魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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最新刊、さらっと読んだが、お家断絶もありえそうなかの家の運命はどうなる!?

佐島先生次第だが、なんか石田先生の絵柄が安定していない……個人的な感想を言いつつ、最新話どうぞ。


第52話『九校戦――蒼穹を穿つ。決戦前』

 

 

 

 

 約三分間のインターバルといってもいい時間中。孫の婿になる予定の少年に説明をした。

 その説明は端的に言えば―――新たなステージに移行するための条件は満たされていたことに終始した。

 

 何もお前だけに用意されたわけではない。と言うも、不満は多いようである。

 

「……ということでお前が『狙って』打ち砕いたスニッチ……ならぬ『黄金虫』は、このスピードシューティングの裏ルール……。ジャックポットステージ(大当たり)に移行するためのキーだったということだ……過去、二度ほどこのステージに移行したものはいたが、どいつも、偶然での破壊であったからな……最終的に、CADの性能ではどうしようもなくなり、早々に棄権したよ」

 

『当ったり前だ。軍用兵器じみた『機械』を性能制限されたCADなんかで、どうにか出来るかよ!?』

 

「その通り。それは『常識的』な回答。しかし……挑戦して壊せれば本戦一位分のポイントだぞ?」

 

 

 VIP専用の観覧席にて、前置きする形で、様々な事情を観客及び参加選手である遠坂刹那に説明するも、当然の如く乗り気ではない。指さして言ってくる刹那の姿に老獪さを見せる。

 

 悪魔の誘いを掛ける……。これは、今の一高にとって喉から手が出るほどに欲しいもののはずだ。棄権するか否かは、無論―――選手次第。

 

 だが、その前に―――。

 

 

『いいでしょう! 九島老師、その提案受けます!! 刹那君! ばっちしやっちゃって!!』

 

『おおーい! 俺の意思はガン無視ですか!?』

 

『お前ならば、CADの制限など要らないだろうからな……遠坂家の復興の為にも、お前はアピールが必要だ』

 

『これ以上のアピールは必要ないし目立ち過ぎても『結論は出たな。上役の命令には魔法師ならずとも、共同体においては、それなりに従うぐらいの気持ちは必要だぞ』―――」

 

 

 七草と十文字の子供達の言葉に更なる反論をしようとしていた刹那を黙らせる形で、言葉を重ねた烈。

 

 そうして、シグナルランプの点灯と同時に、かつてインド軍で開発されていた機動鋼殻兵装『ガルーダ』が稼働を開始しようとする。

 

 時代遅れの廃物と見られているが、この手のロボット兵器は、魔法師以前の新時代の兵器と見られていたのだ。

 

 強力な外部装甲で身を固めたまま、熱核エンジンの推進力で敵要塞へと突入。外壁を突き破った後は、『四肢』を展開しての機動破壊モードに入り内部制圧を目指す。

 その運用思想たるや…まるで―――『魔法師』のようではないか……魔法師が生身で出来ることの『大半』をかつての兵器は思想として持っていたのだ。

 

 

 今回のガルーダは四肢を展開せずに飛行するだけだが、本来ならば、そう言うこともできる。

 

 まぁ魔法師とてまだ完全な『飛行』『飛翔』を実現できていないので、そう言う意味では、この兵器が優れている点もあるだろう……。

 

 

 ともあれ烈の後ろで観戦している二人の弟子と、プリンスの父親とが見ている前で、どこまでやるかである。

 烈にしても、響子から聞いた時に、遠縁…とまではいかないが、外国の親戚(アンジェリーナ)の元に、奇妙な少年がいると聞いてから、それとなく探ってきた。

 

 一度本気で当たったことで分かったことは古式の中でも異色の中の異色―――。しかし、『もしや』と思わせるものが烈にあった……。

 それは―――眉唾なもの。いわゆる20世紀前半に隆盛を極めて魔法師の誕生と同時に、勢いを無くした都市伝説・オカルト・ホラー・SF……ありとあらゆるオカルティズム的なものを特集した雑誌などに紹介されていそうな……。

