魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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fateレクイエム―――そろそろ読みたいが、まだ届かない。


第80話『九校戦―――プレリュード・モノリス』

 ―――その風景を見て一言を申す金の少女。しかし、その言葉は明らかに日本語のチョイスを間違えていた。

 

「オメイバンカイ? それともメイヨヘンジョウだっけ?」

 

「うん。古典的なボケをどうも。とはいえ、別に汚名でもないし不名誉があったわけじゃないだろう」

 

 光井にとってミラージは、この大会で最後の達也との触れ合いであった。切りそろえられてショートになった光井の姿に事情を知らないもの達は『失恋』でもしたのかとか、ちょっと勘繰った。

 なんだかいずれ光井を慰めようとした誰かが、かなりアレな扱いを受けるような気がしてならない。まぁタイミングが悪すぎるだけなのだろうが。

 

 ともあれ光井ほのかにとって司波達也はどこまでも、自分を導いてくれる灯台である。それだけにその恋心が敗れ去った時のダメージが、すごいんじゃないかと思う。

 

(まぁどうでもいいか。どうせ先の話でどっかの『カッティング』の話だしな)

 

 そうして、里美が二位……光井一位でミラージ新人戦は終わりを告げた。結局バトル・ボードはエリカやトウコとの相性の悪さが出たのだ。

 こういう『お行儀のよい競技』ならば、光井はノーマルに優秀だ。特異な能力はいらない。視えたモノを叩けばいいだけなのだから……。

 

 そうしてからリーナの髪の仕立てを終える。久々にポニーテールにしたいといった心情は何なのやら。

 と思っていた刹那であったが、観客席で、女の髪を撫で梳きながらの会話とか、こんなところでいちゃつくんじゃねぇという視線を受けてしまう。

 

 別に痛くもかゆくもないので、ダメージはゼロであるのだが。リーナへの疑問は尽きない。

 

「それはヒ・ミ・ツ♪」

「教えて」

「甘えてもダーメ。ビックリさせたいもの。ちなみに、ミユキにミヅキ―――色んな女の子が承諾済みよ。本戦まで余念が無いわけじゃないのがミユキの余裕よね」

「小早川先輩は、随分と意気込んでいたからな……あんまり入れ込んでもいい結果出ないと思うが」

 

 話の大筋は視えないものの、もはやヒマ組、もしくは余裕ある人間を使って、リーナは『何か』を画策しているようだ。

 

 実際、エリカも少し髪をまとめていたし、あーちゃん先輩を無理やり捕まえて髪型を弄る七草会長などハーフアップにしていたり……うん。いやな予感がする。

 ともあれ、本日のプログラムはモノリス新人戦のみになってしまった。その間に森崎が病院を脱走して怪我の身を押しても出ると三巨頭に直談判したり、刹那は十師族に呼び出されもした。

 

 その裏で達也が「こういうものは――さすがに分解出来ないからな……」とか青空を見ながら『おセンチ』になっているのを偶然にも見て。

 

『クサい』と言うと即座にニンジャスレイヤーな動きで背後から頭を『ぐりぐり』してくる辺りアレであった。解せぬ。

 

 だが、刹那の眼に焼き付いた達也のそんな表情は分解出来ずに、皆に言わないということで命の危機を脱した。

 

(さてさて、そろそろ出陣か……しかし厄介な制約を着けられたものだ)

 

 だが、別に打ち手が全て潰えたわけではない。刹那にとって魔弾など攻撃術として『昇華』しやすかっただけであり、他にも同じような手はある。

 というよりも、そう言うことでは無かった。モノリスにおける『ロール』を『限定』してきただけだ。

 

(レオに話を通しておくか。アイツの役目だったわけだしな)

 

 そんな風に数時間後のことに想いを馳せておくと、観客席の通路側から見知った顔がやってきた。

 

「おはようございます。セルナ、アンジェリーナ」

「おはようというには少し遅すぎるが、まぁおはようアイリ―――栞もトウコもおはよう」

「おはよう刹那君」「おはようなのじゃ」

 

 会おうと思えば会えなくは無かったのだが、どうにも今日はタイミングが合わずに現在時刻11時40分―――昼前の時間に彼女らはやってきた。

 

 やってきた一色愛梨の髪型は奇しくも、リーナと同じくポニーテールである。けれどお互いに見たことが無いものではない。

 

