ネタが思いついたのでつい投稿してしまったバ烏です。
執筆中作品がもう一つあるのでおそらく、自分が満足したらひっそりとこの作品消えていると思います。
というかその気で書き始めてます。
ですので記憶の片隅に保存しておいていただければ幸いです。
【●月△日 晴れ】
今日、友人から子犬を一匹引き取った。
茶色い毛並みのミニチュアダックスフンドだ。
慣れていない俺にピクピクしていてとても可愛らしい。
名前を考えながら食べていた夕食のメニューがピザだったので安易に"ピザ丸"と名付けた。
"ギュウタン"でもよかったかもしれない。ミニチュアダックスフンドの耳は牛タンに見える。俺だけだろうか?
【◽︎月▽日 晴れ】
やばい。
何がやばいってウチのピザ丸が可愛すぎる。
家にいるときはいつも足元に戯れてくるし、ちょっと出かけてから帰ってきたら尻尾を千切れんばかりに振って俺をお出迎えしてくれる。
愛おしすぎる。調べてみればメスだったし、ピザ丸とゴールインするのもいいかもしれない。
というか、ピザ丸が人になったりしたら絶対する。
きっと美人さんになることだろう。
犬のピザ丸も可愛いが、ピザ丸とも言葉を交わしてみたいものだ。
【▷月◁日 曇り】
……?
なんか最近ピザ丸の様子がおかしい気がする。
もともと食は細かったクセに、やけに最近ご飯を求める。
【▷月×日 晴れ時々曇り】
やっぱりピザ丸が変だ。
最近目に見えて大きくなってきた。
横になら食べすぎなだけだが、明らかに体長も大きくなってる。
成長期は終わってるはずなのだが……。
【▷月♪日 雨】
ピザ丸を病院に連れて行ってみたが特に所見なしとの事だった。
使えん医者め。これでピザ丸に何かあったらどうしてくれる。
勘も働かず、事務作業したいだけだったのなら事務員になればよかったのだ。
【〓月+日 晴れ】
……ありのまま今日起こった事を書くぜ。
ウチのピザ丸が幼女になった。
ごしじんちまだいすき
ジャー、トントントン、ガッシャーン!
「なにごとっ!?」
カーテンの隙間から差し込む陽の光が俺をノロノロと微睡みから抜け出させようとしていた朝。
何かが割れる音と共に微睡みさんは叩き落とされ、ハッキリと意識が覚醒した。
『ワンワン、アウッ!』
犬の鳴き声。
部屋の外からはカチカチと床を叩く爪の音も聞こえてきており、忙しなく動き回っている事がわかる。
そして、この家で俺が飼う犬など一匹しかいない。野犬だったら残念無念、一生の終わりである。
扉を開けた先には、尻尾を振りまくる茶色のミニチュアダックスフンドが居た。
愛すべき我が家の飼い犬、ピザ丸君である。
「おー、おはようピザ丸ぅー。起こしにきてくれたのかー?」
「ワンワン!」
「ははは、そうかそうか。ありがとうなー」
お目目キラキラ此方を見上げ、ベロを出して返事を返してくれるピザ丸の愛らしさに思わず顔を埋めてしまう。
なんだ、なんなんだこの天使は。
人など及びもしない圧倒的愛くるしさ。
そこらの女よりよっぽど俺の心を鷲掴みしてくるではないか。
もはや先程の奇怪な音の事など頭の片隅から紐なしバンジーに興じてしまっており、俺は目の前のマイディアドックの相手で忙しくなってしまっていたのだった。
ひとしきりピザ丸と戯れた後、お腹が鳴りかけていることに気がついた。
気づけば時刻は既に八時。腹がすくのも納得というものだ。
「さぁて。朝ごはんでも作らにゃあなぁ」
「うー? アウアウ! ワンワン!」
「そーかそーか。お前も腹はすいたよなぁ」
「アウアウ! ワオン!」
「今日は何にしたいピザ丸? ソーセージでも焼こうか? さっぱりサラダで軽くもいいよなぁ。でもお前はそれじゃあ足りんかなー? はっはっはっはっ」
「で・す・か・ら! ご飯はお作りしたと先程から申し上げておるではありませんか!」
「そーかそーか、ピザ丸が作ってくれたのかー。流石ピザ、ま、る?」
「あ、戻った。やっぱり、ちゃんと通じるんだ。よかったぁ……」
腕の中にはへにゃりと脇に垂れた耳の生えた茶髪の幼女。