 

『予言』であった。その予言は『入道』の耳と目にも入っており、尚且つ国のトップたちには知れ渡っている……古臭い言い方をすれば『ファティマの予言』である。

 

(九重流……その源流に近い『七夜彩貴』が書き上げたその予言は―――)

 

 

 当たってほしくないものだ。そう思いながらも虹色の閃光を上空に飛ばすことで開戦の号砲とした魔宝使いが……。

 

『―――了解した!! 地獄に落ちろ! 十師族!!!』

 

 

 そんな悪罵の後に10分間ものタイムアタックにして、鳥を撃つ試練が始まる。そして無言で九島烈は―――悪罵に思うこともある。

 

「……この世は最初から地獄だよ。刹那」

 

 老人の忠告は、若造たちには分からない寂寥感を伴っていた……。

 

 

 † † † †

 

 

 蒼穹を見上げると、そこには悠々と飛んでいる軍用兵器。あからさまなジェット音こそないが、それでもその巨大さに対して対策はある。

 

 撃ち滅ぼせる技巧もあった……しかしながら、問題は、『容易』に破壊できるものは使えないということだ。

 

 あれは『創れても』『使ってはいけない類』である……。持込み検査委員(捕獲尋問開始中)の苦労が報われない。そんなわけであって―――やるべきことは一つである。

 

 今までは己を補強するためであった刻印を射台に『転写』する。

 

 

「―――Anfang(セット)

 

 左の袖を捲って、素腕を晒しながら射台の床に手の平を着ける。奇異な行動に思われただろうが、それでも構わず瞑想(メディテーション)の要領で必要な魔法陣を描いていく。

 

 その意味合いは誰も分からないはず―――いや、一人か二人はいる。多くの人間には分からない―――これが正しいか。

 

 あんなデカブツを宝石か魔弾かルーンで打ち倒すとなると、先程までの『機動砲台』としての機能は捨てなければならない。機動力を犠牲にしてでも作り上げたのは『固定砲台』。

 

 如何に動き飛びまわるものとはいえ、それでは倒せない。刹那を中心に刹那の手から四方に魔法陣が展開して、その魔法陣が更に違うモノを己の四方を埋めるように展開。

 

 そして照準装置か何かのように光り輝く『ハイロゥ』が、目の前を回転する。魔法陣もその幾何学的な紋様を見せつけるように風車のごとく回転を続ける。

 

 合計すれば19もの『循環層』を作り上げながら刹那が見据えるべきは、何の脅威も感じていない。

 

 

 ここは生粋の霊地。富士からの供給は刹那の独占状態。これがあちらも魔力を『大源』からまかなう『刹那よりも上位の幻想』であれば、別だったかもしれないが―――たかが機械兵器。

 

 搭載できる火力と燃料には限りがある。動力源の無限さは―――こちらにこそある! などと虚勢を張りつつも、余裕なのか何なのか―――こちらに攻撃を加えていない……。

 

 

 先制攻撃はそちらに譲ると言わんばかりの鳥に―――刹那と鳥を繋ぐ途上に虹色の魔法陣を配置。

 

 決闘儀礼の作法よろしく手袋を投げつけるかのようにスターサファイアを投げ込んだ―――そして刹那は拳を握りしめて―――。

 

 

「連弾、連装、連結―――、直列直弦励起―――全術式、最大解放―――」

 

 

 呪文でダイナモの如く回転する『炉心』に己を繋げた。ありえないことに五指を高射砲の如く鳥に向けて、膝立ちのままに魔力と魔弾を解き放つ。

 

「放て! 我らが大師『キシュア』が系譜の目指すべき秘術―――是、赤月砕き(モーント・フィンスターニス)!!」 

 

 19の内の八つの魔法陣が左手を大砲であり粒子加速器にするかのようなそれを見て、その動きと宣言の言葉の後には(ソラ)を狙い、見えている金星(ヴィーナス)に対して届かせるかのごとく『大砲持ち』の『狙撃手』が、己の手から閃光を解き放った。

