魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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感想欄にも返信しましたが、結構勘違いさせたみたいで申し訳ありませんでした。


今回来日しているスターズ隊員はシルヴィア・マーキュリーだけなので、その辺りを明確に今回描写できたかと思います。

重ねて誤解を招き申し訳ありませんでした。


第41話『九校戦――会場入り――』

「それじゃ全部の準備はいいですね?」

 

「忘れ物無し、必要なものは全て揃っています!!」

「同時に、不測の事態の場合のマネー残高、電子及び現金ともに余裕あり」

 

 

 リビングにてシルヴィアの質問にまるで新米少尉の如き声と態度で答えてカバンの中身を見せるリーナに対して刹那もお互いの財布の中身と端末残高を見せて冷静に返しておく。

 

 

「よろしい。では後は出るだけですね。やはり遠出する時は色々と不安になりますからね―――第三者が確認しなければなりません」

 

 

 オカンか?と思う程に、もはや姉貴分通り越して母親の顔をしているシルヴィアに少しだけ不安を覚えるリーナと刹那であるが、本人は何度も頷いて満足しているようなので、そこは特に突っ込まないでおいた。

 

 

「では、あちらでは一度は顔を見せてくださいね。お小遣いの催促をしても大丈夫ですよ」

 

「いやいや、本格的にオカンだよ。大丈夫マーキュリー?」

 

「そうです。シルヴィも楽しんでくださいよ。みんなが来れない分、撮影だけに執心しないで」

 

「アビゲイル博士編集の結婚式で流すビデオの追加素材が欲しいので、まぁその辺りが済めば―――日本の魔法師達の祭典(フェス)。楽しんでもいいかもしれませんね」

 

 

 そんな理由で来たんかい。と思うと同時に、リーナと刹那の端末に秘匿されたメール形式だがUSNAから様々な激励メールが入ってきた。

 

 それに目を綻ばしつつも、今から泣いてはダメだ。けれどちょっと泣きそう。男の子だもん(寒)

 

 

「泣くなよリーナ」

 

「そうね。泣くときは――――アナタの家のお嫁に行く時だけよね」

 

 

 その回答もどうかと思うも、そろそろ出なければいけない時間である。

 窓などの施錠。同時に魔術的な施錠(ミスティロック)を掛けることで、一種の魔術防災を順繰りに掛けながらシルヴィアも忘れ物無しな荷物を持ち出る準備が整う。

 

 家の玄関を抜けると二台の自動車型のキャビネットが配置されていた。最後の施錠を掛けたことで、刹那が帰って来るまでここには入れないようにした。

 そんな様子を見たシルヴィアは、満足してから最後までオカンな態度と姉貴分としての言葉を二人に掛けた。

 

 

「さて、では―――がんばってきてくださいね二人とも!」

 

「はい! 行ってきます!!」「がんばってきます」

 

 

 刹那とリーナはバスターミナル行きのキャビネットに、シルヴィは駅行きのキャビネットに乗ることで、二手に分かれる形となる。

 

 シルヴィアの激励を戦端として九校戦が幕を開いたといってもいいだろう……。

 

 

 † † † †

 

 

「ふむ。遠坂刹那か……まるで、はじまりの魔法師『――――』のような男じゃな。経歴不明、出生不明、同時に今までの魔法師の活動実績も不明」

 

「まさしく謎の人物よね。それでいながら、その理論は『最古でありながら最新』―――そうとしか言えないなんて」

 

 

 ロード・エルメロイⅡ世という人物に師事した少年の授業は、学校の垣根を超えて、場合によっては違法配信で国の垣根すらも越えていき、全ての『行き詰っている』魔法師たちを熱狂させた。

 

 もちろん、栄達に栄達を、栄光の階段を上っていた人間達の耳目も集めること間違いなかった。自分達『国立魔法大学付属第三高校』―――通称『三高』の人間達もだ。

 

 少女二人。少し古めかしい言葉遣いの『四十九院沓子』(つくしいんとうこ)と少し冷めたというかドライな印象を受ける『十七夜 栞』(かのうしおり)とが言い合い、遂に件の男と今日にも対面出来るのだと少しそわそわする想いだ。

 

 

「二人とも、男のことでいちいち気を揉まない。所詮、どう言った所で我々と同じ15,6の少年なのですから、第一、本当に高貴な淑女であれば、あちらから声を掛けてきましょう」

