ただの世界線にあったかもしれない、ifを語ります。
こちらはfate prototypeの物語で且つ作者の金銭的都合上で、wikiだよりで調べつつ作成しました。
不快なことはあると思いますが、暖かい目で見て頂けたらと思います。
これはとある世界線の話――。
その少年は誰よりも黄金騎士にあこがれた。
少年は黄金騎士になりたいという夢を持った――だが現実は残酷で、成れないことを諭された。
それもそのはず、その黄金騎士がどのようなものなのかも分からない上に、所載も何もかも一切不明で人の言葉だけしか語り継がれなかった伝承。
そのため、鎧など存在するわけもないと両親に言われてしまった。
それでも少年は諦めきれなかった……だからこそこう思った。
(黄金の鎧がなければ自分だけの鎧を作ろう)
何とも無謀で阿呆なことを考えているのだろうと誰もが思った。しかし少年は本気だった。
少年は魔術師の家系に生まれたもので、魔術師の中でも礼装に力を入れることがあった。
高度な魔術理論を帯び、魔術師の魔力を動力源として起動して定められた神秘を実行する『限定機能』——それを工夫すれば作れるのではないかと少年は思い没頭した。
何度も失敗を繰り返し、それでもと前向きにとらえて努力を重ねるも結局は失敗に終わる。
もう諦めたほうがいいのではないかと少年自身も思っていた最中、幼馴染の姉妹——特に六歳年下の励まされ続けて無謀ともいえる挑戦を何度も続けた。
失敗が多い中でくじけそうになったものの、それでもと妹の励ましを受けて奮い立たせては立ち向かった。
やがて失敗は百、千、万に近い繰り返しを重ね続けた結果――少年は青年となってようやく完成することができた。
しかし、完成させたのは銅色の色合いをした鎧。
黄金には遠く及ばないものであるが、青年はとても充実感に浸っていた。
付け加えるならば、この鎧自体も原点における鎧らと比べるとかなりの劣化されているものであることは言うまでもなく。
鎧を作れただけではなく、それを自分が纏うことが出来るなんて青年にとっては夢のようなものだ。
鎧の殆どはルーンストーンによって作られており、それぞれの部位にはルーンの刻印——殆どは強化と転移もの――が刻まれており、青年の魔力を流せばそれを使用できる。
……ただし鎧を纏うには筋力やその他諸々必要で、モヤシ体型であったものの何とかクリアをすることが出来た。
完成させた鎧を発表させれば、彼の魔術師としての位は大きく変動するものであったが、青年はそれをしなかった。
何故なら彼は鎧を完成させたことだけに満足感を覚えたからだ。
そして、この鎧は決して世に出してはならないものだと作って理解した――この力は危険だと理解した。創り上げていくうちにその鎧の力を感じ、下手をすれば人の命を花のように摘めるが如く簡単に。
だからこそ彼は封印した、自分の工房に。
しかし、ある年……1991年を境にその鎧の封印を解放することとなる……聖杯戦争に赴くために。
大切な幼なじみである姉妹の妹を護るために。
それが最初から仕組まれていたものとは知らずに。
青年、龍崎
ペンダントを上空に円を描き銅色の鎧を召喚し、纏う。銅色を帯びた鎧の形状は、幼き日より憧れた黄金とは掛け離れたものだが、それは別に気にしていない。
全ては大切なものを守るために…………神賀は鎧——ハガネを纏う。
幼馴染であり、慕ってくれている妹を獣召喚の生贄に利用する姉――沙条 愛歌を斬り捨てるために。
* * * * *
とある洞穴にて、少女と銅色の狼騎士が戦っていた。
幅広に銅色の両刃剣が煌めき、刃が大きく振るわれるも、 愛歌はダンスするように軽やかに避ける。
ハガネは舌打ちをしながら両刃剣を無差別に振るいまくるが、全てが避けられる。
「拙いわね、相変わらず」
冷たい言葉ながらもどこか微笑ましげに評価する彼女に、ハガネは両刃剣を振るうだけでなく今度は蹴りや拳を混ぜ合わせるも、全てが避けられる。
愛歌の表情と振る舞いにハガネは苛立ちを隠せなかった。
「もうっ、神賀ったらどこを狙っているの? こっちよ?」
彼女の態度は幼い子を相手に、駄々っ子を宥めるかのようなものだ。
ハガネは必死に愛歌を捉えようとしているのに、彼女は既に面白がっているよう――いや実際に面白いのだろう。
ハガネをまるで蝶々を捕まえるような子供に見えているのだ彼女は。
「ッゥグオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
咆哮を大きく上げてはハガネは両刃剣で突き出し、愛歌の胸に向けて刺突を目がけるも。
人の肉を簡単に引き裂く筈の刃を愛歌は華奢な腕と掌を使って、鷲掴みにした。
「グッ!?」
「イケない子ね。こんな玩具を着替えて振り回すなんて」
ルーンストーンと刻印で刻まれて強化されているはずのハガネの腕力をものともせず、愛歌はその両刃剣を奪い取った。