 

 全員の網膜が焼きつくのではないかと言う、失明すら予感させかねない光量。光の束を撃ち放つ刹那。

 その辺りを気遣ってか刹那はどうやら『遮光の術式』を一帯に張り巡らせていた。

 

(余計な事を気遣わせてしまったな……)

 

 

 達也が立ち上がり、せめて結果ぐらいは見届けんと『精霊の眼』で上空を見上げると、魔弾であり魔晄の輝きは一直線に『鳥』を穿った。

 

 ジャストタイミングで鳥に光を浴びせた刹那の攻撃の行方―――。

 

「やったか!?」

 

「やってない。健在だ」

 

「ウソでしょ!?」

 

 

 レオの言葉に即座に否定をしたが、疑うエリカ。当然だ。直撃して現在も光を放つ魔弾は―――『赤月砕き』は、光の中にガルダを隠していたが―――、刹那も悟ったようで腕を振ることで攻撃を終えた。

 

 放たれた光はその後も数秒照射を続けていたが、光から若干の攻撃の効果はあったが、それでもまだ健在の状態で己を滞空させているガルダの姿。

 

 

『これはインド軍が作り上げた兵器であるが、若干の改修をして、アンティナイトを装甲版の裏側―――『反応装甲』として採用させてもらっているのだよ』

 

 

 アンティナイトという言葉。そして反応装甲と言う言葉で、達也は察する。あのガルダにとって、先程の照射など然程の――――。

 

 

『とはいえ、魔力圧が尋常では無いせいか、戦力及び耐弾効率が、かなり削れている七割減の戦力だな』

 

 

 ボロボロと複数の翼のようなエルロンが崩れて、姿勢制御が乱れる。どうやら、古式の秘術が現代の物理法則と科学理論を利用した飛翔兵器を病葉寸前にしたのは間違いない。

 落葉の如きエルロン(補助翼)が捩じ切れる音は物理法則の断末魔。

 

 それでも軍用兵器としての残り三割を崩すとなれば―――。

 

 

『だが、ここからは機動戦だ。一応、火薬の量や爆散時の破片にも気を使ってはいるが―――気を抜かずに残り四分間で倒してみたまえ』

 

 

 九島烈の画面越しの言葉の後には、模擬弾だろうがミサイルなどが放たれて今までとは段違いに機敏に動く。

 

 手を向けた刹那は、殺到するミサイルを次から次へと魔力レーザーで撃ち落とす。

 否、刹那だけでなく地面に転写した魔法陣も自走砲か何かのようにレーザーを放つ。

 

 恐らくあれが、四月の『八王子クライシス』で、一高全体に援護射撃を降り注がせたものの正体なのだろう。

 

 高速で位置を変えて次から次へと軍用兵器を吐き出すガルダに対して防戦一方の刹那という姿に見えるが――――。時々、位置を変えて何かを虚空に刻んでいる。

 

 

(何かをやっているな……なんだ?)

 

「――――魔術師(メイガス)ならば、己に無いものならば、『有るところ』から持ってくる。今のセツナにとって必要なのは、手数を増やしてかつ『ガルダ』の機動力を『封じ込める』もの……」

 

 

 リーナが達也の疑問を理解したように、滔々と語る。その疑問は、戦闘に長ける全員が思うことだ。意思を持たない自動兵器では、いつまでもガルダの中枢を打ち据えられない。

 

 となれば、どうするか?―――。その時に刹那の眼が『灰色』になっていた。魔眼の一つだな。と思って―――しかし、機械兵器に使えるのかと思う。

 

 外的なものに対して視認をかけるだけで様々な効果を発揮するはずのそれが……機械兵器に使えるのかと思い……。

 

 

『―――投影、霊魂(トレース・オン)

 

 

 そんな言葉の後に、ルーン文字の回転する呪帯(ベルト)が、刹那の前と左右に三つほど浮かび上がる。

 

