魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
Interlude……。
「色彩豊かな寿司の数々。そして……」
魔法を使っているわけではないのに、雷を発しながら回転するように『握る』とんでもないものをやっている職人。それがただの客寄せのパフォーマンスでもなく何かの技能であることを理解するものがいる。
自分の生業に関わる分野でなくても一流は他の一流を知るとでもいえばいいのか。
エルメロイ先生や刹那(穴子握りを出す)は、その『回転』を掛けての握りに関して即座にその意味を理解したようだ。
流石にそこのまで深い理解などはハガネには出来なかったが、それでも自分にも得るものがあった。
前々から自分の魔弾には威力が足りないということを理解していただけに、それは天啓となった。
遠距離戦だけで勝てるなどと思い上がらない。
(どんな弾でもそれが何の『回転』もしないものならば『棒球』になるだけだ!!)
これが銃ならば、黎明期における代表作。直進性に難がある火縄銃であっても、人体を貫ける威力を発揮できるが。
(どうやら僕じゃ距離が足りない!!)
威力を上げようとすれば飛距離は伸びず、魔弾とは言えぬ近距離での
距離を出そうとすれば、それは魔弾とは言えぬ
だからこそ準決勝では、中距離からの魔弾斉射にしておいたのだ。
如何に魔弾の第一人者(!?)である刹那でも解決しきれなかった問題。それはハガネ自身のパワー不足である。
ハガネはやはり黄金騎士にはまされないのだろうか?などと妙な思考に陥りながらも、考え出した第二の秘策。
それは―――。
Interlude out……
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「成る程、巨大な弾を『回転』させることで威力と直進性を上げたか」
迎え撃つ静希はその弾の回転を見切っていた。全てのものは絶えず脈動している。それは何も生物にかかわらず植物、無生物……はたまた石、岩などの鉱物に関しても同じ。
静希草十郎の『■■殺し』とは、その呼吸を止めるために練り上げられたものだ。たとえそれが『心臓』という生物にあるべきものがなくても、『心臓』を作り上げることでそこに『楔』を打ち込むものだ。
ならば、その回転に対して精緻な回転不良を起こすことも不可能ではない。しかも、それは―――。
「パートナーを魔弾にするとはな」
巨大なその回転魔弾は―――桐原武明の身体に纏ったものであったのだ。
すなわち
ビームを斬れてこそ剣聖ではあろうが、そこまでのことは出来まい。
全身のチカラを一点に込める。それは弾丸の向こう側にいる桐原をも停止させることを目論んだ一撃。しかし、念話で会長から伝えられた事実に驚愕。
そこで静希は……。ぶつかろうとした数秒前で、弾丸の横―――右側に出た。
そこには。桐原武昭の姿があったのだ。
(読みやがったか!?)
弾丸に包まれているようで、盾、あるいは鎧か、騎馬か。まぁなんでもいいが、回転魔弾を使ってのチャージは。この為にあった。
つまり突撃のための防御手段であり遮蔽物としての意味があったわけで、奇襲をもくろんでいたようだが。
(無為に終わりましたね)
桐原が高周波振動させた盾を振りかぶる。得物違いの剣士といえども、その一撃の重さは、確実に強い。
奇襲を見抜かれていたとしても遭遇戦も同然だとしても彼の行動には淀みがない。
それに対して、静希が放つのはその振動を利用した『逆行拳』とでもいうべきもの。盾と盾が打ち合わされ、そして両者の盾が砕け散ったのだ。
(成る程―――)
決して相打ち狙いだったわけではないが、静希の渾身の盾打が桐原と引き分けに終わった原因は……。
(走り抜けていった十三束鋼が横合いから打ち出した魔弾の影響か)
それが相手の盾だけを崩すはずだった理を崩壊させた原因。
これで一対一の構図となったわけだが……。
「ムーンウォーカーと呼ばれるハクノ先輩には勝てないだろうな」
「言ってくれるねぇ」
「事実ですから」
勢いとしては自分の方が勝っていたらしい、尻もちを突いた桐原に手を貸しながら、特等席でラストバトルを見る。
その結末を見る。
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迫りくるその勇ましい姿を見ながら白野は思う。それは、いつも夢の中に見る2人の金髪の少女のようだった。
どこまでも進み続ける意思を示す真っ赤な薔薇のようで、激しく燃え盛る炎のような子と。
進むことを躊躇いながらも、それでもどうしても『
(ああ、だから)
負けるわけにはいかない。自分には四高生全員の運命が架かっているのだから。
盾が熱を持つ。盾に灼熱が付与される。己の中でルービック・キューブのようなものが、多段的に動き自分に変化をもたらす。
十三束鋼はおそらく、未だに生きている魔弾の勢いを■■してこちらを撹乱するだろう。その隙に渾身の一撃を食らわせてくる。
こうしている間にも牽制のように放たれる魔弾はフェイクでしかないだろう。だからこそ……。
(正面から迎え撃つつもりかっ!? 四高会長!)
