魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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新たなるクリスマスイベントにて、とんでもないサーヴァントが登場。

しかし、まだ引けていない。そしてHFの新章―――。見に行きたいんだけどなぁ。

行けるかなぁ(苦笑)

そんなこんなで新話お送りします。


第69話『九校戦――幕間、バチバチする夕食』

 ホテルマンたちが忙しなく動き、されど客人である高校生たちを上手く避けてかつ対応も懇切丁寧。

 

 如何に多くの事が自動化された時代だとはいえ、最終的な配膳や飲み物の支給など人の出入り、集中率などを客観的かつ、多角的に見るためには『人の眼』が必要となる。

 

 そんな訳で、夕飯時……もはや慣れてしまったバイキング形式のメニューの数々。

 そろそろ厨房に入って『遠坂家秘伝の極辛麻婆豆腐』を振る舞いたい(皆に制止済み)想いを呑み下しながらやることはただ一つ。

 

 

『『『『『乾杯―――!!(プローージット!!)』』』』』

 

「なんでドイツ語?」

 

 ノリと勢いで頭の上で打ち鳴らされた紙コップの数は多すぎたが、そんな疑問は完全に流れるぐらいには全員が英気を養うように一気飲み。

 

 おっさんくさく息を吐き出すメンツが多すぎた。酒は入っていないのだが、ともあれ、祝勝会の体であつまった面子は今日の結果を誇らしげに語り合い。お互いの健闘をたたえ合う。

 

「今日の大戦果がどっかのドイツ語を基本にしている魔術師のおかげじゃないか?」

「あまりおだてんな。木に上るどころか、宇宙に上がって『月の王様』にケンカ売るから」

 

 大師父の伝説の一つ。「なんかムカつく」などと言って『月の王様』にケンカを売って、まぁとりあえず何か再び月まで追い返した。

 

 詳細は知らぬ。が、しかしあのジジイのことだからそんぐらいはしてもおかしくない。

 

 そしてこの世界にアリストテレスがいたかどうかは分からぬが『セファールの石』……『アンティナイト』がある以上、宇宙大決戦じみたことは起きたのは間違いなさそうだ。

 

 何のことだか分からぬ達也を煙に巻く言動。しかし、事実ではある。少し前にレリック探索の過程で『砂漠に巨人の痕跡』を発見。

『第三次世界大戦』を経ても残っていた痕跡に、そら恐ろしい想いであった。

 

 

「いやいや、達也の言う通りだよ刹那。僕もレオもまさか優勝できるなんて思わなかったからさ」

「地力はあったよ。活かし方をどうするかにしただけ」

「それでもよ。上手く使えたのはお前のおかげだよ。サンキュー刹那」

 

 二人からのコップの打ち合わせを受けてから再び飲み干す。そうすると今度は一科の2人……男子からの訪問を受ける。

 

 

「俺たちは司波君にだな。助かったよ―――正直、調子が上がってなかったからな」

「越前も田丸も、少しのごみ取りとアジャストしただけだ。というか越前は、超次元テニスすぎたんだが……」

「まだまだだよ。テニスの全国大会に行くとクドウさんや一色さんみたいなのばかりだ」

 

 フェ〇ラーやナ〇ルにジョ〇ビッチが生きていた時代からやってきた刹那だけに2090年代のテニスってどうなっているんだよ? そう言いたくなる越前の言葉。

 リーナが美月に薦められた『テニスの若殿様』みたいなものを想像してしまう。

 

 競技種目が間違っていないようでいて実は間違っているのではないだろうかと言う越前と田丸が達也とコップを打ち鳴らしてから飲み干す。

 

 優勝と三位……男子クラウドの思わぬポイントゲットに誰もが嬉しく思う。

 

「それと千葉さんに言っておいて、たまには部活に参加するようにって」

「本人の意思だからな……まぁそれとなく言っておくよ」

 

 完全にテニス部では幽霊部員と化しているが、彼女も経験者であるだけに、部活に求められているのだろう。

 

 そんな越前の何気ない言葉の後に少し見るとあまり勝利の栄誉に預かれなかった人間がどんよりとしていた。

 

「ふふふ……ナナミのナナは『七位』のナナ!……むなしいわ―……」

「完全に一色にペースを乱された……恐るべし三高―――恐るべし二十八家……!!」

 

 春日はともかくとして里美はミラージの新人戦があるだけに、ここであまり気を落とされても困り者である。

 

