまいとして少々演じることにする。

 

「けどお兄様、よろしいんですか? 今までは刹那君と敵対することを少々避けていましたが」

 

「いや、よく考えてみれば、アイツにはムカつくことがあった……そもそも、だ。今大会でアイツは我が一高の留学生組全てを引き連れていったんだ。そりゃルールでそうだからとしても……一高の綺麗所ばかりか他校の美少女たち……主に海外の血がある子たちばかりを集結させていったことに男として憤慨するものは流石にあるぞ」

 

「当然、私たちも綺麗どころですよね?」

 

 怒り混じりの深雪の笑顔の圧に、圧されそうに成りながらも演技だと自分を信じさせて口を開く。

 

「海外美少女だと言っただろう。別に残った人間の見目が悪いわけではないことは分かっているさ」

 

 その言葉をシメとした瞬間、何となく主に男子を中心にしてとんでもないイメージという名の共通幻想が出来上がる。

 

 豪奢な衣装に豪奢な装飾具。主に大きな宝石が付いた指輪を10の指につけて、リーナを筆頭に多くの美女を傍に侍らす様子(各人の脳裏で人物に差異はあり)。

 

『暴れるモンスターあればとことんぶちのめし! 世界に輝くお宝(主に宝石)! 誰もが羨む見目麗しき美女を独り占め!!』

 

『大胆不敵! 電光石火!! 勝利はオレのためにある!!!』

 

 などという古今東西に居るステレオタイプオレ様系主人公な刹那(ちょーイキってる)を想像したことで、全員の脳裏に……。

 

((((あれ……なんだか……))))

 

((((すっげームカついてきたぞ……!!))))

 

 何気に一高にもファンが多い一色愛梨ですらアイツのハーレム要員。

 おまけに『わだつみ』というマジックJCのグループにも露骨に好意を示している子がいる。

 そして昨年の秋にフラれた北山雫は、怒りが有頂天。

 

 全員の心が一つになった瞬間であった。

 全員のBGMがCHAGE and ○○○○の「YAH YAH YAH」になった瞬間であった。

 

「では明日の出場選手を確認して、今日はお開きにしましょう──―私も早く紗耶香ちゃんと祝勝会の二次会開きたいんですからね」

 

 その言葉で一高の会議はシメに向かうのであった。

 

 ・

 ・

 ・

 

「十の数字が指し示すものは多くない。日本の十二支、ギリシャ神話のオリンポス十二神、仏教(ブッディズム)の十二神将、はたまた黄道十二星座──日本では朝の占い(morning Fortune)で一般的だな」

 

「では……僕らは、妹も、父も母も、祖父も…間違った存在なのですか?」

 

 目の前の教師の言葉に少しだけの憤懣を覚える。

 家を捨てた。

 家族よりも大事なものに全てを捧げる。

 

 そう意気込んでいても自分のルーツたるものに、辛辣な事を言われて黙っていられるほど遼介もドライではないのだ。

 

「間違った存在であるかどうかは分からんよ。ただ生み出されたものに『名付ける』段階で十神というのは少々な。研究所の数字に即した『字名』というのならば、それも仕方あるまい」

 

「……」

 

「だが、だからといって君たちの能力値が劣っている原因にはならない。ここ数日、十文字君とも話していたが、十研とやらの研究が『守護』『防衛』『守備』……『護る』(守る)ことに振り向いていたならば、それは『何か』を足すことで『十二』へと至らしめるもののはずだ」

 

「何か……」

 

「君が捨てたと嘯く『家族』──その繋がりこそが……」

 

 などとエルメロイ先生の授業を『遠隔』で見聞きながらも、遠上遼介に変化はないことを理解している。

 水鏡というもので、それを発動させていたモルガンのを見ていた形だが……。

 

「遠上遼介を取り返しに何者かの策動があると思っていたんだが、予想外に静かだな」

 

末端の構成員(アソシエイト)なんて、そんなもんじゃない?」

 

「そんなもんだけどな」

 

 西部開拓時代のガンマンからそう言われて、マフィアなど闇社会の人間というのは、魔術社会ともつながりが無いわけではない。

 

 そりゃそうだなと思いつつも、刹那の中にあるものが叫ぶのだ。何かが起こると……。

 

「女の子4人を侍らせて夜遊びとはいいご身分ね」

 

「なんてイヤミなサゲマンだ。なんでこんなことをしているかは分かっているでしょうに」

 

「そりゃそうだけどね……」

 