「……ふぅん? まぁ、神賀にしてはいい出来かもしれないわね。でも私の見立てじゃあ、まだまだ――返すわね」
「グガッ!?」
そう言って愛歌は両刃剣を投擲する――その速度は恐ろしく速く、ハガネが反応するよりも先に鎧に両刃剣が叩きつけられ、衝撃を抑えきれずに無様に転がっていく。
両刃剣は彼の隣に無造作に転がり、ハガネは痛みに呻く。
「ねぇ、神賀。 いい加減に辞めたらどう? 鎧を着ただけで私を倒せると思うの?」
「……っ、ま、だだっ! ま、だっおわりじゃっ、ない」
転がっている両刃剣を拾い上げ、地面に突き刺してはそれを杖代わりにしてふらつきながら立ち上がるハガネ。
両刃剣を構えるハガネに、ため息をついて頬に手を添える愛歌。
「……なんでそんなに頑張れるのかしら。 分かっているはずでしょう、あなたでは私を殺せない……もう諦めなさいな」
彼女の言う通りだ。
ハガネでは、神賀では彼女を倒すことが出来ないことは戦って理解していた。
だがそれでも――それでも彼は剣を強く握りしめて戦いをあきらめない。
脳裏に浮かぶ愛歌の妹、沙条 綾香を護るために。
「俺は、綾香を助けるっ。 お前に殺されたりなんかさせないっ!」
ハガネは叫んでは駆け出し、両刃剣を振りかぶる――その前に上段に上げられた両刃の刃は呆気なく澄んだ音を立てながら半分に砕け散っていた。
半刀となった両刃剣をハガネは唖然と見つめる中、その隙に彼の首元を愛歌は鷲掴みにして片手で持ち上げる。
「どうして……?」
「どうして…………どうしてっ」
「どうしてどうしてどうしてどうどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてっ」
「あの子、なの?」
「私じゃ、だめなの?」
愛歌の潤んだ瞳をハガネを捉える。だが、そんな彼女を見る余裕はなくハガネは掴まれた手を離れようとするも、彼女の力は万力のごとく強く固い。
そして、その力についに耐えきれなくなったのか、首元から兜までの鎧部位がついに破壊されては神賀の顔がさらけ出した。
「くそっっ、はなっ、せっ」
今度は折れた両刃剣で彼女の腕を斬り落とそうとするも、息が出来ず次第に意識が薄れ、力が抜けていく――彼の手から両刃剣が滑り落ちた。
「あっ、がっ……あぇぅぐ」
意識が薄れ行く中、神賀の脳裏に最後に浮かんだのは目の前にいる彼女ではなく。
神賀が創り上げた鎧を興奮して喜びを上げている幼い少女の、彩香の姿だった。
ゴキッと首がへし折る音が響くと同時に、愛歌は手の力を緩ませて神賀を無造作に放す。
地面に力なく重い音を立てながら倒れると同時に纏っていた鎧――ハガネも砕け散った。
「……馬鹿な人ね、私を選んでおけば少しでも長生き出来たのに」
力なく倒れ、瞳の輝きを一切なくした神賀の頬を撫でる愛歌。
「痛かったわよね、苦しかったわよね、でもあなたが悪いのよ」
「私じゃなく、あの子を選んだあなたが」
「私は貴方を見ていた、見続けていたのに、あなたは私に声を一言もかけてくれなかった……」
「ずっと寂しかったのよ……あなたが話しかけてくれなかったことを、見てくれなかったことを」
「だけどもう、寂しくなんかないわ」
――だって、これからはずっと一緒なんだもの。
その後、この洞穴からは……内に溜まった汁を美味そうに啜る音と湿った音、そして肉を割いてグジュッと引き裂き啜る音が響き渡った。
* * * * *
「あら、久しぶりね。綾香にセイバー……え? 私の背後にいる漆黒の鎧が誰かって?」
「何を言っているの、綾香。 この人は貴方がよく知っているじゃない……彼は神賀よ」
「神賀はサーヴァントじゃないから召喚できない? えぇ、彼はサーヴァントではないし生前はただ魔術師で騎士擬きを振る舞った唯の凡人……とてもではないけど英霊に至れない」
「でもね、この身体――ビーストという霊基だからこそ出来るの……私の一部として召喚したの」
「…………あなたってやっぱり凡骨ね。 言ったでしょう、一部だって」
「彼の身体全部を食べて私の体の一部にさせたのよ――――お肉も骨も内臓も、全部全部食べちゃったの♪ お先にご馳走さま♥」
「聖杯を使って、もう一度彼を食べようかなぁ♥」
『BAD END』
……まぁ、ラスボスを相手に一般の鎧じゃ叶わないですよねぇ
またハガネという鎧は牙狼本編にも出ています。
基本的に龍崎神賀が纏ったのはその鎧擬きで、本編の名付きの由緒正しいものではありません。
ソウルメタルによるものではなく、殆どがルーンストーン(FGOの星3礼装を参考)で創り上げたもので、その性能は本編と比べるとダントツに弱く劣化バージョン。
それを作り上げた神賀も神賀で、ご都合主義すぎるかなと思いますが……すみませんどうしても書きたかったので。
最後に出てきた漆黒の騎士は…………なんでしょうなぁ。