声は自分の胸元から聞こえてきたし、まずこの幼女が発したもので間違いないだろう。
とすれば、疑問はただ一つである。
「誰だお前ー!?」
不肖
「……ふぬぬぅ」
「……」
「……うむむむむむむむむぅ」
ポロリ。
「ご主人さまー! なんなんですかこの"はし"ってー! なんでこんな棒切れでご飯食べれるんですかー!?」
「はいはい、危ないから寄ってくるなよー。ただでさえお前裸足なんだからなー」
リビングで箸を使ってご飯を食べようとしていたピザ丸はすぐに根を上げ、キッチンで割れた皿の片付けをする俺の方にたたたと駆け寄ってきたので、近寄らないよう釘を刺しておく。
そう、『ご飯を食べようとしていた
状況証拠から鑑みて、まずこの幼女がピザ丸だった事には間違いないという結論で一先ず落ち着いた。
それはそうと、何が悲しくて朝から寝巻きに手袋にスリッパという珍妙な格好で地べたに這いつくばらなくてはならないのか。
それも今朝、ピザ丸が"おりょうり"をしている時に手を滑らせて皿を割ってしまったことが原因なのだが。
なお、意外な事にピザ丸が作った料理は普通にいい出来栄えだった。
今朝まで犬だったクセに。
俺が普段から作るような簡素なものだったし、味付けは濃かったり薄かったりとまちまちだったが、人生——犬生? 初料理にしては上出来もいい所だったろう。
少なくとも、誰に食わせても不味いとは決して思わない出来栄えだった。
ああ、そういえば。
「あー。ピザ丸?」
「はい、お呼びですかご主人さま!」
「おい、危ないから近づくなって。……そうじゃなくて。お前、なんでそんな姿になっちまったんだ?」
「この姿……ですか?」
本日最大の疑問。
それは、ピザ丸が人の姿になってしまった事である。
SFでもなんでもないのにも関わらずピザ丸は人の姿に——所謂擬人化を体現してしまったのだ。
奇々怪界なこの事象には疑問が尽きぬのである。
何が原因か。
身体の作りはどれほど変わっているのか。
着ている茶色のワンピースはどこから出てきたのか。
犬と人の身体を自由に切り替えられるのか。
まあ、返答はわかりきってるんだけどな。
こういうので原因不明はラノベとかのお決まりなんだし。
「……正直、まったくわからないのです。
今朝起きたら
それならばと、ご主人さまがなさっている"おりょうり"をしておこうと思いまして、見よう見まねでやってみたのでございます。
それでお皿に乗せようとした時に戻ってしまいまして」
なるほど。朝から料理の音が響いていたのはそういう事だったのか。
残念ながら一人暮らしの俺の家に、俺が起きていないにも関わらず音が響く事は滅多にない。
外の車の駆動音やピザ丸の活動音程度。
朝起きたときはピザ丸は犬の姿だったので何故料理音がしていたのか気になっていたが、人に成ってから一度犬に戻ったという事だったのか。
……言葉にしても何言ってるかわかんねぇな。
この事象がどの程度起こっているのかと、ネットやテレビを確認してみるも特に何もなし。
いつものつまらないゴシップネタやスポーツ記事が飛び交うだけだった。
つまりは、これは世界でピザ丸にだけ起こった事。
なればこそ。
「原因、見つけなきゃな。ピザ丸も元に戻りたいだろ?」
「いえ、まったく?」
予想外の反応にピクリと固まる俺。
その言葉は完全に予想外で、思わず聞き返す。
「……なに?」
「ご主人さまとせっかくお話できるようになったのです。前の姿は前の姿で楽しかったのですが、やはりご主人さまとのお話に変えられるものではないのです。
わたしは、ご主人さまが大好きなので!」
「————ああ、もう。本当に可愛いなこいつはぁ!」
「わわっ、ご主人さま!? く、苦しいですぅ〜……」
あまりにも嬉しいその言葉に、ピザ丸を思いっきり抱きしめる。
苦しがるピザ丸も、別にそこまで嫌そうではなかったのでそのまましばらく抱きしめ続けた。
こうして、ウチのわんこは人になったのだった。
「それはそれとして」
「はい」
「お前これから、どうしようかなぁ……」
それが、目下最大の悩みなのだ。