魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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正月休みを利用しての深夜の投稿。うん、なんて読者様泣かせ。

ともあれ、またもやロストベルトを攻略していなければ入れないイベント。

こりゃもう、シナリオスキップして戦闘だけやれということだろうか。そんな風にも感じる今日この頃、最新話どうぞ。




第77話『九校戦――世界を砕く魔法』

「ゲッテルンデメルングというと『アレ』か? 理珠?」

「そうよカツト。『アレ』よ。『アレ』こそが『コレ』の正体よ」

 

「ということは、『コレ』は『アレ』がああして、続いて『ああなった世界』の再現ということか?」

「ミユキ・シバの作り上げた『世界』よりは随分と情緒に溢れているでしょう。『アレ』は『ソレ』が良くない形で『終わってしまった世界』……ありし日の姿に帰るべく存続してしまった世界」

 

「ということは『アレ』は―――『やかましいわ―――!!!』……なんだ七草、いきなり大声を上げて?」

「きっと『あの日』なんじゃないかしら?」

 

「成程、それは大変だったな七草。こんなすし詰めみたいな観客席に居てだいじょうぶあっ!!!」

 

『『『じゅ、十文字会頭―――!!!』』』

 

 

 いい加減。苛立ちが頂点に達していた七草真由美は、体格差があるとはいえ十文字克人を張っ倒すことで、会話を中断させた。

 ちなみにはったおされた瞬間、声を挙げたのは桐原、服部、沢木の三人である。

 

「アレだのコレだのソレだの、『あの日』だの、アンタ達二人だけが分かっている会話で説明を流すな!? 私達にも説明しなさいよ!!」

 

「真由美。『あの日』は分かっているだろう。まぁそれはともかくとしてゲッテルンデメルングってドイツ語か?」

 

 怒り心頭な真由美に代って渡辺摩利が十文字と四高のイリヤ・リズに説明を求める。

 

 

「そうよ。ゲッテルンデメルング―――ドイツ語で『神々の黄昏』を意味する。分かりやすく言えば『ラグナロク』ということよ」

 

「リヒャルト・ワーグナーの歌劇『ニーベルングの指環』の第四部のタイトルとしても有名なものでな。お前もワルキューレの騎行ぐらいは聞いたことがあるだろう?

 連作のラストを飾る表題。英雄シグルドが己の『真愛』を自覚して、ただ一人の『愛』……戦乙女ブリュンヒルデの元に行こうとするも、すれ違い、どうしても一緒にいられず……」

 

「その最後はどちらもが、死に絶える。場合によってはブリュンヒルデは、シグルドを殺してその後を追って己も死ぬ。そして一人の英雄と一人の乙女の純愛を穢した『天罰』か、神々もまた死に絶えていく……まぁそれは『ヴォルスンガ・サガ』とかのことであってこの現象にはあまり関わりは無いわね」

 

「……十文字君って、そんなに古典歌劇が好きだったかしら?」

 

 そんな風に、十文字と理珠の説明を受けても真由美はあまり納得できない。こんな風なのが十文字克人だったかと思ってしまう。

 そういうあからさまな『侮り』に対して克人はため息を吐き出す。

 

 

「別に、俺とて乗り気ではなかったが親父や七草殿からお前との縁談が持ちあがったり、消え去ったりと面倒な関係性だから少しは相手を知ろうと思ってミュージカルやオーケストラに誘ったことがあったぞ」

 

「そ、そういえば……そんなこともあったわね。けれどその後、全然お誘いなかったじゃない。行くのはお笑い芸人の『コントショー』だったり、噺家の寄席だったり、劇団四季や宝塚ぐらいじゃない」

 

 少しだけ攻めたてるような克人の語調に、真由美も少しだけ悪い想いをしてしまう。

 

 それでも結構、色んな所にデートに行っているんだな。と意外な関係性を初めて知る二年組と渡辺摩利だったが、そんな風な暴露に対して十文字はため息一つ。

 ちなみに服部は、ずずーんと落ち込んで、両隣の二年から『くよくよすんなよ』などと言われている様子。

 

「ああ、その歌劇やオペラに誘って連れていった結果、あくびを吐くわ。居眠りこくわ。いびきをかく……二度と連れていかないことを決めた瞬間だったぞ」

「だから小劇場のコントや寄席が大半だったんだ……また『おみくじ五兄弟』の寄席に行きたいわね……気を使わせてしまったけれど、今度は、十文字君の好きな所に誘ってよ」

 

