魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第42話『九校戦 懇親会の騒動』

 

「いささか演出が過ぎたかしら?」

 

「彼はお嬢様を敵視していました。まぁワケが分からなさすぎましたな」

 

「同郷の出がいきなり現れたんじゃそうなるか。あちゃ。また失敗したわね……とはいえ今は顔見世程度……私も色々と事情があるもの」

 

 『ドイツ』への『留学』から帰ってきて早々に九校戦に入り込んだのだ。同級生や後輩たちの為にも勇戦しなければなるまい。

 

 刹那の目の前から去ってからいきなり現れた傍らに立つ巨漢の従者という『体』の在りえざる巨漢―――『従僕』(サーヴァント)は、いつでも明快だ。同時に人の気配を察知して霊体化を完了させる。

 

「いたいた! 『イリヤ』先輩! そろそろ懇親会ですよ」

 

「はーい。いま行くわ。待っててねー」

 

『『待ってまーす♪』』

 

 

 部屋から出てきた気に入りの後輩達に軽快に返しつつ、四高に用意された階層の部屋。伊理谷理珠(リズ)の私室に入り込み赤と銀の化粧箱から口紅を取り出して薄くルージュを引いておく。

 

 半年ぶりの日本……あの霊基グラフに反応があった日から覚えていた。来てくれた。私のただ一人の繋がり―――、母から寝物語に聞かされていた。

 運命の邂逅。同じ『父』を持つがゆえの親愛をいずれ一身に注ぐのみ。

 

 

「待っていたわよ。セツナ―――私のたった一人の『家族』……アナタが嫌でも私に眼を向けるようにしてみせるんだから」

 

 

 手早い準備を完了させてお色直しをした『リズ』は、部屋を出て後輩たちに合流。色々な声を聞きつつも、霊体化した巨漢に周辺警戒を命じる。

 

 眼のいい連中がいれば、『万が一』ということもあり得るからだ。

 

『承知しました。リズお嬢様―――』

 

 言葉と同時に最高位のゴーストライナーがセキュリティ上、絶対に入れないはずの場所で警戒体勢を開始する。

 

 

「さぁ戦争よ――――」

 

『『『『はい! お姉さま!!!』』』』

 

 

 号令一下、銀髪紅眼の魔女の指揮のもと四高も前哨戦へと参加することになるのであった――――。

 

 

 † † †

 

 

「コンシンカイ―――って結局ティーパーティーみたいなものなのね」

「政治的なものは含まれていない普通のものとしたいんだが、もうちっと正確に言えば、若手の将校たちの集まりみたいなものだな」

 

「私も誘われたわね。ただのボードゲームやダーツゲームをするだけだと思いたかったけど」

「絶対にロクでもない誘いだよ。第一、未成年を誘うなってんだ」

 

 ここまで英語で会話しながら、そうそう盗聴されないようにリーナと話していた。そうしなければ、何というかあれだったからだ。

 

 パーティー会場に一高全員、扉を開けながら入ってきた時に様々な視線と声が上がった。

 好意的なものは、かなり好意的なものだが、悪意的なものは悪意的だった。

 

開けゴマ(open sesame)したらば、そこにはアリババが望む宝は無かったな」

「隣にいる恋人が、唯一の宝だと実感することね♪」

 

 それに関しては全面的に同意である。腕を取って引っ付くリーナ、少し前までは一高の他の一団といたのだが、別に固まっても良くないだろう。

 

 めいめいの体で動いていく人間達。他校の知人に挨拶、ライバルとの意思確認。とりあえず仲良しグループで固まりつつ相手の出を待つものたち……。

 

 煌びやかなパーティー会場。いつぞやライネスとエルメロイ先生の従者の体で訪れたバルトメロイ派の社交界を思い出すも、あれよりは『選民意識』に凝り固まっていないのは、歴史が浅く派閥も脆弱だからだろう。

 

 そんな中、勇気を出して五高の一年だろう人間が、一応魔法師界のセレブでありプリンセスであるリーナを引っ掛けようと声を掛けてきたのだが……。

 

「SORRY、先客であり一生を遂げる人がいるの♪」

 