「灰の眼とフサルク(共通)ルーンによる……『幻体投影』―――いけるわ」

 

 リーナだけは、その術式の正体を見破り、勝機を作り出したのだと感じた。いや、伊里谷理珠もまたそれを認識して、獰猛な笑みを見せていた。

 

 そして変化が現れる。ルーンのリングから輪郭を伴った何か―――魔力で形成された『人形』のようなものが出来上がっていた。

 黒色、桃色、金色の髪を持ち野暮ったい服から少し露出激しい服のとりどりの『三姉妹』を形成させて―――。

 

 

『Gehen!!!』

 

 

 突撃や攻撃を意味する言葉で、黄金の装飾具(?)のようなものを腰の辺りに浮かべて背中まで双角の如く伸ばしてから、飛び立つ。

 

 機械兵器のセンサーでも、その魔力で形成された『人形』は視認出来ているらしく、眼球に当たる部分が忙しなく動く。

 

 まさか、自分の領域に入り込んでくる人間がいるとは思っていなかった鳥はターゲットとされていた相手か、それとも周りを飛んでいる魔力体なのか迷う。

 

 

将星(サーヴァント)か?)

 

(それの、うーん。なんといったらいいか……それの『贋作』(フェイク)よ。とりあえず機能としては10分の1程度。灰かぶり(シンデレラ)の術式って言っていたわ)

 

 

 リーナに小声で聞いても、要領を得ない説明。教えてもらえるならば、後で教えてもらおうと思う達也だが、舞台は絶好調。

 

 有体な言い方を言えば、その人形は古式ゆかしく何かのファンタジーな作品でも頻繁に出てくる『魂の導き手』(ワルキューレ)という『天女』に似ていたのだから。

 しかし、こんなものばかりやって魔法師の実像を一般ピーポーに誤解されかねないなぁと思うのも達也が、『魔法師』としては異端だからだろうか……。

 

 そしてリーナに耳打ちするような様を見られたらしく近くの深雪と遠くの刹那とに睨まれる。

 ともあれ、残り二分―――。そろそろ決めなければいけない……。という達也の反応とは別に―――金と銀の魔女たちは確信を得ていた。

 

「勝ったわ。完全勝利よ」

 

「ええ、シンデレラによるワルキューレの『投影体』なんて無茶するけれど、これで決まるわ」

 

 

 リーナの言葉に重ねてきたのは四高の伊里谷理珠―――確信を以ていう二人の乙女に答えるように、ワルキューレは三つの槍を打ち出して主推進機関を砕かれた。

 

 自動機械にお決まりなエラーゆえに最後まで優先ターゲットを決められなかった結果である。

 

『迷い』という隙を作り上げた刹那は再度、赤月砕き(モーント・フィンスターニス)という……かめは〇波か、ギャリ〇ク砲じみた一撃を放ち―――もはや堕ち行くだけであった鳥を完全に焼却するのであった。

 

 そして役目を終えたワルキューレ達が、消え去ると同時に季節外れの白鳥の羽が降り注ぐ戦場に勝者を示す表示が出た。

 

 

『JACK POT STAGE CLEAR!!! Congratulations!!!Congratulations!!!』

 

『『『コングラッチュレーションズ!!!!』』』

 

 

 鳴りやまぬ歓声の中に黄色い声援が混ざって、そんな言葉を浴びる刹那は、苦笑しながらも声援に手を振って応えている。

 

『ド派手な勝利』で初戦を収めた刹那。完全に空気を一新したと言ってもいいだろう。

 

 雫の新魔法といい、これにて一高が―――色々と有利になったのは間違いない。

 

 とはいえ……ここまでしては、刹那に対して『制限』(ギアス)が掛けられるのではないかと思う。

 

 無論、あれがBS魔法的なもので、CADに対するチェックのように掛けられないのは大会委員たちも分かっているだろうが……。

 

 

(まぁ、俺のこんな杞憂なんて刹那にとっちゃどうとでもなることなんだろうな)

 

 

