魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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ということで二話掲載。

場面転換とかめんどくさい説明とかで画面が息苦しい感じがしただけなんですけどね。(苦笑)


第66話『九校戦――決戦Ⅰ アンジー・シリウス』

「パンツァー!!!」

 

「こいつ! フィジカルブースト持ち!? だとしても!!」

 

 

 レオが勢いよく叩いたボール。相手コートに撃ち返したボールに干渉しようとする相手校の選手たちだが、それはさせない。

 

 ただでさえ高速で動き回り更に言えば魔力の重みで干渉しづらくなっているボールに幹比古は重ねて『精霊』を付けることで、相手コートに固定させていく。

 

 掛けようとした魔法の前に割り込まれて違う位置に飛んでいくボールを前に察したものが叫ぶ。

 

「SB魔法!? 精霊か!?」

 

「ご明察。悪いけどそのままコート内を動き回れ」

 

 意思持つかのように何度も不規則にバウンドをして、果ては犬の散歩のように駆け回る四個のボールを前に五高の選手たちが右往左往する。

 それでもいつかは掴まる訳でラケットで特化型のCADで、こちらに返されるも―――。

 

 幹比古を後衛。レオを前衛という役割……普通のテニスのダブルスのようなそれを前にして、レオは動き出す。

 

「おっそいぜ!! 『化け物女』の魔弾も動きも!! これ以上なんだよ!!」

 

 ラケットに仕込んでおいた『硬化のルーン』が、レオの得物を強化。同時にボールにもルーンが『スタンプ』されるようにレオはボールを次から次へと打ち返す。

 

 

 鹿の角にも見えるアルジズの羅列がボールをスタンプする。こうなれば相手は必然的にレオと力比べの打ち合いをしなければならなくなる。

 

 守護のルーンが完全に魔力を遮断したボールなのだ。肉弾戦を挑まれて、それらの理屈に左右されない精霊魔法の干渉を用いて―――。

 

 相手である六高に真正面から打ち勝つのだった。

 

「準決勝進出だね」

 

「ああ、なんとかここまで来れたぜ」

 

 なんとか。とレオがいうもそこまでメチャクチャに強い相手と当たってこなかったので、苦戦とは無縁だったのだが……。

 

「田丸君も越前君も準々決勝進出か―――なんとか1年男子の面目は保てそうだね」

 

「全くだ。昨日の新人戦の結果だけならば、刹那に『おぶられていた』からな」

 

 

 欲を言えば優勝を目指したい。刹那と同じくこの九校戦の『主役』となることで並び立ちたいのだ。

 

 しかし―――ここから先は人外魔境の極み……気を引き締めて挑まなければどこで足を掬われるか分からない。

 

 その想いはレオも一緒で拳を叩きあわせて『勝利のルーン』をスタンプしあう。

 

 

 選手控室に戻ると同時に待ち構えていたエリカ及び光井から飲み物を貰う。ありがたい限りだが……この後は―――。

 

 

「さぁてとミキ、レオ。恒例の千葉家秘伝の整体術で完調に戻してあげるから覚悟―――じゃなくて安心して施術を受けなさい」

 

 

 拳を鳴らしながら言う言葉ではないものとエリカの表情で夏場にも関わらず寒気がしたが、それは幹比古だけであり―――。

 

 

「んじゃ頼むわエリカ。正直、動き回り過ぎたからな―――どうなってるかわかんね」

 

 意外なことにレオは気楽な調子で答えて、その整体術を受けるつもりのようだ。

 

 言われた方のエリカも少しだけ呆けた顔。

 

「おや珍しい。弱気?」

 

「勝つためだ。酸素カプセルに入ってもいいんだろうが、次の対戦相手も見ておきたいんだよ」

 

 確かにここまでの試合、レオは動き回り過ぎている。

 基本的には後衛で補助術で相手コートへの干渉や来ても反射で撃ち返す幹比古は、役割分担が分担だけに若干楽させてもらっている。

 

 レオが勝つために、そこまでするならば自分も必死になる。いやならざるを得ない。

 

