僕の二作目の投稿です。もうちょっとネット小説っぽく書きたかったなぁ…甘さが足りねぇ
お楽しみください
今日の仕事が終わった。僕と会社の同僚は今ビール瓶やら食べ物の器などを拾い纏めているところだ。
僕たちはお花見に来たのだが、みんなこの場に合わない疲労の滲み出た顔をしている。周りからはまだ楽しそうな騒ぎ声がするが、気にせずその場を後にする。
今日は本当に疲れた。まず、今会社はかなり忙しい時期だ。みんな会話もほとんど交わさず自分のパソコンと見つめあいをしていた。そして、仕事の延長戦としか思えないお花見を行うため、納期の迫る仕事を明日の自分に託しお花見会場へ向かった。仕事のために仕事を止めるとはとても矛盾してるなと思い出しながら自嘲した。
お花見は楽しいもののはずだが、泣きながら褒めることを強要してくる上司や隙あらば川に飛び込もうとする酔っぱらいなんかの対応に追われて花を見るどころではなかった。これを仕事じゃないと言うのならなんと言い表せるんだろうか。
このお花見は課長が、無理してでも楽しい時間を作って、疲れを癒してからまた仕事に励めばいい。その方がやる気が出ていいだろうと自慢気に話し、毎年急に開催される。課長の思惑通りになった人は誰一人いないことにそろそろ気づいて欲しい。思い出したら余計疲れてきた、早く家に帰ろう。
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「疲れたぁ」
僕が家に帰って開口一番に放った言葉は心からのものだった。
「あら、どうしたの? 本当に疲れた顔をしてるわね」
「パパつかれてるの? 」
妻の香苗と下の娘の茜が心配そうにしてくれる。こんな遅くなったのに待っててくれたのか。家族と話す時間はいつも僕の疲れきった心に安らぎを与えてくれる。この時間が僕を支えてくれる。
「実は今日課長の提案で花見に行くことになってさ、偶然話を聞いてた専務が参加するってことになったんだよ……あの人酔っぱらったら褒めろ褒めろって泣きながら言ってきてうるさくてほんと面倒だから疲れちゃったよ」
「それは大変だったわね」
「おとーさん、おはなみ行ったの? わたしもいきたーい! 」
キラキラ目を輝かせながらこっちを見てくる茜。うーん、困った……僕も家族で花見は当然行きたい。行きたいのだが、今は会社が大変な時期だ。今までは、香苗と茜の姉の優菜には家族でのお花見は我慢してもらっていたからこうしてお願いされたのは初めてだ。
ちなみに課長の提案した花見は、この忙しい時期の疲れを癒す目的で催されたのだが、その目的が達成されたのは課長や専務ぐらいのものである。
「ごめんね茜、今お父さんお仕事が忙しくて行けないんだ。仕事が落ち着いたら遊園地とか連れていってあげるからさ。」
「ヤダ! おはなみがいいの! 」
「年に一回の行事なんだから連れてってあげなよ。それに、会社の人とは行けても私たちとは行けないの?」
痛いところをついてくる。いつの間にか優菜もリビングに来ていたようだ。確かに、茜からしたら会社の人とは行ったのに、と思うかもしれない。どうしようか。
「茜はこうと決めたら引かないわよ。連れていってあげたら? 」
「香苗まで……うーん、仕方ないな。行こう! お花見」
「わーい、おはなみだー! 」
「よかったね、茜。」
「うん、楽しみだね。あ、でも仕事一日は流石に休めないからお花見は夜になるね。」
「夜はライトアップされてて昼より綺麗なんだよねー」
「そうねぇ、楽しみにしておきましょうか。」
休みを取るために明日から本気で頑張んないとな。などと考えていると、話が一段落したからか子供達は自分たちの部屋に戻ったようだ。流石に眠かったらしい。二人きりになったところで香苗が話しかけてくる。
「まんまと言いくるめられちゃったわね。仕事の方は大丈夫なの? 今の時期って本当に忙しいんでしょう? 」
「香苗も茜の味方してたじゃないか。まぁ、仕事はなんとかするよ、可愛い娘のためだからね。」
僕は笑って返した。完全に三対一のアウェイだったから受け入れざるを得なかったんだよなぁ…… まぁ、僕も行きたかったし、今まで香苗と特に優菜には我慢してもらっていて胸が痛む部分もあったからよかったかもしれない。娘の望みとあらば僕も一肌脱ぎますよ。
