魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第380話『魔法の宴 ~4日目終了~2』

一高会議室にていつもどおりに今日の報告事項及び明日の報告事項を話し合う面子。

 

日々、大小様々に沈痛なものを及ぼしていたこの会議ではあるが、今回ばかりはそこまで気鬱をもたらさなくて良さそうなのは僥倖ではあった。

 

なにせ今日はまさかの競技の一時中断というアクシデントがあったからあれこれてんやわんやであったのだ。

 

「良かったのか悪かったのか分かりませんが、競技大会にトラブルはつきものです。明日以降のスケジュールがどうなるかは分かりませんが、とりあえず明日は盾打ちに専念しましょう」

 

「ということなので、明日は何とか優勝しましょう!! エルメロイの主力が沈黙している間に、我々は勝利をもぎ取ります!!」

 

会長(かいちょー)、我々ピラーズメンバーは主力じゃないんでしょうか?ー」

 

「そういうことじゃないです!!」

 

おどけたような声を挙げる千代田によって少し焦る中条ではあるが、事実……ここでリードを取ることこそが肝要だ。

 

(女子ペアの盾打ち 優勝候補である三高 一色愛梨と光主タチエの組は要注意だ)

 

決勝でのエリカと壬生が勝つ目は―――。

 

(ありそうだ……)

 

特に壬生紗耶香の『チカラの高まり』は凄まじい。

今日の試合でもエリカは殆どサポートに徹していた。つまりメインフォースは壬生だけで良かったのだ。

だが、それはあちらも同じ……。

 

光主タチエ。

 

一色愛梨の影に隠れて実力を隠しているが、それでもって見誤るわけにはいかない。

 

「明日はホウキの調整を頼むぜ中村!」

「いや、俺は司波です。杉田先輩」

「俺も桐原だが!?」

 

妙なやり取りをしつつも男子ペアシールダーの片割れに返す。なんだか凄腕の小厨師の仲間2人のような声をしている男子たちは考える。

 

「そう言えば今日は、刹那のスペシャル料理があるんですよね」

「何でもあの職人さん。東京SUSHIグランプリの優勝者である松田さんと鬼島さんに挑まれたそうだな」

 

パリで開かれる寿司のワールドカップとでもいうものに参加する彼らは、ある種のインスピレーションを欲している。

別に国際的な味覚を知りたいわけではない。そこのバイアス調整は現地に入ってからだろうが……。

 

「刹那の料理力に何かを見出すつもりか」

「伝説の厨具をくれとか言われるか?」

「霊蔵庫は、もういらないですよ。最近氷結能力のロリっ子厨師(BBA)も出てきましたから」

「もしかしたらば他の使い方もあるかもしれない!」

 

何を言ってるんだ。こいつら!? と思うも、果たして世界に挑む職人さんの挑戦に対して何を作るつもりなのやら……。

 

「相変わらずの賞金首だな。ソーサリーの分野だけでなく他の分野でもヤツを狙う輩は多い」

 

それは十文字先輩の言葉。何気ないその一言に対して……。

 

「十文字先輩も―――」

「―――モテの分野で勝ちたいですか?」

「表にでろ。司波(中村)桐原(杉田)

 

真剣な表情で問うた2人に無情すぎる言葉。

 

そんな一方で少しだけ『先』のことを考えている面子もいた。

 

(仮にアイスピラーズ・ブレイクの本戦が『新人戦』の後に後回しになった場合、もしかしたらば勢いは二高に持っていかれる?)

 

それは仮定に次ぐ仮定でしかないのだが……。まぁ考えても詮無いことだと溜め息一つ突いて深雪は、今後の展開に関して考えるのをやめた。

 

今回の九校戦ははっきりいって『予測不可能』。

一見すれば、エルメロイが独走している風に見えて本質は違う。

 

(まるでバクチ場(賭場)ですね……)

 

尻すぼみに終わった話ではあるが、去年の九校戦では三合会や紅幇会とまでは言わないが、妙な大陸系マフィアがこの大会を賭場にしようとしていたらしい。

 

それらは色々な茶々入れでご破産になり更に言えば、その方法として八百長とまでは言わないが賭けの相場をコントロールするための『ディーラー』がいなかったのだ。

 

それらの去年に果たせなかった『怨念』が、いまこの大会には渦巻いているのかもしれない―――

 

などという深雪の考えは半分あたりで半分外れであることが、名物教師によって解説されていた。

 

