魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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マテリアルから分かっていたことだけど、何となく程度には想像していたけどさ。

―――しかも服装が学生時代の……もしも、これも含めてデミヤを止めるための算段だとしたらばキアラは性悪・極すぎだ。などと思いつつ新話お送りします。







第372話『魔法の宴 ~3日目終了~3』

 

 

 

 いきなり現れた死人。だが尋常ではない世界に生きる魔術師である刹那にとってはそこまで驚くべきことではない。

 

 だが、一つの疑問は浮かんでいた。

 

「実を言うと―――ルゥ・ガンフーの遺体は一度は国防軍で回収したんだけど、いつの間にか!!」

 

 攻撃の余波でまともに話すことも出来ない中、響子の言葉で成程と思いながらも攻撃を続行する。

 

 刹那は自分の周囲に円状に剣を配置。魔剣の城塞を展開。

 円陣を組んだ魔剣の列が回転を果たしてガンフーの接近を阻む。

 

剣弾(ソードバレット)星列奏者(スターアーツ)!!」

 

 上位宝具による幻想の円環は、ガンフーも流石に応じ切るにはマズイと思ったが……。

 

補助魔術(バフ)が掛けられたな)

 

 掛けてきたのは―――。

 

「リーナ!!」

「くらえやオラー!!!」

「なんかキャラが違くない!?」

「デース!!」

 

 以心伝心はいいとしても、いきなりな号砲一発の掛け声にツッコミを入れるも、金剛型戦艦(カラミティ・ジェーン)合いの手(銃撃)で、補助魔術を掛けてきたサーヴァントを燻り出すことには成功する。

 

「あいも変わらず粗雑なっ!!」

 

「ご自慢の戦車はどうしたんだよ? 王貴人どの」

 

 焼き払われた演習場の一角から獣が飛び立つように、チャイナドレスの艶美な女性(にょしょう)が現れたのだ。

 

(そういや親父は、モナコの一件の際に螺旋館所属で地元協会支部所属でもあるスパンコールドレスを着たぱっつんぱっつんな中華系美女に匿われたんだっけか?)

 

 炎のヴェールを背中にしながら現れた玉石琵琶精・王貴人という仙人のサーヴァントを見ながら思いつつ、相手の返答を待つ。

 

「貴様のサーヴァント、ランサー・長尾景虎によって失われたままなのでな。回復するにも時間がかかるのだ――――待て、ランサーはどうした?」

 

 流石にそこに着目するか。

 

 フェイカーのサーヴァントとして殺された時の記憶を持っているということは、再召喚されたわけではないようだ。まぁ程度次第ではあるがサーヴァントも記録という形で昔のことを知っているようだが。

 

 確認を終えつつも、答えることは1つだ。

 

「おトラは―――アルゼナルに行ったワ!!」

 

 おいマテ。

 

 刹那が口を開く前に、いきなりとんでもないことを口にしたのは リーナである。

 

「もはや、サーヴァント同士の戦いに飽きたおトラは、『私よりも強い(ヤツ)倒し(会い)に行く!』と言い残して、何か風雲昇り龍(ライジング)自由人(フリーダム)よろしく旅立ったワ」

 

「ぬうぅ。やりたい放題ストライクフリーダムということか!!! 隠者や妹者に乗るモテモテ男(アスラン・ザラ)もいるということか!」

 

「しかし、戦力に喪失は無いようだな―――いや、むしろ増力(ジリュチャン)している。しかも三騎のサーヴァントを同時運用しているか」

 

 そんな嫁(?)の悔しげな言葉を斟酌しつつ、こちらを測ってくるルゥ・ガンフーは油断ならない。

 

「アンタらが誰に使役されているのかは、まぁ察しているが、止めとけよ。せっかく拾った命をむざむざ失わせることもあるまい」

 

 傲慢極まる言葉が挑発でも何でも無く、ただの事実であることをガンフーは知っている。だが、それでも現在の自分たちは周によって生きながらえている存在。

 

 義勇忠孝など欠片も持てない雇い主ではあるが、それでも……。

 無言で構えを取るルゥ・ガンフーを見て嘆息。だが、次の瞬間には激突が始まっていた。

 

(魔宝使い……)

 

