魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
いや新バトストのファンブック4巻はあるし、後の中央大陸戦争の様子も分かっちゃいるのだが――――――悩んでしまうんだよなぁ。
「まさしくアマゾネス4人による恐るべき極限デスマッチ……全日本女子プロレスか」
「クラッシュ・ギャルズと極悪同盟の戦いのごとしですね」
あんたら本当に2090年代の人間か!?とツッコミたくなるほどに、昭和後期の女子プロレスを引き合いに出す桐原・司波に全員が何も言えない。
刹那が一高からいなくなると、この2人がコンビを組むのか。やはりアフレコ現場(?)での名コンビは、ここでも健在なのかと想うも、とりあえず戦いは見ておく。
「小技に拘りすぎましたかね……」
「どうだろうな。パワーで押すにしたってあの静希という男はそれを超えていたと思うな。かといって、あのアマゾネスたちがやるような、フライングボディプレスなどに代表される『飛び技』とか出来るか?」
「出来ません!!!」
キン肉マンたち正義超人などのようなマッスルスパーク全開の戦いなど十三束鋼には無理だったわけで、落ち込んでいた様子が少しだけ持ち直す。
最終的に力と力がぶつかりあったわけだから、そこは呑み込むことにしておくのだった。
「ただチームとしては申し訳ないかな」
「そりゃ仕方ないさ。どこだって必死なんだから、勝敗は紙一重」
結局の所、モノスゴイ打者がいたとしても、そいつが10割打てているわけではない。凡打も三振もそれなりにある。当然だ。球を放る投手とてバカではないのだ。コースや球種の変化などをこらせば、三打席で色々と結果は違うのだ。
それでも均衡が崩れるときはある。三打席全て強打者に対するピッチャーの集中力はとんでもないのだ。それゆえ、どこかでピッチャーが火だるまよろしく打ち込まれる時もあるのだ。
そして、変化は訪れる。最初に変化をしたのは光主タチエである。
今までとは違い、暗色のオーラを火柱のように吹き上がらせてのチャージ。
「これはまさか光主タチエの―――」
「「
「「「口から吹いてね―だろ!!」」」
アホ2人の発言にツッコミを入れつつも、色味としては似ている。
その攻撃がどんな効果を持つのかはわからない。しかし、そのチャージが今までとは段違いなのは、その失踪と同時に吹き上がる土煙と巻き上がる土砂の高さでわかっていた。
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ヤバいなと直感でエリカが感じる、青緑色のオーラを纏ったチャージ。盾持ちの騎士のはずなのに、既に何かの巨大城も同然に感じるほどだ。
巨大な城が迫りくるようなイメージを前に、前に出たのは壬生であった。
(ここは任せて)
そう言われた気がする視線を寄越されて、任せつつも一色愛梨への警戒を緩めない……のだが。
(一色さんにとっても自分の後輩がここまでだったのは予想外だったのかしら?)
そう感じる表情の変化を見ながらも、紗耶香とタチエの激突は始まる。
紫電の雷気を纏わせた盾が黄金色に変化しながら振るう盾は、タチエの盾と拮抗する。
(眼!?)
良く見ればタチエの保持する盾が巨大な球形の
さらに言えば、その眼球は視神経のように、後ろにいるタチエから延びる暗緑色の魔力と繋がれている。
不気味さを覚えながらも、盾を使ってのデュエルが繰り広げられる。
一撃ごとに震える身体を押し留めながらも。
(ここだっ!!)
武人としての直感で放たれるは、馬蹄のごとき形状の魔法陣を張った盾を振るい、紫電煽るる必殺を放った。
―――牛王反転・疾風迅雷―――
巨大な牛馬の打擲一撃。刹那のグガランナ・ストライクと似て非なるも、圧と魔力はほとんど違わぬものが光主タチエの眼球盾を撃ち抜こうとした瞬間。
眼球の中心から『槍』が出現した。スパイクシールドというにはあまりにも一本が長く伸びたそれは、突き刺すことだけが目的らしきものだ。
円形のリングを形成した上でのそれは―――。
『『フラガラック!?』』
エルメロイのキャプテンと七高の女教師のセリフが重なる。黒槍が雷と圧力を散らしたが、その撒き散らされたエネルギーが周囲で無差別な破壊をもたらす。
ふっとばされそうな風圧と叩きつける小石や砂が至近の二人以外を襲う。
((どちらが有利を取ったかは分からないけど!))