 相手が、そんな風に自分のことを理解しようとしてくれていたというのに、真由美は何もせずにいていいわけがなかった。

 別に相手に合わせようとか、そう言う訳ではないが、今まで気を遣わせてきたのならば、たまには克人の『ワガママ』を聞いてもいいはずだ。

 

 そんな気持ちと甘えるような目線で言ったのだが―――。

 

「それじゃ大作・歌子師匠の漫才でも見に行くか」

「なんでよっ!?」

 

 デートに誘えという言葉に対して無情なる発言。しかし自然体に、そんなことが出来る十文字会頭に少しだけ尊敬の視線が集まる。

 

「で、理珠。そのラグナロクとこの魔法、どう関連があるんだ?」

「そもそも。北欧神話のフリズスキャルヴとかニブルヘイム、ムスペルスヘイムっていうのはある種、後世の創作が大幅に加えられているのよ」

 

 

 紀元前1000年。2095年からすれば、ざっと3100年前……北欧はアイスランドにおけるカトラ山の大噴火が北欧神話と言う神代のテクスチャ(現実)が丸ごと引っぺがされた時だと言われている。

 

 ブリテンの円卓神話、英雄王ギルガメッシュの治めた古ウルクと言い、これらの伝承は全て正確な所を記してはいない。大災害・天変地異や異民族の移動によって文明は破壊され、断片的なものだけが、その存在を記しているのみである

 

「サガ、エッダといったものが断片的にしか残されておらず、その伝承もあやふやなのは、アイスランドを発端とする災害が大規模だったことの証左」

「伝承によれば、悪神ロキによる蠢動は様々な破滅を呼び込み、火山領域たるムスペルヘイムから炎の巨人ムスペルを生み出して、その中でも王たるもの『スルト』が振るいし『炎の剣』が、大地を焼き尽くした」

 

 その間に、巨人種族とアース神族の戦いは苛烈を極めて、主神オーディンは、破滅の狼フェンリルに呑み込まれて、もはや共倒れとも言えるぐらいに、巨人も神々も滅び―――神代の時代は終わりを告げて人類の時代―――人理が北欧に訪れる。

 

「じゃあ、あれは……ラグナロクの再現なのか?」

 

「うーーーん。若干、違うわ。あれは恐らくラグナロクが『正しく終われなかった世界』の再現なのよ」

 

「???」

 

「世界を騙して世界を『すり替える』ことで一切の抵抗を許さない『ロスト・ベルト』(異聞帯)の再現―――良く視れば分かるわよ。炎と雪の異常な『固定化』が」

 

 摩利の疑問に答えて誰もが視線を浴びせた瞬間……しかし、それを見る前に、幻想的な魔法を見せて歓声を浴びていた選手が動き出す。

 

 手を繋いだままに、先程とは違って繋いだままの手を前にして―――『何か』をする。

 

『大地よ、吼えろ!!』

『汝が叫びで霜の巨人を滅ぼせ!!!』

 

 

(……『異聞世界』を呼び込む。―――エインズワースの「概念置換」も習得していたか、遠坂家と衛宮家の二者が生み出したものはまごうこと無き……)

 

 

 魔法使い。氷柱があるフィールド上だけに『世界』を呼び込むとは、ある意味、こんな『お遊び』にやり過ぎだ。

 刹那のやったことは一歩間違えれば、この世界に『返済しきれぬ負債』を押し付ける行為だ。

 

 まぁある意味、魔法使い的と言えば、その通りだ。所詮、魔術師なんてどいつもこいつも『破綻者』なのだから。

 

 

「まぁあれだけの戦いを見せつければ、めんどくさい連中も『ヤメとこ。いのちだいじに』ぐらいは考えるか」

 

 

 そう呆れるように姉貴として言った瞬間に、吹き上がる火柱―――天にも昇らんばかりの『蒼炎』が、司波兄妹側の氷柱(ピラーズ)五本を溶かしつくした。

 

 

 † † †

 

 そんな上級生たちの観客席での無駄話の最中。歓声響き渡る幻創の魔法を展開された間、達也と深雪も棒立ちだったわけではない。

 

 展開された『魔法』の干渉強度も規模も、とんでもなく『硬く』『重く』―――『不動』のものだった。

 しかしそれだけの魔法でこちらを『封殺』しておきながら、未だに何もしてこないのは何故か。疑問を差す前に、なんとしても『穴』を見つけるべく兄妹は眼を凝らす。

 

 かつてキャストジャミングを使う魔狼との相対。八王子クライシスでの戦いを思い出す。音波を『さざ波』に変えて(分解)、その間隙を突いて魔法を叩き込んだ時のように……。

 

