魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第374話『魔法の宴 双魔死闘編2』

 

 始まった大会四日目。一番盛り上がるつらら競技のペア戦。

 今年より始まったダブルス競技の中でも注目度は高いだろう。

 魔法競技におけるダブルスというのは普通のスポーツ競技とは少々おもむきが違う。

 

 パッと思いつくだけでも2人組での対決を行う競技といえば、テニス(硬軟)、卓球、バドミントン、ビーチバレーなどが主だろうか。ボールとシャトルの違いなどはあるだろうが、これらは『返球』することでポイントゲットをしていく競技だ。

 

 さらに言えば卓球だけは、返球は選手が交互……同じ人間が連続して相手の球を返すことは許されない。

 

 そう考えると、アイスピラーズ・ブレイクではなく、似たような競技であるクラウド・ボールの方が良かったかもしれないが……魔法という技法を使う以上、既存の競技種目にとらわれてはならない。

 

 要するに既成概念を壊してほしかったのだが。

 

「何とも普通の試合ばかりだな。面白みがない」

「先生、まだ男女合わせても3試合しかやっておりませんよ。その見立ては少々、早計すぎやしませんか?」

 

 老人の嘆きに対して、VIP席にいた元・弟子である男としては何とも言えぬ感情を持ってしまう。

 

 確かに老人……九島烈の言う通り、ここまでの試合全てが『普通』だった。互いの『役割分担』を理解した上で、攻撃と防御を分担していたのだから。

 当然、一本調子ではどこかで付け込まれるから変化も着けてくるのかもしれないが、概ねここまで3試合、勝った方は特に何もない安パイな戦いであった。

 

(別に奇襲や奇策を用いるだけが戦いではあるまい)

 

 地力が上ならばそれで以て戦う。奇襲・奇策というのは地力で劣っているものが優位なものに挑む際の撹乱戦でしかない。

 有名な例を上げれば「桶狭間合戦」があるだろう。雨降りの中、休息していた今川義元(総大将)狙っての駆け抜け。

 

 この行動は動機、降雨の有無、今川の油断の有無、今川の軍団・家臣団としての脆さなど諸説あれども……この一回のジャイアント・キリングで、今川は殆ど戦国大名としての権威を損なったのだ。

 

 だが、それとは別に師匠(九島烈)が求めているのは、2人だからこそ出来るユニゾン。

 あえて定義づけるならば、相互協力型(ジョイントタイプ)のマギスキルということなのだろう。

 領域の重ね合いによっては、魔法の不発動ということもあり得る業界の常識を超えたものを……。

 

(古式ではそういうものが普通らしいが)

 

 物理法則への改変のみに対応して『自らの世界』のみを表出させる現代魔法に慣れきった現代魔法師に、それは少々難しいだろう。

 まぁ……例外的に我が娘である双子のような例もあるが、あれは同一の領域……基盤を持つからであるが。

 などと双子のことを考えた時に、老人の背後に立つ……3人の見目麗しき女性に目を移す。

 その3人の見目・容貌はかなり似ていて、三つ子の姉妹かと思ってしまうほどだ。

 

(サーヴァントなんだろうか……)

 

 だが、そういった感覚を覚えない。となると何かしらのドールということになる。

 

「最近、私もめっきり老け込んでいるのでな。世話役を雇ったのだよ」

「そうですか、ご自愛してくださいよ。いくらご当主を譲られたとはいえ、先生はまだ日本の魔法師界に必要な方なのですから」

「刹那に九研を襲わせるように仕向けておきながらよく言う」

 

覚えてらっしゃると思いつつも、弘一としても言い分はあったりする。

 

「あれは結果論でしかないでしょうよ。状況だけを見るならば、周なる中華道士がルーラーを奪取しようとしたのを阻止したのですから。私及び四葉 貢どのが政治筋から依頼されたのは、『周公瑾』なる男の捕縛及び抹殺です」

 

