魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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まさかパリオリンピックで、あんな選手が出てくるとはな。

私が書いている二次創作の中でも物議を醸したあの問題で、それを全肯定するような存在が出てきた――――――。

魔法科に対するすごいアンチテーゼだ。無課金おじさんは。

そして電子書籍派の私はフェムの下巻をamazonで手に入れる。コミケやショップに行ければ違うんですけどね。




第387話『魔法の宴 双盾死闘編6』

 

十分間以上もの迫撃戦。千日手に至りそうな戦いであったが、それでも何処かが崩れる。崩れたのは―――。

 

(エリカ)

 

この中では広範な魔法力という評価項目では低かったエリカに変化が現れる。一昨日はレティシアと打ち合えたことが原因かもしれないが、それでも崩れたところを狙うのは戦の常道であった。

 

突っかかるは愛梨。

 

「レティにアンジェラとの二連戦はアナタにとって負担だったようですね!!」

「そう見たければどうぞ!!」

 

個人戦での負担を指摘されての返す言葉は威勢あるが、それでも声には迫力はなくなっていた。明らかな消耗。その隙を見逃すエクレールではないわけで、回転光盾がエリカの盾にダメージを入れていく。

 

「エリちゃん!」

「アナタの相手は私だ」

 

後輩の苦境に対してフォローするべく割って入ろうとした壬生紗耶香の前に立ちふさがるのはコウノトリの少女。光主タチエ。

 

「推して通る!!」 

「通れるものか」

 

石や砂を巻き上げて猛烈に迫りくる轟雷猛撃衝(サンダーダッシャー)とでもいうべきもので向かってくる壬生に対してタチエは真正面から受け止めるようだ。

 

無謀だ!誰かが叫んだようだが、それでも赤眼の少女の盾は輝く―――そしてその盾が『十字』の被膜を纏った瞬間。

 

『我が夫!あの娘をよく見ておくのです!!』

『首絞めないでモルちゃん!!』

 

エルメロイの方で変な声が聞こえた。しかし、クロスラウンドシールドとでも言うべき巨大なものを纏わせた光主タチエのシールドは―――。

 

『顕現せよ!! クイーンモルガン・キャメロットぉ!!!』

 

城壁も同然のものを現出させて壬生へと突っかかる。対峙したものだけに分かる。光主タチエの巨大城の威容は完全に砕けるものではない。

 

「ぐっ! きゃあああ!!!」

『壬生!!!』

 

それでも一当てした瞬間、その圧に盛大に吹き飛ばされる。その原理はここからでは若干不明だが……。

 

一番わかっている人間が、刹那の膝の上を玉座にして説明をする。

 

「あのタチエとかいう娘だけでなく『宝具』で顕現させたキャメロット城は、使用者の『心象風景』(こころ)によってその形や在り方を変える。その中でもタチエの城は『どこまでも固くて』『トゲトゲしい』な。あるいは―――――『おどろおどろしい』」

 

「やっぱりアレはカウンターなのか?」

 

最後の感想は眼球盾に関してか?と思いながらも要点を聞き出すことにした。

 

「さすがは我が夫、遠坂セツナ―――事実、あの城は幾つもの防御機構を持っている。悪意と敵意を持って近づこうとするものに魔力の『アローレイン』を降り注がせて『ランスキャノン』とでも言うべき聖槍を打ち出す……最高位の迎撃システムを持ったキャメロット城の形だ」

 

説明をするべく巨大画面を虚空に映し出して、あの接触の際に起こったものを説明するモルちゃんに誰もが息を呑む。

 

「もっともサヤカの方の衝撃も強力だったのか、城が崩れかけのようだがな」

 

モルちゃんの言葉通りに顕現した城は幾つもの亀裂が入り崩れかけていく。形を維持できなくなる中でも―――。

 

『後は任せましたよ。一色先輩』

 

崩れた盾と同時に崩れ落ちる光主タチエの言葉通りに、サーヴァント級の攻防の間にエリカは愛梨によって既に沈んでいたのだ。

 

(リプレイ映像を見なきゃ分からんが、何かの支援もあったんじゃないか?)