 アサシンを3騎のサーヴァントから救った白虎。その詳細は教えてくれなかったが、ある種の直感が働いている。

 

 調べた限りで今回の九校戦には外国勢力のろくでもない策謀が動いているわけではない。だが何かのよろしくないスカウト合戦みたいなものはあるようだ。

 

 その中に……仕留めそこねた周やその上にいるらしきジード・ヘイグを名乗る『グ・ジー』もいると見ている。

 

 そしてFEHRの死の教主もまたそういった渦中にいると見たのがUSNAなのだ。シルヴィアが大きなお腹を揺らしながらも持ってきた事案は、何とか何事もなく静かに終わらせたいのだ。

 

「シルヴィのためにもがんばらないと」

 

 まさかシンママとして育てていくわけがないだろう。誰が相手かは知らないが見つけたならば責任を取らせるぐらいはしなければならないだろう──。

 シルヴィアは自分達のお姉さんなのだから。

 

「遠上 遼介氏 関連に関してはそちら(独立魔装)の真田さんに一任されていたって聞いていましたけど、何で響子さんが?」

 

「ちょっと市ヶ谷の方に呼ばれたのよ。まぁFEHR関連でのアレコレなのね」

 

 成程、と思いつつ気配を探る。夜中の自衛隊演習場。何が目的なのかは分からないが、軍人以外の何者かがいる。

 

 直感を信じて──聖別武装である黒鍵を林の向こう側に投げつける。鉄甲作用という投擲技法を完璧に再現したそれが、木々ではないなにかに弾かれる。

 

 そもそも木々であれば、貫き倒すぐらいの力はあるのだ。

 

 よって―。

 

「ジェーン 先制射撃。 武蔵ちゃん 周囲を確認。モルガン 全体に補助魔法を」

 

『『『YES MY MASTER!』』』

 

 隠れていた気配はすでに正体がバレたことで隠さずに『突進』してくる。重々しい歩みは足先に伝わる振動だけで分かる。

 

(黒鍵が弾かれた感触から分かっていたが、どうやらパワーがご自慢らしいな)

 

 だが、サーヴァント程の力は感じない。それならば―もう少し強い―と思った瞬間。

 

 強烈な圧が増えた。これはマズイヤツと思ったのですぐさま指示を変更する。

 

「武蔵ちゃん!!!」

「こちらは私がやるわ!!! とんでもない圧! よほどの偉丈夫さんのようね!!」

 

 相手の『ステータス』を接敵する前から察した武蔵ちゃんの言葉に頼もしさを覚えつつも、さてどうしたものかと思う。

 

 動かずに迎撃しようと思っていたが、作戦変更で広い場所に―。

 

「アワワワ! まさか、こんなことになるだなんて―ケレド、ココまでフラストレーションが溜まっているのよ!!! やらせてもらうワ!!」

 

「「暴れたかったの(か)!?」」

 

 ―などと驚愕の事実が発覚するのだった。

 再従姉(はとこ)である響子も驚く事実だが、ともあれそういうことならば、刹那は付き合うことにするのだった―。

 

「んじゃ明日の前哨戦と行くか?」

「フフフ、こういう時にソウイウコト言えるセツナは、ワタシ好きヨ」

「基本的に俺はいい子ちゃんだが―タマには悪いこともやってみたい」

 

 鼻の下を人差し指で擦る刹那。彼が考える悪ガキスタイルなのかもしれないが。

 

((それは嘘だっ!))

 

 九島の再従姉妹が内心でのみ言うもそれは、木々を砕き、土を巻き上げながら現れた大男の咆哮で中断される。

 

「こいつは」

 

「バーサーカーのサーヴァント、ねっ!!!」

 

「────!!!」

 

 言葉ではなき咆哮(こえ)を上げながらやってきた『黒い長髪の偉丈夫』『全身を豪壮な鎧』で固めた姿。

 

 2m超えの大男に対峙する武蔵ちゃんに対して──―。

 

 反対に刹那はデカイ白虎の飛び掛かりからの人型(じんけい)への変化に対応した。

 

「横浜以来、だったか? きっちり殺したはずなんだがな」

「地獄行きの公共交通が満席だったものでな。乗らずに舞い戻ってきたのだよ」

 

 明らかな奇襲であったはずの方天画戟といつのまにか握られていた干将・莫耶(双剣)が鍔迫り合う。

 

 大亜の魔法師、人食い虎という殺し屋としての字名も持っていた人間。……呂 剛虎という男が若干どころか、かなり若くなりながらも刹那の前に再び現れたのであった……。

 

 

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