 あの寒気と冷や汗ばかりが伝ったクラウドにおいても両者はこのヘアスタイルだった……察するに、何か運動してきたのだろう。アイリは―――。

 

「本戦ミラージの練習か」

「お見通しですね。―――汗臭かったですか?」

「特には感じないな。ただ単に洞察しただけだよ」

 

 もしくは昨夜から明け方近くまで『汗だく』になっていた刹那とリーナの方が体臭は不味いかもぐらいには考えておく。

 

 シャワーも浴びたし刻印定着の為の匂い消しの過程で作り上げた香水も使ったのだが、嗅覚鋭い人間が嗅げば分かるかも。

 

 そう想っておきながら、深刻そうな顔をする一色は刹那の隣に座ってきた。

 

「悩みでもあるのか?」

「それも洞察ですか?」

 

試すような愛梨の言葉に苦笑のため息を突いてから答える。

 

「そりゃ、そんな深刻そうな顔をしていればな。ついでに言えば、あんまり男の前でそんな顔しないでくれ。騙されているかもとか、俺の助けなんていらないだろうとか思っていても、何とかしたいとか思うんだからさ」

 

「特に彼女持ちの男の前で、そんな表情をするなと言いたいわね」

 

 刹那の心配した声に対してリーナの不機嫌な声。噛付くかと思っていたが今日の愛梨は若干大人しかった。

 

「本当に……けれど今は、怒る気にもなれませんわね……私自身―――井の中の蛙であったつもりはありませんでした……伊里谷理珠、十文字克人、七草真由美……多くの先達に追いつけていないだけで、同年代の中でも勝てない相手はいないと思っていました」

 

 その言葉が、井の中の蛙なのだが、それでもツッコまずに続きを促す。恐らく茶化せない空気だから。当然だ。

 

「けれど、この九校戦に参加して―――同年代どころかタメ(同い年)の人間で自分以上の魔法師に何人も出会いました。遠坂刹那、アンジェリーナ・シールズ、司波達也……司波深雪―――彼らの超人的な力に比べて私は劣っていることを理解しましたから……」

 

「このまま何も『突破口』を見つけなければ、ミユキに負けるわね。そういうことでしょ?」

 

「ええ、そういうことです―――FLT……トーラス・シルバーの公開術式『飛行魔法』を何とか組み込みたかったのですが……」

 

「上手くいかないこと、本当に著しい限り……悔しいね。このまま、一高の女子に何も牙城を崩せぬままに終わるというのは……」

 

 

 リーナの辛辣な戦力評価に対して俯く一色の言葉。更に言えば一色のCADの担当もしているだろう十七夜栞の言葉が続く。ふむ。と考える刹那。

 

 聞くところによれば、達也は深雪の体調次第では使わせる様子のようだ。しかし、ミラージでやりすぎではないかという意見を出しておくことにした。

 

 確かに、術式の『秘匿性』というのは無いに等しい『現代魔法』だが、それなりの特許料(販売料金)もあるし、確実なフィッティングにも時間がかかる。

 

 しかし……司波兄妹のやろうとしていることは、ライト兄弟が多くの支援者の御蔭で、ようやく有人飛行機を飛ばせたというのに、その横でジャンボジェット機を『未来』から持ちだしたようなものだ。

 

 開発者が何となくではあるが、分かってしまっている辺り、無駄な意見だろうが……。ともあれ『ジャンボジェット機』を何とか手に入れようとしている三高女子たちに―――アドバイスは出来るだろう。

 

 何より……愛梨は昨夜から、こうだったはず……夕食会を途中で抜け出したのも全ては、本戦ミラージで当たる深雪に勝つため―――。

 

 

「分かったが―――まず最初に、『お前』いつまで『隠れている』つもりだよ? 大師父の源流刻印からの『株分け』を受けた俺の前では意味ないぞ」

 

 ぎくりとした表情をする愛梨。そして沓子と栞も少し何でバレたのだろうという表情をしている。

 うん。実にバレてはいけない類の器物であろうが―――一条将輝が、山籠もりから戻ってきた際の魔力の波動は、『杖』の類だったからだ。

 

 マサキリト曰く富士の洞穴で休んでいた時に、『余は魔法少女を探す!! 今の時代にこそ相応しいカードをキャプターするような魔法少女を!!』とかいう声で起きたのを聞いていた。