「とか言いながら愛梨が一番、そわそわしていたよね?」

 

 蜂蜜色の豊かな金髪にアメジスト色の瞳の美少女。周囲の空気を変えてしまうぐらいに整った人間―――そんな彼女の取り繕った言動を否定する栞。それを次いで沓子がからかいの言葉をかける。

 

「うむ。昨日などいつもよりもエルメロイレッスンをヘビーリピートして大画面の引き伸ばしで、遠坂刹那を見ていたからの。そして今でも暇を見ては端末を弄って、呆けた顔で遠坂刹那を見ているぐらいじゃ」

 

「ち、違いますわよ! そう言う恋慕とかではなくて―――そう! 倒すべき敵として! 十師族およびナンバーズが築き上げた社会を維持するためにも、いずれは打ち倒すべき相手として見ていたのですわ!! 言うなれば呪いの札を叩きつけるように『視線』で穿っているのです!!」

 

 呪殺の視線、エルメロイレッスンによれば、『石化の魔眼』(キュベレイ)というのが有名らしい。そういう体で見ていただけだという愛梨だが、無理である。

 第一、倒すべき敵とは言うが、男子と女子では競技種目が違うし、そんな男女無差別級なリーグも無いのだ。

 

 魔法力に『性差』は無いだろうが、それでも分けられているのは―――まぁ『伝統』なのだろう。荒事に使われることも多い魔法ではあるが、それでも本当の荒事において最前線に立つのは男なのだから。

 

 無論、必死になり焦って否定した三高一年女子『一色愛梨』(いっしきあいり)の心には、そんな風な『ライバル心』というのはなかったのは明白なのだが。

 ほのかな憧れのみを伴った心が灯っていたのだが……。

 

 新幹線型のキャビネットの中で、そんな風に騒いでいた連中。車両の一つ全てを、かつての相撲取り、修学旅行生の如く借り切った三高の一年生徒のかしましい声に『若いなー』と老人の如く感じるのは、彼女らの先輩である『水尾佐保』である。

 

 カチューシャで止めた前髪が特徴的なデコ先輩は、言うか言うまいかを決めかねている。一年女子の中でも目立つこの三人。

 俗称『悪役令嬢と二人の取り巻き』などと男子から言われている連中と親しいのも佐保なので、皆からせっつかれてしまう。

 

『真実を知らせてやれ』という同級生及び二年の後輩たちからの無言の圧力に耐えて耐えておく。そうしていたのに―――。

 

「そうだ。水尾先輩は一高にナンバー交換している知人いるんでしたよね? 遠坂君がフリーかどうか知れば愛梨もヤキモキしなくていいかもしれない」

 

 き、きやがった―――!! 内心でのみ『エクレール』(稲妻)にでも撃たれてしまったゼニガメ(?)の心地になってしまう佐保。

 思わず背筋を正してしまう『しおりん』の言葉に、佐保は覚悟を決める。まひじょうたいで何も出来ないではなく、少しだけHPが残ったサトシ(?)の水ポケモンの根性を思い出すのだ。水尾佐保!

 

 自分を叱咤激励してから椅子の逆座りの如く高い背もたれから顔を出して後ろにいた後輩に対して口を開く。

 

「えーとね。三人とも、特に一色。おちついて聞くようにね。私も彼の授業が始まってから気になって色々聞いたんだ。それによるとね――――」

 

 伝えられる驚愕の事実。

 恋人は居る。ちょーラブラブ。『若干』人目を気にしないバカップルという三つの言葉(呪文)で、一色の表情が曇る。

 

 彼女とはアメリカにいる時に知り合う。両親にも一応、挨拶済み。『本家』の爺さんも好意的。

 その言葉で気付いたらしき『トウコ』と『しおりん』が、端末の画像―――遠坂刹那の隣をズームアップ。

 

 一色の表情が、曇天から―――荒天へと変わる。これはもう嵐が来るなと気付く。

 

 恋人は『アンジェリーナ・クドウ・シールズ』。ミドルネームから分かる通り『九島』の系譜で、金髪碧眼の超美少女。一高の一年では『ある生徒』と人気を二分しているとのこと。

 

 

