魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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事件簿―――!! アニメ化―――!!!

動くグレイたん!! グレイたん可愛いよ!! はすはすはす!!! 

ああ、画面越しにもグレイたんの匂いがするようだよ―――!!!

―――上記 漫画『人狼怪奇ファイル』の人物の台詞より抜粋。―――出典元は現在絶版ゆえに探るべからず。


……というわけで、ええ来ましたよ―――三田先生!! バンザーイ!!! この後の『弾』としては月姫の『初アニメ化』も期待せざるをえない!!

というわけで新年早々嬉しいニュースでタイプムーンの社屋の方角に足向けて寝られないテンションで最新話どうぞ。


第76話『九校戦――女神の出陣』

「カイ! ナイスバトルだったな!!」

「どうも。マサキに言われると中々に来るものがあるね」

 

『『『『三高のエレガント・ファイブが集結!!! これだけでご飯が三杯はいける!!!』』』

 

 

 なんでだよ? と三高のエレガント・ファイブ以外の面子が思う。

 ―――俗称 イケメン五皇。まさしく『新世界』の『海』を支配する人間のように一年に随分と面構えのいいのが揃っているのが今期の一年である。

 

 そんな一年五人はなにかと吊るんで歩いていることが多い。それぞれで違うのだが―――ともあれ、今年の新人戦モノリスは、貰ったと思える人材だ。

 ビジュアル的にも戦力的にも随一……と思っていないのは、これから戦う当人たち『エレガント・ファイブ』の面子だ。

 

「で、タイガーはどうだったんだ?」

「同率三位だ。あの黒子乃とかってのお前と同系統の使い手だ」

「へぇ―――『混沌』(ケイオス)か、遠坂君にも教えてもらいたいと思っていたんだが―――」

 

 薄緑色の髪の少年が、不機嫌そうな火神を宥めてから、アラタから受け取ったドリンクを飲む。

 

「んで今から見る試合は、完全にモノリス対策だよな?」

「ああ、一高同士の男女決勝……来年のピラーズはペアとソロがあるらしいからな……見ておいて損はないだろ?」

 

 言いながらも『山籠もり』から帰ってきた将輝の眼は恐らく、司波深雪にだけ向けられている。

 

「しかし司波達也か―――もしも俺が刹那と相対していれば、俺が司波さんの隣にいただろうに……おまけに『深雪』だのと呼んで馴れ馴れしくするだなんて、不敬にもほどがあるぞ」

 

「マサキ、その場合は多分ペア決勝が無くて、君と遠坂君との戦いだったと思うよ。もしくは司波達也君と……それと、聞いたけど二人は兄妹なんだってよ」

 

 正直、司波深雪のことになると若干ポンコツになるというか、著しくIQ(知能指数)が下がりがちな将輝に代って昨夜の夕食会でふたりの関係を刹那に聞いたところ、そういう結論だった。

 

 だとは思っていたが、それでも少しの疑問もあった。出生の関係上―――ありえない出産スピードなのだが……。

 それもこの2090年代に入っても変わらぬ日本の出生の法制度ゆえにすぐに疑問は解決した。

 

「遅生まれの四月が誕生月。だから司波深雪さんと同学年の兄妹なんだって」

「―――そうだったのか……てっきり『いとこ』の兄妹とかで、あんな風になれなれしいのかと思っていたよジョージ」

 

 すっごく安堵する将輝の姿。『重傷』であると思って一条家の人々の思惑をそれとなく話す。

 

「一応、君と一色さんも『いとこ』みたいな関係だと思うけど?」

「お袋が一色家の遠縁ってだけだよ。あんまりそういう意識は無いな」

 

 気楽に言う将輝であるが、察するに一色家の思惑としては一条に代わり師族になりたい。

 微妙な対立構造であるが、同じ年頃の男女がいるだけに、その辺りの事情は違ってくる。

 

 一条美登里―――将輝の母が一色家の遠縁である以上、一種の縁戚関係を保ちたい気持ちはあるのだろう。

 