 

「エリカ、僕も頼む。ここまでの戦いで僕らの戦術も視られているならば何かの対策を取られかねない」

 

「ん。分かったわ。マッサージルーム使うわよ」

 

「相手の試合が見られる端末持って来るね」

 

 

 光井ほのかが、その言葉を残して駆けだしていく。そうしているうちに女子の試合、準決勝第二試合が始まる様子が控室のモニターに出る。

 

 チャンネルの切り替えが出来ないのは、融通が利かないのだが、知り合いの試合だ。見て損はあるまい。

 

 

 三高 長谷川千裕 VS 一高 アンジェリーナ・シールズ

 

 

 同じく準決勝で三高の一色と戦う里美スバルの試合よりも注目度は高かった……しかし、どちらもストレート勝ち。

 

 相手に大差を点けて、戦意を喪失させる『王者』の戦い―――体力の温存を考えてもいいだろうに、そういったことに頓着せずに勝ちを奪っていった金色の王者2人。

 

 

(この二人だけレベルが違いすぎる)

(見る限りではどちらも似たような『稲妻』で『加速』していたな)

 

 

 女子の試合は男子と違い2セット先取の最大3セットマッチ……。男子よりも消化とゲーム進行が速いのだが……この二人にかかれば、そのスピードすらも緩慢になる。

 

 予定調和の如く決勝を決めた金色の女神……血の雨が降りそうな予感の元。とりあえず三位決定戦が始まるのだった……。

 

 

 そして三決で勝ったのは長谷川であり、シングルスでのポイントありの入賞はリーナに託されたのだった……。

 

 

 † † † †

 

 

 この会場内にセツナはいない。男子ピラーズが午前。分かっていたとはいえ、少しだけ寂しい想いをしながらも―――、相手を見る。

 

 お互いにトレードマークのような髪型を封じてポニーテールに纏めた姿。

 ここに来るまでに、実に相手の魔法を測ることもなくストレートや試合棄権で勝ってきたリーナは、己を恥じながらも、立ち向かう意思だけは曲げないでおく。

 

「来るとは思っていましたが……いいでしょう。私と貴女は不倶戴天の天敵どうし……どこかで決着を着けなければいけないのですわ」

 

「同時にセツナへの想いも断ち切らせてもらうわ。そもそも……なんでそんなにセツナだけなのよ? アナタならば言い寄って来る男も無数だし、家柄で言えばいくらでもいい男が来るだろうに……」

 

 正直、最初からここまでセツナに対して好意を持っているなど、リーナとしては困惑しているのだ。

 直接出会ってもいない男にここまで焦がれるものだろうか―――そんな困惑なのだ。

 

 自分は特殊な事情と繋がれていた縁ゆえに、彼に好意を抱けた。

 色々聞いていき、お互いに様々なことを知り合えたからこそ、本当の意味で一緒にいることを選べた。

 

 確かに少しだけ一目ぼれに近い想いもあったが、それでも最後にあったのは、傍にいたい。その想いだけだ。

 

 

「私の想いが見当違い。そう言いたいんですか?」

 

「だってそうじゃない……。彼の人物性も知らず能力だけで、そんな風に想えるなんてヘンよ。アナタ」

 

「―――そうでしょうね。それが……普通なんでしょう。けれど、見て想いました。そして貴女の話を聞いて、確信を得ました……セルナに必要なのは、私なのだと。

 アンジェリーナ、あなたのように家門に何もこだわりを持ちきれないアナタではない」

 

 決意を込めて語る一色愛梨。その言葉の意味は―――つまりは……。察せれないほどリーナも鈍くはない。

 

 目の前の相手が純正の日本人ではない容姿。リーナやエイミィなどのように『日本以外』での『国籍』を有していたと言う風ではない来歴。

 

 それでも、己を『一色愛梨』として認めさせるために努力してきた意味は―――この世界に馴染もうとした刹那と同じだろう。

 

「ですが、それはこの試合とは別口の話。今は―――USNAの魔法師のレベル―――見せてもらおうかしら?」

 