 そんな二人を見かねて光井が励ますように声を掛けてきた。

 

「七位だって立派な記録だよ。菜々美。あまり気を落とさないで! スバルも、まだミラージが残っているんだから、がんばろう!! 今度は達也さんがちゃんとCAD見てくれるから、大丈夫ですよね?」

 

 光井の達也への愛の熱視線の照射から逃れるように、身を退かせてその視線を達也に向ける。

 あいにく刹那はグレートデギン(?)と沈みたくはないのだ。ぶっちゃけそんなものを見るなど目の毒である。

 

 ソーラレイの標的を達也にだけ向けさせてそそくさと去っていこうとしたのだが―――。

 

「ああ、構わないが―――コイツとぶつかりたいのもあるからな。早めにやっておくよ」

 

 一高制服の首襟をネコのように捕まえられてグェー。と叫びたくもなる。おのれ達也。俺の折角の厚意を無下にしおって―――。

 

 ともあれ、その言葉で復活する里美。春日も光井の激励を受けて何とか持ち直す。

 こういう気遣い出来る『いい女の子』だが……正直、達也のような修羅道を歩く男と一緒になれるビジョンが見えない。

 

 実際、そういった話をしたが「俺は自由に恋愛できるわけではないし、異性に胸を焦がすことも無いんだ。お前にも『分かる』だろ?」などと言われた。

 とはいえ向けられた好意自体には何とかしたいと考える達也はどう見ても、ブッキー(不器用)な男子にしか見えないのもあった。

 

 四葉の精神干渉は脳髄にばかり目が向けられたものだが……『小我』が脳に宿り『大我』が身体に宿る以上―――いずれは『外れる』ものだ。

 

(外れた存在……反転した『混血』ほどではないが、まぁ俺も混血に関しては殺人貴の生半可な知識しかないからな)

 

 代わりに魔術関連の情報と言うか魔術回路の使い方などを教えたが……。ただやはり、ある種その殺人貴の知識の通りならば、達也は『外れている』のだろう。

 

 だが社会的生活は問題ない辺りに、四葉家の苦悩というのも見え隠れする。

 

 

「どうかしたか?」

「とりあえず放してくれ。窒息鳥になりたくない」

 

 その言葉でようやく解放される。転じてみるに、今日の種目は一高がかなり有利に立ったと言える。

 

 ピラーズも男女ともに登録された三人全てが決勝リーグに到達。三高もいるのだが、ともあれ明日への布石は整っている。

 明日にはエリカと光井、桜小路が参加するボードの準準決、準決―――そのまま決勝戦がある。

 

 一高の面子はどこかで調整しながら各々応援したいところで観戦をせざるを得ないだろう。

 

「そういえば達也さんすごかったですよ! もう『ビリー・ザ・キッド』『ワイアット・アープ』かってほどに特化型CADを操ってピラーを倒していくんですから!!」

「見ていたけど『分解の初歩』的な魔法も視えた。ああいうのは森崎にも見習わせたい」

 

 当てこするなよ。と誰もが思う。光井の達也礼賛に継がせる形で雫が言ったその言葉に男子の大半は苦笑してしまう。

 

「そうなのか?」

「俺に聞くな。『サンダラー』か『ピースメーカー』って名前で登録しておけよ」

 

 ビリーザキッドを『見たことがある』可能性を考えて質問したのだろう達也。

 とはいえめんどくさそうに刹那が言うも達也は、退かずに口を開いてくる。

 

「CADに依存して放つ『魔弾』に名前は付けられないな。俺のが火縄銃(タネガシマ)ならば、お前のは、エンフィールド銃だろうしな」

 

 本人はそれどころか、何か『大きなもの』を持っていそうな気がする。達也の何とも言えぬ底知れなさとは、そこだろう。

『モノ』さえ見えてしまえば、そこに『クルップ砲』どころか『核ミサイル』を叩き込むことも可能な気がする。

 

 そういう風な破壊者……しかし『モノ』が見えたとしても、それを『隠す』ことも可能だろう……。

 

(まぁ仮にこいつと敵対すれば、『魔法』を使えばいいだけかな?)