「それにしても優菜は口が達者になってきたわねぇ。もうすぐ反抗期かしら。」
「分かってたことなんだけど、憂鬱だなぁ。」
などと少し雑談したあと僕は明日からの仕事に備えて英気を養うことにして自室に入った。
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今僕はかなり急ピッチで仕事を進めている。この会社は忙しい時に休暇をもらうには条件がある。休む日数分の三倍の仕事を休暇の日までに終わらせる、というものだ。
僕は定時で帰らせて欲しいと言っただけなのだから半日分にしてくれるかなと思ったらそんなことはなかった。まぁこの時期は徹夜で仕事に当たる人も多いから定時以降の働きも大事なのは分かってるし仕方ないといえば仕方ないんだけどね。
部長に休む理由を伝えた時に、
「家族サービスも父親の立派な仕事だ、絶対仕事終わらせて楽しませてやれよ。」
と、言ってくださった。部長も所帯持ちで、休日には子供と遊んであげるらしい。この人の家族を思う精神は本当に尊敬できるものだ。あ、仕事ぶりも尊敬してます、本当に。
休暇を取ろうと思ったら数週間前には申告して徐々に仕事をこなすのが普通なのだが、今回のお花見は急な話だったので休暇までの日数があまりない。つまり、一日の負担が大きく、僕が死に物狂いで働くことになるということなのだ。
でも自分のためだったらここまでできないと思う。量が多くてしんどいはずの仕事でも生き生きとやることができる。やっぱり家族を幸せにしたいって思いは何より原動力になる。これは家族を持たないと分からなかったなぁ。これからは会社の人にはちょっと悪いけど、毎年お花見行こうかな。
あ、そろそろ時間かな。今は昼食中だけど昼食時間全部を休憩に当てていたら仕事が終わらない。……さぁ、バリバリやるぞ。
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あれから数日間、僕は死ぬ気で働いた。仕事は山積みなので、周りが引くぐらいのスピードで片付けた。家族のことを考えながらやっていたら苦にはならなかったけど、そのせいかニコニコしながら仕事をしていたらしく、同僚に精神がおかしくなったのではと心配された。
その時に定時で帰ろうとした理由を話すと、家族思いだねぇだとか、カッコいいねえと言われて、応援された。今までは我慢させてきてしまったし、そんなカッコいいことでもないと思うけど。取り敢えず誤解が解けて良かった。
一部の人は、自分の仕事も忙しいはずなのに自分の仕事を手伝ってくれた。正直とても助かった。そんな感じでいつの間にかお花見の前日の仕事を終え帰宅していた。
「疲れた……」
「この前と同じこと言ってるわねぇ。まぁ仕方ないと思うけど。とりあえずお疲れ様。いよいよ明日ね、花見。」
ここ数日はいつもとは比べ物にならないくらい疲れた。手伝ってくれた人がいたとはいえ、ただでさえ忙しいのに追加の仕事が待っているというのはなかなか辛い。おっと、もう家に帰ったし会社のことはもう考えないでいよう、精神的に疲れてしまう。
ちなみに娘二人はもう寝ている。あの子たちが起きていていい時間帯に帰ってこれないのは分かっていたので香苗に寝かせるよう花見が決まった日に頼んでおいた。寂しい気持ちはあるが流石に日付が変わるまで起きてもらうのはよくない。
「そうだね、仕事もなんとか明日にはってもう今日だけど終わらせれそうだし。でも不安なのが天気なんだよね。予報ではお昼頃雨降るらしいし。長引かないと良いけどなぁ。」
「今の時期珍しいわよねぇ。茜たちが心配しててるてる坊主作ってたわよ。二十個ぐらい。自分たちの部屋の窓に吊るすんだって張り切ってたわ。」
「多いなぁ。それだけ楽しみにしてくれてるってことか。花見行くって決めてからあんまり話してないしさ、ちょっと寂しいんだよね。」
「あら、じゃあ今度こんなことがあったら写真とか動画送ってあげましょうか? これで仕事も頑張れるでしょ。茜たちもお父さんに会いたがってたから喜んで協力してくれるんじゃないかしら。茜はおとーさんまつのって言って寝たがらなかったのよ。最終的には優菜がなだめて部屋に連れていってくれたわ。」
