ぐだ熱中黒髭チュウ   作:髭ドレスキー

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なつ。
オチ弱め。
ネーム感。


水や日陰が無いときに熱中症になったらとりあえず濡らしたタオルで汗を拭きましょう。

 どこまでも続く水平。

 

 普段であれば可愛らしいはずのにゃあにゃあと鳴くウミネコが、今は非常に憎たらしい。見下されている様で、嘲笑されているようで。連れて行ってくれないなら、私の糧になれ。

 波音はしない。静かな海だ。

 まるで、眠っているかのような海だった。

 

「……あづ……ぃ~……」

「口に出さないの。……余計暑くなるでショ」

 

 空は快晴。雲一つなし。

 隣は黒髭。汗ダラダラ。

 

 ちょっと魚を獲りに小船で。

 素材集めに寄ったオケアノスで、そう言い出した気の迷いが、この現状を生んでしまった。

 

「……さかな、釣れた?」

「さっぱり。この辺りにはいないのでござろうなぁ……」

「移動する?」

「どうやって?」

 

 帆、無し。

 オール、無し。

 勿論エンジンなんかも無し。

 

 船としての機能の内、浮く事以外を削ぎ落してしまったこの船に、移動手段は手くらいしかない。

 

「あづぃ~~……」

「だーかーらー、暑いって言わないの。そんなに暑いなら服でも脱いでなさいよ」

「そうする……」

「……冗談でござるよ?」

 

 魔術礼装だけど、敵影すら無い現状ただの厚い服でしかない。

 手早く上を脱いで、お腹と肩、背中を外気に晒す。一瞬だけ、涼しい。汗が冷えたのだ。

 

 しかし海風が無い。暑い。というか熱い。肌への直射日光が、痛みのような暑さになって帰ってくる。

 

「着込まなくていいから、羽織るくらいはしておきなさいよ。というか、拙者と二人きりの時に服脱ぐとか、マスターもしかして誘ってるでござる?」

「ぬぅ~ぁ~……ドレイク船長たすけれ~、おそわるる~……」

「それでBBAが駆けつけるんなら、拙者も命を捨てる覚悟で襲うんですが」

「……やる?」

「冗談言ってないで、服を着なさい。折角の綺麗な肌が焼けるでショ」

 

 はーい、と渋々脱いだ上着を羽織る。

 日光が遮られ、少しだけ涼しくなったように感じた。

 

「あぁ、だめだめ。汗を拭かないと熱中症になる……拙者の持ち物で気持ち悪いかもしれませんけど、ほら使って」

「ぅー……ぁ~……」

「あーもー! ほら、お腹出して! はぁ、ほんとに……はい次背中!」

 

 黒髭の持っていたイリヤの描かれたハンカチ(誰が作ったんだ)でお腹と背中の汗を拭かれる。ハンカチの通り過ぎたそこが少しだけ涼しい。

 されるがままに身を預ける。

 だが、どうしてか、一向に「最も汗を掻いているトコロ」を拭いてくれない。

 

「ここも汗凄いから~」

「そこは自分でやりなさいよ」

「ぇ~……」

 

 胸。

 谷間もそうだけど、ブラの内側は汗が凄い。腋もそうだ。

 万歳の格好をして、黒髭に身体を曝け出す。どーぞーふいてーくださいー。

 

「……拙者も男なんですけど?」

「知らない……くらくらしてきた……」

「汗を掻いてる内はまだ大丈夫。汗を掻かなくなったらガチでヤバイでござるよ。ほら、とっとと汗ふいて」

「うぅぅ……」

 

 暑い。ほんっとーに暑い。

 これ以上はしてくれなそうなので、渋々イリヤ(ランドセルを背負った絵だ……)のハンカチでブラの隙間や谷間の汗を拭きとる。

 黒髭はこちらを全く見ない。

 

「……はい」

「マスターの汗が染み込んだイリヤちゃんはお宝」

「ん~」

「……本当に調子悪そうでござるな」

 

 いつもは突っ込んでいる黒髭の変態発言も、今はどうでもいい。

 ただ暑くて、熱くて……お腹が減って。

 

 ふらふらする……。

 

「ま、もう少しの辛抱でござるよ。カルデアかBBAがすぐに見つけて――マスター?」

「……」

 

 気持ちが悪い。

 ぐるぐるする。

 

 喉が渇いた……。

 

「ちょ、マスター? ……これ……な……」

 

 耳が遠くなる。

 身体が軽くなる。

 

「不味いな……症だ……だから……」

 

 何かを言っている。黒髭が、険しい顔で、ブツブツと呟いている。

 でも、ああ、でも……ダメだ。

 

 意識が、保てそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩! どこですかー! 先輩!」

「ダメ。見つからない」

「西も船影無し……あんな小舟でそう遠くに行けるとは思えませんけど……」

「不味いね、あいつらがいなくなってからそろそろ八時間。日差しも防げないあんな小舟じゃ、ティーチの奴はともかくマスターがしんじまう……ん?」

「ありゃあ……おい! ロープを降ろせ!」

「……」

「黒髭さん!?」

「アンタ……」

「背負ってるの、マスター? ……顔色が悪い」

「すぐに氷嚢を持ってきます!」

「船内へ運ぶのが先決ね……」

 

「よう、珍しいね、アンタが船を捨てて泳ぐ、なんて博打に近い手段を取るなんて」

「……船の上に居ても何もできないでしょ。生前と違ってこの身体はサーヴァント。多少の無理も効く」

「にしても、よくこの船の位置がわかったね? こっちじゃアンタ達の姿は確認できなかったってのに……」

「……」

 

「確かに熱中症。だけど、脱水症状は起こしてない」

「幸運ですけど、ヘンですわね。八時間も炎天の元にいたら、身体の水分はとうに尽きてしまうはずのですのに」

「ん……」

「先輩? 気付きましたか?」

「……もう、いいの……?」

「何が?」

「もう……ちゅー、いいの……?」

 

「令呪で宝具の位置確認、ね……。後はガッツでここまで泳いできたと。よく魔力が足りたねぇ」

「……クロエ嬢に習った」

「まさかアンタ、粘膜接触で……いや、命のかかった状況じゃ、四の五の言ってられないか。ハ、見捨てられないってのは厄介だろう?」

「金輪際、マスターとは漁に出ないでござる」

「ハハッ! 海賊黒髭もマスターの前じゃ形無しだねぇ。ま、良く頑張ったよ」

「BBAに褒められても……」

「そうかいそうかい。じゃ、あの子らに褒めてもらいな。誤解を解きつつね」

 

「ありがとね、黒髭」

「そういうのは拙者が誤解でボッコボコにされる前に言ってほしかったですなぁ」

「お礼がしたいんだけど、何かしてほしいことある?」

「ん~、では船の上での続きを……なんて」

「……する?」

「ハッ、悪寒!? じ、冗談でござる! それでは拙者これにて失礼!」

 

「……いいのに」

 

 




ちなみにレジスタンスのライダーは一人で舵取ってます。






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