魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
「セツナ──♪ ヴィクトワール!! 勝ちましたよー」
「先ずは一番槍の役目を果たさせてもらったぜ」
女子ペアピラーズで一戦やってきたレティとレッド。その姿は中々に色艶溢れるもので、これがエルメロイの赤備え……真田丸かと感心しつつ。
「鼻が伸びてるワよ!」
「しゃーないだろ。こんなセクシー極まる衣装で美少女が近くまで来ているんだから」
これで反応しないような男の方がどうなんだということである。然程の時間の戦いではないが、汗を掻いたからか性的な匂いまで感じるのだ。
「さぁて、アタシらは一戦やったからよ。会場は別とは言え、温めておいたんだ。頼むぜキャプテン・セツナ」
下から覗き込むように見てくるレッド。ドギマギするとまでは言わないが、中々に挑発的な行動である。
「当然だ。何よりマイハニーのようやくの初陣だからな。プロデュースさせてもらうさ」
「そこが理由かよ。まぁいいけどよ……」
いいとか言いながらも表情から不満は隠せないようだが、それでも戦いの理由としては、そんなものがあってもいいはずだ。
「英仏から来た真田丸が報いてくれたんだ。それにも答えるさ」
特に犬伏の別れなどない真田兄弟のごとき2人が戦ったのだ。それに恥じない戦いはしておこうと思うのだった。
テンションがアガる英仏のソーサリス。その後にアナウンスが入る。
『──20分後、男女ペアピラーズ第一試合が始まります』
出陣の時が迫る。
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「「はいだら──!!!!!」」
「三高は、どんな掛け声でやってきてんのよぶばあああ!!!」
四高の選手。1人を潰されて孤軍として戦っていた女子が三高の女子ペア……一色愛梨・光主タチエの組によって潰された。
正しくパーフェクトゲーム。持ち手と肩当ての3つの盾にヒビ1つないゲームを前に、誰もが絶望と歓喜の両方の感情に支配されてしまう。
「お見事です。パラディン・アイリ」
「──あなたもですわ。シールダー・タチエ、ご助力感謝します」
ドクターマジックで連れて行かれた四高たちを見送ってから後輩の言葉に労いを返しておく。
とりあえず一回戦を突破することは出来た。決して力負けする相手ではないが、油断は禁物であったのだから……。
(とはいえ、やはりタチエちゃんは……何か神秘分野のチカラを宿している)
パートナーであり後輩を疑うようなことはしたくない愛梨ではあるが、この少女のチカラの根源がなんであるかは確かめたかったのだ。
そんなわけで、選手控室に戻る。その先には次の試合あろう一高の千葉・壬生のペアがいた。
まだジャージ姿だが、こちらの帰還にそろそろかと動き出した。
「昨日の優勝者と準優勝者がいられたとは」
「私はかなり九島さんに対してミソがついた優勝だったんだけど」
「ついでに言えば私はレティに
同時優勝を嘆く女と準優勝という結果にムスっとする女。
その様子がこちらに対するある種の油断を誘うためのものということも考えられるが、取り敢えず他校のことにそこまで突っ込まないのがマナーというものだ。
唯一、一色愛梨が突っ込む他校のこと他校の生徒とは。
『さぁアゲていこうか! 魔法怪盗プリズマキッドと!』
『怪盗魔女プラズマリーナのマジックイリュージョン!!』
2人の男女ペアのキメッキメのポージングとセリフ回しが控え室のモニターに映し出される。
『『
二人乗りの櫓を存分に使い、決め口上を終えた2人の様子に会場が熱気を上げる。
愛梨たちは見ていなかったが櫓に上る前の演出も見事だったのだ。リフトを使わず閃雷と共にリングインしているがごとし様子が舞台への入りを完璧にする役者のごとしだつたのだから。
そんなLOVELOVE怪盗カップルの姿に、いつものごとく激怒するかと思っていたジト目のタチエ。
彼女の慕情の深さを知るがゆえに、そのパフォーマンスを目にしての行動を予測できていた一高ペア。
しかし、予想に反して愛梨は、ここ1年で目に見えて豊かになってきた胸に手をやりながら、落ち着いて口を開く。
「まぁ分かりきっていたことですからね。ショーマンシップを解する遠縁のフィンランド貴族に薫陶を受け、魔法少女もどっかではなさっているセルナのお母様を考えれば、このような素晴らしい演出は当然なのです」