 空間全てに展開された魔法の中で放とうとしたが、達也の眼を以てしても見えないほどに硬すぎる。深雪の不安げな顔。

 それを見て―――刹那とリーナの『意趣返し』の意図が分からないわけではない。

 

 ここに来るまで、殆どインフェルノという領域分けでの『現象操作』で勝ってきた深雪との対決でこれを使うとは―――。

 

 ―――イヤミったらしいな。――――と恨んでおく。

 

 そうして封じられた世界でもがく達也と深雪を尻目に、二人の魔法使いは、繋いだ手を離さずに死刑宣告を始める。

 

『大地よ、吼えろ!! 汝が叫びで霜の巨人を滅ぼせ!!!』

 

 ステレオで響く声で世界が変えられる。壮麗な氷原と化したフィールド。灯となっていた延焼しない蒼炎が、寄り集まり蛍火のようにこちらの氷柱に集っていく。

 

「リーナ!!」

 

「刹那!!!」

 

 

 ―――超えられるものならば、越えてみせろ!!―――。

 

 無言で挑戦状を叩きつけてきた刹那とリーナ。大地から噴き上がる様な蒼い火柱が、24本の氷柱のうちの五本……最前列を消し去った。

 

 今大会、ある意味では初めての失点となった深雪。あの雫ですらフォノンメーザーで氷柱に蟻の一穴を穿つので精一杯だったのを考えれば、ある意味、土を着けられた。

 

 殺到しようとしている蛍火。完全に最前列が砕ける前に―――この封鎖された空間を脱出する。

 

 

(深雪、雫がお前の圧倒的なインフェルノに対してフォノンメーザーで対抗したように―――俺がこいつらに蟻の一穴を通す!!)

 

 その穴からお前が決壊させるんだ。そう言わずとも指示してから達也は眼を凝らす。あの日―――刹那のルーンを完全に解析出来なかった時から……その向こうにあるものに自分の力を届けるために、自分は眼を『凝らしてきた』。

 

『魔眼』という、見ることで発動する魔法―――そして達也の眼は、何かを見ることで相手の全てを見る方法。

 

 この世界で見ることかなわないものとてある。ほのかなどエレメンツの服従遺伝子、地球の最深部にいるかもしれない『地底人』の存在。自分の眼が見えるものは『表層』に出ているものでしかない。

 

 だが―――深い所まで見ることが出来るならば、独学とエルメロイテキストを独自で読破した結果見抜いたもの、会得したもの。

 いつか刹那と戦う時に備えて磨き抜いたもの―――それは――。

 

 

 一度だけ眼を閉じる。精霊の眼(エレメンタル・サイト)でも見切れぬものがあるというのならば、それ以上に見えるものに変化させればいいだけだ。

 

 眼球にサイオンの集中。対面する刹那の呼吸の乱れ。リーナにも乱れ―――そして『魔眼』が覚醒する。

 

 

 朱く、紅く、赤い―――そして瞳孔が猫のように鋭くなっているものが、達也の眼にあった。

 

 まるで猫目石(キャッツアイ)のような眼が達也の眼にあった。一歩でも間違えれば、眼球の毛細血管が破裂していてもおかしくないほどに、眼の周囲に浮き出る血管。

 

 

妖精眼(グラムサイト)!?」 

 

「正気か……!?」

 

 

 驚愕する二人を見るのは若干、心地いいものだ。

 そして刹那の『魔術』の正体を見る―――間接的で有体に言えば、どうやら『眼前のフィールド』だけ世界が違う。

 

 そうとしか言えないぐらいに『異星の大気』とでもいうべきものを感じる。

 俄かには信じがたいが、そういうもので深雪と達也の魔法を封じてきたようだ。

 

(『現在自制』での地球の構成情報にアクセスできるエレメンタルサイトも、こんなもの引っ張り出されれば無力だ)

 

 同時に、刹那と本格的な敵対をした場合、達也が出来ることはリーナを『人質』に取るぐらいなのではないかと思うほどにだ。

 

 ―――全く以て、どっちであっても敵にしたくないな―――。

 

 しかし見えたのならば、その呪力の中でも薄い皮膜を通って達也が魔力を通すことも出来なくはない。

 

 魔術式に対するピッキング。ハッキングで鍵開けは出来た。しかし、ここまで複雑な道を―――出来るのか?