「嬉しい話だけどなんだか罪悪感が湧いてくるね。会社には迷惑かけられないけど、茜たちを放っておいたらいけないし……。」
「あなたは十分いいお父さんしてるわよ。明日もまだ大変なんでしょ? もう早く寝た方がいいわよ。」
僕は適当に返事をしてお風呂をサッと済まし、自室に入った。香苗はああ言ってくれたけど、改めて考えてみると不安になる。
今まで家族のためにとやれることはやってきたつもりだった。でもやっぱり仕事を理由に不自由にさせた事も多かったと思う。お花見を我慢してもらってること、授業参観にも行ってあげられなかったこと。もっとやってあげられたことがあったんじゃないか。子供にかまってあげられないということは妻の負担も大きかったんじゃないか。優菜がちょっときついことを言ったのは自分が小さいころ花見に行けなかったのが悲しくて、茜に同じ思いをさせないためだったんじゃないか。
うーん、自分は結構駄目な父親かもしれない。部長のことを見習わねば。あ、もうこんな時間か、自分の行いを反省するののはいいけど、そのせいで寝不足や暗い気分になってしまってはいけない。せっかくのお花見を自分のせいで台無しにするわけにはいかないよね。お花見を終えたら一人で反省会かな、なんて考えながら明日のために寝ることにした。
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体が重い。睡眠の質が悪かったからだろう。疲れすぎた後は逆に眠れなかったりするし、昨日少し考え込んでしまったのも原因かもしれない。
リビングに行くと、上機嫌な茜と優菜、そしてその娘たちの様子を微笑ましそうに見ている香苗の姿があった。本当に楽しみにしてくれていたようで嬉しいな。
「きょーはおはなみだー! 」
「楽しみにしてくれてるなら嬉しいね。お花見を楽しむために、今日の仕事も頑張るか。」
「お父さん、ありがとう。今日のために夜遅くまで仕事頑張ってくれたんだよね。今日はいっぱい楽しもうね。」
「いや、今までお花見我慢してもらってたから、これぐらいなんともないよ。今日は楽しんでね。」
「かっこいいわねぇ、惚れ直しちゃったわ。娘と会話が出来なくて寂しいって言ってた人と同じ人だとは思えないくらいかっこよかったわよ。」
「それは言わないでよ! 」
「へぇー、お父さんって寂しがり屋だったんだ。」
香苗と優菜はニヤニヤしている。かっこよく終わらせてくれよ、めっちゃ恥ずかしいじゃん。穴があったら入りたい。
「おとーさん、さびしーの? じゃあ、いっしょにいてあげるから、はやくかえってきて? わたしもおとーさんがかえるのおそいひ、さびしかったから。」
う、嬉しいけど泣きそうで辛い。流石に家族の前で泣くのは恥ずかしすぎる。
「ありがとう茜。明日からはもうちょっと早く帰れるからまた一緒に遊ぼう。」
この言葉丸くおさめたかったけど、茜が僕の顔が真っ赤なことに疑問を持ち、その疑問への返答を悩んでいる所を優菜に弄られ、出社時間ギリギリまで僕はずっと顔が真っ赤なままだった。
これ、大丈夫なのかなぁ、叱る時とかどうすればいいんだろ。まともに聞いてくれるかな……考えても仕方ないな、今は楽しくお花見出来るように仕事を最後までやり遂げるしかないよな、頑張ろう。と、意気込んで会社に着いたら妻から着信があったので、忘れ物でもしたかなと思ったら、
「茜の言葉聞いて泣きそうになってたわね」
と書いてあり、会社でも赤面してしまったのは絶対誰にも言わない。妻は察しているかもしれないけど。
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ん、もうそろそろ三時か。と、周りが少し騒がしくなって気付く。この会社は三時から休憩時間がある。数日間ぶりに使うかと思い席を立つと、部長が声をかけてきた。
「仕事は大丈夫なのか? 」
「はい、皆さんのお陰でなんとか。」
「でもさ、雨止まないんだよね。」
そう言われてそう言われて気付く。まだ窓の外は透明な細い線が引かれては消えを繰り返していた。
「ここ数日の君の頑張りはみんな知ってるからさ、今俺の提案でてるてる坊主作ってるんだ。」