我がことのように刹那に対して語る一色愛梨だが、その一方で全くリーナに対して触れていない辺り、その心が何となく理解出来るのだった。
「セルナの怪盗っぷりに私の心は盗まれっぱなしです。彼の全ては大きすぎて、私の胸ポケットには収まりきりませんわ♪」
そんなリーナほど乳属性がMAXではないくせに見栄を張るのはどうかと想いつつも、やはり一色愛梨が言う胸ポケットとは『そっち』のことだろうと思えた。
胸に手を当てて陶然とした様子であるのだし。
そんな訳で、わざわざ藪をつついて蛇を出すことはしないほどには弁えていた一色他三名の女子は準備をしつつも、モニターの試合に注目をするのである。
† † † † † † † † †
昨日、ソロで優勝を決めたからとチョーシに乗っているなと感じる──―。
「などと侮った感想を抱けば、食い破られるのはオチだわな」
「慢心を買いかぶっても負ける可能性の高い相手、ならばその心は封印してけっぱろう」
北海道にある第八高校出身の「島本」「荒川」の男女ペアが向こう側に居る怪盗ペアを見据える。
まじっく快斗、怪盗ジョーカー、怪盗ドラパン……多くの怪盗は、多くの偉大なる創作者の脳内から世の中に生み出されたのだ。
「いや、なんで小○館縛りなんだ。怪盗セイントテール、怪盗ルパン伝アバンチュリエ、金田一少年の事件簿の怪盗紳士も入れて差し上げろ」
そんな風に言いながらも、そんな魔法怪盗に対して八高のペアの衣装は……。
明鏡止水の心を持つ赤マント、赤ハチマキの男
失った生身の体を求めて弟と旅をする錬金術師
どちらも赤い衣装であった。
そして見覚えはありすぎた。
お互いに着飾っただけのチカラは備えている。
((全力で挑戦させてもらうさ))
その無言での言葉を受けながらも刹那とリーナは、チームに勢いを着けさせるためにも、ド派手な勝利を画策するのだった。
ランプが点灯していく。
進発の時を待つ競走馬の気分でいる。
足を溜める馬のように魔力を溜め込む。
そして──
スタートと同時に──
「……意外だな」
「意外とは?」
「いま、あのフィールドではリーナの術が島本・荒川の陣に押し寄せようとしている。刹那は何もしていないな」
見える限りではと後に付け加えつつ、試合の様子をモニターで妹と共に確認する。
「島本と荒川、こいつらもダブルオフェンスのようだな。ったくディフェンスをないがしろにするだなんて、どうなんだ」
「お前がそれを言うか」
何故か
エルメロイレッスンの教導もあって、入学時よりも上達してそれなり程度には『チョキ』も『パー』も出来たが、流石に戦術級魔法を防御出来るほどの広範囲な
ディフェンスに定評のある十文字こそ、この問題には切り込むべきだと思うのだ。
「俺のことはいいんですよ。問題は出来る奴らがそれをやらないことですから」
「まぁ一理はあるか……」
しかし、スタンダードな戦術ばかりでは、どこかで食い破られる。転じて、それこそが新たな戦術を生み出すのだから。
(もっとも遠坂の術は何だか分からんがな)
何かをやっていなければ、こんなことにはなっていまい。まさか本気で恋人におんぶに抱っこな状態を是とするタイプでもあるまいし……。
そうこうしている間にも八高側の氷柱が3本砕けた。アンジェリーナの振動圧が加わった形だ。
その際に何かの『結界』で固める様子もあったのだが……その術は、アンジェリーナから放たれていた。
マルチキャストにしても達者過ぎる──というか……。
「何だかクドウの姿が変わっていくような気がするんだが……」
「ええ、俺にもそう見えます。そして、その姿は刹那のお袋さんの衣装だ」
「怪盗といえば変装ないし変身ですもんね」
正確に言えば、遠坂凛を依代とした神霊サーヴァントの衣装が、ブレるように重なるようにしてリーナを変えていく。
疑似サーヴァント的な術式は、確かクラスカードを用いないと中々に難儀だったと聞くが……。
「そうか、そういえばリーナはブリテン島での戦いでも、刹那の灰色の魔眼でドレスアップしていたな」
「あとで聞きましたが、術式名は『Over the FANTASY』だか『Shaman king』だかと言うそうです」
しかし、あの時は冥界神エレシュキガルだけだったのに、今回は天の女神イシュタルすらも憑依させている。
「これも1つの戦術だな。相手のステータスを上げることで、最大戦力を作り出す。単純な防御と攻撃の分担ではない──」
「なんだか一昔前に流行ったライトノベルやコミックみたいですね。サポートスキルを持ったパーティーのメンバーが、実は超有能であったのに
