妖怪のヒーローアカデミア   作:座右の銘は天衣無縫

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射命丸文 オリジン(仮)

 

個室に鳴る電子音。

個室に置かれたベッドの上には射命丸が眠っている。

 

ヴィラン連合による襲撃を何とか撃退した雄英高校は襲撃後にすぐさま射命丸を病院へと運んだ。

 

リカバリーガールに治癒してもらうのは気絶した射命丸の残りの体力が全くの不明だった為却下され、病院に運び込まれたのである。

 

射命丸の怪我は肋骨七本完全骨折、二本にヒビと幾つかの内臓への損傷、吹き飛ばされた時に無理矢理に氷から足が抜けたことによる足の皮膚が剥がれた事。

 

妖怪型という素の身体能力が高く、その場にいた誰もが気付かなかったがパンチの威力を風で幾らかか殺した事により、奇跡的にもこれだけで済んだ。

 

脳へのダメージは無いので襲撃から一日たった今頃は目を覚ましていてもおかしくは無い。

だが、目を覚まさない。

 

「医者には何か強い精神的ストレスを短期間に大量にかけられた事によって脳が起きるのを拒否している、と言われました。」

 

その病室で包帯を巻いた相澤は射命丸の母と向かい合って話をしていた。

 

「そして射命丸が飛ばされたと思われる雪山ゾーンには一人、精神干渉型の個性を持っていたヴィランがいました。」

 

山から落ちて死にかけだったが、と心の中で続ける。

 

「さらに、射命丸の個人データを探ってみたらまだ保育園の時、イザコザがあった様ですね。 その時の話を聞かせては貰えませんか? そこに、射命丸のトラウマがあるんですよね?」

 

「…………はい。 ですが寝ているとはいえ本人のいる所で話すのはアレなので場所を変えましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英高校の臨時休校が終わり、生徒達は何時もの様に教室に集まっていた。

だが、その目線は空席になっている射命丸の机に向けられていた。

 

誰も何も言わないが、互いに考えている事は分かっている。

 

HRの開始を告げるチャイムと同時に相澤が教室に入って来た。

包帯を巻き付けた痛々しい姿ではあるものの、復帰の速さに生徒から驚きの声が上がる。

 

「先生! その、射命丸さんは」

 

「無事だ。 怪我も俺より軽い。」

 

麗日が気になっていた事を質問し、返ってきた相澤の答えにホッとする。

 

「だが、目を覚まさない。 医者は精神的な理由だって言ってる。」

 

「それは、どういう意味ですか?」

 

相澤の言葉に疑問を持った八百万が質問をするも

 

「悪いが、それは俺からは言えない。」

 

相澤は答えない。

何故ならそれは射命丸の個人的な問題である。

本人や親しい人が話す分には構わないが、ただ担任なだけの相澤の口からは言えなかった。

 

「病院は○○病院だ。 見舞いに行きたいなら行け。 ただし、迷惑にならないようにな。」

 

と、そこで一旦区切り、

 

「それはそれとして、だ。 戦いはまだ続いてる。」

 

「まさか、またヴィランが…………!」

 

「雄英体育祭が三週間後までに迫ってる。」

 

「「「「「クソ学校っぽいの来たぁ!!」」」」」

 

相澤の言葉に『ヴィランの襲撃があったのにやるのか』と聞く峰田、それに警備を例年の5倍にすることで開催を決定したと答える相澤。

 

「それと轟、後で職員室来い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呼ばれた轟が昼休みに職員室に行くと、射命丸が呼ばれた時と同じ様に入ってすぐの所に相澤が寝っ転がっていた。

 

そして個室に入り、会話が始まった。

 

「この前のヴィラン襲撃の時の射命丸の件だが、気にしてるか?」

 

「はい。」

 

寧ろ気にしてなかったら駄目だが。

 

「あれはお前は悪くない。 タイミングが悪かっただけだ。 忘れろとは言わんが必要以上に引き摺るなよ。」

 

「はい。」

 

「それだけだ。 手間取らせたな。」

 

「いえ、失礼しました。」

 

数十秒で面談は終わり、轟は職員室から出て行った。

その後ろ姿を見て、暫くの間は気にしてようと考える相澤。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

射命丸の入院している病院。

そこに雄英高校一年A組の爆豪以外の一同が揃っていた。

普段、放課後に何かあってもすぐに帰る轟が来たことに一同に少し驚きがあったが、爆豪のように言動が悪い訳では無いので、すぐに収まった。

 

受け付けで射命丸の病室の場所を聞き、その前まで来た。

 

スライド式のドアを開け、中に入ろうとするが既に先客がいた。

 

青い服を来た、一見小学生に見えないこともない女子。

白髪に獣の耳と尻尾、そして白い翼を生やした女子。

そして、射命丸と同じ様に黒い翼を背中に生やした女子。

 