 

 そんな焦燥を持っていた自分の背中―――知らずに汗を掻いていた自分を冷やすような手の冷たさと優しさという温もりが、背中を通って伝わる。

 

「お兄様。『誓約』を一部解除しました。私がお兄様の背中を『労わっている』間、フォローを致します」

 

「深雪……」

 

 叔母上や少佐が見ているというのに、いいのかという思いでいたのだが……。

 

 半ばだけ振り向いた深雪の顔は決意を秘めていた。

 

 

「あの二人に勝つためにも―――私達はラブラブ兄妹として相対しなければならないのです!! 深雪の微力を使ってでも刹那君の魔法を―――打ち破ってください!!」

 

「了解した。刹那!! お前のラグナロク世界を砕かせてもらう!!!」

 

 

 ―――やれるものならば、やってみろ―――。

 

 達也の身体を介して深雪の処理能力が世界に顕現する。情報を受け取るのは、達也で、どこにどれだけの規模の式を叩き込むかを深雪に渡す。

 

 完璧な連携。兄妹という血の繋がり―――それ以上のものすらある運命の兄妹の『馬鹿力』と『偏執制御』が、異聞帯の世界の魔力に割り込んできた。

 

 

「やられたわね」

 

「別に完全に封殺できるなんておもっちゃいないさ。意趣返し(いやがらせ)が主目的だったわけだしな」

 

「それもそうね♪」

 

 

 小規模な魔法がこちらの陣地の氷柱にも届きつつある。如何に固有結界じみた『大魔術』とはいえ、現実世界に顕現させた『限定異界』。

 

 そこに『縁』(よすが)がある以上、そこからこちらに魔力を届かせるのは別に分からない話ではない。如何な大魔術とて陥穽はある。

 完璧、万全なんてのはムリな話だ。

 

 どれだけ『完全な異界』を作り上げたところで、そこから漏れ出るものが、たとえ大局的には『無価値』なものだとて、漏れ出た時点で『穴だらけ』になるのだ。

 

 しかし、色々と見せてくれるものだ。達也の馬鹿力じみた魔力と魔術系統を、深雪の制御力と干渉力で完全に同調させている。

 

 フォノンメーザーと魔弾のマルチキャスト。砲台としてこちらを穿とうとして来る様子は結構恐ろしい。

 

 ただ……観察しながらも刹那とリーナの魔術『蒼炎の柱』は、既に相手陣の氷柱を10本は完全消失させている。

 移動系統魔法で質量弾にすることも許さぬその必殺―――その作業が無駄になるかもしれないとしながらも―――。

 

 あと一手のチェックが、掛けられないでいる達也と深雪。終わりか―――リーナとの同調を上げて、残り14本の氷柱を一斉爆破する準備をする。

 

 終わりだ。そういう意思を以て赤眼でこちらの陥穽を見抜いたイレギュラーマギクスに視線で射抜く。

 

 その時―――刹那の脳裏に、閃きが奔る。

 

 本能的な恐怖。動物的な第六感といえるもので、瞬間の判断を制する。情報連結もしているリーナとて刹那の強張りを理解して、一斉爆破の準備を破却。

 

 備えた。備えた瞬間に―――。

 

 

「――――お前の『命』を使わせてもらう!!!」

 

 

 エクスクラメーションマークの多用という達也君、ちょっとキャラが崩壊しているよ。と思いつつも、これがもしかしたら達也の『地』なのかもしれないと思う。

 

 義侠心溢れるガキ大将の熱血漢。そんな風な達也と出会えているのかもしれないと、少し変な気分を思い出しつつも―――。

 

 懐から投げ込まれた髪の束。茶色の髪の―――魔力の質は………。

 

 

「―――『ホノカ』!?」

 

 

 リーナが気付き、そして、これは一条将輝の戦いの再現であると……気付いた刹那が、その髪を消去しようとしたが―――。レジストされた。

 小規模な魔術であったが、それにしてもレジストされるとは思っていなかった刹那は、達也が何かしたわけではなく……髪自体が魔力を持っていることに気付く。

 

(エレメンツは、自分を信じたものを心底から信頼することでそのバイオリズムをトップに入れられる……それはまさか―――)

 

『血分け』をした『死徒』の原理に通じるものだ。今さらながら気付く。そして、光井ほのかが己の髪をマテリアルとして達也に託したのならば―――。

 

 それは今の刹那とリーナの戦力に『迫る』ものだ。

 

 媒介となったほのかの髪が達也の魔力を受けて変質をする。放たれる魔力。変質するものが炸裂する。

 

 それは見るものが視れば……この会場内に於いては数名程度だろうが、『戦略級魔法』のマイナーマスプロダクツモデル(大量生産品)と気付く……。『光』が放たれる。

 

 

 ―――ブラスト・ボム――――。かつてブランシュ頭領にしてビースト信仰者『司一』に放たれたものが―――フィールドに放たれる。

 

 火球、否 エネルギーのボールとなったものが『十数』……『数十』も生まれて、あちこちで爆ぜる。

 