 

 どうでもいい仮定をしてから、パット・ギャレットとしてはアウトローのキッドから離れたかったのだが―――。

 

「私としては今日の刹那に聞きたい事が多い。どうして達也さんと同じく『魔弾』を使わなかったの?」

「俺も聞きたいな。今更過ぎることではあるが」

「遠坂君……舐めてたの? それとも、ものすごく舐めてたの? 達也さんと戦うんだとしても魔弾を使わなくてもいいと!?」

 

 余計なツッコミが入ったものだ。そう思うぐらいには、面倒な話になりそうだ。

 そして光井はちょっと怖すぎる。マジで振動系統の新術式『ソーラ・レイ』でも出来るのではないかと思うほど。

 

 頭を掻いてから、素直に白状する。

 大会委員から『直』(ダイレクト)で『魔弾及び刻印魔弾の使用の禁止』を命じられたと言っておく。

 

 言った瞬間に――――。

 

 

「「「「「「「なんだとぉぉお!!!!!????」」」」」」」

 

 夕食会場にいた一高生徒……と他校の生徒からも詰め寄られてしまう。こういうめんどくさい話になるから言いたくなかったのだ。

 

 とはいえ、「達也のように新魔法を自慢したかっただけ」と言っても疑わしい眼をされただろう。なんせ、魔弾を使っての戦いを誰もが望んでいた。

 望んでいなかったのは大会委員達と、その上にいる……『存在』。

 

「協賛企業であるCADメーカーからすれば、こんな宣伝にもなりはしない魔法師に活躍してもらいたくなかったんでしょう。自社製品を使われてこそ宣伝費の意味はあるんでしょうし」

 

 大会委員の『上』の存在の一つを例に出しておき、それ以上の『上』を察知させないようにしておく。

 

「だからといって、それに唯々諾々と従ったお前じゃなかったな……あの『短剣』は何だ?」

「魔法の剣。もっと言ってしまえば『軍神』が振るった剣のレプリカだ。集めた『石』を使いに使って何とかあのサイズに出来たんだ」

 

 この世界では、アンティナイトという名前で登録されている石は、刹那の世界では、ある『宇宙生命体』が砕けた瞬間に、地球のあちこちに散らばった一種の神の『分け身』である。

 大きな塊は、北欧においては『神のシステム』に利用されて、ある所では、古代アステカの偶像として奉られ……力ある『鉱石』となってしまったのもある。

 

 それらを使って軍神が振るった剣であり宇宙人に奪われた剣を再現した。それだけである。

 

 銘は『軍神短剣』(セファール・セグメント)……あれだけかき集めたアンティナイトでも未だにあのサイズ(ショートソード)にしか鍛え上げられなかったのだ。

 

 

ショージン(精進)あるのみね?」

「ああ、全くだ。しかも大会委員にまた差し止められたし」

 

 リーナの言葉に返すと同時にサンプルの供出は断固として拒否した。

 こちらのオリジナル礼装を真似ることは難しいだろうが、それ以上に調べた瞬間に『軍神』の怒りが顕現して死ぬぞ。

 

 そう脅しておいた。実際に持たせた瞬間に―――魔法師であるからこそ分かった『上位の存在』にそれ以上の突っ込みは無くなった。

 

「剣なのに鞭のようにしなり、回転すれば遠距離からの震動破壊も可能……『三つの刀身』を持った短剣とも競いたかったんだがな」

「次いで出したのが、ようやくマクシミリアンの『モラルタ・ベガルタ』ですからね……。けれどお兄様が魔弾を使ったのに不公平ではないですか」

 

深雪の怒る様な言い方に刹那としてもどうしようもない話だとしておく。無くてもいい人間を映すぐらいならば、有ってこそ映える色男を映すべきだろう。

 

「達也のはシルバーのロングホーンモデル……クールなキッドがガンマンよろしくだ。FLTとしてもいい広告塔だろうよ」

「お前なぁ……」

「ループキャストを使っての魔弾射出は見せてもらったよ。技術で追い縋られることは中々に恐ろしいね」

 

 笑いながら面白がるように言う刹那。

 諌めるような調子でいる達也としては、まだまだだと思える。刹那の『魔弾』は、圧縮された魔力が恐ろしく『密度』が高い。

 己の腕を砲身としているというのは事実であり、恐らく血流速度や心拍数などを『連結』させることで、呼吸を合わせて魔弾を放っている。

 

 その秘奥は、まだまだ見えないのだが……打ち合えば―――負ける。だが負けるからといって、それを使えない相手に勝ったところで喜べない。

 達也は、刻印神船と戦いたかったのだから……。

 