 分家が宗家に成り代わりたい……時代を変えても行われる『貴族の生業』――権力闘争は、魔法師の社会にも食い込んでくる毒である。

 

 ともあれ、一条将輝の男としての意識は司波深雪だけに向けられている。家の思惑は崩れっ放しだ。

 

「この九校戦に現れた新星2人―――そして2柱の女神の力を見せてもらうだけだ」

「一方は、どんなもんだか知っているじゃないか」

 

 その際に真紅郎としては、何となく苦い思いがあったが、それにも関わらず将輝は真剣だ。

 

「ああ、だが刹那の底を見抜けていないんだ。モノリスで勝つためにも―――見せてもらうさ」

 

 吉祥寺の呆れるような言葉を聞きながらも、将輝の眼は真剣だ。富士山にて前田校長と剛毅師父から『山籠もり』を強要された将輝は何か一皮剥けた印象だ。

 

 まるで『これはゲームであっても、遊びではない』な世界に行き、『ナイスカップリングなロボットに乗って』生と死の狭間を踏み越えて来たかのように、言葉の調子の割には、全てにおいて真剣だ。

 あと、なんでだか刹那は『アイツの声って俺の兄弟子に似ているんだよなー』とか言っていたのを思い出してから、山籠もりの云々を語った校長先生のことを思い出す。

 

『一度でも決定的な敗北を知ったものは、勝利の味に飢えるものさ。モノリスで勝つためにも今の一条に必要なのは、飢餓感だ』

 

 女傑―――前田千鶴が獰猛な笑みを浮かべながら語る言葉―――それは正鵠を得ていた。

 そしてそれは第三高校全体―――中でも一年組にあるものだったのだから。

 

「やられっ放しは性に合わない―――絶対に一つは取る」

 

「同感だね」「腹ペコなのは今だけで十分だ」「僕は波乗りで一位とったけど、いたいいたい!!」

 

 空気を読まないカイに打擲を食らわせてから第三高校モノリスメンバーを将輝は引き締める―――。

 

「俺のワガママのせいで、ピラーズでのアイツ(刹那)の進撃を止められなかったんだ。取るぞモノリス」

『『『『オウッ!!!』』』』

 

 そうして第三高校の陣営が観客席で意思を揃えた時に、一年女子三人―――四十九院も含めてやってきた。

 

 察するに開始時間は、そろそろのようだ。今日のメーンイベント。

 

 会場を色々と湧かせる有名人『三人』……知るものは知ってしまうだろう『四人目』も含めて――――。

 

 櫓にやってきた瞬間だった―――。

 最初に登壇するのは―――女神二人。

 

 

 金色の女神が―――バージンロードを歩むように昇って来て―――その様子は窺い知れない。

 

 ヴェールで覆い隠されたその顔は容易に見えない―――歩き方一つとっても、その所作がどこかの貴人のように澱みないものであることが、誰もを緊張させていた。

 

 まるでカブキにおける舞台の入り方も同然だった。プラズマリーナの衣装から違う衣装に変えてきたアンジェリーナの衣装は白いミニのサマードレスに、薄いサマーコートとでもいうべきものを羽織った姿。

 

 緑色。若草色のリボンが、全体の白さを映えさせる。まさしく夏を思わせるのは何故か……。

 金色の髪―――解かれたものが金色の太陽をイメージさせているのだと気付く。

 

 

 反対の櫓に上がってきたのは、同じような入り方ながらも、その衣装は―――アンジェリーナと違って冬を思わせるものだった。

 

 全体的に白だがアクセントとして使われているのは薄紫の生地が紫水晶を思わせるドレス姿である。

 

 しかし動きにくいわけではないのはスカート部分が床にまで広がるタイプではないからだろう。全体的に開放的なアンジェリーナと違いどことなく拘束を思わせるぐらいには、深雪の肢体に密着した衣装。

 

 締め付けるような装飾具もそれを感じさせて―――。雪の女王であり花嫁を感じさせた。

 