 挑戦的かつ挑発的な言葉。リーナの中のボルテージが上がる。眼を細くしながらの言葉は完全に侮りで嘲りである。

 

「せいぜいほざいてなさい……最後に勝つのはワタシよ!!」

 

 黄金の鳥たちの嘴を鋭くしての舌戦のいい終わりと同時にラケットを持ち直す。

 ここまで二人の少女の言い争いを見逃してくれていた審判に感謝しつつも試合開始のブザーは、無情にも鳴り響くのだった。

 

 撃ちだされる低反発ボール。一高指定の緑系統のテニスウェア。

 そして更に動きやすさを考えたのかそれともと思われるスカートのアンダースコートで対応するリーナは少しばかり注目度が高かった。

 

 気品の無い。と普段の愛梨ならば思うだろう。この競技はテニスと似て非なるスマッシュゲームである。

 

 言うなれば『対戦相手』という『壁』を利用してのスカッシュと言っても過言ではない。無論、不動のままで動かずに対応する人間もいるが、それは十師族級の人間が大半。

 

 多くのクラウドの選手は動き回りボールを打ち返すことに執心する。無論、対戦相手が返せない場所にボールを打ち出すのが肝要なのだが。

 

(何かありますわね……ともあれ、今は様子見)

 

(奇襲を仕掛けるのはもう少し経ってからよ)

 

 一個のボールをバウンドさせるまえにラリーしあう2人の女神。その何気ない打ち合い一つですらとんでもない技量であると言える。

 

 一色愛梨の対戦した春日菜々美であれば、撃ち返せずにバウンドするぐらいにはサイオンの重みが乗せられたものだ。

 

 20秒経過。二個目が来る。先手を取るのは―――撃ち返しと射出。どちらのボールも自陣に飛んできたリーナである。

 

 リング型のCADが起動式を解凍。魔法式を投射する準備。

 

 来る―――。認識した後には驚異的な速度で動くアンジェリーナの姿。残像しか見えないとしか言えない―――速度。

 

 

(やはり―――)

 

 

 分かっていたことだが、この女。自分と同じような使い手。まさか遠く北米大陸にこんな人間がいたとは……。

 

 

 一色愛梨命名の『稲妻』(エクレール)と同じく何らかの電気操作で加速しているアンジェリーナに驚愕する。

 愛梨の使う魔法(エクレール)は、知覚した情報を脳及びニューロンネットワークを介さず精神で認識する魔法と、肉体の反射運動を精神から直接肉体に命じる魔法の合成。

 

 専門的に言えば『反射運動』と『随意運動』を組み合わせての加速化。人間の身体を動かす電気信号を直接操作することで、これだけのことが出来ている。

 

 

(ある意味、反射と思考の融合……スターズの『切り裂き魔』ラルフ・アルフみたいなものかな?)

 

 何度もセツナに挑んで研ぎ澄まされていく『若ハゲ』(ハゲじゃねぇ!)と言うだろう男の魔法を思い出す。

 相手の稲妻で撃ち返されたものを更に撃ち返しながら、考えるにアイリ・イッシキのやっていることは、そういうことだ。

 

 超人的な反射速度で動きながらも、他では思考の制御で最適な行動を選択。マックススピードでの行動を活かすプランを即時に実行する一色の技を見てから……。

 

 

(確かにこの技は優秀よ。けれどそこまで―――こんなものは……)

 

 

 我々が2000年前に通り過ぎた場所だっ!! ……無論、ウソであるがそんな気持ちで打ち合うリーナ。

 

 リーナの加速化は、単純な話で身体を電磁弾体とするものである。

 人間レールガン。レールガン女。ミサカミコト(?)などと言われてしまうほどに変態な技だと誰もが言うそれこそがリーナの魔法である。

 

 もともと九島の家はスパークなどの放出系魔法を得意としているが、こうして身体を操作する術は、幻術系統のパレードとの折り合いであまり得意とは言い切れない。

 無論、程度の差はあれどもリーナも一級の魔法師。得意ではないとはいえ一人前以上に出来ると自負している。

 