 

「人間の脳の癖で、いずれ結果は収束するはずだからとか、今はこういう流れだからとか、すぐに理屈をつけようとするんだが、本来確率はそんなものに左右されない。過去の流れに左右されたりしないし、勝負の結果が未来の確率を変えたりもしない」

 

現在の状況を俯瞰で見ている連中の一人はそんなことを言う。そして、それこそが現在の状況なのだと言われる。

 

「つまり……意味がない、と?」

 

「これは本来は賭け事における説明。しかし魔術的な『勝負』においてもある程度は意味がある……つまり確率は常に操作されている」

 

「私たちの魔術にせよ現代魔法にせよ世界を騙す、因果を歪めることを本質にしているだろう? これは限定的ながら確率を、因果律を操作する能力ということだよ」

 

エルメロイ兄妹の言葉を聞いていた七草真由美は、その言葉に何かを覚えた。すなわち―――。

 

「確率に干渉した結果……流れが生まれる……」

 

「そう。世界は、事象は常に変動しているが、それを一定の流れに変えることは出来てしまう……特に今回の九校戦は場の歪みが強すぎるのだろうな」

 

去年の九校戦に参加していないエルメロイⅡ世だが、その言葉は信じるにたる重みがあった。

 

「魔術師は、ひとりひとりが確率の歪みなんだ。もうちょっと大雑把に神秘そのものがと言ってもいい。水面を搔き回している渦を思うといい。強大な魔術師や神秘であるほど、大きな渦になり、他人の運命をも捻じ曲げてしまう」

 

「――――――」

 

その言葉にエルメロイの弟子。この世界に訪れたカレイドライナーの顔が思い浮かぶ。

苦い顔をしてしまったのはご愛嬌である。

 

「エルメロイ教室のOG・OB及び現役生たちがどっかの巨大都市にでも一同に集結すれば『巨大都市はなくなりました』などという結果もあるかもしれんな」

 

「……もしかして刹那君は、それと同じぐらいの重みはある?」

 

事実、かのカレイドライナーが初期にやった講座は、とにかくエルメロイ教室の秘儀を伝授しようとやっきになっていたフシがある。

 

「頭が冴えてきたねマユミくん。実際、エルメロイレッスン初期の頃のアイツは、そのOG・OBの技をとにかく伝授していったそうじゃないか。大盤振る舞いのバーゲンセールだ。元の世界ならば、全員からグーパン食らっても文句は言えないぐらいの悪行だ。しかし、この世界でならば―――というよりこの世界だからこそやらなければならなかった。アイツは自分が最大の特異点になることを無意識に嫌っていたからこそ、アレコレと自分の中身を拡散させていった……持ち物が多すぎる自分の重さが誰かを死なせると思っていたからな」

 

色々とあとから理由は付けられるが……刹那はセンチメンタル・ジャーニーがすぎる男なのだ。

 

少しだけ遠い目をして弟子の評価を下すライネス教師に何も言えない。

 

「ゆえに、この大会はあらゆる局面で縺れている。これは別に刹那を一高から出したことだけでなく、二高にいるヒカル君と光宣君も同様に巨大な『歪み』だ。おそらくこの富士近辺は現在の地球上でもとびきり確率の偏差が大きい場所だ。その偏りによってさまざまなドラマが生まれていく」

 

ひとつの場に多くの魔術師が集まる以上、どうしても『流れ』が生まれる。その大小の規模は分からないが……。

大きな流れの前では……どれだけの巨石であっても流されるままだ。

 

(ある意味では義兄上もそうだと言えるか)

 

ライネス=司馬懿が考えるに、この魔術師が変わった切っ掛けである第四次聖杯戦争は、もうあらゆるものを呑み込む激流であったはずだ。

 

何かのドキュメンタリー番組で見た、イグアスの滝とかナイアガラの滝などを思い浮かばせるほどの激流。

 

そこに至るまでに流され落とされた『巨岩』……砕け散って砂礫になるようなものが大半で沈むだけだろうがしぶとく生き残った『小石』は―――流れに従い、時には増水した激流で更に下流へと流されていく過程で……磨き上げられた丸石、玉石へとなるのだろう。

 

(まぁ義兄上としては、石は石でも『宝石』の類になりたかったのだろうがね)

 

皮肉を口にしながら、DEAD or ALIVEの状況が魔術師を成長させることは間違いないようだ。

 