「物は言いようだな」

 

 怒ってらっしゃる。と感じつつも、師の大事業を邪魔したのは事実なのだ。

 けれど言っておかなければならなかったのだ。

 誰かの責任ではなく、逆らえぬ流れがそう導いたのだと……。

 

「マスター・レツ、ネクストゲームだ」

 

 VIP席の大型モニターには、今年度の試合の中でも一番人気が高いチーム・エルメロイの選手と五高選手との戦いが始まろうとしていた。

 

 ちなみにエルメロイの選手はどちらも『外国人選手』であり、さらに言えば國が成立してから戦争ばっかりやっていたドーバー海峡を挟んでの対立国家……。

 

 ようやく両国がそれなりに手を取り合えたのは、近代のナチズム、共産主義、社会主義に対する共闘からだ。もっともその時代になっても意見の相違はあったのだが。

 

 ともあれ―――英仏連合の登場である。

 

 そして、その衣装は中々に際どくて、娘を持つ身としてはこんな格好をしてほしくないなぁと思いつつも、逆に『恋人』には、たまに『こんな格好』してほしい悲しい男の性を七草弘一は認識するのだった。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

「なんて格好してくるのよ……チーム・エルメロイ!!」

「魔法師としてだけでなく、女としても圧倒してくるのか!?」

 

 五高の女生徒たち……レトロな帝国陸軍の将校のような格好。全体的にブラウンカラーのそれに赤を配した軍帽を被った子たちは圧倒されるのだ。

 

女魔術師(ソーサリス)ってのは昔っから着飾らなければならないのさ!! まぁ赤いレースクイーン衣装ってのは、かなり攻めているか……」

 

「我ら英仏ソーサリスこそがチームエルメロイの赤備え軍!! ユキムラ・サナダ(忠義の武士)よろしく戦わせていただきますよ──―!!」

 

 赤黒のレースクイーン。金髪白人の美少女が着るとここまで似合うものなのかと、驚かされるものがあるのだ。

 

 少し戸惑い気味のブリテンソーサリスに対して、小型の旗……チェッカーフラッグかチームの団旗らしきものをブンブン振る、満面の笑顔のフランクソーサリスの図。

 

 胸元を強調して見せつけただけでなく生足を見せたり、太もも強調の黒ストを履いたり。

 全体的に肌があちこち見えたホットセクシーな衣装は、正しくレース場の華であろう。

 

 なめやがって、という想いが五高側に生まれる。

 

 魔法先進国とも言える日本の魔法師に、英仏という欧州連合の遺物……魔法後進国が勝てるものか。

 

 そりゃSAWとシールダーでの戦いっぷりは、事前に見ているが、それでも……。

 

((真田丸で有名な真田信繁は、最後には大阪夏の陣で敗れ去っている!!))

 

 その『史実』を知らぬジャパン戦国カルチャーにかぶれたバカ女どもが、という想いで挑みかかるのだった。

 

 スタートランプが点灯していく。

 高まる力。

 2つの櫓にいる四人のソーサリスたち。

 その眼前にはソロよりも多い数の氷柱。

 

 そして解き放たれる術の限り──。

 

 五高側は当然、防御と攻撃を分担する。

 オーソドックスである。セオリーである。

 

 だが、やはりエルメロイは違った。

 

「その脆い防御術では『黄金のトゥルビヨン』に抗えませんよ!!」

「くっ!!! なんてことよ!」

「おらっ!! 喰らいなっ!!!」

「えっ!? うわっ!!」

 

 レティが放ったらしき術……黄金のトゥルビヨンとやらは、五高の氷柱の中心にて何度も金色の大渦を発生させて、氷柱へ掛けられた防御術を砕きながら氷柱へと物理的衝撃を与えていく。

 

 さながら竜巻が平面状に発生しているか、回転式カッターの運動が発生しているようなもの。

 

(渦の中心で槍など長物を何度も振り回しているかのような動きだ)

 

