妖怪のヒーローアカデミア   作:座右の銘は天衣無縫

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試合に勝って勝負に負けました

 

後ろは常闇とダークシャドウに任せ、自身は左右と前に集中する。

 

構えは自然体。

だが、そこから放たれる威圧感で他のチームは中々距離を詰められない。

 

「ヒーロー科志望とは言え、一年が出して良い威圧感じゃ無いでしょ、コレ。」

 

そう言ったのは会場に来ていたヒーローの一人。

 

「サイドキックには是非欲しいな。 あれ程の逸材だ。」

 

「強個性な上、ルックスも良い、今までの他のチームとの争いを見てる限り、戦闘能力も高そうだ。 人気の出し方も良く分かっている。 これは引く手数多だぞ。」

 

「個性は…………異形型の中でも一昔前に流行った妖怪型?」

 

「だろうな。 これは次の職業体験では争奪戦になるぞ。」

 

妖怪型は発現し、本人がヒーローになる気があるならば完全に当たり個性として知られている。

 

一時期は個性婚の標的として狙われる事もあった。

そういう意味でも妖怪型は良く知られているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、どうしました? どこからでも掛かって来て良いんですよ?」

 

不敵な笑みを浮かべながら周りの騎馬を待ち構える射命丸。

だが、射命丸から放たれる威圧感に気圧され、周りのチームは寧ろジリジリと後退している。

 

『射命丸チーム、謎の威圧感で周りのチームを寄せ付けない!』

 

『一度勢いに任せて突っ込むなら平気なんだろうが、一度立ち止まった状態から動こうとするのはキツイかもな。』

 

(言わねぇけど射命丸は実力では同じ一年からは頭一つ抜け出している。 普段はおちゃらけて、それを隠しているみたいだが、理由は知らんがこの体育祭は本気みたいだな。 A組で勝てるとしたら同じく頭一つ抜けてる轟。 格上だろうと関係なく全力でぶつかるセンスの塊の爆豪。 大穴で意外性の強い緑谷ってトコか。 B組の連中は良く知らんからもしかしたらって事はあるかもな。)

 

少なくともこの競技では射命丸は確実に次の種目に行けるだろう、と予測する。

それほどまでに純粋な飛行型の個性はアドバンテージが大きいのだ。

 

「ええい、こうなったら女は度胸! 行くよ!」

 

『葉隠チーム、動き出した! それを見た他のチームも射命丸チームに迫り始める!』

 

「まあ、もうハチマキは奪われてますから破れかぶれで突撃してくるのは分かってましたけどね。」

 

見えない葉隠の手を弾きながらそう言う射命丸。

 

「ウソ!? 何で、分かんの!?」

 

「そこに実体があるなら風はそれを避けて通りますからね。 風を操れる私が風の微細な動きを感じられないなんて事は無いでしょう?」

 

「確かに!」

 

「という訳で葉隠さん。 軽い脳震盪モドキ、味わってみます?」

 

直後、射命丸の掌底が正確に葉隠の顎に当たり葉隠は意識はあるものの身体を動かせない状態になった。

 

「因みに答えは聞いてないのであしからず。」

 

「お、おい、葉隠!?」

 

「大丈夫ですよ。 意識はありますし、暫くすれば復活します。 まあ、気分は最悪でしょうが。」

 

急にぐったりと体の力が抜け、騎馬の上で仰向けになった葉隠に砂藤が呼びかける。

それに射命丸が答え、葉隠チームはスタジアムの端の方に避難していった。

 

『A組葉隠ダウン! ガチで射命丸の奴、容赦ねぇ!』

 

『救護は必要なさそうだが、恐らく葉隠はもう動けないだろうな。』

 

『手加減はバッチシってか!? 因みにこれルール的にどうなのよ、ミッドナイト!』

 

「グレーゾーンではあるけどアリよ!」

 

『ギリセーフ! そんでもって今のを見た他のチームの動きがまた止まった!』

 