「そしてこれが刹那から持ち込まれた案件か……。何ともアレコレと引き寄せる」

 

「名にし負うロード・エルメロイII世も、『若い頃』は大変な冒険家・トラブルメーカーだったとお聞きしていますが?」

 

「飛び込まなくていい冒険ならば飛び込まないでいたさ。私は資料室で古い本でも読み漁っている方が性に合っている人間だからな」

 

真由美の少しだけからかうような言葉に苦笑しながら答える……藤林響子から渡された資料と顔写真。

 

多くの人に知られた人物ではあるようだ。そういう意味では、彼とは違う。

 

「パッと見は確かに私の弟子であった喰神魔術の被検体―――エルゴには似ている」

 

「だが、どちらかと言えばエルゴよりも少しばかり……うん。ゴツいなコイツは―――マクダネルほどではないが、なんというか精力的な印象を受ける」

 

企業経営者としてはどちらかといえば『現場にも出向くタイプ』……部下としては社員を気にかけてくれることを嬉しく思うか、はたまたあんまり『偉い人に現場に来られて迷惑』と感じるか。

まぁ両方有り得そうだ。

 

そういう社会的地位も兼ねている男なのだが。しかし報告を受けた以上は、考えなければなるまい。

 

「キミの所感……見たままの感想を教えてくれないかなマユミ君」

 

ライネスの言葉に真由美は見たままの感想を伝える。

刹那の記憶再生……その過去映像の中でも見なかったエルゴという御仁のことを除外して言えるのだ。

 

「そうですね……率直に言えば、私は―――この人が何だか」

 

 

―――西城くんに似ている気がします―――

 

 

☆☆☆☆☆

 

「―――ふむ。成程……流石は我が師……ありがたい限りですね」

 

『私もキミがここまで達者に操れるとは思わなかった。とはいえ……調子に乗るべきではないよ』

 

「心得ております」

 

『人形師のアオザキ、人形使いのフェム、人間使いのベスティーノ……その御業の一端でもキミに授けられたならば光栄だよ』

 

広い空間にて十指に指輪を着けた老人は、自分が起こした全てを振り返ってみる。

 

「……侮っていましたかね……」

 

悔しがるように呟く美麗の男に、冷たい心地で口を開く。

 

「実を言えば、どれだけ利用価値があろうと、いずれ君は始末する予定だった」

 

弘一と貢の茶々入れでご破産になってしまったが、懐に入れたろくでもない毒虫をいつまでも養うほど、烈は甘くない。

 

既に半欠けで生きているのも明らかに可怪しい、美麗の中華人の姿をしているだけの怪物……。

その他、周の傀儡と化していたサーヴァントの亡霊とそのマスターである気功拳士の亡霊はすでに消滅して、『烈の娘たち』に『捕食』されていた。

 

そして―――。

 

「最後だな。決めよう―――シャリー」

『了解です。マスター・レツ』

 

赤毛を外ハネにしている美女の姿をしたゴーレムが戦闘形態を取る。

 

最後になるだろうと分かっていた周は、自分が霊体となって他者に取り憑くことも出来ない事実に歯噛みしつつも―――襲いくる美しきゴーレム。

その身体がとてつもなく発熱をしながら高速で襲いかかり、その『高熱と高速』のストレートパンチが周 公瑾という男を細かな霊子に細分してしまうのであった。

 

全てを終えたあとには十指の指輪から伸びていた糸が、指輪ごと全てシャリーという美女のゴーレムの背中に収納されると、その様子を見ていた軍関係者は、色々な気持ちになる。

 

「まさか御年80を超えて新たな術式に傾倒されるとは……」

「老いたとは言え、魔法将軍の異名は伊達ではないな」

 

最終的に中華圏の魔法師……テロリスト崩れの処置を任せた関係者達は、それを見て思うことは……。

 

魔宝使いが時折言っていたこと。

 

魔術師ならば己が最強である必要はなく、己の技で最強のものを造れば(創れば)いい。

 

ということを改めて認識されるのだった―――そして、その中でも特に対東アジア……俗に大亜強硬派と呼ばれる酒井はやはり何か、十師族に頼らない戦力が必要なのだと理解するのであった。

 

 

 

 





その頃……。

刹那「あれ? おれ出てなくね?」
紅閻魔「どんとまいんどでち♪ さぁ次はこちらの魚を切るでちよ。ますたー」

裏側にてとんでもない(料理)作業が行われているのであった……。
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