「しかし、お前がそこまで従うとはな……しれっと無視するぐらいは予想しておいたのに」

「横紙破りばかりというのも心証悪いだろ? まぁ大会委員に対して、『決勝』まで来たらば手枷を外すように言っておいた…その際の相手が『誰』になるかは分からんがな」

 

 

 その言葉で夕食会場に来ていた刹那以外のベスト8の耳朶が震える。

 挑発的な言葉。実際、ファイナリストになるのは刹那であると誰もが認識していても、ここまであからさまだと色々な想いだ。

 

 決勝に上がる前に倒す。決勝まで上がって倒す。想いはどちらも同じ―――『打倒 遠坂刹那』で染まる。

 

 

「ウチの若大将―――将輝がいないからって随分と大言吐くじゃねぇか、遠坂」

 

「三高の火神(かがみ)か。別に大言じゃないと思うが……現状、俺は誰からも狙われる賞金首だ。こうして友人からも狙われてるしな」

 

 まだ15歳。達也のように早生まれということを考慮しても190後半の身長の大男。だが十文字会頭ほど肉厚ではない。しかし筋肉質であることは間違いない。

 

 会頭が巌ならば、火神は肉食獣。そんな野性的な印象を受ける相手に声を掛けられても毅然と返す。

 

「誰も彼もが俺と戦いたいだろうからな。一高の面子にはそれなりに恩義があるが―――、個人的に楽しませてもらうさ」

「上等だ。一高には若干、やられっぱなしだからな。この辺でやり返すぜ」

「同感だね。大河と同じく僕も君を狙う賞金稼ぎだ……モノリスの前に土の味を覚えさせてやるよ」

 

 

 火神大河……名前だけならば刹那にとって近所のおばちゃんな男に同調する中野新の言葉。二人してやる気を見せるのはいいのだが、どうにも変な想いが混ざっているような気がする。

 

 恐らく一条将輝と吉祥寺を頭とした三高の目立つルーキーズであろう。この二人に残り1人……明日のボードにおける五十嵐の難敵を加えてが三高一年の最優良。

 

 そんな連中に敵意を向けられているのだが……変な感じもする。

 

 

「そりゃそうじゃろ。アラタは愛梨に懸想をして、タイガーは栞に懸想をしている……つまりは嫉妬じゃ♪」

『四十九院!?』『トウコ!!』

 

 いつの間にか、刹那の隣にやって来ていた三高の四十九院沓子。ウインクしながらの真実の暴露。

 言われた二人は、色々と焦ってはいるが―――。

 

『二人ともお友達のままで』

 

 ド辛辣な言葉にタイガーとアラタは撃沈する。三高もどうやら本格的に夕餉に入ったようだが……なんかこっちに人が集まり過ぎているような。

 

 そしてその中でも筆頭の相手―――やはり一色愛梨と十七夜栞……吉祥寺真紅郎も出てきたことで、警戒レベルが上がる。

 

「何の用よぉ?」

 

「用事が無ければ、予約が無ければ会ってはならない人間ではないでしょうセルナは? 色々と聞きたいこともあるのですよ」

 

「教えるとは限らないわ。それに魔法師の基本原則は知っているはずよね?」

 

 左手に抱きついてリーナが刹那に代わって答える。交渉ごとは得意ではないが、それでも魔法師の理屈に長じていない……生半可な理屈やルールだけなので線引きが分からない刹那なのだ。

 こういう時のリーナは少しだけ頼りたくなる。

 

 そして聞きたい相手というのもリーナだけに、対応は厳しくなる。

 

 だがアイリは退かなかった。

 

「けれど、私が負けた原因ぐらいは知りたいです。あの『魔法』は何なのか……」

 

「九島家の秘術『仮装行列』(パレード)。詳細こそ知りませんが、己の姿を違う人物にする『変装術』に思えていたんですが、クドウさんの行ったものは少し違う気がする……正直、知りたい事ばかりだ。あれは現代魔法よりも『高次元』の『神代の秘術』なのではないかと、ね」

 

 アイリの少し悔しげな言葉に技術者根性丸出しのジョージが次いで来る。三高としては『インチキ』で勝ちを取られた気分なのだろう。

 確かにBS魔法といえば、そうだと納得できるが、それでもあそこまでの『変化』はもはや『変身』のレベルだ。

 