 と笑顔で断りを入れた。刹那の腕を取りながらの言葉に五高の生徒全員が撃沈。

 五十嵐も、少し離れたところで言葉を聞いていたが、不沈艦の異名に違わず逆らおうとしていたが耐え切れず轟沈。

 ……今日は五の数字に優しくない日なのだろうと少しだけ同情しておく。

 

 そうして、いずれは恐らくリーナの『親族』が入るだろう高校の辺りに美味しそうなメニューがあるのを見て、それを食べてみることにする。

 

「ベリーティスト! これって白子の天ぷらってやつよね? 中々食べられない―――ああ、美味だわ」

 

 リーナが熱中しているテーブルには、珍しいというかなかなか見かけないものが置かれていた。

 リーナに倣うわけではないが、一つ口にして食べると絶妙な調理がなされたもので『魚卵』の中でも火の通しに気を遣うものだから―――この味は中々である。

 

「ふむ。「解析」して後で作ってみるか……何か他に作ってほしいのあるか?」

 

「嬉しいわセツナ。和食のスキルを上げていくことで、ワタシとセツナの子供は、この世の全てを知り尽くせる人間になれるのね♪」

 

「遠大な計画。まぁ中華と洋食が得意なだけってのも『日本人』としてまずいよな」

 

 普通の日本人ならば、この時代『料理』が得意というのは特に気にしないものであるが、やはり本当に『美味しいもの』を作るには、手作りでやらなければいけない部分もあるのだ。

 そんなこんなで和食エリアのテーブルで舌鼓を打っていたらば―――。

 

 少しの空気の乱れを感じた。誰かが近づいてきて、こちらに近づいてきた存在に『近づこう』とするものを感じる。

 

 感じつつも、こちらから動くことはしないようにした。出方を窺いつつ、リーナの口を拭くためにハンカチを使う。

 

「そこは口で掬い取るとかしてよ。セツナの意気地なし」

「そんな恥ずかしいこと、こんなところで出来るか」

 

 こんなところじゃなきゃやっているのかよ。と気付いた連中の口に甘い感覚が生まれたが―――。

 それ以上に和食エリアに近づいてきた金髪に注目が集まる。

 

「あの三高の一色さんですよね。よかったらお話でも」

 

 積極果敢に話しかけた七高の『モブ崎』を感じて、とりあえずその応対を見守る。

 腕組みして誘いを聞いていた一色だが……。

 

「あなた―――十師族?百家?何かの優勝経験は? 誇れるべきものが無い人間と語る舌を私は持たないの」

 

 睨みつけるように言ってくることで面食らった様子のモブ崎Ver,7が焦ってそんなものはないと言ったことで、一色とかいう女は―――。

 

「話すだけ無駄ね。行きましょトウコ、シオリ―――」

 

 にべもないあしらいで返した一色なる女がブーツを鳴らしながらやってくる様子を感じる。

 

(どうやら目的は俺かリーナのようだな)

 

 出来ればリーナでありますように、などと思いつつ―――とりあえず無視するように卵焼きを食べていたのだが……。

 

「――――」

「セツナ、このイカメシっての美味しいわ。今度家で作って!」

「新鮮なイカを手に入れられるならばな。まぁ豊洲に直接出向いてもいいか」

 

 

 そんな風にとりあえず和食を食べていたのだが―――何だろう。何も話しかけてこない様子に少しだけ怪訝な想いである。

 

 一色は、こちらに話しかけてくるかと思ったのだが、一向に話しかけない様子。取り巻きの2人も焦った様子で一色をゆすっている。

 

 

「はー……お腹一杯だわ。それじゃ戻りましょう」

 

 リーナが、刹那の腕を取って歩き出そうとする様子に怒りのプレッシャーが吹き荒れていき……。

 

「ちょっと待ちなさいよ!!!」

「いでで なっ!何するだァーッ!!!」

「ワタシのセツナの肩を! ゆるさんッ!」

 

 一色なる女の横を通り過ぎようとした時に、肩を思いっきり掴まれてしまった。

 たいして痛みは無かったが、今の今まで無視されてむかっ腹が立っていたと思われる力が籠っていた。

 

「よくも今の今まで無視してくれましたわね……天地に敵なしとまで言われたこの一色愛梨! ここまでの侮辱を食らうとは思っていませんでしたわ!!」

 

「はぁ……けれど、先程のモブ崎Ver,7への対応から察してリーナはともかく俺に何か用があるとは思えないんですが」

 