「それと彼女と本当ならば九校戦期間中に婚前旅行を企画していたとかなんとかとも聞くからね……大丈夫、一色?」

「こ、こんな理不尽許されていいんでしょうか!? あれだけ憧れていた男性―――いえ、打ち倒すべき敵として認識していたというのに―――」

 

 端末を握り潰さんばかりにわなわなと身体を揺らす一色の姿は三高の生徒にとってレアすぎたが、吹き荒れるサイオンがとんでもないものだ。

 

「取り繕うとしてももう手遅れだから! 素直に打ち明けなよ……けれど、そのね。諦めた方がいいと思うよ……横恋慕とか略奪愛とか、一色みたいな子に出来ないでしょ?」

「出来ます!」

「そこはウソでも、『無理です』とか言っておいてよ!! 即答とかウチの後輩予想外すぎ!! と、とにかくアンジェリーナさん。通称リーナさんと遠坂君は恋仲なの」

 

 エクレールの文字通り稲妻の如き即答に水尾佐保は驚くも、そういうことだと伝える。荒天で少し落ち込んでいたところからの復活。

 予想外な一色の百面相に佐保としても、頼もしいやら不安定すぎるとしていいのか、少しだけ考える。

 

「けれど愛梨に勝ち目はないと思う」

 

「なんでよ? こんなヤンキー娘。如何に九島の系譜と言えども傍流の出で、私が勝てぬ道理はありませんよ!」

 

 令嬢としての誇り、現代に『生み出された貴族』としての矜持で栞に返す愛梨。彼女は己が数字持ちの家の直系であり、誇り高い魔法師であることに尊大ではないが、それを誇る。

 

 その姿と態度は、刹那が見れば『地上でもっとも優美なハイエナ』を思い出しただろう……。

 

「いやいや、確かに見目の麗しさではいい勝負かもしれん。お主もリーナも外国の血が入った純粋な日本人では醸せぬ美があるのだが……」

「このグラマラスバディに対して――――愛梨の『普通』(アベレージ)なスタイル……。33-4だよ」

 

 

 言葉を濁す沓子の後に言って栞が表示するアンジェリーナ・クドウ・シールズの全身画像。

 投影画像で引き延ばして表示されたそれに映る一高制服越しでも分かる欧米系のスタイルに歯噛みする一色愛梨。

 

 しかもその画像は刹那の腕を取って並んで歩く画像。

 こんな今では見かけない恥ずかしすぎるバカップル、誰が撮ってるんだよ。と余計なことを思うぐらい一目見て分かるほどに……アンジェリーナのスタイルは群を抜いていた。

 

「ぐぬぬぬ……、こんな勝敗の着き方ありますか!? いえ遠坂くんとて、こんなおっぱいと尻がデカいだけのヤンキーに内心辟易していますわ。ならば、大和撫子でありながら、フランスの血筋の私が、このヤンキー娘を打ち倒して見せるだけです!!」

 

 なんとも前向きな結論の出し方。とはいえ、直接話をしなければ分からぬこともあるだろう。それからだ―――そこで打ちのめされてしまえば三高のエースは、戦う前から撃沈してしまうかもしれない。

 賭けだな。と女子陣及び男子陣も考える。

 

 ちなみに言えば三高男子は一色を引っ掛けることは既に諦めていた。この令嬢の誇り高さとそれに裏打ちされた実力は、同じナンバーズ。それも上位でなければ無理だろう。もしくは遠坂刹那のように『視るものが視れば価値が分かる男』でなければならない。

 

 

 ――――そんな三高男子の中でも、条件に『当てはまる男子』の一人は、後ろの方の喧騒に呆れるように苦笑していた。

 

「相変わらずだな一色さんは」

「まぁ彼女と『マサキ』がウチの要だからね。気持ちを転換してくれたのは助かるよ」

「それは買い被りだ。三高の本当の要は『ジョージ』お前だよ。俺とお前で三高を優勝に導こう」

 

 隣り合う席に座る男子二人の会話を耳ざとく聞いた多くの男子がからかうように言ってくる。

 

「おいおい一条、吉祥寺ー。俺たちには何も期待していないのかよ?」

「いいえ、もちろん先輩方の力は疑っちゃいませんよ。ただ俺たちの力―――微力でも三高の優勝に近づけようという決意表明ですよ」

「言うじゃねえかよ。だが頼んだぜスーパールーキーズ。お前たちが、『遠坂刹那』を打ち破ってくれれば、勢いが着くぜ」

 