 だが、それでももう少し早く動きたい。特にボストンでのプリズマ仮面。後に魔法怪盗プリズマキッドと呼ばれる人間を捕まえるためにアビーと共に考えたのが、これだ。

 

 更にそこから魔法怪盗……その素顔。平行世界の魔法使い(セツナ)と魔法使いの『しゃべる杖』(カレイドオニキス)と共にブラッシュアップして考え出されたものが、今のリーナの稲妻の『正体』。

 

 

 ―――フランケンシュタインの怪物などに代表される技能・伝承―――『ガルバニズム』―――。

 

 生体電流と魔力の自在な転換、および『蓄積』が可能。『蓄積した魔力』を『電流』へと変換することで―――リーナは更に加速する。

 

 太ももの側面を撫でて『簡略式魔術刻印』を発現。

 まるでセツナの魔術回路の発露を思わせる……足が複雑な電子回路のような模様になったのを見て、一色愛梨が驚愕。驚愕の理由は……蓄積した魔力にある。

 

 

「まだまだギアあげるわよっ!! 着いてこれるかしら!?」

 

「やれるものならば、やってみせなさい!!」

 

 

 撃ち返すボールのラリー。スカッシュの応酬。しかしスリーカウント取るまでも無く打ち返すリーナに対してシックスカウントまでの猶予を必要とするアイリとでは、撃ち返す数に差が出てくる。

 

 遂に―――撃ち漏らしたボールがアイリのコートを跳ね回る。あれをそのままにしておけばリーナにばかり得点が入る。

 

 クラウドボールは相手陣でボールが制止するなり、動き回ることで打った側に点が入るのだ。

 

 打ち合いながらも転がるボールを何とかしようとするが―――動きが不規則なものになる。アイリの打擲から逃れるようなそれは明らかに不自然。

 

 

(これは―――!?)

 

 

「トレース、オン。アクティブ! アンリミテッドブレイズ!!」

 

 呪文……というよりも音声認識で発動した魔法が、ボールを更に動かす。

 

 まるで……天空から『宝剣』が突きたつかのように、勢いよく飛び跳ねて勢いよく落下してきて完全な着地をするボール。

 

 打ちづらく地面にへばりつくような様子がアイリを苛立たせる。

 しかし何とか移動系統の魔法で『浮かせて』から打ち返す。中々に楽に勝てない相手であると認識する。

 

「ダンシング・ブレイズ……成程、流石はアメリカ人! 話に聞く限りでは武器だけを操るものだと思っていましたけど!!」

「別に明確な物体ならばなんでもいいのよっ!!! 飛び道具なんて達人が使えば投石でもスゴイんでしょ!? オヤマダノブシゲ!!!」

「確かに投石で有名な武将ですけどねっ!!」

 

 

 失点が痛い。高速のラリーに、球自体に干渉する術式。

 時速150㎞のストレートを打ち出されてからの変化球では必定、如何に稲妻と言えども対応しきれない。

 

 自然とアイリの位置は開始直後より後退していた。

 

 間合いを広く取らねば、どこに走らされるか分からない。しかし、その行動自体がリーナにとっては敗着の一手となる。

 

 

「ナナミよりも変化に富んでスバルよりも巧みに動き、アイリ―――アナタよりもワタシは速いわ!!」

「言ってくれますわね! ヤンキー!!!」

 

 言葉で嘲られたとしても、今の一色愛梨は完全に勇気が後退していた。

 

 時にはネット際まで出て積極的に撃ち返していくリーナが先手を取っていく試合運び。結果として撃ち漏らしは、アイリだけに発生する。

 緩急つけてドロップショットのようなネット際への対応が甘くなり―――第一セットは、80-30でリーナが取った。

 

 

 歓声を浴びる中、ベンチに戻る前に立ち尽くす一色愛梨にリーナは胸元から『星晶石』を取り出して言う。

 

 

「―――愛の力の勝利よ―――」

 