 実際、それに類した行動を達也は見てきた。レティの持つ聖処女(ラ・ピュセル)の旗。それを槍のように扱う姿を……。

 もっとも打突武器というよりは薙ぎ払い、叩く、振り回すという動作が多かったわけで、そういうことなのだろう。

 

 そしてそれを支援するわけではないだろうが、英国騎士が上方より魔雷を落としていく。

 名前は特にないだろうが、雷霆術──リーナや光宣など九島家の使うスパークとは違い、レッドのは朱い閃雷となって放たれる。

 それがアーサー王のコピーとして作られたからなのか、それとも叛逆の騎士モードレッドとして完成してしまったからか、はたまたブラックモアの魔術ゆえなのかは分からないが……。

 

「ともあれ降り注ぐ雷は、五高側の氷柱を砕いていくか」

 

 だが、五高とて反撃を行っていないわけではない。

 

 共振破壊・地雷原など振動系列の術でエルメロイ側の氷柱を攻撃している――――しているのだが、その効果が中々発揮されない。何か見えぬ壁で押さえつけられているかのように、効果が薄いのだ。

 

 ペアピラーズの本数は十八本。流石に去年の新人戦決勝でのように二四本という倍での数の戦いでは流石に時間がかかりすぎると考えたのか、どうなのかは分からない。

 用意するにも時間がかかるからだろうか。

 

 それはともかくとして、十八本の氷柱の1つでも砕けるかと思うのだが、中々に難儀だ。

 

(あれだけの干渉力を持った存在が、魔法を解き放っているわけだからな)

 

 だが、それだけの理屈ではないとも思える。

 そして何より、ここでもエルメロイの非常識が披露されていた。その事実に達也以外に気付いたモノが、女子更衣室にいた…。

 

 

「つまりあの二人は防御術を使っていないってこと!?」

「見れば分かる通り、レティとレッド……どちらも攻撃一辺倒ですね」

 

 ピラーズの衣装の用意……振袖の着付けをしながら千代田と雫は言っておく。

 

「それとなく聞いたんですけど、チーム・エルメロイでは『やりたいことやったもんがち』で、選手の好きなようにやらせているそうですから」

 

 この場合、好戦的過ぎる2人がどっちも『防御』なんて担当したくないと言うならば。

 

 ―――両方、攻撃(オフェンス)でいいよ―――

 

 という風な会話がなされていたに違いない。

 

「相変わらず非常識なことばかりやるわね……私たちなんて、干渉領域の重複や連携で四苦八苦している中、そんなフリーダムすぎる作戦なんて」

 

 呆れるように、もしくは感嘆している―――とは思えないが、頭を抑えている千代田の着物の帯を締めておく。

 

「これはレティシアとモードレッドだからこそ取れている作戦ですが……概ねエルメロイの基本的なスタンスですから」

 

「地上で暴風の渦を発生させ、上方から魔雷を落とすか。参考にはなるけれど、私たちでは不可能よね」

 

「ただ勝ち進んでいけば、どこかでは当たります」

 

 対策した所でどうにか出来る敵なのかといえば……実を言うと雫には『あった』。

 

 それは雫なりに、今まで刹那の戦いについて行けなかったことに対する後悔から生み出した、1つの秘術。

 四月の百舌谷騒動からツインエルメロイに相談して、実になったものであるのだが……。

 

 それを披露するというその場合、練習時から譲ってきた(立ててきた)千代田(センパイ)の攻撃権を奪う形にもなるのだが。

 

 そんなわけで、少しだけ悩みながらも、チーム・エルメロイの『赤備え』たちは順当に勝ったことをモニターの映像で理解して、自分たちの出番が近いことで臨戦態勢を敷く。

 

(刹那、私はあなたにフラれた……けれど、だからといって……あなたに関わることをやめるとは限らないんだよ)

 

 そんな内心でのみの決意を固めて北山雫は戦いに挑むのであった―――。

 

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