 

 ワードの不穏さと、覚えのある魔力波動に、『アレ』が『平行世界』からやってきたことを察した

 

「セツナ、お主―――『ガーネット』を知っているのか!?」

 

「ああ、そういう名前なんだ。しかし柘榴石ってのはどうなんだろうな」

 

 四十九院沓子の言葉に、オニキス、ガーネット、次は『アイオライト』(スミレ石)か?などと思っていると乱入者が一人(?)飛び出てきた。

 

『失敬な! 余とてルビーやルチルの方が良かったのだが、それは先達が乱立しすぎておる!! 神祖ロムルスを敬うように、それを穢すことは出来ぬ! ゆえに我が心の薔薇の矜持に違わぬものを宝石の翁からいただいたのだ!!』

 

「「「ぬわーーーっ!!!」」」

 

 美少女三人の渾身の叫びが出るのも分からなくも無い。

 一色愛梨のそれなりに実った胸のポケットから出てきたのは、金色の羽飾りを赤色のリングの側面に付けて、リングの中央に金色の逆五芒星―――まぁ別にどっちから見るか次第なのだが、緑色の眼のような宝石が象嵌されているところから、そう見た方がいいだろう。

 

「わっ!! ビックリよ―――セツナ、カレイドステッキってこんなにシリーズがあるものなの?」

 

 驚くリーナ。唯一無二……とまではいかずとも、そんなに数多くあるとは思っていなかったのだろう……というか刹那もその辺りはあまり詳しく説明していなかったことを思い出す。

 うっかりである。

 

「何かジジイ(大師父)が、いつぞや日本にいた時だか、どっかの『錠前吸血鬼』だかと交流した際に良くないサブカルチャーに触発されたらしい……」

 

 見た創作物というのが、『俺はこの『運命』で全てを薙ぎ払う!!』『その再生を破壊する』とか……つまりは『セカンドシーズン』ということらしい。

 はた迷惑なことにこの愉快型魔術礼装の第二段階(セカンドステージ)というのは、今までの人工精霊とは違い、どっかの英霊とかを参考にして作られたらしい。

 

 それ故に波長が合えば『いい礼装』なのだが、合わなければとことんひどい目に遭う。それは第一世代からそうであった。

 更に言えば……カレイドステッキは己の意思でマスターを決めるクセだけは残っているらしく……このカレイドガーネットが選んだのが一色愛梨なのはなぜか。

 

 

『むむっ。お主! どうやら本当にゼルレッチの系譜のようだな!! しかもあの『トオサカリン』の系譜と見たぞ!!』

 

「前者はともかく後者は、なんで分かんだよ?」

 

『余は人を見る眼はあるのだ。特に! 敵わぬものを前にしても戦う意思を灯したもの! 俯かずに果ての無い天上を目指すその情熱あふれる生き方を!! お主にもアイリと同じものを見たが、この世界における余のマスターはアイリなので……むっ、どうやら先約がいたか』

 

「ご明察だ。『皇帝陛下』(インペリウム)―――今は眠っている状態だがね」

 

 

 そうして目の前にふよふよ浮く喋る魔術礼装を前にして、黒い同じタイプを見せると三高女子たちも気付く。あの懇親会の後に見たモノと『ガーネット』は似ていたのだと。

 

『ふむ。過保護だな『オニキス』。しかし―――『目覚めの時』は近い。余が現れ、この『魔法使い』がいる以上、いつまでも『狸寝入り』はできんぞ?』

 

 皇帝陛下の言葉と羽を使ってのからかいに、少しの反応を示す黒い星型魔術礼装。狸寝入りという意味はそのままではあるまい。

 色々と聞きたい事は多いのだが、今は保留にしておかなければなるまい。第一試合を任された以上、これ以上は不味い。

 

「愛梨、悪いがあとで色々聞かせてくれ。それと―――『プリズマ☆アイリ』としての姿も見せてくれよ」

 

 その色々な意味を持った言葉で顔を真っ赤にして、爆発させる一色愛梨と、底冷えするような冷気を感じてスパークを全身から発するリーナ……。

 

 

セ、セツナァアアアア!!(セ、セルナァアアアア♪♪)

 

 

 一文字違いでしかない言葉なのにステレオで聞こえてきた感情は対称的すぎた。

 

 ともあれ、リーナにも『しばらく預ける』として、オニキスを渡しながら耳元に口づけをしておく。不機嫌の意味が分からないわけではない。

 

 自分にとってはプラズマリーナこそが、誰よりも好きな魔法少女だから、それを忘れては欲しくなかったのだ。

 

「もう。不意打ちでプレイボーイみたいな真似してぇ……」

 

「悪いね。愛しい君のあんまり怒った顔は見たくないんだよ」

 

 

 数秒前の冷えた顔をすっかり暖かくするリーナの顔に、満足しておく。

 

 そうしておくと今度は―――。

 

 

セ、セツナァアアアア♪♪(セ、セルナァアアアア!!)