 

 どちらもヴェールを被って、その表情を容易に周囲に見せていなかった。厳かな空気の元、会場全てが彼女たち二人だけに注がれている。

 

 世界が止まる。世界が呼吸を止めた。―――そんな感覚すら覚えてしまう女神の登場に誰もが息を呑んだ。

 

 

 そして女神二人は―――己のかんばせを隠していたヴェールを脱ぎ去り、風に攫わせ、己の隣に落とした。

 

 示しあわせたかのように、同じような行動を取るリーナと深雪。

 

 眼をゆっくりと開いていく。その時。世界が再び止まる。停止した世界の中で、一人きりは嫌なのか女神はヴェールを媒介にして誰かを呼び寄せる。

 

 そういう『脚本』だと分かっていても、その様子に誰もが息を呑んでしまう。もとからそこにいたのだろうが―――ヴェールが世界に溶け去ると同時に、そこに現れる二人の男。

 

 白金の女神を守る『赤騎士』―――とでも言うべき衣装の刹那は、アゾット剣を伸張したものを櫓に立てながら、その柄尻に両手を重ねて佇む……堂の入った騎士のポーズである。

 

 紫白の女神を守る『黒騎士』―――とでも言うべき衣装の達也は、剣?槍?杖?なんともいえぬ重量物を横にして目線の高さまで持って、女神の不敬の敵を排除する守護者のポーズである。

 

 

 どちらもが最終決戦を飾るに相応しい衣装と魔力の充足した様子。

 

 特徴的なサークレットを被る白金の女神―――黄金姫が目覚める。

 

 特徴的なティアラで髪をまとめた紫白の女神―――白銀姫が目覚める。

 

 

 世界が目覚める―――誰もが息を吐き出して、覚醒を果たす。

 

 止まっていた呼吸を再開するかのようにあげたもの―――大歓声。

 

 この2095年度の九校戦でも一番の歓声なのではないかという声量がアイスピラーズ・ブレイク新人戦を包んだ。

 

「本当に彼女は、市井の魔法師ではないでしょうね。十師族の『隠し名』持ちか、誰か師族の『ご落胤』……」

「……だろうね……けれど、そんなこと司波さんの美しさの前では些事さ―――しかし……だとすれば―――」

 

 割れるような歓声の中でもはっきりと聞こえる一色の言に肯定をしておきながらも、見るべきは―――刹那と達也だ。

 今にも司波深雪の姿に『熱』を上げそうになりながらも、将輝は相対する敵を見る。

 

 姫君の登場の『添え物』に見えて、あの二人も相当な場の支配をしている。野暮を装って、裏方の段取りをしていたのだろう。

 深雪と同じく兄である達也もただものではない。

 

 彫像のように眼を開かずに、女神の従者。プリンセスのナイトを務める二人がいてこそ、女神は映える。

 

 そしてその様子のままに、シグナルランプの点灯に慌てるでも動じるでもなく予定調和のように四者は、マイソロジーを刻む。

 

 レッドランプ―――からオレンジランプ――――そしてグリーンランプになった瞬間に、四人の魔法師達は秘術を解き放つのだった。

 

 

 † † †

 

 

 先手を取ったのは深雪からであった。

 現代魔法の秒以下で放たれる術式。2020年代から幾度かのバージョンアップとマイナーダウンを繰り返しつつ使われている『携帯電子端末』。

 

 スマートフォンにも似た汎用型『魔導書』を用いて放たれるものは―――『氷炎地獄』(インフェルノ)

 

 ソロ戦とは違い、横に24本の氷柱という有効範囲を広げるという作業があったとしても深雪は構わず氷と熱の世界を分けておく。

 

 しかしながら―――その範囲と魔法力が最大に展開した時に、刹那の『眼』が蒼く輝く。互いに距離があっても、その変化を見届けた深雪は―――。

 

 ―――マズイと思いながらも―――。止めることは出来ずに―――インフェルノの現象全てが、一瞬で終わる。

 

 何かの定義破綻でも起こしたかのように、消え去る魔法式。全ての現象がウソだったかのように―――インフェルノ―――『ラグナロク』の続いた北欧世界の如きものが消え去る。

 

 氷柱に対する干渉が途中で終わり―――察する。

 

(ヤツの魔眼は、こんな事も出来るのか?)