確かに決勝戦にいたるまで、四高会長が正面切って戦っていたことはない。ある意味ではノーデータである。
だが、だからといって恐れてはならない。そもそも、鋼に出来ることなど、基本的には猪武者のように前に出ることしか出来ないのだから。
魔弾という遠距離攻撃を放てたとしても、やはり得意手はそうなのだ。
だからこそ―――。
自分の中で『サイオンの回転』というあり得ざるものを加えた小型の魔弾を装填しながら―――。
「
未だに進んでいた大型の回転魔弾を角隈の前で爆発。強烈なまでの発破が炸裂。オーバーキルかもしれないが、ジャッジは流れて―――そして。
小型の魔弾が爆発の中心に幾つも飛来する。まだジャッジは下っていない。だから―――。
その爆発の
盾が灼熱を放つ。そして何かの精緻な紋様が盾に纏わっているのを見た。
迂闊に撃ち合えば砕ける。理解した鋼であったが、それでも―――。
(止まれるかぁ!!)
魔弾が効かないことはわかっていた。最後の策を解き放つ。
「
鋼の身体から盛大なまでのチカラが噴き上がり始める。
いまでも自分の蔑称なのか尊称なのか不明な『Range Zero』のそれの通りに、されど自分もまた……みんなと同じくなりたいという想いを持ちながら……いろんな気持ちを混ぜ合わせた術。
鋼の中のありったけのチカラを
己を弾丸―――、いや回転する砲弾に見立てながら盾を前にして十三束鋼は角隈白野と激突した。
フィールドが一瞬だけ見えなくなるほどに強烈なチカラとチカラの打つかり合いであったが……勝敗はきっちり刻まれるのであった。
「―――惜しかったでござるな。十三束どのは」
「そうね……」
後藤と桜小路の悲しげな言葉を聞きながらも拍手は鳴り止まない。
(あえて敗因を挙げるとすれば、序盤に魔弾を放つことに拘りすぎたというところか……)
十三束も別にそれだけにこだわっていたわけではないが、静希草十郎のプレデトリーな動きに惑わされすぎて、魔弾での迎撃に寄りすぎていた。
(桐原先輩も後輩の望みを優先したのだろうが、あえて厳しく言えば、あそこは2人で静希を沈めることに切り替えるべきだった)
悔しさからか泣きじゃくって桐原に慰められている十三束を見ながら、少しだけ思う。
(それら全てがあの四高 角隈会長の『読み通り』ならば、本当に恐ろしいな)
恐らくあの遠距離封殺での盾に入ったダメージの蓄積ですら、最後の激突への勝利の為の布石であったかもしれない。
(全ては終わったいまだから言えることだ)
何にせよ……。
「十三束……そんなにまでも俺は、お前が目標とするような術者だったか?」
小さく呟くが、エルメロイにいる一高2B組一同は『そりゃそうだろ』と言わんばかりに、刹那を見るのだった。
そして、本日最後のプログラムとして、四人のアマゾネスないしプリンセスブレイブによるアガルタ・ファイトが始まろうとしていた。