 

 なんだ。この頓智みたいな会話。恨めしげに見る栞と『あっついのー♪』『うむ!愛とは! 実によいものだ!!』とか波長を合わせている沓子とガーネットの姿。

 

 そんなのを置きながら、モノリスの準備の為に用意されている控室に赴くことにする。

 何だか色々な状況が絡んできているが、今の自分のやるべきことは、試合で勝つことなのだ。

 

 女性たちの声援は、本当に力になると思いながらもあれこれと状況が複雑化しすぎていると嘆きたくなるのであった。

 

 

 † † † †

 

 

「―――以上が再度のルール確認だ。何か質問はあるか?」

 

 先達として三年間―――無論、今年もモノリスに出場する十文字会頭の懇切丁寧なルール説明を聞いて、特に疑問点は無い。

 

 結局の所、やり方は練習してきたとおりである。問題があるとすれば自分達の方だろう。

 

 準決勝からの五対五の想定もびっしりやってきた。時には殴り合いに発展したり、時には呪いを掛けて鼻水出させたり、時には魔法の打ち合いをしたり……うん、なんか殺伐としすぎじゃね一年モノリス組。

 

 しかしながらいなくなって分かる大事さ。森崎は犠牲になったのだ……あの性悪狐のロクでもない奸計に……。

 

 

「この場に本来ならばいるべきだった人間がいないのは承知している。俺としても、実戦想定だけでなく明日(みらい)へと繋がる何かを得るためにも様々な人間を混成で出したかった」

 

 

 明日(みらい)。それは多くの意味を持っているのだろう。裁縫ミスから始まった一科二科の確執。ある種の意図しないレッテル張りが常態化して、差別と被差別を生み出した。

 

 そんな意図はなかった。と過去の人々は言ったとしてもアパルトヘイトの如き、区別化の前では意味を為さない話である。

 

 しかし、本当の意味で差別をなくし、己はここにいると証明するならば―――戦うことでしか打ち立てられない。鉄血を以て我を示す。そういうことだ。

 

 

「だが、こうなってしまい。いるべき人間が浅ましくも愚かな行為でいないならば、お前たちは義務を果たすべきだ。今も裾野病院で苦々しく思っている人間達に、己が己であるということを」

 

『『『『『はいっ!!!』』』』』

 

 二科三名。一科二名。選抜された五人の魔法師達は思う。いるべき人間―――森崎や大沢たちは、少しばかり焦り過ぎていた。

 

 焦って、ぐんぐん伸びてくる二科を前にして、自分達を違うモノにしようとしていた。それ自体は『間違い』ではない。

 

 魔術師『遠坂刹那』としての意識ならば、追い縋ろうとしているものが遙か高みにいるならば、それに追いつくための策は最終的には人体改造しかないのだ。

 

 地力で補えないならば、ある所から持ってくる。人外魔境の戦いを望むならば、どんな代価を払ってでもやるべきだった。

 それが出来なかったからこそ―――森崎達はああなったのだ。

 

『思想を突き詰めきって、やれないならば、お前の独善で世界が変えられないならば、お前が『己の身体』を切り刻み『人工臓器』を加えた時、友人である五十嵐にも同じように『改造させてくれ』『君の身体を切り刻ませてくれ』と『言えなかった』時点で―――お前の所業は『卑しい』だけだ』

 

 そう言った言葉で断罪を突きつけた時に、皆の視線は色々だった。しかし、その言葉は分からなくも無いものもあるのだ。

 結局、この世界でも魔法師が己を高めるために『強化措置』を施しているのは事実。特に軍関係者はそういった風なのが多くて、廃人の如き人間が多数生まれラボにて切り刻まれている。

 