 恥も外聞も無い。名人上手と聞けば教えを請いに来るその職人のような姿勢……尚武を掲げているのは伊達ではないようだ。

 

 しかし、魔法師の不文律を犯した行いであることも理解しているようだ。

 知りたければ自分で解析しろ。ウェイバー先生…エルメロイ先生ならば、一瞬にして明晰に分析して『もういい! やめろ!!』ぐらいの『解体術』を行えるのだが……。

 

「こればかりは、俺でも説明したくはないことだ。俺の『秘術』…母の家『トオサカ家』200年の『浅い血筋』でも得られた秘術だ。

 詳細はぼかす。しかし、一高の大半は知っている現象の一つだ」

 

 八王子クライシスにて、覚えがある現象の一つ。ある種の人間に『生命体』として『上位』の存在を憑依させることで、その人間をランクアップさせる技術。

 

 あの時は、説明を(ぼか)した……というか詳しく説明してこなかった。詳しく説明されても恐ろしさの方が先んじただろうが。

 事件の後にアーネンエルベで『詳しく教えたのも数名』。

 

 全員が全員、それを納得したわけではないが、それでもそれが刹那だけの『魔法』なのか訓練次第で目覚められるものなのかで、違いが出てくる。

 

 そうして三高の面子にそれっぽく説明した。一高側からも特に反応が無いことが、『既知』のことだと知らせていた。

 

 一高にも詳細は知らせていなかったから当然なのだが……。

 

「まさか人類史に刻まれし伝説の英雄の力を『召喚』して憑依させるなんて―――なんだかずるいような気がしますわ」

 

「やろうと思ってやれる人間ばかりじゃない。リーナの場合は、やっぱり『パレード』の源流が『そういう』ものだって分かっていたからな」

 

 大なり小なり修業を積んだ僧侶が、験力を用いて『鴉天狗』を使役し『不動明王』を身に宿す。

 そういった『変身』『転身』の秘術はいくらでもあったりするのだ。もっとも、それが『偽装』や『変装』程度になってしまったのは、ある種、そこまで徳の高い僧侶がいなくなったからだろう。

 

 だが、そういう『小理屈』はともかくとして、それを指導したのは自分だろうと愛梨は抓ってくる。

 

「だとしても、アンジェリーナにそれを教えたのはセルナなのでしょう……ズルいです……」

 

 令嬢としてはあるまじき膨れっ面。女の子女の子した一色愛梨のこんな顔を見れる特権を少し嬉しく思いながらも、それでも言わなければならない。

 

「自分の彼女を贔屓したいワガママぐらい通させてくれ。それに、こればっかりはセンスの問題だ……そして用意出来る魔導器も限られている」

 

 言葉で互いに『星晶石』を懐から出して輝かせる。ダ・ヴィンチの星と呼ばれる多面体結晶の形をとった器物こそが肝要なのだ。

 

 そういう『ウソ』と『ホント』を混ぜて応える。そしてお揃いの宝石を見た何人か……正面にいるアイリも少しだけ胸を抑えた。

 

「体技場で言っていたけど、やっぱりあの槍は北欧神話における大神の娘『ブリュンヒルデ』の槍なのかい?」

 

「俺はそう見ている。ただ『真実』はどうなんだか分からんな」

 

 ウソつけ。とでも言うべき達也組(光井、雫除き)の呆れるような視線を受けながらも―――吉祥寺の言葉の締めとして、これらの術式の名前を宣言する。

 

「嘘か真か分からないが、次元論で言う上位世界―――『座』。

 そこから高位の存在の力を引き出す其の魔法の名は『幻霊船団』(パレード)……。現在、十師族及び魔法師協会からも『ビースト対策』ゆえに選抜などを負託されているものだよ」

 

 これ以上は機密事項であるとして、言外に告げると流石に三高も強くは出られない。出てきたのは――――。

 

 

「ならば! 私もその選抜メンバーに入ります。根掘り葉掘り、この私の身体を隅々まで調べてさ、さ、触っても結構ですから!! このまま何もせずにはいられません!!!