 戦闘系魔法を主要なカリキュラムとして採用している三高だけに、若干他の高校よりも体育会系の匂いが強くなるのも仕方ない。

 そんな中で一条将輝と吉祥寺真紅郎という優しい顔立ちというか、似合わぬ人形じみた容姿は色々と先輩たちを惹きつけた。

 

 だが、それでも認められたのはやはり、その実力が本物だったからだ。同時に将輝も真紅郎も、この気風のいい先輩たちの為に優勝旗であり優勝杯を獲ってあげたいと思うのだった。

 

 そうして―――三高の新幹線が徐々に静岡に近づく中、一高もまた静岡に向かっており―――目的地に到着すると同時に二人ほどが、くしゃみを数回した……。

 

 

 † † † †

 

 

「リーナが二回で、にくまれくしゃみ」

「刹那が三回で、おもわれくしゃみか、噂したのはどこのどいつなのやらだな」

 

 そんなものは迷信だろうが、と司波兄妹に言えないのは『魔術師』としての性だろう。

 

 達也と一緒に台車を押して皆の荷物を所定の位置に持っていく必要があるからだ。しかし、高速道路は本当に『快適』だった。

 特に何の『事故』や不測の事故も無く『四台のバス』が、不足なく目的地に到着したのだから……。

 

 

「にしてもリーナって歌が上手いのね。これだったら、もっとはやくにカラオケに誘うべきだったわ」

 

「い、言わないでよミユキ。確かに歌は好きだし、上手いとは自負しているけれど、だからこそカラオケに行けないわよ」

 

「??」

 

「そこで俺に目線向けないで、白状するとだ。リーナと一緒にカラオケ行くと8曲ぐらい連続で入れて日笠さん(?)メドレーにしてくるから、近所の兄ちゃん姉さん方ドン引きだったんだから」

 

「ちょっ! セツナ!! それは言わないでよ!!!」

 

 深雪に言われた時よりも羞恥心が増した顔のリーナに引っ付かれるも台車の押しに乱れは出さない。

 思い出すのはニューメキシコのフェニックス基地に併設されたパブでの事だ。如何に兵士とはいえ、未成年を盛り場に行かせるのは不健全だという一種の倫理観の緩和の為とリーナの仲間はずれ感の緩和のためということで……。

 

 カラオケ装置で謳わせたのだが、まさかメドレーで一挙に入れてくるとは思っていなかっただけに、すごくみんな―――盛り上がって、総隊長の意外な特技であり趣味に少しだけ親近感を覚えたとのこと。

 

 しかし、他の人間にマイクを使わせず『ワタシの歌を聴け―――!!』などという熱気で婆娑羅(バサラ)ものな状態になるとは思っていなかった。

 

「まぁ何かの余興でやってもらうのもいいかな?」

 

「本人の意思確認は密に―――とはいえ、任されてしまえばやる女だよ。リーナは出来る女だ」

 

 

 考え込む達也に一応、釘をさしておく。が本人は本当に悩んでいたようだ。

 

 

「ううっ、まさかニホンの旅行では退屈な移動中に歌を披露するのがデフォルトだと知らされていたのに、こんなことになるなんて……」

 

 シルヴィアの指示だな。と刹那は内心では思いつつも、そこは指摘しないでおくことにした。

 

 ちなみに三年生主体の車両では会頭がバラードでフェロメンな歌声を披露してみんなをうっとりさせたり、二年生主体の車両では桐原先輩が『アレ』なコミックソングで車内を色々な空気にさせて、『武明、ちゃんと歌いなさい』などと遠方にいる父親からお叱りを受けたりしていたそうだ。

 

 道理で二年生が出てきた時に、気持ち悪そうな顔をしたり、反対に面白そうな顔をしたりしていたようだ。

 

 変化が無かったのは五十里先輩と千代田先輩であったが、アレは例外。二人だけの世界を作って『結界』としていたので影響を受けなかったのだ。

 

「『懇親会』までは時間があるな。刹那、これを届けたら一旦、部屋に荷物を運ぶか―――俺もお前も『特殊』だろう?」

 

 刹那と達也の宿泊先が特別なのは色々と考慮した結果なのだろう。一年生であるのに1人部屋のシングルダブルの部屋を宛がわれたことに誰も疑問を持たないのはどうかと思うが。