「「「「「…………どちら様ですか?」」」」」

 

全員の声が重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室にいた三人の先客は射命丸の親戚だった。

従兄弟の姫海棠 はたて、再従妹の犬走 椛、そして一言では言い表せないほど遠縁の河城 にとり。

 

この三人は射命丸の無駄に多い親戚の中でも年が近く、特に仲の良い三人だった。

 

「はーー、なるほど文の同級生なのね。」

 

と缶のジュースを飲みながら話すのは河城。

 

「それでお見舞いですか。 雄英高校の体育祭も近く、忙しい中ありがとうございます。」

 

「いや、クラスメートが大怪我を負ったんだ。 これくらいは何でも無いです。」

 

と、真面目に礼を言う犬走にこれまた真面目に返す委員長の飯田。

 

因みに姫海棠は部屋の端の方でガチガチに緊張している。

何を隠そうこの姫海棠、引き籠もりである。

通信制の高校を利用してはいるが、普段から余り外に出ず、会話も家族や射命丸、犬走、河城くらいとしかしない、典型的なコミュ障である。

 

「はたては…………いつものか。」

 

「いつものって?」

 

「コミュ障。」

 

(((((ああ、そういう事。)))))

 

河城の言葉に切島が質問し、その答えに納得する一同。

 

「それにしてもデッケー病室だよな。 これで個室?」

 

A組十八人に加え、姫海棠、犬走、河城の三人の合計二十一人が全員入って余裕のある部屋である。

 

「うん? だってここVIPルームだもん。 気付かなかったの?」

 

「「「「「………はあぁ!!?」」」」」

 

VIPルームという言葉に驚くが、そこら辺は雄英高校側が誠意を見せたって事かな、と思い直す。

 

「流石は雄英、一生徒の為にVIPルームを取るなんてな。」

 

そう言う瀬呂だが、

 

「いえ、違いますよ? VIPルームなのは私達の方にツテがあっただけですし。」

 

「え、ウソ、文って意外とお嬢様的な?」

 

病院のVIPルームをツテで使ってると聞き、実は八百万的なのかと考える耳郎。

 

「いんや、違うよ。 無駄に親戚が多くてさ。 ツテとかはあっちこっちにあるんだよね。」

 

「この病院の院長先生が文さんの父の従兄弟の伯父の次男の人と仲が良いみたいで。 VIPルームを使わせてくれたんです。」

 

それはそれで凄いと思う。

 

「ところでですが、相澤先生、私達の担任の先生からは文さんが目覚めないのは精神的な理由があると聞いたのですが、どういう事か分かりますか?」

 

そう切り込んだのは八百万だ。

 

「さあ? 精神干渉型の個性持ちにトラウマでも引っ張り出されたんじゃないの?」

 

「トラウマ?」

 

トラウマと聞き、反応したのは轟だ。

 

「あ〜〜、それは教えて良いのか悪いのか。 はたてはどう思う?」

 

「ここで私に振るの!?」

 

「え、だって椛が中立な意見なのは目に見えてるんだもん。」

 

「だからって私に振らなくても良いじゃん!」

 

「あ〜〜、ソウデスネ。 で、どう思う?」

 

「ッ〜〜〜!! …………ハァ。 教えても良いんじゃないの? 見てても悪い人達には見えないし。」

 

「じゃあ、文に何か言われたらはたての責任ね。」

 

「はあっ!? 何でそうなるのよ!」

 

「椛〜、任せた。」

 

「任されました。」

 

「そこで椛に頼むとか卑怯よ!」

 

「は〜い、話の邪魔になるので少し静かにしていましょうね、はたてさん。」

 

「むぐ〜〜〜!! む〜〜〜!!」

 

犬走に口を抑えられ、文句を言いたくても何も言えない姫海棠。

ここまでのやり取りを見て姫海棠がイジられ役なんだと気付く。

 

「は〜い、ホントに静かにしててねはたて。 結構真面目な話なのは分かるでしょ?」

 

「む〜〜〜!!」

 

「…………椛、鼻はつままなくて良いよ?」

 

「あっ。 す、すみません、はたてさん。」

 

何かコントを見てる気分になるA組一同。

 

「そんじゃあ、今度こそ始めよっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達が初めて会う前の事だね。

保育園に入りたての頃って聞いたから、今から十年以上前か。

 

簡単な話、イジメられたんだよ。

ほら、『鴉天狗』って妖怪の名前じゃん?