 

(お兄様。私のインフェルノごと『封印』されました―――)

 

 思念で伝えてくる妹の言で、リーナ曰く『略奪の魔眼』が、深雪の魔法ごと熱を奪った事を理解する。

 観客たちはどういう現象なのかを分かっていないが、相対する―――達也の背中側の人間達は理解しているだろう。

 

 

「こんどは―――こちらから行かせてもらうわ」

「―――Anfang――――」

 

 女神の下知を受けた赤騎士が両の刻印を最大展開。この大会で有名になった遠坂刹那の船であり弓が展開される。

 観客が湧きたつのを感じる。

 

「深雪、俺がリーナの魔法を砕く。お前は刹那と打ち合ってくれ」

「承知しました」

 

 金の女神は、腕を横に開いて何か大きなものでも抱えるような仕草。

 

 そして両手で持ち上げて掲げる動作。発動するは―――。

 

「ミョルニル!!!」

 

 空中に展開する魔法陣。

 落雷でこちらの氷柱を穿たんとする現代魔法の式が見えて、達也は特化型CADから魔法を読み込んで、自陣に放たれようとする式に放つ。

 

 術式解体(グラムデモリッション)の魔法がリーナの魔法を不発にしていく。サイオン粒子塊の射出。

 

 見えた瞬間に叩き込まれるメイジスマッシャー(魔法殺し)の魔法がリーナの落雷を消していく。

 

 しかし狙いはこちらではないだろう。空爆という上からの攻撃に気を取られている隙に―――。

 

 

「ゲーーエン!!!」

 

「うるさいですね!! ファイエルとでも言いなさい!!」

 

 魔弾の雨霰が正面から制圧するように放たれて、深雪はそれを氷壁の作成と氷塊と雪玉の散弾で迎撃する。

 

 散弾の発射は、両掌に生み出した氷雪の魔力を白い息で吹き飛ばしている様子であり―――。本格的に『雪女』だな。と深雪以外の三人が思う。

 

 

「実に不愉快なプシオンがお兄様や相対する二人からも感じますね」

 

「新年早々(?)、凍矢(?)か、ゆきめ(?)みたいなことされてしまったからな。とはいえ油断するなよ」

 

「ええ」

 

 お互いの魔法が次から次へと放たれてそれを迎撃して、それを上回ろうと穿ちあう。

 実に泥臭い砲撃戦へと移行していたが、分かりやすすぎる戦いを前に観客は熱を帯びていく。

 

 しかし、観客に詳細に見えていないところで、両者は見えぬ秘術を放ちあい、氷柱を打ち倒そうとするも―――お互いに防ぎあうのだ。

 

 

 † † †

 

 

「む。達也は『ディスパージョン』を使ったか?」

 

「ええ、一瞬ですが使ってそして『防がれました』……恐らくやったのは刹那君でしょうね」

 

 発動する前に無理やり抑え込まれたことで、達也の表情に陰りが奔る。

 どうやったのかは分からないが、撃ちこまれた筈の氷柱が無事である以上、『定礎』が段違いの『強化』が施されていたのだろう。

 

 

「藤林。仮に、達也と一条将輝が相対しあって何の制限も無くこのピラーズで撃ちあえばどうなると思う?」

「……私見になりますが、小官の見立てでは、相手のピラーをどちらも一瞬で破壊しあい、コンマ何秒の差での勝敗。お互いにスコアドローで終わるか、お互いに攻撃しあい防ぎ合っての時間切れ決着かと」

 

 