 

詳細は分からないが、それでも最大級の光盾突撃(シャインアタック)を行うエクレール。

 

彼女から放出された光が巨大な螺旋回廊となって壬生紗耶香を拘束。

 

「全身全霊を以て行う!! これこそ我が覇王愛人セルナに捧ぐ!!『眩き輝くは刹那の光盾!!』(ブークリエ・デ・ソワ・ブリヤン)

 

威勢良く言いながら駆け抜けてくる愛梨に対して「―――」声にならぬ叫びと共に最大防御を展開する壬生。盾と盾が打つかり合う最後の激突。

 

魔力のきらめきと物理的な擦り切れが起こり最大級の火花が両者の境界で鬩ぎ合う。

 

勝ったのは――――。

 

 

『WINNER!! 3高 一色・光主ペア!!』

 

黄金の空想樹……そうとしか表現できない巨大光柱を作り上げるほどの衝撃で壬生を倒した三高であった。

 

大歓声と拍手がやまぬ会場。そして握手しながらお互いに肩を貸し合う一高・三高の姿に更に歓声は湧く。戦った後はいつまでも嘆かずに一礼をして終了である。

 

礼儀を重んじてこそ、本当のスポーツになるのだから―――。

 

『『『『ありがとうございました!!』』』』

 

四人の乙女の凛とした声と鳴り止まぬ拍手を最後に、本日の競技種目はすべて終わるのであった……。

 

 

「セルナァアアア!!! アナタのおかげで勝てましたわ!!モンジョワー!!!」

 

「まずは三高で勝利を祝福し合うべきじゃないかな!?とはいえ優勝おめでとう愛梨!」

 

「アングランメルシー!!」

 

常識的で、もっともな発言もあんまり彼女には通用しない。っていうか全然通用しない。

抱きつかれてしまってどうしようもなくなる。よって優勝を祝福しておくのであった。

 

「来てくれたことは色々と嬉しかったり複雑だったりなんだが」

「我がチームに所属したいと切望してくれた女子の試合だからな。それなりに情は持つさ」

 

「本当のところは?」『イヌヌワー!!』

「……尼利の奴が『向かった方がいいですよ』とか言っていたからな」

 

一条将輝(王子サマ)の質問に答えるも追求の手を緩めなかった吉祥寺真紅郎(withイヌヌワン)の言葉に素直に答える。

 

「もうそんなことどうでもいいですわ……ミサオちゃんがこの温もりを連れてきてくれたならば、何も無いですから」

 

三高生全員が、刹那に抱きつく愛梨(あまあまモード)をいろいろな目で見ているのだが、それは彼女的には、どうでもいいことなのだろう。

 

「それじゃ俺はこの辺で。邪魔して悪かったな。光主さんにもよろしく」

「あんまり遠坂は好かれておらん様子じゃぞ?」

「だからといって、そういう気遣いをしないでおく、ちっさい男にはならないのさ」

 

沓子の言葉に返しながら愛梨を引き離し(協力者 十七夜栞 一色翠子)、三高の重要そうな会議からはお暇するのであった。

 

不満げな様子と物欲しそうな様子を合わせた愛梨の表情(フェイス)に心を痛めつつも節操は保つためにクールに去る遠坂刹那なのであった―――。

 

 

「千秋、料理に必要なのはテクニックだけに非ず、むしろ本当に必要なもの―――それは!!!」

 

「それは!?」

 

「―――真心(ハート)です!!」

 

両手でハートマークを作り料理の心得を友人に伝授するエジプトニーソ(現在はコックコート衣装)だが、演算と予測の鬼子たるアトラスの錬金術師がそれでいいのだろうかと想いながらも、それに同意するのであった。

 

「そう。料理の奥義は―――」

 

ここは一つ世界四大文明の一つに乗ることにした刹那もまた―――

 

「「真心!!」」

 

―――料理の奥義はラブ注入とするのだった。

 

「ステレオでハートを作りながら言うな!ほら遠坂、そろそろトマトソースは、いい頃合いなんじゃない?」

 

「あ、ああ。悪いな」

 

よく分かったなと想いつつも、平河の言葉通りトマトソースはいい感じであり最後の工程を踏むのであった。

 

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

「まさかここで中華ではなくエジプト料理で来るとはな。恐れ入る」

 

「なんせ今日のファイナリストのリクエストが『米料理』(メシ)『麺料理』(メン)『肉』(ミート)『魚』(フィッシュ)だからな。それらをいっぺんに満足させるにはそれしかなかった」

 

達也に説明した通り、今回の刹那(オレ)のスペシャルメニューは殆ど、シオンと平河のロボ研ガールズ任せであった。

 

「コシャリ―――世界四大文明の一つエジプト文明のナイルの恵みが生み出した小麦と米のコラボレーション。炭水化物の集合体で女子陣の明日の体重計はお察しなのだが……」

 

「そんなの関係ねぇとばかりに食べてるな」

 

実際、コシャリは単純な料理に見えてバリエーション豊富である。それ故に様々なアレンジは効かせていける。

 

具も、ソースも、はたまた『米麺』こと『ビーフン』(米粉)がある一方で、『麦飯』もあるわけで……。

 