 そういう『噂』であり『事実』もあるのだから……まぁ『人でなし』を見ながらも『納得せざるを得ない理屈』の前では非難も出せなかったのだ。

 

 

「森崎に対する言動は中々に痛烈だった。が、遠坂―――そんな世界容認したいか?」

 

「魔道を極めるという意味では、申し分ないでしょうが―――人間世界としては容認出来ないでしょうよ。だからこそ―――コイツ(達也)みたいなのが必要になってくる。地力を安定的かつ簡便に行える。言うなれば魔法師界の『カタスケ』じみた技術者がね」

 

 言われた達也としては苦笑せざるを得ない。その技術をあまり必要としていない人間に言われているのだから皮肉も極まれりだ。

 

 だが、そうでなければ―――『変革』は起こせないだろう……。

 

「ならばあとは見せてこい。特に遠坂。いざとなればお偉いさんの言葉など『無視』しても構わんぞ。俺の方で言ったと十師族の面々に言っておく」

「あの強面修験者みたいな親父さんに怒られてもいいんですか会頭?」

「いいさ。たまには反抗期になるのも親孝行だろう」

 

 それはどうなんだろうと思いつつも、言うべきことは言い合った。後は戦うのみだ。

 

「にしても俺もアタッカーになるとはな……いいのか刹那? 俺まで上がっちまって」

「どうしても手が足りない時には言うさ。レオがハリーバックするまでは持ちこたえてみせるよ」

「超攻撃型の編成ですよね。他のチームは攻三・防二のオーソドックスで来るのに」

 

 プロテクターの最終確認を互いにしつつ話し合うのは、いきなりのポジションでありロールチェンジであった。

 黒子乃が言う通り、モノリスコードが三対三ないし五対五の場合の編成というのは、それが普通だ。どれだけ攻撃力に優れ防備に優れたとしても、人間ひとりでは手が回らないことが多い。

 それでも、これを達也と刹那は採用した。一人で要塞役として機能してもらい、西城レオンハルトにも攻撃に参加してもらうとして―――。

 

「何より師族からの要請だ。まるっと無視するのも悪いさ。あんまり親分を不良にするのも、気分がいいもんじゃない」

「遠坂君って本当にあちらこちらから『敵味方』、どちらにも成り得る態度を取られていますよね。大丈夫なんですか?」

「そうだな。どうしてもだめならばリーナと駆け落ちして故郷とも言えるイギリスに行こうかな」

 

 その言葉に誰も彼もが冷やかしてくる。ともあれ女性陣がその中に殆どいないのが色々と気掛かりであった。

 例外の一人とも言える平河先輩に少しだけ問い質す。ちなみに言えば和泉先輩もいたが、話しかけるのは気が引けるぐらいには少し苦手であった。

 

「平河先輩は何か聞いていないんですか?」

 

「えっ!? そ、そうね。ほら私がやっても地味で目立たないって言うか、こんなそばかすの顔でそんな目立つことしたくないというか……」

 

「いや、本当に何をやろうとしているんですか女性陣?」

 

 歯切れ悪く朱い顔をしてそっぽを向く平河小春は、それでも疑問に明朗ではないが、応えてくれる。しかしやっぱり分からない。

 

「と、とにかく! 勝利の女神は観客席にいるわ!! フィールドに行けば見えないだろうけど!! いつでも彼女達が、あなた達のヴイナスよ!! 頑張ってね後輩たちよ!!」

 

 やっぱり要領を得ない答え。だが戦いの時間は迫る―――。

 最初の戦いは森林ステージ。相手は第八高校。野戦服のような配色の制服通り。野戦訓練などの野外実習に長けた連中だ。

 

 森は奴らのフィールドだろうが、奴らには『人食い植物の森』に入ったことが無いならば、まだ刹那の方に分がある。

 

 そうして装備とバイタルチェック。全ては整っている。魔力残量も余裕あり―――。

 

 

「よしっ、そろそろだ。出るぞ―――」

 

「オウッ!!!」

 

「分からない事は多いけど、戦うだけだ」

 

「全力で、そして相手に失礼の無いように―――」

 

「勝ちに行くだけだな」

 

 達也の号令に対してレオ、幹比古、黒子乃、刹那の順番で応えてから森林ステージの入場口に向かう。

 

 もはや自分達の胸の中にあるのは―――勝利への欲求のみであるのだから……。

 

 

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