 

 睥睨するように言ってくるリーナに歯ぎしりして『先程見えた魔力の転換』を察して答える。

 

 蓄積していた魔力は恐らく…『彼』のものだ。

 それが『体内』に大量にあったということは……更に令嬢としてはあるまじき歯ぎしりをしつつ感情を溜め込む。

 

 この九校戦の期間中に何をやっているんだ。とか、羨ましい。とか、女としての悦びを知っている。とか、単純にムカつく。とか、そういう感情で一色愛梨は、もはや秘奥を晒すことを決意した。

 

「決めましたわ―――。アンジェリーナ、アナタだけは、この私が手ずから降す……! アナタみたいな恋愛脳な女に、セルナに優しく愛撫されたりしているアナタなんかに絶っっつ対!! 負けませんわ!!!」

 

 覚悟を決めた一色愛梨の言葉。ラケットを向けながら言ってのけた言葉に対してリーナは、何故気付いた? という表情を出さずに「いいわよ。やってみせなさい」と言って王者の風格を出して何とかその場をしのげた。

 

 しのげたのだが……。

 

 

『えー注意を兼ねて放送しますが、あんまりにも下品な言葉の応酬は、バッドマナーですから気をつけてください。

 ついでに言えばクラウド女子決勝に深く関わる『件の男子』は現在、三高女子…十七夜栞さんと四十九院沓子さんを横に侍らせているとの情報がありますので、くれぐれも腐った生卵とか投げつけないでくださいね―――♪

 養鶏業者さんの苦労を水の泡にすんじゃねーぞ!!! つーか遠坂!!! アンタは色々と台風の目なんだから自重しやがれ!!!』

 

 

 流石に二回目のNGワードを回避した『水浦敏子』。通称『ミトちゃん』などと呼ばれている言葉を受けて戦いの原因を連れてくるのもどうかと思えた。

 

 誰もが2セット目は……完全に血の雨が降ると理解していた。同時にここまで『楽しい』戦いも滅多にない。

 

 ―――相手がなんであろうと、全力をもって戦い、観客を沸かしてみせる。それがショウマンシップというものです―――

 

 リーナとアイリの試合は、そう言っていた小母のことを思い出させるほどにいいものなのだが……これが、あの頃、時計塔の体技場でウェアで戦っていた2人、3人を見ていた頃のオヤジの気持ちかと心底顔を覆いたくなったのだった……。

 

 

「父さん。俺も、あの頃……母さんとサクラさんとルヴィアさんの四角いジャングルでの戦いを見ていた気持ちが分かったよ」

 

 なんのことやらな両隣の三高女子の視線を受けながらもセツナの眼下で戦いは、再び始まろうとしていた。

 

 

 しかし……。

 

「刹那。そろそろピラーズ男子予選の第五組が終わる。色々気になるだろうし美少女と戯れていたいだろうが、準備しよう」

 

「オーライ。腐った生卵投げつけられてもいやだからな」

 

 

 廊下の方向にいた達也の呼びかけで、二人から離れてピラーズの控室へと赴くことになる。

 気楽に別れの挨拶をすると、二人も最後の声を掛けて来てくれる。

 

「がんばるんじゃぞー。おぬしが一高とはいえ、友人として応援しておるからな」

 

「がんばってね刹那君。愛梨が正妻とは言え、愛人として応援しているから」

 

 

 とんでもない計画の暴露をする十七夜の攻勢に、ちょっと戸惑いながらも達也と『太助』に合流する。

 

 戦いの時は着々と近づくのだった。

 

 

(直接の応援に行けなくて悪いけど、俺も戦う―――がんばってリーナ)

 

 

 小指に巻きつけた髪を元にして明確ではないが思念を飛ばす。ここまでサイオンが混ぜ合わさった会場ではどれだけ通じるか不明だが……ともあれ、伝えるだけは伝えておいて損はない。

 

 そういうことをしておく。そんなフォローがリーナを元気にする魔法であるなど刹那自身も知らなかったのではある……。

 


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