で、男の園児の一人が親にでも聞いたんだろうね、「妖怪ってなに?」って。

 

まあ、妖怪なんて世間一般的には『悪い事をする化け物』の総称なわけだ。

だからそんな妖怪の個性を持つ文は『悪い事をする化け物』で悪い事をするから『ヴィラン』なんて連想されちゃったんだよ。

 

だから殴っても蹴っても良い。

倒したら自分たちが『ヒーロー』だ、なんて考えたんだろうね。

 

最初は三人にいきなり殴られた。 けど、個性が半分異形型みたいなもんだからね。 勝っちゃったんだよ。

 

まあ、そしたら三人の男の子に勝っちゃった文は他の子や、保育園の先生からも怖がられるわけで。

 

今度はそれ以上の数で袋叩き。

先生も文の事を気味悪がってたから、園児によくある喧嘩って事で積極的には止めに入らなかった。

 

三人には勝てても十人くらいには流石に勝てなかった文はボコボコにされた後に『ヴィラン』だの『化け物』だの色々言われたらしいね。

その時に言われた『ヴィラン』『化け物』、そして文を『見下す目』

その三つが文のトラウマなんだよ。

 

だからヒーローを目指すことで文は自分が『ヴィラン』でも『化け物』でも無いことを証明し、『見下される』側じゃなく『見下す』側なんだって自分に言い聞かせると共に相手に態度で示そうとしてるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近はそれも無くなって来たんだけどね〜。」

 

と、軽く言う河城だが、話を聞いたA組一同の表情は硬い。

 

「ウチのお祖父さんは『個性社会の弊害の一つだ』って言ってたけどその通りだよね。」

 

無個性、没個性、周りから少し浮いた個性。

ただ、それだけの理由でイジメられる。

個性の良し悪し、有る無しで生まれながらにして格差が出来る。

 

全体的には個性により便利になったかのように見えるが、細部に目を凝らせば問題は多い。

 

「まあ、そんな虐めが暫く続いた後に保育園を辞めたんだ。 その後、親戚の中でも年が近い私達と一緒に育ったってワケ。 いや〜〜、初めて文に会った時は怖かったなぁ。 生傷ばっかで目つきも鋭いし、目に光とか」

 

スパァン!!

 

話をしていた河城が急に頭を叩かれた。

 

「ッ〜〜〜〜〜!!!?!?!?」

 

叩かれた頭を抑えて転げ回る。

河城の個性は『河童』、その為頭が弱点なのだ。

 

「余計な話はしなくてよろしい。」

 

転げ回る河城を心配そうに見ているA組一同だったが、急に聞こえた声にベッドに目を移す。

 

そこには上半身をベッドから起こし、腕を振り抜いた射命丸がいた。

 

「「「「射命丸さん!」」」」

 

「ストップ。」

 

射命丸が起きたという事実に気が付き、近付こうとする一同だが、その前に射命丸本人に手で制される。

 

「その前に一個だけ確認。 今日、何日?」

 

心無しかどこか焦ったような表情で今日の日にちを聞く射命丸。

 

「えっと、21日ですが、」

 

「ナイス、私ぃ!!」

 

思いっきりガッツポーズをしてから、痛たたたと腹を抑える。

 

「これなら締切間に合う! リカバリーガール呼んで!」

 

「ああ、そういえば射命丸さんってフリーライターだっけ。」

 

クラスの中では一人だけ、射命丸がフリーライターという事実を知っていた緑谷が納得するも、その他のメンバーは『え? なにその事実。』と困惑している。

 

「射命丸。」

 

轟が射命丸に声をかけながら前へ出る。

 

「ヴィラン襲撃の時、ホントに済まなかった。 この落とし前は必ずつける。 何でも言ってくれ。」

 

綺麗に腰を90度に曲げ、頭を下げる轟。

それを見た射命丸は

 

「椛、私の代わりにビンタ二発。 キレイに痕が残る位で。」

 

「はい。」

 

「本当は私がしたいところですが、結構傷が痛いですしね。 これでチャラにしときます。 実際、私の自業自得な部分もありますし。」

 

顔を上げ、何かを言おうとした轟に犬走からビンタが飛んだ。

両側に二発。

 

「椛、轟さん何か言おうとしてたんだけど?」

 

「ああ、いや、ビンタされる為に顔を上げたのかと。」

 

意外と天然なところのある犬走。

 

「ああ、そうだ。 さっきの話、同情も情けもいらない。 変に心配される必要もない。 それだけ。」

 

河城から話を聞いたA組を見ながら低い声でそう伝える。

 

「それじゃあ、誰か看護師さんに私が起きたって伝えてきてくれます? 学校の方にも連絡しなきゃいけないでしょうし。」

 

何時もの笑顔になって、そう言う射命丸。

 

「なら僕が行こう。 看護師さーん!!」

 

委員長の飯田が部屋から出て行き、そこそこの速さの早歩きで廊下を進んでいった。

走らなければ良いという話では無いのだが。




にとり、椛、はたての三人が登場。
これ以上は東方Projectのキャラを出す予定はないです。

はたては文と同い年、椛とにとりは一個下という設定です。

椛は雄英高校ヒーロー科志望、にとりはサポート科志望です。

この三人はこの後もちょいちょい出てくる予定。
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