 我が母の祖国フランスの英霊―――『恋するオルランド』に出てくる女騎士『ブラダマンテ』を引き出して見せます!!!」

 

 勢い込んで言ってくるアイリであった。

 やけにニッチな所を選んでくるものだ。てっきり『ジャンヌ・ダルク』でも持ってくるかと思っていたのだが……。

 

「アイリ、アナタ。お嬢様(プレッピー)なんだから『ハイレグ姿』でヒップのドアップを見せながら攻撃なんて出来ないでしょうが」

 

「どういう意味ですか!?」

 

 ブラダマンテの真実を知らないアイリには分からない理屈。

 しかしランサークラスの霊基に由来が深いリーナは一度だけ、その『少女騎士』をインストールして……色々とすごかった。

 

『スケベ。思い出すのは分かるけど』

 

『すまん』

 

 口頭ではなく思念での会話。それを終えると、少しばかりアイリにフォローを入れておく。

 いくらなんでもリーナがやり過ぎたのも事実であるから。

 

「とはいえ、クラウドで使うには過ぎたものだからな―――少しインチキだったよ」

 

「……アンジェリーナに怒りました?」

 

「怒ったよ。君は軽率な事をしたと、ね」

 

 決戦術式の一つを魔法競技で使うのはあまりにもやりすぎであった。しかし、それぐらいしかアイリの『バレット』(螺旋突き)に対抗できるものは無かっただろう。

 

 だからあまり強めには怒れなかった。しかし落ち込んだリーナを見ていられず慰めた。そのことは言わなくてもいいだろう。

 

 と思っていたのに……。

 

 

「けれどその後で抱き寄せて叩いた頭を労わる様に慰めてくれたのよね♪ 控室にプラズマリーナの衣装と『ユーゼン』(友禅)の着物を持ってきたシルヴィアとキョウコが、呆れるぐらいにいちゃついちゃった♪」

 

 頬を抑えて滔々と語るリーナの姿に、リーナの姉貴分二人の前でKYすぎた事実を思い出して咳払いするも大半が砂糖を吐き出す。

 誰でもいいから呆れるようにしてほしいのに……。

 

「やはりアナタ!! 今からでも遅くないからミラージ本戦に出なさい!! 叩きのめす!!!」

 

 

 無茶言うない。そんな感想を出しつつリーナとアイリのケンカを余所に三高の皆さんと一高とが交流しあう。

 

 五十嵐は、男子バトルボードの三高代表に挨拶されていた……イケメン度では完全に五十嵐は負けていた。

 そして色素が薄い髪色の全然似ていない『妹』という存在に眼を奪われていた…簡単にハニートラップにかかった訳ではないが、まぁいいか。

 

 

「アイリのこと嫌いにならないでね」

 

「ならないよ。ただ向けられる好意にどうしたらいいのか分からない」

 

「リーナとの絆の深さを見せても変わらぬからな……全く、お主 本当に魔法師界のラスプーチンじゃな♪」

 

 

 嬉しそうに言われてもなぁ。栞と沓子の言葉にため息を突いて、明日に向けて英気を養う。

 そうしていると―――強力な『オーラ』を遠方より感じた。

 

『二つ』ほど―――富士山の方向から感じるそのオーラの一つは一条将輝だが……。もう一つはなんなのか……。

 

 疑問を共有する人間が刹那に近づいてくる。

 

「どうやらプリンスは何かを掴んだようだな」

 

「ああ、もう一つを感じたんだな達也?」

 

「気付いていたか。この波動は一体―――特に悪いものではないとしか俺には分からんが……まぁ害意は無さそうだな」

 

 なんでそんなことに気付く。達也に無言で問うと―――。

 

 

「お前のツラが深刻になっていないからだな。でなければ何かをやっているだろう?」

 

「そう言う風にヤローの顔を真剣に見るってのは心の贅肉だと思うぞ。別に俺は敵を探知するレーダーじゃないんだから」

 

「当てにしている」

 

「信頼の丸投げ!?」

 

 

 おどけるような言動に、薄い笑みではなく心底の面白がるような笑みを浮かべる達也。

 まるで……普通の『男子高校生』のような様子に深雪は少しばかり暗い顔をする。

 

 昨今の叔母の変化、そして達也の変化……全てが―――。

 

(刹那君を起点に行われている……どういうことなの?)

 

 

 それは深雪が未だに知らぬある種の刹那の起源に起因する性質……。

 

『喪失』という起源から起因するもの……反転することで行われる刹那の『残酷で優しい魔法』の一つ……。

 

 欠けた心を埋める―――それだけのことが、刹那にはないのだった。己に掛けられない魔法を前に苦悩した事実を深雪は知らず、少しの嫉妬を溜め込むのだった……。

 

 

 

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