「というかこっちも用は無いのよね。あっモリサキが何かを叫んでるわ」

 

 リーナの指摘で一高の方を見ると、確かに何か叫んでいる。つーかみんなして俺達の方に注目を集め過ぎである。

 

 そしてモブ崎Ver,7もまた叫んでいるモブ崎の顔を見たことで―――ちょっとしたシンパシー『君の姿は僕に似ている』状態になっていた。

 面倒なというかどうでもいいことに二人のモブの間に梶浦サウンドが鳴り響いているのを横に―――相対しあう二人と三人。

 

 注目が集まっているのが少し辛い。

 

「私の名は三高の一色愛梨、こちらは十七夜 栞、四十九院沓子―――以後お見知りおきを」

「一高の遠坂刹那です。こっちは―――」

「妻の遠坂アンジェリーナです。どうぞよろしく」

 

 ぴきっ! と空間に亀裂が入ったように感じる。

 

 リーナの挨拶に動揺の声が周囲から漏れて―――。どよめきは広がっていき―――更に広げる一言が放たれる。

 

「そして私は第二夫人の遠坂雫。よろしく」

「どっから出た―!?」

 

 いつの間にか、リーナが左隣に引っ付くのと相対するように、右隣に現れた北山雫が変な挨拶をしてきた。

 

「あっちも三人の挨拶ならば、こっちも三人で対抗するべきだって達也さんが」

 

 いつもの無表情な顔のままに言ってくる雫にホントかよ?と思って達也にバチバチっと火花を飛ばすも首を横に振る達也が―――ハンドサインで『健闘を祈る』としてきたのに対して、『ふざけんな』と返しておく。

 混乱に混乱を呼んだことで、とんだ『うしろゆびさされ組』となってしまったものだ。

 

 周囲からは……『あんなナイスバディな彼女がいるのに! ロリな愛人までいるのかよ!!』『おのれ遠坂刹那! 奴こそが魔法師界のドン・ファン!』『魔法師のラスプーチン!!』『いつかヤツを倒して、ラスプーチンのように陰茎をホルマリン漬けにしてくれるわ!!』

 

 最後の言葉を言ったヤツは自分の母校の女子からすっごい冷視線を浴びていたことだけは確かである。うん、口は災いの元。

 

「んで一色さん……巷では大層な名前で呼ばれている君が、俺みたいな二十八家はおろか百家ですらないその辺の有象無象の魔法師に用事があるのか?」

 

「いや違うわよセツナ、この微妙にビジュアルが被っている女は、ワタシに用事があったのよ―――というより見てると少しムカつくわ」

 

「同属嫌悪ってヤツかもねリーナ。ファイティングゴールドして相打ちになって」

 

 三人揃って微妙に相手を逆撫でするのはどうかと思うも、その辺りはやはり二十八家の一つ。持ちこたえたようである。

 しかし……口元がぴくぴく動いているのは内心では、むかっ腹が立っているからだろう。

 

「このエクレール相手になんたる口の利き方……ですが、今は容赦してあげましょう……五月の一度目の授業より会いたかった男子と直に会えたのですから」

 

「……御贔屓にしてくださってありがとう。けれど、先程のモブ崎セブンへの発言を鑑みるに、本当に有象無象の一人である俺に何の用事が?」

 

「あなたの技術、古式魔法でありながら最新の理論として昇華して紹介する手法、そして―――『はじまりの魔法師』にも値するだろう能力……二十八家や百家の括りでなくとも、その『力』は億の財宝にも匹敵しましょう。それだけで私が話しをするに値する相手ですわ」

 

 つまるところ、スカウトか。それを感じた。

 この子は見込みがある人間などをそのように自分の懐に加えているのだろう。

 

 価値なき者、有象無象の手に渡り、ぞんざいに扱われるぐらいならば、自分の手に入れておきたい……そういうことだ。それは貴族として、『貴いものとしての責務』なのだろう。

 

 なんだか『小母』……母のライバルであり親友を思い出させる女の子だ。

 髪がリーナのようにロールしていて、『もさもさ』していれば、本格的にそれを思い出して抱きしめていたかも。

 