どっちにせよメインフォースである2人の援護に向かうのは当然であった。
魔法のシールドバッシュでの戦いに対して、有利を運んだのは……。
(素人目には互角の傷の具合に見える)
だが、ダメージとして大きいいのは光主タチエの方。電撃によって痺れたようだ。
動かないでいるようだが、眼だけはしっかりと壬生を見据えている。まだ戦うつもりではいる。
「一色先輩!!」
「ええ!!」
呼びかけに応えつつ、先手を取ったのは一色愛梨。同じくダメージでよろけていた壬生に回転光盾がヒットする。
「ッ!!!」
一色家の魔法の1つ『電光石火』。神経伝達をショートカットすることで出来上がる身体の超速は、魔力放出という技術もプラスされたことで、神速は言いすぎだとしてもサーヴァント級の速度を再現していた。
盾に軋みを生み出す音が響く。明らかに壬生の方にダメージが入った。
「させるかぁっ!!」
速度においては負けてはいない。一色愛梨の家とは別の『ことわり』で神速を生み出した魔法剣術の流派の娘が、速度で負けたとしても『重み』では負けていないとばかりに、盾を振るって一色を叩く。
「ぐっ!!」
ダメージによるテクニカルアウトもマズイので盾を用いた防御を強要されてしまうのが、この戦いの妙味である。
千葉道場の『得物』で
恐らく秘奥の一つ『山津波』。あるいはそれに類するものだ。
横からこれ以上叩かれることはマズイ。バックステップで回避しようとした瞬間。
(飛べない!?)
飛ぼうとした途端。上から地に押し付けられたかのように、足が動かない。
見ると、先程の馬蹄のような魔法陣が愛梨の足元に発生していた。それがどうやらこの状態のトリック。
「せやぁあああ!!!」
「ゆあらっしゃああ!!」
2人分の圧を掛けようとチャージを壬生とエリカが駆ける。
疾走・疾風・疾駆。
なんとでも表現できるもので駆け抜けていく2人の乙女のシールドバッシュ、シールドアタックで、愛梨の盾に抗えぬ圧が掛かる。
一発目はエリカ。強烈な攻撃。凌げたが、盾にはかなりのダメージ。そしてエリカはその愛梨の頭上を空転・宙転するようにして背後に抜けていった。
盾をぶつけた勢いとテコの原理を利用しての跳躍である。
そのイルカのような跳躍に眼を奪われた一瞬。その見上げた一瞬が命取りとなって、続けての攻撃が入れようと壬生が迫る。
「ぐぎぎぎっ!!!だらぁあああ!!!まけんがや!!」
自分に纏わりつく重圧を無理矢理に振りほどくべく、歯を食いしばり、魔力の放出と同時に勢いある声をあげて重圧を振りほどき―――。
横っ飛びに避ける。情けないというなかれ。これもまた戦術である。
そして光主タチエと合流した。出足の加速を隙かされた壬生だが、それをキャンセルしてエリカと合流する。前後挟撃のプランを崩された2人だが、特に動揺はしていない。
片や三高の方はちょっとばかり動揺を見せている。
これがどういう結果を見せるのか―――。
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第1ラウンド……とでも言うべき打つかり合いが終わるまで、誰もが息を飲んでいた。攻防全てが終わった瞬間に、緊張して呑み込んでいた息を誰もが吐き出すのであった。
「なんて戦いなのよ……」
「千葉さんと壬生先輩は当然のごとく実力の方は存じていたが……これがエクレール・アイリス、そして……一年ながら本戦出場のスーパールーキー」
光主タチエ。
相津が呑み込んだ言葉を内心でのみ言いながら、そのチカラを解析するに……。
(円卓の騎士の疑似サーヴァント、デミ・サーヴァントの類か)
あの魔力がいわゆる古代のブリテン由来の魔力であることは、何となく分かる。
匂いでスヴィン
「尼利、これがお前の言っていたことか?」
「そうですよ。タッチーは我が三高の誇るシールダーナイトですからね。『遠坂刹那 追放騒動』の際にエクレアパイセンが暴走した時も、タッチーは率先して鎮圧に当たっていましたから」
何をやっているのやら第3高校などと思ってしまうものを、ホログラフの動画データとして尼利が見せてくる。
だが、それを見るたびに……彼女は何者なのだろうと思う。愛梨が戸惑っている理由が、遠く離れたここからでも分かる。愛梨にとっても光主タチエのポテンシャルを見誤っていたのだから。
(色々あるが、ここまでの戦いで、お互いにお互いの防御力を超えて、相手の盾を砕けるだけの膂力は理解できたはずだ)
となれば、本来的には誰かが大きなポカミスをした瞬間に均衡は崩れる。
あるいは……。
(
千日手はない。引き分けもありえない。勝敗は刻まれる。
どちらかに勝利の女神は輝くのだから―――。