 手札の強力さ以上に豊富さこそが刹那の持ち味―――制限を掛けられたならば、それに値する力で返す。

 などと考えていたらばC組の切り札が自分達の近くまでやってきていた。片手には22世紀に至ろうとしている日本でも愛される飲料『ポカ〇』が握られていた。

 

「司波君、みなさん。会頭達が呼んでいます。祝勝歓迎のために控室に来いとのことです」

 

「んっ。すまないな。伝令役みたいなことさせて」

 

「気にせず。モノリスで準決まで進まない限りは僕も暇ですから」

 

 

 相変わらず表情が読めない相手だが、このC組の切り札の真価を発揮させるためにも……森崎たちにはがんばってほしいものだ。

 

 ともあれ、C組の切り札が言う通り一高の控室に向かわざるをえまい。さてさて、何が起こるやら……。そんな達也を見ていたのは伊里谷理珠であり、何となくいい視線とは言い切れなかったのは蛇足である。

 

 ・

 ・

 ・

 

「よくやった。そしてボーナスポイントゲットは感動した!」「本当に助かったわよ! ありがとうね刹那君♪」

 

「どうも。とはいえ入った途端に中々に手荒い歓迎でしたね」

 

「体育会系はこんなもんなんだよ。慣れておくといい」

 

 

 一高の御夫婦からの言葉の後には沢木先輩の人の悪い笑みを浮かべながらの言葉。

 まぁだいたいの面子は力加減を理解していたのでいいのだが、女子陣が少し力加減が下手くそであった。

 

 刹那の様子は平素と変わらない風に見えるも、一息突く辺りはやはり疲れはあったようだ。空いている席に座ると同時に持っていた清涼飲料水を飲んだ様子に、少しだけ誰もが安堵する。

 

 あそこまでやった後でも表情変えないと少しだけ、なんか―――『恐怖』してしまいそうだった。

 

 

「大沢は残念だったが、森崎も予選を通過した。何とか入賞してもらいたいもんだがな」

 

「トーナメント表次第でしょ。まぁ吉祥寺も一条もやるようですからね。後は五高の炎部(ホムラベ)が、強敵かな……」

 

「それ以上に悲惨なのは遠坂君のあとの選手たちですね。一応決勝リーグへの通過は出来たんですが、どんぐりの背比べな結果です」

 

 

 刹那の力の一端でペースを乱された連中は、刹那と同じくゴールデンス〇ッチを落とそうと眼を凝らしたりバイザーの照準器を何とかしようとするも……。

 

 そもそも刹那が『制限なしの地力』だけで壊せたものを、『制限ありのCAD』でどうにか出来ると思うのだろうか。

 

 しかし、あんな空気の中で、やるとなれば、『自分も』と思うのだろうか。結果として自滅する。

 結局、自分が原因なのだなと刹那は自省する。

 

 

「大会委員からは何かなかったんですか?」

 

「何も無いな。確かに威力は大したものだし刻印神船なるものの精度・緻密さも相当だったのだが―――所詮はクレー射撃における破壊手段は『サイオン弾』の連射にすぎないからな。ケチの着けようがなかったのだろうよ」

 

「星爆……あのリモートマインだか、纏繞機雷(ワイヤーマイン)だかなるものも?」

 

「インデックスを探せば似たようなものはある。それにしたって傍目には『サイオン弾』の連射にしか『俺たち』魔法師には見えないのが、お前の『魔術』のズルいところだな」

 

 

 達也の疑問にすらすら答える十文字会頭。

 どうやら刹那が戦っている最中に、他の高校の生徒会などの上層部からも、やんややんや言われていたが大会委員……恐らく九島烈の『説明』を聴いていた人間たちが、やってきて他の高校のクレームを黙らせた。

 そういうことらしい。

 

 悔しいければ、CADに頼らずに地力で『鳥』を砕け。という話を聞いて―――肩を落として去っていく他校。

 

 