 バーサーカーを解き放ち、ルゥ・ガンフーへの支援としていた女は、少しだけ思う。

 

 彼に対してアプローチ、モーション……どちらでもいいが、USNAにいた際に、そういうのを掛けていたレナは……。

 

『ブランチ・ダビディアンのデビッド・コレシュ(教祖)の誘いなんて誰が受けるかよ。黙示録七つの封印が解けたらもう一度呼んでくれや。行くとは限んないけど』

 

 100年以上前の事件。1980年代の米南部で起こった武装教団の教祖と同等に扱われたことは非常に腹立たしかった。

 だが、それだけでレナと魔宝使いの距離は理解できていたのだ。

 

(リョウスケが捕らえられることは織り込み済み。……交渉の窓口は色々とあるものだ)

 

 まずは、バーサーカーで様子見をする。

 

 相手の女剣士はまさしく絶技繚乱すぎるが、絶技(アーツ)に対して剛力(バスター)は決して負けていない。

 土砂と木片が嵐に巻かれたかのように舞い上がり続ける激しさを遠目で見ていたレナは、総身を苛む痛みに耐える。

 

「やはりアナタではバーサーカークラスの魔力消費には耐えきれないと思うのだけど?」

 

 痛苦を耐えた様子は隣りにいる銀髪の美女をごまかせなかった。

 

「それでも私のような凡百のマスターが、魔宝使いに対抗するには、これぐらいはしなければならないのですよ……リズリーリエ」

 

 こちらを労っていることは理解している。だが、それはレナにとって何の意味もない。

 彼女を支えているものは、プライドである。

 

 FEHRの教主という立場ではなく、この世界のソーサラス・アデプトを善導したい、良き方向に導きたいと想っていたのだ。

 だが、一人の男がそれを色んな意味で台無しにした。自分たちが築いてきた土台を全てぶち壊して、『しっかりとした土台』、まさしく丈夫な石垣を作り、そこに豪壮な天守を備えた『名城』を備えるが如く……男は全てを覆してきたのだ。

 

 最大の壊し屋でありながら、最高の創造者―――。

 

(許せないんですよ……!)

 

 魔法に『宗教的情熱』を持ってはいけないのか? 

 得られたチカラにアイデンティティを見出してはいけないのか? 

 

 いろんな想いを綯い交ぜにしながらも、あの男こそが……。

 

 レナの想いが使役しているサーヴァントにも伝わったのか、幾度も巧剣と打ち合っていた豪腕が遂にセイバー(?)のサーヴァントのガンブレードを叩き折った。

 

「おわっ!? 折れたぁ!?」

 

 脆い刀ではないだろうが、その破断を予期していなかったサムライガールの驚きの声が響くも。

 

「けどすぐさま次を()れるのが、私のマスターよね!! これぞ愛ね!!」

「やすい愛だな!!」

 

 響く魔宝使いの言葉で、見るとサムライガールの手には既に業物の中華刀が握られていた。

 その中華刀はレナのバーサーカーの拳と渡りあわせていた。

 

「むぅ、あのサーヴァントが握ると干将莫耶は、ああいうふうに変化するのね。興味深いわ」

 

「しかも衣装まで変化しているのですが……」

 

 遠見の術で、サーヴァント戦と周の手先と刹那の戦いを見ていた2人だが……。

 

「―――モルゴース」

「―――お嬢様!!!」

 

 至近距離にやってきた脅威に気付けず、反応したヘラクレスに防御させてしまった。

 

 黒い魔力の波……。ブリテン由来の真エーテルに近いそれが、ヘラクレスの肉体を痛めつける。

 

「巨大な霊体があると思えば、まさかギリシャの大英雄とはな。憎きアルトリアの宝具の1つマルミアドワーズの元・所有者よ。お会いできてそれなりに光栄だ」

 

コルキスの王女(メディア)もそうであったが、王族の姫(ロイヤルプリンセス)というのは色々と……苛烈にすぎる―――」

 

 夜空にふよふよ浮かびながら、こちらを睥睨するモルガンに汗を浮かべるは、似たような知人を知っているからだ。

 

「ヒッポリュテのようなアマゾネスクイーンでなくて申し訳ないが、その生命(いのち)