周りを見ると、同じ部署の人がみんなてるてる坊主を作っている。もうかなりの数ができているみたいで、この部署の窓を埋め尽くす勢いで吊るされていく。
「なんか会社の風景としてはおかしなものだけどな。」
「はは、そうですね。嬉しいです、ありがとうございます。」
「まぁ、この大変な時期に休みを取るって言うからみんな協力したのに有意義な休みにならなかったんじゃあ悲しいからね。手伝った甲斐もないじゃん? でも一番は君の家族に対する想いが伝わったからじゃないかな。」
「そうかもしれませんね。」
「後は、君が残りの仕事も終わらせながら、雨が止むのを待つしかないんじゃないかな。」
はい。と返事してから僕はすぐ自分のデスクに戻った。自分の仕事はすぐに終わったので他の人の仕事を少しだけど手伝った。そして、もうすぐ五時になるという時に
「晴れた! 」
と、嬉しそうな声が聞こえたので窓を見ると、春の五時だというのに眩しいくらいに太陽は輝いていて、さっきまで雨だったとは思えないくらいいい天気だった。会社の皆さんが
「よかったね。」
とか、
「お子さん楽しませてあげてね。」
なんて言ってくれる。僕はお礼を言って会社を出た。先に場所を取ってくれている香苗に今から行くと連絡すると、茜たちが待ってるから早く来てあげてというメッセージとともに、早く来てと書かれた茜と優菜の写真が送られてきた。僕は急いで車に乗った。
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お花見会場の澄田川の近くまで来ると、平日だというのに車の数がかなり多かったので、遠めの駐車場に車を止め早歩きで香苗たちの所へ向かった。もう桜がよく見える。きれいだな。
雨上がりの桜は雫を身に纏い、枝が動く度にキラキラと輝いて神秘的に見えた。このまま眺めていたかったが、それはみんなと一緒にと思い足を早めた。香苗が送ってくれた写真のお陰で早くみんなを見つけられた。みんなが僕に気が付くと、
「あ、おとーさんきたー! おはなきれーだよー。」
「お仕事お疲れ様、待ってたわよ。」
「遅いよー。お父さんが来なきゃ家族でお花見になんないじゃん。」
と、それぞれ反応してくれる。優菜は嬉しいことを言ってくれるね。
「ごめんごめん、予想以上に車が多くてさ。桜本当にきれいだね。」
もう一度空を見上げると、淡いピンク色と輝く無数の玉で視界が埋め尽くされる。それからしばらく僕は桜に見とれていた。今まで僕はこんなに桜をきれいだと思ったことがあったかな。
会社に入ってからこの時期仕事ばっかで他のことを考える余裕がなかった。外の景色なんて気にも止めなかったな。そうか、今までこんな行事を我慢させてきたんだ。と思い周りを見ると、香苗と優菜はたこ焼きを食べていて、茜は寝ていた。幸せそうな顔してるなぁ。
「あれ、いつの間に買ってきたの? 茜寝ちゃってるし。」
「お父さんがボーッとしてる間に。よっぽど桜に見とれてたんだね。茜は屋台で遊びまくって寝ちゃったよ。もうすぐ九時だしね。」
「うん。そっか、遊び疲れたんだね。それと、今までお花見連れていけなくてごめんね。こんなに良いものだとは知らなかったよ。」
「良かったわ。あなた、この時期になると仕事人間みたいになっちゃうから心配してたのよ。今度からはこういう楽しみのために働くのもいいんじゃない? 一緒に楽しむ家族があなたにはいるんだから。」
「そうだよ、仕事は大切だしやらなきゃいけないことだけど、辛いものであって欲しくない。お父さんが今日楽しんでくれてるなら、今度は余裕を持って休みを取って、またお花見しようよ。」
嬉しくてありがとうとしか返せずにいると、周りが白い光で包まれた。日が落ちて輝きを失っていた雫がまた強く光を放ち、桜が夜を照らし始めた。ライトアップが始まり姿を変えた桜を少し眺めて、お花見をお開きにした。家に帰って優菜が寝てから香苗に見せられた写真には、ライトアップされた桜と頬が輝いている僕が写っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。面白かった…というか和んでいただけましたか?