「魔術は現実世界を『変革』できるという確信と、相応の集中から成り立っている『現象操作術』……まぁ理解が出来ないのは仕方ないですね。俺のは物理法則に『断末魔の絶叫』を上げさせ続けているようなものですので」

 

「で、だ。刹那―――決勝リーグまで時間があるが、あのワルキューレみたいな『魔力の人形』は何なんだ?」

 

「ワルキューレと気付ける辺り、達也もオカルトに対して傾倒してきたな」

 

「茶化すなよ。前に、リーナが八王子クライシスで見せてきたものに似ていたから察することが出来たんだ」

 

 

 達也も最初からフィクションに関してだけの思い込み(既視感)でいたわけではない。最近の身内の姿から何かのデジャブを感じていたことに気付けたのは先刻の話である。

 

 ともあれ、刹那はそこに関しては―――やはり説明をしてくれた。

 

 

「簡単に言えば『マンナズ』(ヒトガタ)のルーンを使っての『幻体形成』であり、そこに容姿と能力を被せてもらったのさ―――もっと噛み砕けばルーン文字で魔力のマネキンを作り出して、そこにあのワルキューレ三姉妹の姿を被せて動かした」

 

「つくづく規格外だな……つまり、お前は魔力を使えば『多重影分身の術』が出来るのか?」

 

「何を媒介にするか次第だけどな。俺の『兄弟子』がよくやっていたことだ。獣性魔術の応用で半ば物質化した魔力体で攻撃を仕掛ける……、そこに俺は『投影魔術』を使ったんだ」

 

「投影?」

 

「儀式などに際し、どうしても用意出来なかったオリジナルの鏡像(コピー)をほんの数分ほど魔力で物質化させる―――それだけの魔術だ。高度で大量の魔力を食われるわりに、『意味』が薄いすっごい『無駄』。まぁ魔法師側からすれば、あまりにも出鱈目だろうがな」

 

 当たり前だ。達也の顔を見ながら考えるに魔法師側は物質界に対する『改変作業』ばかりは達者だが、魔力を使って何かを『顕現』させることは大変に出来ていない。

 

 

「ともあれ、それ(投影品)だけじゃ何も出来ないからな。『灰の魔眼』を使ってそこに灰を被せて、『シンデレラ』とした」

 

「?」

 

「シンデレラは期間限定の姫君。12時の鐘が鳴るまで、王子に釣り合う姫君とする魔法……そういうこと」

 

「意味を噛み砕くに、その幻体をワルキューレにしていたのはお前の魔眼ゆえなのか?」

 

 話すのも疲れたというか、喋り過ぎるのも嫌だと思っているだろう首肯する刹那に、根掘り葉掘り聞きすぎたかと思ったが、実は違っていたりする。

 達也も知っている通り、場合によっては刹那は『本物』の『一部』を世界に顕現できる。今回は意思持つ存在なんぞ出したらば、あまりにも『インチキ』すぎるかと思って、自重したのである。

 

 しかし、そうして『格を落とした術式』(ランクダウン)を披露するというのは、『隠匿』という方向性を意識していたとしても、魔術師『遠坂刹那』の意識からすれば、実に下策であったのである。

 

 

 とはいえ、容易に『披露』出来ない時には、この『疑似的な英霊召喚』は、重宝されてしまう。

 そして今の刹那にとっては、もう少し『違う手』があったはずだと思っていた。

 

 具体的にはルーンで編まれた『巨人』(ユミル)『鳥』(スィアチ)でも顕現させて怪獣大決戦してれば良かっただの……変な反省をしている……―――聞いていれば魔法師側は『ふざけるな』だのと言いたくなるようなことを想っているのだろうと気付けたリーナは、達也と会頭の質問攻めを終わらせるように、ひっつかまえて用意されていたソファーの上で膝枕することで沈黙させた。

 

 

「この後もセツナの試合は続くんだから、それ以上はヤボじゃないかしら?」

 

「それもそうか」

 

 

 リーナの少し怒る様な言葉に若干不躾であったかと思う達也。

 