『バカみたいに突撃すれば葉隠の二の舞になるのが目に見えてるからな。 ハチマキを取れないならまだしも、騎手が動けなくなれば、もう逆転のチャンスは無くなる。 必然的に迷うだろ。』

 

「室内戦闘訓練の時に切島が喰らった奴か。」

 

「ええ、そうですよ。 いやぁ、この技便利なんですよね。」

 

ふ、と一息シャドーで掌底を繰り出す。

 

「相手を傷つける事無く気絶させる技なのでついつい多用してしまうんですよ。」

 

「ずっと思ってたんだけど射命丸さんって武術の心得とかあるの?」

 

「ありますよ。 天狗ですから。」

 

「いや、それ理由になって………る?」

 

緑谷の質問に対する答えに麗日が首を傾げる。

 

「まあ、正確には椛の家が武術の道場でして。 そこで習ってるんですよ。」

 

「椛さんって、あの病室であった白くてモフモフしてそうな人?」

 

「ええ。 実際モフモフですよ。」

 

「ええなぁ、今度会ったら触らせて貰いたいわぁ。」

 

「何故この状況で和める!?」

 

騎馬戦の殺伐とした空気の中、突然和み始めた女子達に常闇からツッコミが入る。

 

「さっきの見て、すぐに私の間合いに入ってこれる人なんてそんなにいないと思いますけど。」

 

「それは、そうだな。」

 

「入ってこれるとしたら向こう見ずな人か自分の防御力に自信のある人くらいでしょうね。」

 

「俺には、関係ねぇ!!」

 

「こういう風に。 魔獣『鎌鼬ベーリング』」

 

横から伸びてきた鉄哲の腕を体を引いて避け、塩崎が操る茨を鎌鼬で切り、鉄哲の顎に掌底を入れる。

 

「まあ、衝撃を抜けさせて脳を揺らす技なので体の硬さとか関係ありませんけど。 あ、ポイント貰っておきますね。」

 

『続いてB組鉄哲ダウン! そんでもってポイントを奪われた!』

 

『硬化系の個性だから効かないと油断したな。』

 

数少ない轟の氷結から逃れていた鉄哲チームのポイントを鉄哲が倒れる前に回収。

 

『射命丸チーム、終盤に来てほぼ無双状態! このまま1000万キープ狙いか!?』

 

『残り時間は三分を切ったか。 十分にありえるな。』

 

相澤先生が残り時間を口にしたところでふと、嫌な予感に襲われる射命丸。

後ろで争ってる筈の轟チームと爆豪チームを見ると、

 

「チッ、もうお前に構ってる時間はねぇか。 仕方ねぇ、1000万取れる最後のチャンスだ。 行くぞ。」

 

「あ゛あ゛!? テメェから仕掛けといて何勝手な事言ってんだ半分野郎! ぶっ殺すぞ!」

 

爆豪を氷の壁でガードし、こちらに向かって来る轟チームとそれを追うように同じく向かって来る爆豪チーム。

 

「冗談キツいですって。 三つ巴に逆戻りですか、そうですか。」

 

後ろを向いた射命丸にチャンスとばかりに近寄ってきた拳藤チームの騎手、拳藤を片手間で行動不能にし、やれやれと肩を竦める。

 

「射命丸さん、どうする?」

 

「何もしなくて良いですよ。 三分間、私が抑えますから。 逆風『人間禁制の道』」

 

射命丸が右手を突き出し、そう言うと射命丸チームの周りを除いて突然強い風が吹き始めた。

風は轟チームにとっての向かい風でその風の強さで行動できない。

 

すぐに轟が氷壁で風を防ぐが、それ以上はどうしようもない。

 

他のチームも同じ様な状態である。

 

「風速はおよそ秒速25~30m、台風並みの強さです。 異形型の個性だとしてもそう簡単には動けませんよ。 下手をすれば飛ばされますのでご注意下さい。」

 

『んん? ヘイ、イレイザー、これって』

 

『…………勝負あったな。 少なくとも射命丸チームの一位は決定的だろ。』

 