「八分の仕上がりと二分のゆとりで最高の宴席料理を作ったわけだ」

 

各自でバリエーションは色々と作れる。実際、テーブルに殺到する人間たちはピクルスや、各種の肉や魚をミックスして食べていく。

基本的には米とマカロニ、パスタが混ざった『炊き込みメシ麺』という不可思議なものが主だが、それでもそれに夢中になるぐらいにはスゴイということだ。

 

「昨日は俺だけが料理していたからな。今回はみんなも混ざりたかろうと思ってこういうものを作った」

「それ以外は平河と十三束の仲や桐原先輩と壬生先輩を―――というところか?」

「ポン引きなんてゲスなことはせんよ」

 

ただシオン自身は、前者に関しては仲を深くしたいと思っているだろうということは分かっていた。達也の疑問に言っていると。そのシオンがやってきた。

 

「今日はありがとうございましたセツナ」

「何の。コシャリというエジプトの国民食を勉強させてもらったよ」

「では私のお気に入りのテイストを味わっていただきましょう」

 

あいこだろ?と想いながらシオンセレクトのコシャリを達也と共に食べる。トマトソースではなくキーマカレー風の挽き肉を合わせながらも、味を単調にしないためか、玉ねぎの漬物、酸味が効いたもので味を引き締めたコシャリがこの上なく美味い。

 

「こういうのもあるんだな……」

「ええ、我がチーム・エルメロイの如き意外性を持たせたレシピですよ」

 

どうやらこの挽き肉は鶏を使ったらしくタンドリーチキン的なところもあるようだ。それらの旨味を吸う米と麦と麺。炭水化物のコンボが舌の上で踊っている。

 

「ところでだ……なんでこんなに接近してんの?」

「アラビアンな料理を食べているのですからアラビア〜ンな美少女を侍らせて食べるのが乙な趣味なのでは?」

「そんな趣味はないんですが」

 

なにその酒池肉林ver,アラビアンナイト。とはいえ、赤い顔をしてすり寄ってくるシオンに抗しきれないのは―――、彼女が魅力的な少女であるからだ。

 

「セルナァアア!!! 私のチョイスも食べてみてください!!」

 

「大声で言うようなことじゃないってか君など本日の選手みんなの為に作ったものなのに!!」

 

「セツナ、ワタシのアメリカンテイストを味わって!ワタシの身体とともに!!」

 

「卑猥すぎる!」

 

相変わらずの様相(モテモテ王国)を見せる刹那の周囲から自然と去りつつ、達也は一人になれた環境で現在の状況を考える。

 

(明日からは新人戦。本戦プログラムと同じく最初はロアガン、ソード&ウィザーズからだ)

 

殆ど未知の戦力を揃えているチーム・エルメロイがどうなるか。

 

そして現在の順位は……。

 

1位チーム・エルメロイ

2位三高

3位一高

4位二高

5位四高

6位七高

7位五高

7位八高

7位九高

8位六高

 

という状態になっている……順位ではそんな感じだが得点差において5位に着けている四高と下位高校との点差はそこまで開きがない。

 

つまり……新人戦で浮上出来れば上位争いにも食い込める位置に着けている。

 

一番いいのはエルメロイが、ここで順位を大きく落としてくれることだ。

だが、それを期待できない……。しかしながら―――。

 

「コシャリ、か……」

 

様々なバリエーションを以て万人の胃袋を掴むとんでもない料理。炭水化物のオンパレードだが、それを食べていると、ほのか、深雪がやってきて自分たちのテイストチョイスを食べるように促される。

 

(新人戦は奮起してもらうしかない)

 

一年生各位がどれだけ戦えるか、相性の善し悪しもあるのだから一概には言えないが、それでも……。

 

(俺に出来ることは殆ど無いからな)

 

道具を万全にしたとしても、最良の作戦を立てたとしても、どうしても勝てない点がある。

 

(身一つだけがスペシャルに鍛えられているアスリート……)

 

2024年という時代のパリオリンピックにて流行ったネットミームでありながらも最高のアスリート。

 

射撃競技で一世を風靡した『無課金おじさん』……トルコ代表として出場した銀メダリスト『ユスフ・ディケチ』のような身一つと銃を一挺だけで戦うものたちがチーム・エルメロイの本質なのだ。

 

(だが勝ってやる!確かにそれはアスリートとしては正しいのかもしれないが、魔法競技としては平易な考えではないのだからな!!)

 

負け惜しみと分かっていても、それだけは技術屋として認められない達也の考えが走りながらも……新人戦―――ルーキーズの熱い戦いは始まる。

 

 

 

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