すみません‼
なんか思うようにアイディアがでなくて(言い訳)
幾度も幾度も繰り出される斬撃を槍で捌き、いなす。
一度でもミスをすればどうなるか、分からない程グラノーラも馬鹿ではない。
ゲームでなら何度も受けた。しかし、リアルでは当然だが、斬られた事など一度たりともない。
それでも痛い事くらいは分かる、とてつもなく痛いのだろう。それくらいなら分かる。
しかし、分からない事が一つある。
なぜ、自分は自らの師範役である第五階層守護者コキュートスと戦わなければならないのかということ。
時をさかのぼる事30分前。
無情にもモモンガにおいてけぼりをくらい、呆然とするグラノーラの前に完全に武人スイッチの入ったコキュートスが仁王立ちしていた。
「サァ、グラノーラ様。早速デスガ稽古ヲ始メタク思イマス。」
只でさえ大きな体がより大きく見えるのは気のせいだろうか。期待に胸膨らませ過ぎて本当に体が大きくなったということなのだろうか。尋常ではない威圧感に、小心者のグラノーラの精神が目一杯の大音量でサイレンを鳴らすが、あえて無視をする。ここで引けば先ほどの苦労が水泡に帰すからだ。
「あ、あぁ。頼むとしようか。えーと、コキュートス先生と呼べばいいのかな?」
「ソレハ、アマリニモ恐レ多イ事ニゴサイマス!
コキュートスト、オ呼ビ下サイ。」
「そうか。じゃあそうさせてもらおうかな。
じゃあコキュートス、まずは何から始めるんだ?
素振りか?精神統一か?」
「イエ、先ズハ御身ノ御力ヲ測リタク思イマス。」
「待ちなさいコキュートス!グラノーラ様を試すというの?あなたは一体何様になったつもりなの!いくらなんでもそれは不敬よ!己が分をわきまえなさい!」
グラノーラの力を測るという言葉にアルベドが横合いからコキュートスを叱責する。
「まぁ待てアルベド。コキュートスにも何か考えがあっての発言だろう。そうだよなコキュートス?聞かせてくれお前の考えを」
グラノーラはアルベドを言葉で制しつつコキュートスに真意を問う。
「御身ノ御力ヲ知リ、御身ニ対シテドウイッタ稽古ヲシテイタダクカヲ決メタク存ジマス。不敬ハ百モ承知シテオリマスガ、グラノーラ様ドウカオ許シヲ。」
「なるほど、だが実際に力を測るといってもどうするのだ?」
グラノーラの問いにコキュートスはプシューと白い息を吐き出し答える
「……グラノーラ様トノ手合ワセニテ測リタク存ジマス。」
そう答えた瞬間、グラノーラとコキュートスの間に守護者達とセバスが割って入る。
「コキュートス、貴方……その意味分かってるの?」
「無論ダ……」
「御身に刃を向けると?それがどれ程の大罪か理解しているのかしら?」
「無論シテイルトモ……」
アルベドの詰問にも何処吹く風といった様子で答えるコキュートスに対して他の守護者達も非難の目を向ける。
そんな中でもコキュートスは守護者達ではなくグラノーラをじっと見つめ微動だにしない。
まるで二人の間には何も無いかのように。
了解するか否かをグラノーラに問い掛けるように。
ここで却下だと口にすれば済むのだろう。
しかし、済ませてはならない気もした。この異世界で自分がどの程度戦えるのか知る必要があると思ったからであり、何より配下との稽古で怪我が怖いから嫌だとは何とも格好悪い話じゃあないかと。
「……良いだろう。コキュートス、お前との手合わせはこの俺グラノーラが許可する!外野は下がれ。」
「そんな!危険です!御身に何かあれば我々はモモンガ様に会わせる顔がありません!お考え直し下さい!」
懇願するアルベドに他の守護者達も続く
「アルベドの言うとおりでございます!ご一考を!もっと安全に確実に御身の御力を測る方法があるはずです‼何卒ッ!!」
「そうでありんす!危ないでありんす!」
「アタシもシャルティアと同意見です。ねっマーレ?」
「あっあの、そうです‼」
「(安全で確実な方法……か。確かになぁ、でもいつ何処から敵が来て戦闘が始まるかもしれないんだ。
考えてる余裕はない。スキルは問題なく使えたから、魔法もOKってことかな?そうなると、他に知っておくべき事は俺の近接戦闘能力か。やっぱり戦闘訓練は必須だな!)