 他者の魔法を探らないと言う魔法師の律を思い出した時点で、いや人間誰でも秘すべきことは秘したいものだ。

 己で洞察し、理解出来るならばともかく―――謝罪するも、刹那は気にするなと言ってきたが―――。

 

 

「あー。制服越しとは言えふとももやわらかーい」

 

「もうっ。セツナのスケベ♪ HENTAI♪ 次の試合までにワタシのヒザマクラで癒されていなさいよ♪」

 

 

 そんなやり取りをするバカップル。こんな大勢が集まった場所で、やってくるとは空気を読めとかいうツッコミが入る前に―――。

 

『ぶほぁっ!!!』

 

 

 誰もがその『甘い空気』にやられた。最近は耐性が付いていたと思ったのだが、ただ単に抑えていたようで誰もが砂糖を吐いてしまう。

 

 狭いとまでは言わんが人口密度があり過ぎる場所でのこの行為……こいつら只者ではない……!やはり『天災』(バカップル)か…。

 

 

「ぐぅうう! 啓! 負けてられないわ!! 皆の調整役で疲れているアナタをいまここで癒してあげるわ!!」

 

「えっ!? いや、今は色々とあるから忙しくて―――」

 

「いいからこっち! シットダウン!!」

 

 

 違うソファーで膝枕する千代田と五十里のバカップル。まぁ五十里先輩も、今は達也のアシスト程度―――次の本戦モノリスまでは暇なので、そんな風な役得があっても構わないだろう。

 

 だが、やはり二組には空気を読んでほしくて独り身には辛い空間であった。そんな空間において争いが勃発する……刹那風に言えば『なんでさ』という疑問ばかりである。

 

 

「お兄様! 調整で疲れている様子であるならば、私が膝枕を―――」

 

「達也さん! 深雪でみんなにイケない兄妹を疑われる前に私を―――」

 

「リーナ。交代。同じシューティングどうしで、通じ合える私が膝枕をする」

 

 

 やんややんやと変な争いが起きつつあっても先輩方は何も言わずに仕事に入る。仕事が無い面々も、忙しそうな体を取って何かをやっている感じで―――。

 

 その時間潰しの間に待ち望んでいたものがやってきた。

 

「新人戦スピードシューティングのトーナメント表、上がりました!」

 

 本戦シューティングと同じようなやり取り。持ってきたのも同じ市原先輩という状況で、刹那もスッとリーナの膝枕から起き上がって大画面に表示されたトーナメント表を見る。

 

「………! カーディナル・ジョージと三回戦で当たるだと……!?」

 

 

 そりゃお前が勝ち進めればの話だ。と無言で刹那と達也が森崎に対して思う。もっとも、余程のポカをしなければ、そこまでは問題無いはず。

 

 そして刹那の方は、順当に進めれば、件の『真紅』(カーディナル)か森崎とは準決勝で当たり、三高のプリンスは、準決で龍王の一人『炎部(ほむらべ)ワタル』とで戦った結果次第……どちらになるかは分からない。

 だが、両方とも『どちら』が来ても、刹那としては面白い思いだ。

 

 

「私とエイミィは―――準決勝までは安泰かな?」

 

「十七夜と同じく焔部(ほむらべ)が関門だろうけど。滝川は、くじ運悪かったな」

 

「言ってくれるじゃない遠坂。アタシじゃ十七夜栞に勝てないとでも?」

 

「可能性は高い。あの娘の持つ『マセマティックス・アイ』は一種の『脳の高速思考』ゆえだからな……滝川がそれに追い縋れるかどうかだ」

 

 雫と話した序でにC組の選手の位置に感想を言うと険悪に絡まれた。まぁ当然の反応と言えば当然である。

 しかし、そこを何とかせねば―――滝川は三回戦で負けるはずである。

 

 その辺りを警告しておいたが……それが吉と出るか凶と出るかは……神のみぞ知るとしか言えない。

 

 スピードシューティングの新人戦決勝リーグ……新たなる熱き戦いの開始まで二時間を切った頃の出来事であった……。

 

 

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