 そんな思考を読んだのか、きつく腕に巻きついてくるリーナ。上目づかいで見上げてくるリーナの不安げな顔に対して、頭を撫でることで対応。

 

 不埒な思考だったと反省。真っ直ぐに向き直ってエクレール・アイリに言葉を放つ。

 

「悪いけれど、俺は九島の爺さんにも挨拶してしまったし、前回の『八王子クライシス』でも十師族に色々と眼を着けられた。『四葉』からも『スカウト』された。断ったが―――そんな『毒持ち』の俺でも懐に加えようってのか?」

 

 出てきた名前の不穏さに、ざわつきが広がる。その辺りは、ばれていたとはいえ、他ならぬ本人の口から出てくると色々と衝撃的だったろう。

 これで収まるかと思い、少しの安堵を覚えていると―――。

 

「当然です。私のモノになりなさい。いいえ、なるべきなのです遠坂刹那。価値あるもの、眩く輝きながらも妬みを受ける者、正当な評価を受けないものは須らく私の庇護のもとで輝くべきなのですから」

 

 沈黙。そして何故か栞という女の子が微笑を零して一色を見てから、仲間になれとでも言うかのような視線を刹那に寄越す。

 

「本気か?」

 

「無論、それ以外にも……少しだけ異性として興味もありますから……ダメでしょうか?」

 

 その言葉で『左腕』の締め付けが強くなる。それに抗するはずの『お袋』も『嫁』と一緒になって息子を問い詰めているかのようだ。

 解せぬと思いながらも反論する。

 

「……君の言葉や態度を見ていると、一人の魔術師を思い出すよ……母にとってのライバルで親友、俺にとっては『小母』とも言える女性だった。『地上で最も優美なハイエナ』と呼ばれて様々な神秘を収蔵していくコレクターだった」

 

 言葉の後に、自由な方の右手を振ってスターサファイアを出現させる。その『手品』に誰もが息を呑んだ。どっから出したと思っただろうが、構わず言葉を続ける。

 

 

「俺の『親父』も彼女のスカウトを受けたこともある。ただ最終的に彼女を選ばず俺のお袋を選んだ辺りは―――まぁ何というか色々あったんだろうな」

 

「つまり?」

 

「君よりも俺はリーナの側にいたい。それだけさ。何かの価値とは蔵や額縁に飾って『誇る』ものではない。価値を『流動』させることによって―――『変質する世界』に身を置いておきたいのさ」

 

「セツナ……」

 

 宝物として収蔵されるぐらいならば、それを許容するというのならば、あの時―――部屋の外に来ていた連中。カリオンの執行者に我が身を任せてしまっても良かったのだ。

 それを許せなかったのは、己の意思一つで決めていくことで生きていくと決めたからだ。闘うと決めたからだ。

 

 忘れはしない。自分自身が選んだこと。今はまだ笑われたっていいさ。己で決めた事の行先を見届けるまで―――あの『剣の丘』にいる『英雄』のように―――立ち止まらない。

 

 口を押えて感極まったリーナと瞳を合わせる。その碧眼―――スターサファイアの如き瞳だけがこの世界で自分が隣にいたいと思った星なのだから……。

 などと雰囲気出していたのだが……。

 

「納得できるか―――!!!!」

 

「「なんでー!!!??」」」

 

 

 人差し指をこちらに差して大声で言い放つ一色愛梨。赤い顔で怒る様な様子も含まれている。

 なんかこういうやり取りもきっと刹那が生まれる前には、お袋、親父、ルヴィアとの間であったんだろうなと思わせるものだ。

 

 息子としては絶対に見たくない光景だったろうが……。

 

「確かに考えは理解出来ました! アナタが自由闊達にやっていきたいことも理解出来ました! けれど! それは私の下でも出来ますよ!! こちらにいる栞だって、私が金沢の研究所に誘って才能を開花させた天才なのですから……アナタにも、もっと輝ける場所を提供したいだけなのです!!」

 

「いや、俺の場合、研究所で実験するよりも宝石に魔力を込めていた方が鍛錬になる『金がかかる男』だし―――」

 

「一色家の財力を舐めないでほしいです! そこのヤンキー娘よりも私の方がずっと側にいるに相応しい女の子に決まってます!!」

 