 ―――この葬送のモルガーンが貰い受ける」

 

 護身の杖(バルマーロッド)というには、あまりにも凶悪な刃が、石突にさえついたものを振るうモルガンの攻撃は苛烈を極めていき……。

 

「があああっ!!!!」

「レナ・フェール!!!」

 

 やはりバーサーカーの魔力消費に彼女の身体が耐えきれるわけが無かったのだ。如何に魔法師としてちょっとばかり稀有な素質があれど、動かすべき車(サーヴァント)に対して供給できる燃料が、サイオンでは彼女の負担は通常以上だ。

 

(キャスター辺りにしておけば良かったのに)

 

 剛力体躯のバーサーカーは、ダメージこそ負っていないがその一挙手一投足だけでも魔力消費が大きすぎるのだ。

 

 ハイオク燃料で動くべき車を『軽油』で動かしているようなもの。そんなわけで……。

 

「周の手勢は逃げ出している。私たちも退き時よレナ」

 

「ですが……」

 

「刹那と一当てしたいというアナタの意向を聞いたわけだけど、アナタがその調子で、そのざまじゃあね。場合によっては私たちは刹那がさらなる戦力追加で袋叩きにしてくるかもしれない」

 

 その言葉に少しだけ考えて、こちらを虫けらのごとく睥睨してくるブリテンの魔女にして妖精國という異聞帯における女王の姿を見てから―――。

 

「退くわ。遼介は自分で自分の面倒くらい見られるもの……」

 

(雑兵にそこまで心を割くだなんて妙ね)

 

 沈痛した表情のレナの目的がリズの弟との戦いだと想っていただけに驚くも、逃げるとなれば早かった。

 

 霊体化を果たして、バーサーカーを戻した彼女に触れながら、転移をリズリーリエは果たす。

 

(トレースは……出来そうにないな。成程、あの娘はホムンクルスと人間のハーフか)

 

 人間(ヒト)にしては、随分とレベルの高い『転移術』を使ったと想ったモルガンだったが、トリックさえ見破れば特に思うところはない。

 

 ただブラウンヘア(茶髪)の娘の方は捕らえたかったものだ。どうやらあちらの方がマスターの懸念事項だったのだから……。

 

「ご苦労さま。いたのはリズリーリエか」

 

 合流してきたマスターに駆け寄るのは忘れない。

 

「失態です。私はあの女を即座にふん縛るべきであった―――よって撫でられても嬉しくないのです」

 

 などと言いながらも小さい姿になり『ふふん!』と得意気なモルちゃんの頭をなでてあげるのは忘れない刹那であった。

 

 呂とフェイカーたちの他に襲撃を掛けてきた下手人は、やはりレナ・フェールとリズリーリエである。

 

「今更ながらサーヴァント戦は凄まじいわね……」

 

 刹那に遅れながらも演習場の奥にやってきた響子が、そんな『当たり前のこと』を言い出すのに苦笑しながらも、現れたのはやはりFEHRの『教主』であった。

 

「ミスタ・リョウスケを救いにきたのカシラ?」

 

 モルちゃんの記録映像を見ながらリーナと共に考えるが……。

 

「あの女が雑兵にそこまで心を割くだなんて考えにくいが」

 

 だとすると、遠上遼介とレナ・フェールはかなり深い関係なのかもしれない。十文字アリサにとって少々無情なニュースである。

 

「今更だけどFEHRってどんな組織なの?」

「魔法師が中心となって組織したブランチ・ダビディアン 教主が最初からデビッド・コレシュ」

人民寺院(Peoples Temple)の魔法師版ともいえるカモ」

 

 響子の何気ない質問にけんもほろろに答えているように思えるも、実はこれは的を射た答えだったりする。

 日本の国防軍も流石に外国の魔法師のカルト団体よろしくまでは情報として知ってはいないようで、少しの説明をしておく。

 

「じゃあ彼らは武力闘争も辞さない集団なわけ?」

「そうですよ。ただ一応、彼らも魔法師の団体としては合法ではあるんですよ。まぁ市行政に認定された程度なんですけどね」

 

 人間主義の団体―――いわゆる『起源覚醒者』(ヴァンパイア)たちへの脅威などからも互助団体として認められた程度なのだが……。

 