 着弾、炸裂、熱波―――弾ける熱エネルギーの限りが神秘の理を悉く蹂躙する暴虐。

 

 まさしくカトラ山の大噴火。ラグナロクの再現のように凍れる世界を吹き飛ばす達也。

 

 これが達也の秘奥であると思ってフィードバックで傷つく前に『ゲッテルデメルング』の展開を終える。

 

 暴風暴嵐の中でも、姿勢を保持して達也の『戦術級魔法』から自陣の氷柱を守る。粉塵の嵐と水蒸気の煙の中でも目を開き、達也の一世一代の賭けから眼を逸らさない。

 

「展開が遅れてしまったわね」

「全くだ―――しかし、ここまで達也がやってくるとはな……」

 

 

 だが面白い。お互いに風を使って煙を吹き飛ばすとそこにあった結果は知れる。

 6本は叩き壊された自陣。18本の氷柱はルーンの防護で形成された水晶の中で形を保たれていた。

 

 対する司波兄妹陣営は、12本の残存……あの自爆戦術のような中でも達也と深雪はしっかり発破範囲を計算していたようだ。

 

 

『お、驚き桃の木21世紀―――!!! 司波兄妹!! バカップルの作り上げた世界に封じられて、打つ手なしだと思っていた所を力づくでねじ伏せて、帰還を果たしました!! オリジナル魔法の応酬! そして我々の眼を楽しませる全てが新鮮な気持ちです!!!! 夏休み明けのエルメロイレッスンが楽しみです!!!』

 

 ミトの実況にお互いに苦笑する。しかしリードを奪ったのは確実に刹那たちの方だ。ここからは安全策で―――いかせてもらえるわけがない。

 

 あれほどの魔法を再び解き放たれたならば……。そんな刹那の不安を掻き消すように、夏の聖女は一度だけ耳に口づけをしてから前に出る。

 

 

「セツナが男気見せてくれたわ!! ならば、次に歯を食いしばって守るのはワタシよ!!」

 

「男なら誰かのために強くなれる!! 女もそうなのよ!!!」

 

「見てるだけじゃ始まらない!!! ならば―――」

 

 台詞は『あれ』であるが意気を上げて、いまから『トランスフォーム』して戦うことを決める戦女神の二人に、戦士二人は従うしかない。

 恋人の、兄の、お互いの(英雄)たるものの魔力を利用してフィールドに投射される魔法式。

 

 手に持った汎用型CADを通して、サークレットに変化した星晶石を通して、殆ど同タイムで―――放たれる現代魔法二つ。

 

「ニブルヘイム!!!」

「ムスペルスヘイム!!!」

 

 

 別に呪文の名前を言わなくてもいいはずの女神たちの言葉のあと。ゼロコンマ秒で放たれた魔法が、お互いの領域を侵食してくる。

 

 その戦いの手助けをするべく刹那はリーナを助ける。こんな情けない自分をいつでも立たせてくれる女の子を―――今度は俺が助けるのだ。

 

「サポートする。俺の『宝剣鎧』(ファンタズム)を貸してやるから存分に励めよ。聖女様」

 

「―――Thanks My Steady♪」

 

 魔術の上に魔術を重ねる。

 

 こちらの世界でも微妙に難度が高い技術。当たり前だがあちらの世界でも難度は高いのだが……これに特化した姉弟子(ライネス)の技を知っていた刹那は、リーナを死なせたくない一心でこれを体得した。

 

 変化魔術に特化したリーナを更に仕立てる魔術。リーナに走る全身の魔力と同調させ、動きや術式を阻害しないよう、入念に働きかける。

 その貸し出された『鎧』であり『剣』は正しくリーナには届かない痒いところにまで行き届いてリーナを『三段階』は上のレベルに上げてくれるのだ。

 

 それに気づいた達也が、深雪に助力するべく構成情報の詳細を伝えつつ、グラムデモリッションなどでリーナへのインタラプトを続けようとするも、そこに走るは―――当然の如く刹那の魔弾。

 

 空間に走る魔法式の『通り道』すらも刹那の眼は見とおすのか、何より術の汎用性では刹那の方が上だ。

 

 女神二人の熱エネルギーのぶつけ合い。灼熱と極低温の戦闘に誰もが眼を奪われ、そしてその影で黒子のように、舞台の段取りをする英雄二人。

 決着がどう着くか―――それすらも用意には予想させない凄絶の魔法師たちの戦いが―――繰り広げられる。

 

 

 そして戦いは終盤戦へと向かう。とどめの刻は近づくのだった……。

 

 

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