アルベド、デミウルゴス、それに他の守護者達もだ。
下がれ。……命令だ。」
「ですがっ!」
それでも尚、食い下がってくるアルベド達に正直グラノーラは困っていた。
「……なら、万が一にも俺の命もしくはコキュートスの命が危険だと判断した場合にのみ止める事を許可する。それならどうだ?言っておくが、俺はこれ以上譲歩しない。
何、難しい事じゃない。お前達に審判をしろというだけの話だ。」
「ですが……」
「はぁ、そうか……お前達はこの俺がコキュートスに遅れをとると?」
「いえっ!その様なことは決して!」
「では、下がれ……これ以上俺を不快にさせるつもりか?」
「……かしこまりました
……下がりましょうアルベド、
ですがグラノーラ様、もしも万が一、億が一にも、御身もしくはコキュートスの命の危険を察知した場合は我々守護者一同が全力を持って止めさせていただきます。何卒ご容赦を…」
「分かった。では下がれ。」
恭《うやうや》しく頭を下げ、後ろに下がるデミウルゴスが下がり様に、未だに何とか粘ろうとするアルベドに何やら耳打ちをする。
「コキュートス……やっておしまいっ!!」
態度が一気に180°一変するアルベド。
ちなみにデミウルゴスが耳打ちした内容は
「疲れ果てて、心身ともにボロボロになってしまわれたグラノーラ様の介抱は一体、誰がするんでしょうね……
フフッ……わかりますね?」
というもの。
「グラノーラ様、参リマス……」
コキュートスが勢いよくグラノーラに斬りかかる。
グラノーラもコキュートスの斬撃をグングニルで防ぎ、距離をとる。
コキュートスの武装は
大太刀・斬神刀皇
太刀・氷王ノ牙
の2本である。
グラノーラの介抱という言葉に目がくらみ、コキュートスのやる気スイッチをONにしてしまったアルベドだが、
コキュートスには存分に頑張って貰わねばならないので特に後悔はしていない。
むしろもっとやれと思っている。
そんなこんなでかれこれ20分弱、つまり現在だ。
武器を用いた戦闘において守護者最強を誇るコキュートスの斬撃をグラノーラがここまで一度も受けずに済んでいる事は別に奇跡というわけではない。
グラノーラの持つ槍、神槍・グングニルは火力面において別段優れている訳ではない、狙った対象を絶対に外さない。遠距離の敵に投げようが、近距離の敵を突こうが、対象の数も関係なく、狙った獲物のみを撃ち抜く槍
であり、敵の攻撃を自動迎撃する能力も備えているため基本的にグングニルさえあれば負ける事はないのだ。
まぁ弱点が無いわけでは無いがそれは使っているグラノーラ本人しか知らない事だ。
グラノーラは本来、自分のスキルを使えない場合を想定してこの稽古を提案した。
つまり、自分の技量のみで捌かなくてはならないコキュートスの斬撃をグングニルの性能のみで捌いている本末転倒な状態だ。こんなものが稽古になるわけがない。
しかしグラノーラにそんな事を気にしている余裕は微塵もない。
なぜならグラノーラはグングニルの能力を使っているつもりは一切ないためだ。
自分が必死にコキュートスの斬撃を防いでいると勘違いしているだけなのだ。
ギリギリの攻防をしていると考えているグラノーラと
まるで計算され尽くしているような防御に驚嘆するコキュートスの茶番はグラノーラが感じ取った僅かな違和感により解消される。
ガキィン!と金属音を響かせつつグラノーラはグングニルを横に薙ぎ払いコキュートスと距離をとり
「待った‼ストップだコキュートス」
距離を詰めようと突進気味に走ってくるコキュートスは急ブレーキをかけ、地面を抉りながらグラノーラの一メートル程の所で止まる。
「イ、如何ナサイマシタカ?グラノーラ様。」
少し困惑しながら質問をなげかけてくるコキュートスにグラノーラが告げる。
「お前……退屈してるだろ?」