 その動向は注視されていた。そして、結局の所は最近ではヴァンパイアのまとめ役との協調に走ったのだ……。

 

 何のための団体設立だったのか? という疑問をメンバーが抱かない辺りは信仰心の強いことである。

 

 反対に人間主義側の信徒たちがどういう気持ちなのかは不明ではある。

 

 しかし、英国に赴いた際にモードレッドから教えられたことが正しく、そして人間主義者全てが非魔法師だけで構成された団体でないことは、あの1年時の最初の事件……八王子クライシスのブランシュの人員の様相から分かりきっている。

 

「人間主義を標榜する人々がヴァンパイアライズ(起源覚醒)なんて稚拙な真似をしなければ、こんなことにはならなかったんでしょうけどね」

 

「魔法師を打倒・対抗しようと思えば、それぐらいの手法は採用しちゃうのかもね……」

 

 魔術髄液の中には、そういった簡易なものは多い。

 

 獣性魔術そのもののように魂や霊体に働きかける高度なものではなく、もっと原始的な──人間の脳に直接訴えかけるタイプの霊薬。

 

 その手の霊薬は、素養さえあれば最低限の訓練で使えるのが売りだが、そこらの麻薬が裸足で逃げ出すほどの中毒性と依存性を持ち、使用者の体も精神もあっという間に貪り尽くしてしまう。

 

(実際、沙条愛華がブランシュのメンバーに施したのはそれに近いよな)

 

 もっともあの人ならば効率的にヒトを改造するので、一番強化の深度が深かった司 一 氏が、とりあえず精神科病院ではなくムショ行きに出来たのは、魔術髄液の亜種では出来ないほど高度なものを行っていたからだろう。

 

「最初はKKKみたいな非魔法師の団体から自分たちを守ろうと互助団体を結成しておきながら、先鋭化を果たしてブランチ・ダビディアン、人民寺院みたいなカルト宗教も同然になって、結局の所―――その非魔法師の団体とも協調・協力関係が結ばれて……敵味方の移り変わりが目まぐるしすぎなんやけど!!!」

 

「俺もそう思います」「me too!」

 

 額に手を当ててため息突きながら、そんなふうに言う国防軍の美人士官(サゲマン)に同意しつつも、世の中そんなものだ。

 

「けれど……そうなった原因はなんとなーく刹那君にあると思うのよね〜……」

 

ジト目で恨みがましく見てくる響子に対して……。

 

「そいつはゲスの勘ぐりです」

「This is petty-minded!」

 

 第一の獣の死が招いたものが巡り巡ったというならば、たしかに『責任』は刹那にあるかもしれないが『原因』という意味でいうならば、既に導火線に着火はされていたのだ。

 

 何処かで破裂はしていたのだ。古都で騒動を起こした姉貴のせいで実家に帰りづらくなった響子に少しの同情はするが、それ以上は心の贅肉なのだから。

 

(まぁここの戦いの様子が遠上遼介に感づかれた風ではないが、一般観客に紛れこませて接触するかもな)

 

 だが、その目的が分からない。見たままならば、教主レナは一番の信を置いている彼を助けに来たとも言えるかも知れないが……。

 

 明日も十文字OBと七草OGには監視役として着いていてもらう必要があるかもしれない。

 

(だが、接触を絶ったとしても彼はどうやってもあの教主の元に戻る気がする……)

 

 洗脳という厄介な「魔法」を解く術を現代でも中々持てていない人類なのだ。

 

 ああいう所属・退会は自由で『信者の自主性』とやらを尊重しつつも、「自分たちは選ばれた存在だ!! 終末世界を生きる戦士だ!!」などと叫び、自分たちを誇大に定義する連中は厄介なのだ。

 

 そういう組織は強固な繋がりを持ちやすいのだから―――。

 

「本当にブランチ・ダビディアンなんだよ。FEHRという組織は」

 

 並行世界を観測する魔宝使いのうつろな笑いと皮肉げなセリフが、死神の声のように夜の富士に溶け込んだ。

 

 そんな夜中の闘争など知られたり知られなかったり、察するもの、察しないものがいても……九校戦大会四日目は始まる……。

 

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