魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第383話『魔法の宴 双盾死闘編2』

「ヤールングレイプル!」

六つの腕が白銀の籠手となりて、レオの保持する盾を最大硬化させる。

 

―――硬い。すごく硬い―――

 

斬撃を放つように盾を振るうもまるでダイヤモンドか巨岩に放ったかのように痺れる結果に、河西伊織は驚く。

 

分かってはいた。

 

彼が恐るべきファイターであることは。

 

もともとのポテンシャルがあったのも理解していた。適切な指導者を仰げばそのチカラは『王』『君主』にも上り詰めれるものだと……。

 

剣術部の相津郁夫が戦いたがり、そして多くの人間が何やかんやと頼る男、別にその地位には興味がない。

 

ただ……自分の『魔剣』の果てがどこまで昇れるかを知りたい。その相手として一高副会頭にしてノーリッジのグローインアッパー(急成長者)たる男こそが、自分にとって求めた相手だ。

 

―――待っていたよ!西城クン!!

 

絶対に離れるものか!ミドルレンジあるいはクロスレンジでの戦いでのみ決着を着ける。

 

このギリギリの戦い。今にも崩れそうなメインシールドで以て戦うのみだ!!

 

そんな男粋を感じたレオはそれに応じるのも吝かではなかったのだが。

 

「イオリ殿のバカー!!!」

「ばるばとすっ!!!」

 

奇妙な叫び声を上げながら横合いから吹っ飛ばされたことで戦いは一時中断となった。

 

「ユイ!? なにをぉおおお!!」

 

ドップラー効果で遠くの方に退避していく二人を追うべきか……と思っていたのだが。

 

「レオ先輩どうします?」

 

魔弾ならぬ愛の矢(エロース)を装填した銀髪の後輩に……。

 

「いや、『今は』遠距離攻撃はいいさ。由比睦心が考えているのは恐らく―――もっと勝利に貪欲になれってことじゃないか?」

 

「男同士のガチンコファイトを捨てさせるので?

ずいぶんとムツミ先輩は男気無いですね」

 

「言ってやるな。力試しではなく、勝負においてあらゆる手段を講じてくれってことなんだろうな」

 

回復術をお互いに掛けながらそんな風に言っておく。由比としてはもっと手段を選ばずに戦ってほしいのに、それでは鬱憤がたまるのかもしれない。

 

「まぁだとしても勝利は渡さないがな。しかし、カレン―――随分とその手のことに理解が深いな?」

 

このドライな印象をもたせる修道女が、そういうウェットなものに理解を持つとは。

 

「まぁ私の父も一度ですが、宇宙からやってきた女神を研究する考古学教授と三日三晩掛けての戦いを演じたとか聞きましたので」

 

なんだそのスペースインディー・ジョーンズ(コズミックジョーンズ博士)?などとレオが疑問を覚えたのも束の間。遂に2人の戦闘態勢が揃う。

 

刹那と同じく多属性の元素を扱う由比睦心の支援を受けてチャージ(突撃)を仕掛けてくる

 

勝負の時である。

 

 

「イオリンは、勝利への執着というものが薄いというか……」

 

「己の剣を完成させられればいいだけの求道の剣。その果てに自分が果ててもいいってだけだから」

 

剣鬼の武

 

そうとしか言えないものが河西伊織の剣であったのだが、その結果として決勝まで上り詰めたわけだが、そこが限界であった。

 

まぁ相手が他校の何処かであったならば勝つ気持ちは出たかもしれない。

 

「五色波濤の八岐之大蛇による斬撃は、神腕を堕落()とせず、か」

 

多重属性の由比睦心の支援を受けて放った時間武剣は、レオとカレンの複合術によって崩された。

 

「結局のところ、この戦いは盾を砕くことに主眼をおいた戦いだからな」

 

上州武州の壬生狼が皿割りの撃剣稽古・合戦演習をやるようなものだ。

 

同校対決を終えたあとには遂に他校同士の戦いとなる。整地作業がドローンとヒトの手で以て行われる。

とはいえ……次にやる相手としては寧ろ荒れ地の方が好ましかったかもしれない。

 

野球におけるグラウンドに対するトンボ掛けのようなそれを終えたあとには男子ペア決勝が始まる。東西のベンチから出てきた四者のデュエリスト。

 

ここで一高だけに得点されることを許すわけには行かない四高の集中力は高い。

何よりここで勝つことに意味はあると睨んでいる顔だ。

 

観客席(ここ)から見ているだけでも、それは分かる。

 

