<お試し版>黄金騎士はモテモテです   作:春雷海

4 / 11
……湖の騎士よりこっちのほうが投稿したほうがいいのかな?

でも湖の騎士も待っている人もいるんだよな、うぅん、どうすべきか。


サイガ 幕間の物語

 カルデアに来て、早数日――サイガはここでの生活に慣れてきた。

 

 サーヴァントたちと関係を作ったり、ネロたちの相手をしたりと忙しかった。

 

 ……ネロたちの相手にすること自体、とても大変でサイガの心身共に疲弊させているも、そこはご愛敬。愛されているということで置いておこう。

 

 マスターである藤丸 立香も性格もいいし、未熟なところはあるがキャスタークラスのサーヴァントたちが師事しているお陰で少しずつ成長している。

 

 人のいいカルデアのスタッフや、個性豊かなサーヴァントたち、美味しい食事――人間関係は勿論環境も素晴らしいここは。

 

(あれ、もしかしてここ所謂ホワイト企業?)

 

 ……人理修復を目指す企業など聞いたこともないが、本人がそう思うのならそうなのだろう。

 

 閑話休題。

 

「よしっ! それじゃあ今日はよろしくね、サイガ!」

 

「あぁ、任せてくれ。 期待に応えてみせるさ」

 

 カルデアに来てからの初陣が来た――特異点に向かい定礎復元を行うための

 

 彼は何時ものように白コートを羽織って、藤丸立香とマシュと共に小さな特異点を修復に向かう――。

 

 * * * * *

 

 小さな特異点での出現場は思ったよりも近かった。

 

 そこは、魔力に満ちた地形と魔術師が死ぬ直前で作り上げた術式で召喚された魔獣の討伐――それこそサイガにとって慣れたものだった。

 

 術式によって召喚された、黒い霧で出来たガーゴイルと餓鬼たちが襲い掛かってくる。

 

 二体を相手に怯まずにサイガは朱鞘から剣を抜いて、袈裟懸けに振るった。

 

 ガーゴイルの胸を斬ってたたらを踏ませたが、もう一体の餓鬼が爪を振り上げる――だがそれは左手で抜いた朱鞘で防いで腹部を貫く。

 

「グゥ……ガガガガガガッ」

 

 吐血して苦しみを訴える餓鬼に対し、サイガは容赦なく蹴り飛ばす――その勢いで剣は引き抜かれた。

 

 ガーゴイルは痛みにこらえながらも襲い掛かってくるが、サイガは鞘で顔を叩きつけた。叩き飛ばされたガーゴイルは地面を数メートル程抉って、ようやく止まる。

 

 そしてダメージの蓄積に耐えきれなかったのか、ガーゴイルの身体は朽ちてやがては霧散した。

 

 蹴飛ばされた餓鬼は――。

 

「やあああああ!」

 

「ゲゲギッ!?」

 

 マシュの盾によって地面に潰されていた――その盾の下は餓鬼の贓物が飛び散っているのだろう、恐ろしや。

 

 だが、そんなことを気にする余裕はなくマシュは次いでガーゴイルを盾で薙ぎ払った。

 

 払い飛ばされたガーゴイルはそのままサイガに向かい、そして――。

 

「りゃあ!」

 

 剣で一刀両断に斬り裂かれた。

 

 だが、ガーゴイルと餓鬼は増え続けている……魔術師が創った術式で召喚され続けているのだ。遠目から見える術式が不気味に紫色に輝き、そこからガーゴイルと餓鬼が増え続けている。

 

「……これじゃあ、キリがないな」

 

 いつの間にか周囲にはガーゴイルと餓鬼が溢れており、このままではジリ貧になる。

 いやそれどころか、押しつぶされる可能性のほうが高い。

 

『立香くん、マシュ、サイガくん! 今からサーヴァントをそっちに送るからそれまで――』

 

「……マシュ、マスターを頼む」

 

 サイガは剣を掲げて円を描いた。

 

 円形の裂け目が生まれ、眩い黄金の光が差し込む。

 裂けめの向こう側から黄金に輝くパーツがサイガの全身に装着される。彼の手にする剣も黄金に満ち、牙狼剣と変異する。

 

 金色の狼を模する猛き騎士――黄金騎士牙狼!