「この九校戦でのアイツが置かれた状況に対する皮肉にはなっているか……」
深雪の言葉にそんなことを思うが、そんな創作物とは逆で、一高全員は別に追放したかったわけではない。むしろいてほしかったのだが……。
ただ一高での教員 紀藤先生辺りは『怪しい』と睨んでいる達也なのだが……。
仮装行列を進化させて、高度な『変身魔法』『変身魔術』に進化させたリーナ。
その攻撃は達者なものだが、決して島本・荒川も負けていない。
リーナの攻撃が脅威と分かると徹底してのディフェンスを張る。雨あられと放たれる黄金の魔力矢……去年は刹那の十八番であったマアンナの攻撃が氷柱のヒット範囲から逸らされていく。
どうやら素の干渉力では2人も負けていない。だが、このままでは千日手でないかと思った時に……。
島本・荒川の反撃が始まる……。
「まさかニブルヘイム!!」
「それだけじゃないな。何かの熱波のような攻撃も始まろうとしている」
熱の±を双方向で『ぶつける』。
深雪のインフェルノとは違って、冷凍領域を自陣保護ではなく相手の氷柱を襲う冷気として使う。
ちなみに達也の目には冷気を放つ荒川の姿がデフォルメされた
暑苦しいほどに熱波を放つ島本の姿がラグビーのヘッドギアを着けて赤いジャージ姿の漫画家に見えたりするのだ。
お互いの干渉領域が完全に重なっていても、ある種の相克が起こっていないのは──。
「心象風景の共有化……恐らく2人に共通している出身地、北海道で照応させたか」
「なんだか印刷所の社長子息と大農牧場の貴族との違いぐらいありそうだがな」
都市部と農村部の違いを十文字は指摘するが、どっちも廃業したものはあるっぽい。
想像でしか無いが複合書店と農場。
だが、どちらも世界的寒冷化で多くの艱難辛苦を乗り越えて、玉になってきたであろう一角の人物たちを見てきた北の大地の人間。
その苛烈なまでの自然の驚異と神威のごとき畏れを抱くほどの厳しさが場に吹き荒れる。
「「これぞ北の大地の再現術!! 『大神封印領域GOLDEN KAMUY』!! 」」
複合術に名称が付いた瞬間であった。
八高精鋭の放つ北の大地の重さ……積み重ねた歴史が、エルメロイの陣を襲う。
少しばかり難儀するリーナを見たからか、キャプテン・エルメロイが遂に動き出す。
「セツナ!
「そうするかい!!」
今まではリーナの『ドレスアップ』だけを担当していた刹那が動き出す。
ステッキ……大きな宝石を頭に象眼された魔術礼装を振るって
まずは投影宝石による防御のようだ。
相手の魔力に相性勝ちするというチートな特性を持った宝石魔術が、八高の複合魔術すらも無効化する。
自陣の最前面でそれをシャットアウトすることに成功。
「そういやアイツのお袋さんは、10人規模で編んだ術、霊地・霊脈上での優位すら持っていた人間たちにも勝っていたとか言っていたか」
2人程度の心象では彼を突き崩すことは出来ない。
そして……。お互いを同期させるためか、背中合わせになる刹那とリーナ。紡がれる術式の複雑さ、大胆さは先ほどの比ではない。その末に待ち受ける結末を達也も理解する。
『『神牛の雷威を受けろ!! グガランナ・スタンプ!!!』』
背中合わせのままに、お互いの手を上下で合わせて作った拳を前に突き出しながら放った
巨大神牛の雷蹄は、上から振り落ちてきて八高の氷柱に掛けられた防御術式ごと全てを砕いた……。
「ふむ。予想通りと言えば予想通り……だが遠坂のソロ戦での戦いとあまり変わらないような」
十文字の指摘はもっともすぎた。見たことが無い術式という意味ではなかったことは少し不満ではある。
盛り上がっている観客には特に関係なさそうだが……。
「雷を付与したのはリーナでしょうが、まぁそれを抜きにしたとしても、威力は十分以上……」
あの2人にどのような狙いがあるかは分からない。
そもそも、そんなものがあるかどうかすら不透明だ。
だが、抱きしめ合い喜びを分かち合う2人に対して祝福の声が上がりながらも、少し遠くの会場では恐るべきサイオンと
こういう時にカンが良すぎることを呪いながらも達也が端末を弄ると、次はエリカと壬生ペアの試合だが、その前に行われた試合の選手欄を見て納得。
同時にあとが怖いなと思うも、他人事としてスルーすることにした。
そして……刹那の狙いというよりも、誰を意識しての戦いであったかが知れるのは、男女ペア第五試合──。
九島光宣・桜井水波ペアの試合で明らかになるのであった……。