(達也は分かってるのかね? 静希と角隈のトリックが)

 

刹那も半端な理解だが、アレはある意味では『武士の呼吸法』と同じだ。

 

遠坂家では失われたもの……刹那も七夜志貴との訓練の中で何とか体得しようとしても無理だった我が家から失伝した一つの技術体系。

 

初代・遠坂永人がこれを用いて根源への道を辿ろうとしたのも分かる。

 

意外とお袋から中華拳法を習っていれば、そこに至れたかもしれないが、まぁ無理だったのでいまは置いておく。

 

「さて、どうなるかな」

 

「一高は勝てるかな……?」

 

「クラスメイトと部活の先輩の勝利を願わない?」

 

「願いたいが、あの2人は異質だ。何というか…纏っている気配というか匂いがキミ寄りな気がする」

 

カンがいいことを言う相津に苦笑しながらも、戦いは始まろうとしていた。

 

お互いが相手を迎撃(攻撃)するべく盾を構えた。スタートランプの点灯と同時に戦端は開かれた。

 

最初に仕掛けたのは静希からであった。どんな体幹をしているのか自己加速魔法よりも速い動きで更に言えば低く、低く……獣のように動く。

 

獣性魔術よりもそれは獣の心壊に近いものだ。

 

当然、十三束もそれを迎撃するべく魔弾の雨あられで迎撃しようとするも、静希の動きはかなり予想外である。その弾が当たる気配がないのだ。

 

「さがれ十三束!!」

 

危険を察知した桐原が前に出る。明らかに普通ではない体術ではあるが、それでも剣の技には下段打ちという技法はあるのだ。

 

このままやってくる静希の狙いは既に察知してある。

 

それは下段からの盾による『かち上げ』―――シールダーファイトのルール上。どうやっても近接での攻撃手段は盾を用いたものになる。

 

下段攻撃は、反則すれすれだが、攻撃手段としては認められている。

 

結局のところ正面切ってのぶつかり合い・押し合いだけでは障壁の強いものだけが勝ってしまうルール。

ある意味では、シールド・ダウンよりも工夫と応用が必要となる競技。

 

桐原が高周波振動を盾に纏わせて静希の攻撃を迎撃しようとする。

 

だが―――。

 

「―――」

「―――」

 

視線の交錯。そして下方での激突。押し負けたのは一高側であった。

 

10mは二人して吹き飛ばされる様子からその威力を察する。

 

 

「いま、桐原先輩の高周波振動の盾が―――」

「ああ、消え去った。ディスペルエンチャントはない。盾に掛けられていたのは強化術でしかないが……」

 

あの男は、高周波振動をする盾の動きを『止めた』のだ。

 

その術理はまだ詳しく見えないが……。

 

「頼みますよ角隈会長」

「ああ」

 

多くを語らないが、地味ながらもヒトを惹きつける系の男子2人のコンビネーション。  

 

角隈白野が叩き込む攻撃が凄まじくはないが、精密な攻撃―――相手の動きを読んだとしか思えない先読みの攻撃が十三束鋼と桐原武明を封じる。

 

自在に動きたいというのに、檻に入れられた獣のように藻掻いているようだ。

その間、静希は相手を注視している。どうやら彼に遠距離攻撃の類はないようだ。

 

しかし、何か……チカラを溜め込んでいる様子がどうしても不気味に思える。

 

そして、十三束のサイドシールド1枚。桐原のサイドシールド2枚が砕かれた。

片肺、両肺を持っていかれた一高の不利が定まる。

 

 

「なんで十三束も桐原も動けないんだ!?」

 

「要所要所で角隈選手の魔法が彼らの出足を止めている……ようやく分かりましたよ。彼らは超能力者です。我々とは別種の」

 

「どういうこと!?」

 

「角隈選手は一種のESP能力者。魔術的な言い方で言えば予測型の未来視の能力者です。それゆえ、2人の動きを完全に封じれている」

 

沢木、千代田の疑問に応えた達也だが、まさかここまでだったとは思わなかった。

 

「彼が何手先までを見通しているのかは分かりませんが、それでも見る限り、2人を封じるだけの魔法能力と先読みはかなりのものです」

 

「おまけに静希草十郎も何かを隠している……だが―――」

 

「ああ」

 

2人が混乱しているのに対して副会頭であるレオと会頭である服部は落ち着いている。

 

「勝ちの一手はある」

 

その言葉の後には、勝利を決めるラストデュエル。

 

それは、虹色の光を回転するように発生させた一高組から始まる……。

 

 

 

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