 説得が全く成功しない。どう言えば納得してくれるのか、まるでどこぞのアマゾネスの女王のようである。

 英雄アキレウスの苦難とヘクトールの苦難が分かるというものだ。

 

 どちらかといえばアーサーを勧誘しに来たルキウス・ヒベリウスかもしれないが……そんな感想を内心でのみ出しつつ、再びの説得をする前にリーナが怒りの眼で睨みつけるようにして前に出てきた。

 

 刹那と一色愛梨の間に立ちふさがったシリウス(天狼)は、眼前にいる『金狐』に対して勝負を挑む。 

 

 

「さっきから聞いていれば、何を以てしてセツナの隣にいるのを相応しい相応しくないなんて決めつけるのよ? 誰を愛して誰をパートナーにするかなんて例え魔法師と言えども、いいえ、魔法師だからこそ守らなければいけない人権の発露よ」

「確かに魔法師の社会はまだ若く新しい。だからこそ新たな息吹を感じたのならば、それを弾圧されないようにしていかなければならない―――アナタが『九島』でどれだけの地位か知りませんが、この人を守っていけるんですか?」

 

 クドウの系譜だと分かっていても、一色のリーナに向ける眼は道端の野良犬でも見るかのように鋭いものだが、それに負けるリーナではなく毅然と言い返す。

 

「守るんじゃないわ。お互いに助け合うだけよ。互いに無いものだからこそ互いに輝ける星(シリウス)があるならば、それを尊重しあうだけよ!」

「言いますわね。このヤンキー娘……それでも! アナタがどれほどの星を持つかも分からない現状では、そんなもの空手形にすぎません」

「アンタだって十師に選ばれていない時点で同じじゃない。そもそもアンタは一目見た時からムカついていたわ。所詮はワタシの『デッドコピー』程度な気がしてならないぐらいには!! ワタシのセツナに色目を使うんじゃないわよ!」

「奇遇ですわね。私もあなたを見た時からムカつきがありましたわ……本来ならば来日するのがもう少し遅ければ良かったのに、この場にいるべき金雌(ブロンダー)は私、一色愛梨ひとりで十分! USNAにお帰り願いたいですね!!」

 

 お互いに『倶に天を戴くこと能わず』『不倶戴天の仇敵』とは、この二人のことを指すのだろうか……。

 というか二人してメタな事を言い合わないでほしいものだ。そしてリーナの言葉は森夕先生(?)に対して失礼すぎる。

 

 何より美少女二人がガン着け合い罵り合う姿なんてあまり見て嬉しいもので―――そうでもないようだった……。まぁ二人とも綺麗だし可愛いし―――ガン着け合うと同時に胸がぶつかり合う姿。

 

 意図しているわけではないのだろうが、その光景を見せられているだけに何も言わないのだろう。もっとも側にいる女子に睨みつけられて視線を逸らすぐらいには、ガン見していいものではない。

 そして五十嵐は鼻血でも出したのか、鼻を抑えて辰巳先輩に心配そうな顔をさせて、姉貴にも心配させていたりした。

 

 周囲を観察した後に袖を引っ張られて見るとタッパに差があるとはいえ、そんなことしなくてもいいだろうに……アピールかと思う雫の催促があった。

 

「刹那。私のお父さんは大財閥の社長。航も『僕の兄さんになってほしい』とか言っていた。受け入れ態勢はバッチリ」

「雫、それはそれで何か考えちゃうから止めてくれ。財に眼がくらむのはある意味、遠坂の罪科だからさ……」

 

 雫のさりげない宣言に頭を悩ませつつも、第三勢力の参戦に二人の意識が向けられた瞬間―――会場が若干暗くなる。

 

 誰もが、その現象に何かを勘付く――――。勘付いた時には……アナウンスが為される。

 

『突然でありますが、若干のプログラム変更を行いまして―――御来賓の方より挨拶を賜ります』

 

 そういやそんなこともあったな。と気付き、魔法師社会の『名士』の中の『名士』

 

 ロード・マギクスたる流石に十師族は来ていないかなと思っていたらば……。

 

 

『まず最初にお言葉をいただきますのは、かつて世界最強と目され二十年前に第一線を退かれた後も、九校戦をご支援くださっております九島烈閣下に登壇していただきます』

 

 

 そんな予想外過ぎるイベントが、最後に待ち受けているのであった――――。

 

 


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