 その言葉に概ね満足して風間は、遠坂刹那の戦力評価を上げておく。まさかこの時代に達也と打ち合えるだけの『古式』の人間がいようとは、思っていなかっただけに驚きばかりだ。

 一条に勝ったとはいえ、達也ともここまでと思っていなかった風間の心境を割り砕くかのように―――。

 

「ああっ! いけない!! 刹那君が呪文を唱え始めた!!」

 

 

 司波兄妹にとっての窮地が迫る―――。一瞬だけ、その視線を上階のVIP達に向けて、兄妹の親類を見たが―――。

 その表情がすごく魔女にありえざるものとなって、グラサンを外したビジネスマン風の男性にしなだれかかっているという異常事態。

 

 そんな様子に九島烈は懐かしいことでも思い出しているのか目頭を抑えている様子。そんないい年した失楽園カップルの状況に―――早急に風間は達也に助けを求めたかった。

 

 † † †

 

 

 「Foyer: ―――Gewehr Angriff―――」(Foyer: ―――Gewehr Abfeuern)

 

 

 魔弾の砲門の数を変える。どうやら達也の分解魔法は、原子分解の類にも通じるようである。

 

 その気になれば人間一人程度、全てを『世界素子』に変えることは可能だろう。しかし、攻性能力に於いて随一だが防御性能はそこまでではない。

 

(己の怪我を再生するのは容易いだろうが、目標物の防護となるとお前は劣る!!)

 

(当たり前の如く見抜かれるよな!)

 

 お互いに無言で会話。何も言わずとも行動と意図が言葉の代わりとなる。

 刹那が突こうとしている達也の不得意分野。結局の所、達也の戦術とは相手の『放たれた』攻撃に対しては、『躱す』『避ける』ということでしか対処できない。

 

 それ以外となると発動前に打ち砕くしかないのだ。

 

 つまりは、相手の攻撃が成功して一回斬られたならば二回斬ることで優位を保っていくしかない。

 これが一条のような現代魔法の使い手ならば、魔法式を砕いていくことで均衡も生み出せるのだが―――。

 

(刹那の魔法は『式』が己の身体から放出して撃ちこまれるまで現象が顕現しない)

 

 達也の術式解体を向けるならば『セツナ』の身体に撃ちこむしかないのだが、そこまでいくとレギュレーション違反だし、そもそもそうした所でルーンの強化で防護(レジスト)してくるだろう。

 

 ならば―――。

 

「Schuss schießt Beschuss Erschliesung!―――放て!カッティング・セブンカラーズ!!」

 

 

 強化しきった自陣の氷柱の隙間を擦過しながら放たれる閃光の束―――魔力のレーザーが司波兄妹側の氷柱を穿とうとした時に、それを撃ち抜く達也の魔弾。

 

 銀色の魔弾。規模としては巨岩にも似た魔力球(スフィア)が、レーザーの束に負けない魔力量を伴って迎撃したのだ。驚く刹那―――撃ち放った達也は、ニヒルに笑う。

 

『お、驚きです!! 遠坂刹那選手の『七色の光輝』は、この大会にて無敵の振動魔法とも称されて『ビームマグナム』も同然に思われていたのに、それを司波達也選手のスフィアは完全に消しました!!!』

 

 

 ―――やってくれる―――。

 

 ―――技におぼれたな―――。

 

 単純な魔力量―――サイオンの質の違いこそあれども、それでも達也の魔力量はとんでもなく多い。

 単純に大きな構成情報。デカいだけのサイオン弾で七色の光輝の進撃を止めきったのは実に見事。しかし達也としても嬉しがるだけではいられない。

 

(恐らくだが、『宝石』を介して放たれたものじゃないからだろうな。『あちらの手落ち』と『こちらの万全』で拮抗か)

 

 捻り出そうとすれば、まだ宝石はあるそうだが……どれも魔力が然程込められていないと一条戦の後に語っていたのを思い出す。

 あの時から自分と戦うことを想定しての『ブラフ』だとするならば、大した役者だが、それは無かった。

 