「ッ!!!ソノ様ナ事ハゴザイマセン。」
「本心を言え。命令だ」
「ハッ、ソノ……僅カニ…」
この発言にぶちギレたのはグラノーラではなくアルベドでもなくシャルティアだった。
「あ゛あ゛ぁン!!コキュートスおんし不敬にも程がありんす!至高の御方と共に何かできる。それだけでも最高の褒美であるはずが、それを退屈と抜かすとは……
ぶち殺されてぇかぁぁ!!」
鬼の形相でコキュートスに詰め寄ろうとするシャルティアにグラノーラはフルパワーで重力をかけ落ち着かせる。
「シャルティア静まれ、ドウドウ
コキュートス、今の発言を俺は別に不快になど思ってはいない。
正直に言ってくれて助かるよ。
今日の稽古はこれまでとする。」
暴れ馬を落ち着かせる様にシャルティアを撫でて落ち着かせつつグラノーラはコキュートスに稽古の終了を告げる。
「……カシコマリマシタ。」
「そしてお前に褒美だ。
稽古に付き合って貰ったからな。
褒美をやらないとな?」
しゅんとするコキュートスにグラノーラは突然の褒美を口にする。
「褒美ナドト!恐レオオイ事ニゴザイマス!!」
「なに、大したことじゃない。
……一撃だ。一撃だけだが全力で撃ってこい。
お前の全てを一撃に込め俺にぶつける事を許可してやると言うだけの話だ。」
「ソ、ソレハ……
ヨロシイノデショウカ?」
グラノーラの物騒な褒美に乱心気味だったアルベドを含む守護者達が二人の間に立つ。
「ん?なんの真似だお前ら?」
「恐れながらグラノーラ様。これ以上は危険と判断いたしました。」
若干不愉快気味に質問をなげかけてくるグラノーラにアルベドが深々と頭を下げつつ答える。
「危険?コキュートスの全力の一撃が危険?
何をいっているんだ?
あ!言うのを忘れてたな。
言っておくがコキュートス、お前の全力の一撃を俺は防ぐからな?絶対に。
だから安心して撃ってこい。
さぁお前らこれで満足か?下がれ。」
どこか納得していない守護者達を何とか説得し
再びグラノーラとコキュートスが向かい合う。
距離にして5メートルといったところだ。
「デハ、参リマス、デスガ本当ニヨロシイノデスカ?」
「構わない。来い‼」
その言葉を聞きコキュートスは自らをいくつもスキルを重ね掛けし、強化していく。
「オ待タセシマシタ。
参リマス!!!」
コキュートスは5メートルの距離を一瞬で詰め、自身が誇る最強の一撃を放つ。
「スキル発動!アチャラナータ!倶利伽羅剣!!」
森羅万象を切り裂く最強の一撃は巨大な斬撃となりグラノーラに迫る。
が、グラノーラは右手をかざし一つのスキルを発動する。
「スキル発動、神判【ジャッジメント】」
スキル・ジャッジメントの効果は至ってシンプル。
全ての能力、アイテムやスキル、物理、魔法を無効化するだけだ。
但し連射はでない上に、防げる攻撃は一撃のみ。
しかも100時間に一度しか使えないというデメリットもある。
パァンという破裂音と共にコキュートスの渾身の一撃が塵と化した。
「ナ、ナント……
オ見事ニゴザイマス。グラノーラ様。」
「フフッそうだろう?本当は超位魔法や世界アイテム対策に使うスキルなんだかな。
(あー怖かったぁ……)」
「お見事です!グラノーラ様!流石は至高の御方!」
守護者達からの褒め言葉の雨あられに照れ臭くも誇らしい気持ちになったグラノーラは頭をかきつつ告げる。
「よし!みんな今日はご苦労だった。各々持ち場に戻って結構。
あぁ、セバスとユリとソリュシャンは褒美をなるべく早く報告するように!
解散!!」
こうしてグラノーラの稽古は幕を閉じるが
後日コキュートスから継続は力なりと詰め寄られ、この稽古を三日に一度のペースで行う事になったのは別のお話。
オッホウぐッだぐだ‼
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