夢を見た。
ずっと昔の事。
何もしていないのに、何もする気は無いのに、イジメられた。
殴られ、蹴られ、罵られ、そして見下された。
ずっと昔の事。
最近になって漸く忘れられて来たのに。
ホラまた、殴られ、蹴られ、罵られ、ああ、そう言えば思いっきり噛み付かれたこともあったっけ。
そして、また『見下される』
何で何もしていない私が『ヴィラン』で私を虐めた奴等が『ヒーロー』なのか。
分からない。 分からないけど、1つだけ決めた。
見返してやるんだ、お前らより私の方が強いんだぞって。
私が『見下す』側でお前らは『見下される』側なんだぞって。
そしたら、きっと、きっと
「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう!」
急に聞こえた大声にハッとなる射命丸。
(いけないいけない。 今朝のは相澤先生に変な事言われたから変な事思い出しちゃっただけ。 今の私には関係ない。)
「む、射命丸さん! 君は番号的にこっちだ!」
「あっ、すみませ〜ん! 今行きます!」
そう自分に言い聞かせ、普段の自分を演じる。
(あの時とは違って、私を本当に理解してくれる人が三人もいる。 だから、大丈夫。)
バスに乗り、今回のヒーロー学の授業、『救助訓練』を行う会場に向かう一年A組一同。
因みにバスは飯田の予想していた観光バスタイプではなく、市バスタイプなので並んでいたのは全く意味が無かった。
そんな中、射命丸は後ろの方の席で窓の外の景色を見ながらぼーっとしていた。
「………さんっ、射命丸さん!」
「あっ、はいはい。 どうしました?」
自分が呼ばれてる事に気が付き、慌てて返事をする。
「文ちゃん、大丈夫? 体調が悪いなら今日のヒーロー学は見学してたら?」
そう言うのは蛙吹梅雨。
「いえいえ、大丈夫ですよ。 酔いそうだったので外を見てたら、ちょっとボーッとしちゃって。」
「そう? なら良いけど、無理は良くないわよ。」
「ええ。 ご心配おかけしました。 それで、何の話ですか?」
「皆で『個性』の話してたんだけど、射命丸の『個性』って強ぇし、ハデだよなって!」
そう言うのはこの前の戦闘訓練で射命丸に倒された切島。
どうやら、あの時の事は余り気にしてないようである。
「ああ、そういう話ですか。 まあ、これでも私、結構小さい頃から『個性』の訓練は続けてまして。 威力、範囲、精密性の3つはそれなりのレベルにあると自負してます。」
フフン、と胸を張りながらドヤ顔で答える射命丸。
その胸をガン見する峯田。
直後、
ゴッ!!
と低い音がなり、峰田の頭にタンコブが一つ出来上がっていた。
「天誅。」
そう言うといつの間にか峰田の真横に移動していた射命丸が自分の席に戻る。
そんな射命丸に女子全員からサムズアップが送られた。
巨大なドーム状の建物の前でバスが止まり、相澤に引率され中に入ると、そこは高台になっており、遠くの方に燃え盛る街、巨大な湖、吹雪いている山など多くの災害を模したエリアが見える。
「スッゲー! USJみてぇ!」
「水難事故、土砂災害、火事、etc。 あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。 その名も、
(((((USJだった!?)))))