 人知れず拳を握りしめて一矢報いたことを喜ぶ達也は、二挺拳銃の内のもう一つを起動させて魔法陣三つを三角に展開。

 

 ループキャスト―――同一魔法の連続起動を利用した魔弾が放たれる。向けた銃口が照準装置として魔弾の飛翔先を決める。

 

 

『司波選手!! 予選でも見せた『魔弾三段撃ち』を発動、魔弾が相手陣に殺到する!!!』

 

「させるかよ!!」

 

 左腕を砲身に見立てて五指を一杯に開いた刹那。達也とは段違いの砲撃が三段撃ちを迎撃。

 

 勝手な進撃は許さないとばかりの牽制射撃である。

 

「お兄様だけに負担は負わせない!!」

「させないわよっミユキ!!」

 

 巨大な氷塊と雷撃の矛とで撃ちあっていた破壊の女神と豊穣の女神が地上の英雄たちの決着の助太刀をせんと天上の戦いを激しくしていく。

 

「RAIN!!!」

 

「防ぎなさい!!」

 

 細かな荷電粒子レーザーの『雨』を降り注がせようとしたリーナの魔法。

 

 何かしらの屈曲作用を展開しているのか、上昇してからの反射で下降軌道。上部面から氷柱を溶かしきる作戦を防ぐ。

 しかし―――大気中の水蒸気と霊峰富士の湧水を利用したのか、ウォーターカーテンを発生させて、レーザーの熱量を減衰させた上で、照射範囲をずらしきった。

 

 一進一退。相手の好手を悪手へと、悪手を好手へと変えていく手際。

 

 このままでは千日手とまではいかないが、決着までが遠すぎる。選手たちが、楽しむのはいいが、観客を飽きさせるのも考え物。

 

 膠着に至る前に、ここで大技を展開することで場の空気を入れ替える。

 

(―――やる?)

 

(キミの望みのままに―――シリウス)

 

 

 悪戯を思いついたかのような思念の言葉―――リーナも同じ考えだったようだ。姿勢を立ち位置を変えて『舞台』を整える。

 

 

 膠着しながらも、相手の付け入るすきがないかとサイオンを放射。

 お互いの領域を広げようと魔力や魔眼、魔銃で常人には容易に見えぬ押し相撲している四人のレベルは推して知るべしなところがある。

 

 ――――そしてお互いに準備が整う。先手を取ったのは刹那とリーナであった。

 

 やるべきは先程の深雪のインフェルノの意趣返し―――それが分かっており、互いの領域が自然と繋がり合う。

 

 走る魔術回路、処理される演算領域。

 

 

「トレース―――」「―――オン!!」

 

 お互いに自信満々の顔をしながら差し出した刹那の右手とリーナの左手が重なり組み合わされる。

 

 俗に恋人繋ぎというもので『連結』した二人の星が唱えるは、世界変革の『魔法』そのままに唱えられた呪文が、『奇跡』を世界に顕現する。

 

無間氷焔『世界』(Weltuntergänge)―――Götterdämmerung(ゲッテルンデメルング)!!!』

 

 

 お互いの手を取り刹那が左手を前に出して、リーナが右手を前に出した時――――唱えられた言葉で『世界』が変わる。

 

 後にその『秘奥の種類』を知る達也であるが、その時は知らなかった。

 だからこそ、それを知った時に、それが恐ろしく常軌を逸して自分達の魔法の『究極系』も知ってしまった瞬間だった。

 

 ―――『ある世界』では、その能力をこう呼んだ。『悪魔』が持つ『メメントモリ』であり、心象風景の具現化。『空想具現化』の亜種。

『リアリティ・マーブル』……『固有結界』―――空想と現実を入れ替える禁呪の中の禁呪……その『亜種』が展開された時―――。

 

 

 真夏に魔力の氷原が展開されて、偽りの太陽が地上に降り立たんとする世界。

 

 波乱を呼ぶ兄妹にとって『最強の敵』が本気を出してきた時だった……。

 

 

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