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多数のプリントが山を作り、その山を崩しながら読み進め、内容から仕分けし、複数の山を作っていく。
バイトの関係上、文字に触れる事が非常に多い射命丸ではあるが、あまりの多さにため息が漏れる。
だが、流石にこの量のプリントを全部家に持ち帰りたくないため、早め早めに仕分けし、出来る限り量を減らそうと必死に動いている。
具体的な仕分け方法としては、主な活動と活動場所、そしてヒーローランキングである。
例えばオールマイトなら活動内容は戦闘、捕縛をメインに救助も少し。
活動場所は都市、ランキングは1位。
ワイプシなら活動内容は救助
場所は山岳、森林地帯、ランキングは32位といった具合である。
そんな仕分け作業をし、家に持ち帰る枚数を100枚前後まで減らした。
その殆どが戦闘、捕縛系のヒーローであるが、元々そちらの方面に行くつもりであったので当たり前といえば当たり前である。
(さて、どうしたものですかね。
普通に考えれば、トップ20位くらいの所に行くのが良いんでしょうけど、実力も含めて考えるとやっぱりトップ10が良いですよね。
なら、私と同じ飛行系の個性のホークスさんとこ行くのが一番?
それとも純粋に経験豊富そうなエンデヴァー?
隠密系のエッジショットもアリですし。
それ以外でもアングラ系のヒーローの中には相澤先生の如く実力のある人だっていますし。
うーん、迷いますね。)
そう考えつつ、さらに仕分けを進めて20人程に絞った射命丸は考えるのが面倒臭くなって、目を瞑って適当に選んだ人の所に行く事にした。
「どーれーにーしーよーかーーなっ!」
抽選の結果選んだのは…………
「と、いう事で宜しくお願いしますね、エンデヴァーさん!」
「貴様、何をとは言わんが舐めてるのか?」
エンデヴァーの所だった。
「ふん、まあ良い。
荷物を持て、今からすぐに移動する。」
着いたばかりにも関わらずすぐに移動すると言うエンデヴァーの言葉に首を傾げる。
「移動、ですか?
しかも荷物ごとって、どこへ?」
「保須市だ。
例のヒーロー殺し、ステインを捕らえに行く。」
それを聞いて、ステインに関する情報を思い出す。
「確かにステインは一度姿を表せば暫くは同じ都市で犯行を4から6件繰り返しますし、先日保須市での犯行をしたばかりですからね。
狙うならうってつけ、って事ですか。」
「……理解が早いな。
概ね、その通りだ。
残りの理由としては、一人ヒーローがやられれば、その都市のヴィラン及びヴィラン予備軍が活発化する。
特にヒーロー殺しが現れた街では一、二ヶ月間で5人はやられるからな。
ヒーロー殺しが去った後を狙って、他からヴィラン共が集まってくる事がある。
それに対して、他の都市のヒーローがその都市に応援に行くことによって抑止力となるのだ。
それと同時に経験の浅い雑魚が昼間であろうと暴れる事がある。
そういった相手は貴様らの様な職業訓練の生徒にとってうってつけの相手だからだ。」
(おお、意外にも私達のことを考えてくれてる。)
などと、失礼な事を考えながらもエンデヴァーの後をついて行っている。
因みに、轟も同様の事を考えていたりする。
「無論、四六時中パトロールというわけでは無いからな。
空き時間はしっかりしごいてやる。
射命丸は肉体部分と体術はしっかりしているが、個性によって風が乱された時の風のコントロールがまだ甘い。
特に俺の様な炎熱系の個性だと、火災旋風を巻き起こすのに利用されかねん。
アレが起きればコンクリートだろうと溶かされるほどの高熱になるぞ。
そうならない為、もしくは起きてしまった時に止められなくとも勢いを削ぐ為にも、風のコントロールを学べ。
焦凍は氷のコントロールはこれまで、それだけでやってきただけあって、流石の一言だが炎の方が使ってなかった分、甘いな。
今は0か100かの二択しか無いが、最終的には温度を十度単位で調節出来る様になれ。
そうすれば、酸素だけを燃やして気絶させる、重傷を与えない程度に火傷させて動きを止める、もしくは鈍らせるなど戦略に幅が出てくる。
下手に炎熱耐性を持ってない相手に本気で放てば殺しかねんからな。
俺が長年付き合ってきたこの『ヘルフレイム』の制御技術を全て教えてやる、しっかり学んでお前の物にするのだ。
保須での活動は移動中に俺のサイドキックから聞いておけ。
俺から言う事はそれだけだ。」
それだけ言うとエンデヴァーは黙った。
射命丸は完全に今の自分の事を把握されていると感心していた。
(なるほど、流石にヒーロー名が努力なだけあって、経験から来る洞察力が凄いですね。
純粋に実力だけで二位を維持し続けているだけはありますか。
まあ、本人に言ったら怒りそうだから言いませんけど。)
そんな事を考えながら保須へと向かう車に乗り込んだ。