そう説明しながら現れたのはスペースヒーロー、13号。
宇宙服を模した格好のコスチュームを着ており、その素顔は不明だが、個性『ブラックホール』を駆使して、人々を災害から救い出す、救助専門のヒーローである。
そんなヒーローの登場にヒーローオタクの緑谷は勿論、13号のファンである麗日が強く反応する。
「えー、訓練を始める前に、お小言を一つ二つ……三つ四つ」
増えていく小言に困惑しながらも生徒達は真面目に13号の話に耳を傾ける。
13号の個性『ブラックホール』は勿論のこと、今の社会の中には簡単に人を傷つけられる個性が多い。
各々がそんな個性を持っていることを忘れないように、と言う。
また、そんな社会の中、個性を人を傷つける為ではなく、人を助ける為に使うのがヒーローである。
この前は戦うために個性を使ったが、今回は真逆。
人を助けるための個性の使い方を学んで欲しい、と締めくくった。
生徒達がそのスピーチに熱い拍手を送り、早速訓練を始めようとする相澤だったが、何かに気が付いたかのように振り返る。
それに釣られて生徒達も相澤の視線の先を見ると、階段を降りた先にある広場の噴水の前に黒い煙のようなものが漂っていた。
あれは何だ、と誰もが考える中、その煙は突然広がり始め、その煙の中から悪意に濁った目がこちらを見た。
「一塊になって動くな! 13号、生徒達を守れ!」
煙の中から次々と人が現れる。
が、生徒達はイマイチ状況が掴めず、これも訓練なのかと思うが、
「動くな! あれは、ヴィランだ!!」
「どこだよ、オールマイト。 折角こんなに大衆引き連れてきたのにさ。 子どもを殺せば来るのかな?」
相澤の焦った声と、相手の悪意に満ちた声。
その二つが否が応でも生徒達に現実を叩き付ける。
本物のヴィランが襲って来たのだと。
「ヴィランン!? バカだろ! ヒーローの学校に入り込んでくるかフツー!?」
「何にせよセンサーが反応してねぇのなら、向こうにそういう事が出来る個性のヤツがいるって事だな。 バカだがアホじゃねぇ。 これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ。」
冷静に判断した轟。
その言葉で場の緊張感が一気に増した。
「ああ、恐らくそうだな。 だが、今は……13号、避難開始! 学校に連絡試せ! センサー対策も頭にあるヴィランだ。 電波系の個性が妨害している可能性もある。 上鳴、お前も個性で連絡試せ!」
「っス!」
言われた上鳴は慌てながらも個性『放電』を利用した連絡を試す。
だが、どんな手で連絡を試そうとも一向に繋がらない。
「射命丸! 学校まで全速力で飛んで応援引き連れて来い!」
「了解!」
言われて個性によるフルブーストで飛び出す射命丸。
だが、
「おっと、いけないいけない。」
(チッ、射命丸の風で一瞬目を瞑った瞬間に一番厄介なのに抜けられた!)
射命丸の進行方向に黒いモヤが現れ、その中からモヤに包まれたヴィランが出てきた。
(これ以上前後を塞がれては敵わん!)
「13号! そっちは任せる! 生徒達を引き連れてとっとと避難しろ!」
「先生は!? 一人で戦うんですか!?」
相澤はゴーグルを着け、首元に巻いている捕縛武器を構えるが、緑谷はそんな臨戦態勢をとった相澤を引き留める。
「一芸だけじゃヒーローは務まらん。 俺の心配はいらん。 行け!」
そう言うと相澤は階段を飛び降り、ヴィランの集団に向かっていった。
勿論、迎撃しようとするヴィランだが相澤の個性『抹消』により個性を消されて混乱する。
相澤はそんなヴィランを次々と倒していく。
「すごい! 多対一こそ先生の得意分野だったんだ。」
「分析してる場合じゃない! 早く避難を!」
そう言われて避難を始める緑谷。
だが、その先にもヴィランはいる。
「オールマイトをお探しの様ですが、彼なら居ませんよ? 目的を達成できないなら帰ったらどうです?」
「ええ、そのようですね。 ですが、ここまで来て何もせずに帰るというのもヴィラン連合の名折れ。 居ないなら居ないで、やる事もあるという事です。」
今は射命丸が話に持ち込んで時間稼ぎをしているが、何時こちらに牙を剥いても可笑しくない。
(私はどちらかと言えば吹き飛ばす事に特化してる。 あのモヤの性質が分からない以上、無闇に吹き飛ばすより13号先生に任せたほうが良い。)
そうして時間稼ぎをしている内に13号と生徒達がやって来た。
「さて、初めまして。 我々はヴィラン連合。 僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして。 まあ、肝心のオールマイトは居ないようですが。 ですが、それとは関係なく私の仕事はこれ。」
そう言うとヴィランの体から少しずつモヤが広がり始める。
それを見た生徒達は後ろに下がる。
だが、
「その前に俺たちにやられる事は考えてなかったか!?」
「ダメだ! どきなさい二人とも!」
切島と爆豪が先手必勝とばかりに飛び出し、ヴィランに攻撃した。
だが、そこは13号の『ブラックホール』の射線上。
「危ない危ない。 そう、生徒といえど優秀な金の卵。 だからこそ、散らして、嬲り、殺す。」
爆豪の『爆破』によりモヤが少し散らされるも、すぐに元に戻り再度姿を表すヴィラン。
モヤが急速に広がり、生徒達を包み込んだ。
爆豪と切島がいるせいで本気で『ブラックホール』を使う訳にもいかず、周囲のモヤだけを吸い取る13号。
暫くするとモヤは晴れたが、13号と13号の近くにいた数人以外は全員居なくなっていた。
あややを戦闘に引きずり込む為に少しだけUSJ序盤の内容を変更。
クラス最速かつ飛べるからね。
しかも風も操れるからね。
まともに黒霧と戦わせたら簡単に抜けられちゃうからね。
是非もないよネ。