『なんか、もう、アレだな! ズリぃな!』

 

『だが合理的だ。 盛り上がりには欠けるがな。』

 

それを聞いた轟チームの騎馬、飯田が轟に話し出す。

 

「轟君。 恐らくだが射命丸君は今、勝利を確信して油断してるだろう。 そこを突きたい。」

 

「……何か策が有るのか?」

 

「ああ、とっておきのがある。 だが、その後は俺は暫く個性が使えなくなる。 だから仕掛けるなら終了間際だ。」

 

「分かりましたわ。 私達は何をすれば?」

 

「轟君は射命丸チームの所まで氷でトンネルを作って欲しい。 風の影響を受けないために。」

 

「分かった。」

 

「八百万君は鉄の棒を。 それを上鳴君に持たせて放電で射命丸チームの動きを止める。」

 

「ああ。」

「分かりましたわ。」

 

「仕掛けるのは最後の五秒。 それが僕達に出来る最後の攻撃だ。」

 

そんな轟チームが作戦会議をしている中、射命丸は悠々とポイントを回収していた。

 

地味にポイントを稼いでいた普通科の心操チーム、上位にいた爆豪チームからハチマキを奪ってきた射命丸は騎馬に一旦戻り、そのハチマキを首にかけていた。

 

「いやぁ、大漁大漁。 後は轟さんのトコですね。 あそこは普通に反撃してきそうですし時間も余りありませんから一瞬で取ってきますか。」

 

爆豪チームの反撃が思ってたよりも強烈で時間をくってしまい、残り時間は二十秒を切っている。

 

ヒュッ、と風に乗った射命丸は轟チームからハチマキを一瞬で奪い、騎馬の上に戻った。

 

『射命丸チーム、ポイント総取り! マジでエゲツねぇ!! っと、残り時間のカウント行くぜ! 10、9、8』

 

「行くぞ皆! 後は頼む!」

 

ピキピキと何かが凍る音がし、観客達の目がそちらに向く。

 

『7、6』

 

氷が作り上げたのは轟チームのいる氷壁から射命丸チームのいる場所まで続くトンネルだった。

 

「トルクオーバー、レシプロバースト!!」

 

それを射命丸チームが認識した数瞬後、その中から轟チームが出てきた。

 

『5、4』

 

「今ですわ、上鳴さん!」

 

「くらウェイ!!」

 

伸びてきた鉄の棒の先が緑谷に触れたと同時に上鳴の放電が炸裂、射命丸チーム全員の動きが止まった。

 

『3、2』

 

動きの止まった射命丸の持つハチマキに手を伸ばす轟。

それを見た射命丸は痺れて動かない体を風で浮かして上に逃げようとする。

 

『1』

 

だが、それよりも先に轟の手が射命丸の首に掛かったハチマキの内の数枚を捉えた。

 

『0!!』

 

残り時間が無くなった。

 

『おおお!?!? 何がどうなった!? 説明の前にまずは順位発表! 一位、射命丸チーム! は当たり前として。』

 

((((一位がスルーされた!))))

 

歓声と拍手があがるも射命丸は悔しそうな表情を見せる。

 

『二位、まさかまさかの最後に一矢報いた! 轟チーム!!』

 

一位の射命丸チームよりも多くの歓声と拍手があがるが、轟の顔も険しい。

 

『三位以降、ナシ! 残りチームが0ポイントで同率!! だが、予定では次の最終種目に出れるのは四チーム! そこんトコはミッドナイトに任せるぜ、ヨロシク!!』

 

「ええ! 主審の権限の元、残りの三位と四位は射命丸さんが最後にハチマキを取るまで順位の高かった爆豪チーム、及び心操チームとするわ!」

 

その決定に爆豪は悔しさで暴れ回り、心操は安心と悔しさの入り混じった表情を見せる。

 

「以上四チームは次の最終種目への出場権を与えます! 最終種目は昼休憩とレクリエーションの後で行うわよ! 落ちちゃった子はレクリエーションでアピールなさい! それでは一時解散!!」

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