車に乗って三時間ほど。
保須市にある拠点に到着した。
この様な大きい都市だと、外からヒーローが応援として数日泊まり込みで来ることがあるので、1日単位で借りる事のできる建物が幾つかあったりする。
普段から収入が入るわけでは無いがヒーロー活動の補助金が国から支給されるので赤字になる事はあまり無い。
今回、エンデヴァーが借りたのもその様な建物の一つで、地下に個性訓練用の施設がある。
無論、泊まるだけならホテルに泊まって訓練の時のみ、それ用の施設へと行った方が割安ではあるのだが、様々な機密情報を扱う事もあるヒーローに取ってはその様なセキュリティ面も考えられている建物を借りる事が多いのだ。
更に旅行などの私事ならまだしも、ヒーロー活動をしていると、助けを求めて駆け込んでくる人もいる。
その時にホテルだと駆け込んできてから保護するまでにタイムラグがある事に加え、状況が悪化するとホテルのすぐ側で戦闘が発生する事もあり、ホテル側の安全も考え、この様な建物を選ぶ、という訳である。
そして今回エンデヴァーが借りたのはその様な建物の中でもトップクラスのものである。
指定された部屋に荷物を置き、ヒーローコスチュームに着替えてからロビーに集まる。
「では、これからパトロールを始める。
まずはここの住民と潜在ヴィラン共に俺が来たという事を知らせなければならんからな。」
それだけ言うと歩き始めるエンデヴァー。
エンデヴァーの言葉を補足するサイドキックの言葉を聞きつつ、射命丸達も後をついて行く。
建物の外に出ると噂を聞きつけたのか既に人が集まってきていた。
歓声が上がるも、エンデヴァーは一瞥した以降は完全に無視。
射命丸はそれなりに時間のかかるサインのみ断り、それ以外はファンサをし、轟は若干戸惑いながらも普通にファンサをしていた。
待ちつつ少しイライラしていたエンデヴァーの様子を見てサイドキックのバーニンがある程度捌けた所でストップをかけて、パトロールが始まった。
「知っているとは思うけど、一応確認ね。
仮免も無い以上、独断での個性使用は命の危機が無い限りは禁止。
戦闘も禁止。
一応、エンデヴァーさんや私達が許可を出せば使える事にはなっているから、基本エンデヴァーさんの側からあまり離れない様に。
もし戦闘が発生したら、市民の避難案内とか個性を使わない事をやってね。
エンデヴァーさんが言うには、丁度いい塩梅のヴィランがいたら追い込みと囲い込みは私達がやって君達に戦闘させるらしいから、一応そのつもりで。」
(丁度良い塩梅のヴィランとは。)
無論、軽犯罪を繰り返す様な精神的、個性的に小物なヴィランである。
「でも、そんなお誂え向きのヴィランなんてそうそうでないとおもうけどね。」
フラグである。
「死ねぇッ!!」
異形型の個性持ちの拳を真っ向から掴み、そのまま関節技へと持ち込む。
(殺意も拳も軽い。
死ねとか言いつつ、相手を殺してしまう事が頭をよぎって本気を出せないタイプですか。
確かにこれは雑魚だ。
というか、普通に生きてたら犯罪とか犯さないタイプの人でしょ、コレ。
金に困ってのひったくり、ってとこですか。)
地面へと押し倒し、拘束する。
犯人は先程までの暴れ様が嘘かのように大人しくなった。
それを見ていた野次馬から歓声が上がる。
犯人が大人しくなった所で抑え役をサイドキックが変わり、射命丸は軽く服を叩いて立ち上がる。
「流石だな。
確か貴様に戦闘のいろはを叩き込んだのは鬼の3人組と天魔、犬走の当主だったな。
やはり流石に師が師なだけあって、普通ならまだまだ未熟な筈の体術が既にプロの域に入ってるだろう。
焦凍も射命丸のそれは参考にすると良い。」
サイドキックがエンデヴァーがやけに射命丸に対して高評価な事に少しざわめいている。
「なんかエンデヴァーさん、やけに褒めてないか?」
「ほら、あれよ。
焦凍君と射命丸さんをくっつけようって企んでるんじゃない?
奥さんだって最近少し和解したらしいけど、元々は個性婚狙いだって話だし。」
「ああ、あれか。
あの人、プロとしては尊敬できるけど、それ以外がアレだからなぁ。」
「聞こえてるぞ、貴様等ァ!!」
わざとである。
サイドキックとしてもエンデヴァーの家庭問題は直接口こそ出さないもののどうにかして欲しいと思っている為、これ以上エンデヴァーが余計な事をしない為にも釘を刺すつもりで聞こえる程度の声で話していたのである。
因みにエンデヴァーがどれだけくっつけようとしても、射命丸がその気にならない限りは射命丸の本家の方から完全にシャットアウトされるので骨折り損のくたびれ儲けだったりする。
この後もある程度パトロールを続け、拠点へと引き上げた。
そこで今回のパトロールの反省会が行われ、二人は戦闘以外でのヒーローとしての心得を学ぶ。
そして翌日は個性訓練で1日を過ごし、3日目、それは起こった。