 

 そんなこんなで男二人の予定が埋まると同時に女二人も生徒会長に呼ばれていたので自然と分かれる。

 達也とて二科生に渡される校章入りの上着の受け取りがあるのだ。

 

 手早く済ませなければならない。古めかしい旅行鞄を部屋に入れると同時に、領域化。あちこちに遠坂刹那の『意識』を浸透させていき、刻印と宝石を使ってなるたけの工房化をさせていく。

 

 遠くには富士山の絶景が見える窓の風景―――魔術師の工房であれば、特殊な状況でない限り『地下』にあった方がいいのだが、やはり日本有数の―――というか誰も『管理できない霊峰』を有する霊地である。

 地下に設営した工房の如く『調子』が良すぎるぐらいに領域化が済んでしまう。部屋の中心にルビーを溶かした魔法陣を敷くと全ての作業は完了した。

 

 凡そ40秒の早業であった。

 

 

「今は―――こんなもんでいいだろう」

 

 

 もう少し凝っておきたいものもあったが、それは懇親会から帰って来てからでいいだろう。しかし元来の凝り性である達也は少し時間がかかっているようだ。

 部屋から出て、未だに友人がいないことをそう結論付けた時に―――背筋を粟立たせる魔力が放たれる。刻印が自然に警戒を発して魔術回路が、叩き起こされる。

 

 

 危険―――そうとしか言えない気配は廊下の突き当たりから出てきた。紅眼に眼が覚めるような銀髪を一本編み上げてお下げにして背中に垂らした女。

 スタイルは正に欧米系のもので、リーナとは違い北欧系だろう肌の色をした女は―――魔性の魅力をこちらに向けていた。

 

(あの制服は―――四高の制服)

 

 

 クリームホワイトとでも言えばいいのか、アクセントも何も無くズボンやレギンス程度が黒としてあるだけの白系統の制服はまるで新雪を思わせる。

 そんな制服が外連味なく似合い埋没しないのは―――女のどこまでも赤い眼があるからだ。

 

 

 その赤眼は魔性の瞳だ。歩いてきた。もはや自分との距離は五歩も無いまでことで、その女に危険を覚えていたのだと気付き。

 

 

「私と同じね。贋作者(フェイカー)―――」

 

 

 耳元で囁かれた言葉で振り向いた時には、既に刹那の背中の方にあった突き当りに進んでいた。背中を見せながらも曲がろうとしている女は、ガンドでも撃つように人差し指と魔性の眼であり整いすぎた顔をこちらに向けて―――。

 

「トオサカ・セツナ―――キミは私に恋をする。これは運命(Fate)よ……逃げないでね?」

 

 ウインク一つを残して放たれる処女神アルテミスの放つ『愛矢恋矢』の如く言う少女―――恐らく二年か三年だろう女の言葉をレジストして、逃げるかよ。と睨むも呆れるように去っていく女。

 

 そんな様子は―――ばっちり出てきた達也に見られており―――。

 

 

「お前は本当に、色んな女に絡まれるな。しかもどいつもこいつも『異常者』の類だ」

「なんでだろう。お前にだけは言われたくないな」

 

 そう返すと達也は少し人の悪い笑みを浮かべていた。

 

「リーナに言っていいか?」

「夜食に鎮魂海鮮八宝饅頭を差し入れよう」

「契約成立だな。けれど、また絡んでくると考えれば割が合わなくないか?」

「いいさ、元々夜明かししてまでも光井や雫にエリカのCADまで面倒見るだろうことは予測していたしな。というか深雪からの要請だった」

 

 ツーカーで言い合いながら、結局あの女―――四高の人間に関しては達也の『情報網』でも引っ掛からない人間らしい。

 

 留学生ということも考えにはあるという言葉を聞きながら階段を下る。急ぎではないというか、あまり早めに会場入りしたくない達也の心を気遣っての事だったが―――。

 表情を見ると、とりあえず海鮮饅頭を楽しみにしていることだけは分かる表情であり、達也が変わったなぁ。と考えるのだった。

 

 そんなこんなで階段を下ってから目的地であるレセプション会場へと赴くとそこそこの人だかりが出来ていた。

 魔法科高校九校合同の懇親会―――九校戦前の前哨戦も始まろうとしていた……。

 

 

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