 

 牙狼の顎が開き猛々しく咆哮した。空気が強く振動し、それはガーゴイルと餓鬼もそれに怯え身を竦めてしまう。

 

 立香とマシュ、そして画面越しで見ているロマンは牙狼の姿に見惚れていた。

 

 世界各地で残されている伝説でしかない黄金騎士――それが今目の前に現れている。金色に輝く騎士の姿に目を離すことが出来ずにいた。

 

 牙狼が剣を大きく薙ぎ払うことで、凄まじい剣圧が生じられ、ガーゴイルと餓鬼たちはそれだけで吹き飛ばされてしまった。

 

 牙狼は大きく跳躍し、吹き飛ばされたガーゴイルを踏み台と同時に突き刺して再度跳躍。

 他のガーゴイルや餓鬼たちも同じように突き刺し、斬り裂いて、確実に一体ずつ仕留めていく。

 

 そして、空中に残された最後のガーゴイルの首を斬り落として――ようやく術式が見えてきた。

 

 術式の中心にいる人と物体が見えた……だが人は動く気配もなく、寧ろそれが中心となっていることで召喚されているのが分かった。

 

 牙狼は兜越しから見えるその人の状態が見えた……一度顔を俯かせるも、すぐさま上げて、牙狼剣を大きく振りかぶって。

 

「オオオオオオオオオッ!」

 

 その人諸共、牙狼剣による斬撃を、地面ごと叩きつけた。

 

 人は真っ二つにチーズのように裂かれ、術式は牙狼剣によって破壊された。それにより召喚されることなく、紫色に不気味に輝いていた光も途絶えた。

 

 牙狼は鎧を解除し、サイガは斬り裂いた人を見つめる。それは既に人間ではなかった。

 

 人は既に朽ち果てたミイラのような姿に成り果てていたのだ――その傍らにある棺桶も牙狼剣によっては破壊されて、中身も見えた……そちらもミイラだった。

 

(ミイラが二体で、その内の一体は棺桶か……ん?)

 

 サイガは二体のミイラから漂う何かを感じる……独特の言葉にできないような雰囲気。それは人の想いや記憶を残した残留思念だった。

 

 残留思念を見出したサイガは剣を突き付けて鍵を回すように動かす。

 

<妻よ、この術式でお前を蘇らせてみせる>

 

<この術式は魔術協会の地下深くにあった死者復活のもの! きっとお前を取り戻せる!>

 

<そのために、下らん銃で人を殺した! お前以外の人間など価値もない! 戻ってきてくれっ、妻よぉ!>

 

<なっ、なんだこれは!? ヒッ、や、やめろ! なんだ、お前たち――――ぎゃゃあああああああああああ!>

 

 残留思念が展開されたものは残酷なものだった。

 

 最愛の妻を失った喪失感に耐え切れず、男は禁書を利用し禁断の魔術に手を染めてしまうが、結局はガーゴイルと餓鬼に喰われてしまった。

 

 餓鬼とガーゴイルにとって男は餌だったのだろう――血しぶきを浴び、殺したことで怨念を纏った男が極上のにおいを漂わせていたから。

 

 男が使用した術式は召喚した悪魔と契約し、死者を蘇らせる邪法――だが実は語弊がある。これはただ召喚するだけのもので、死者など蘇ることが出来ない。

 

 そしてサーヴァントたちのような英霊を召喚させるものではなく、人間に害する悪魔を召喚する――中には契約して知識を求める魔術師もいたが、結局最後は食われ殺された。

 

 また半人前の魔術師でも召喚出来るも、大抵は契約が出来ない――そもそも言語を話せない――餓鬼かガーゴイルといったようなもので、今回はそれに至ったのだろう。

 

 無論これを禁忌として指定封印されたものだが……どうやってかこの男はそれを手に入れたことが、今回の特異点の原因なのだろう。

 

 サイガはそこら辺に転がっていた禁書を突き刺して、上空に放り投げ――――もう二度と読まれないように細かに切り刻んだ。

 

 切り刻まれた禁書は唐突に吹かれた風によって舞い、そのまま飛んで消えていった。

 

(もう二度と……こんなことがないように)

 

 サイガは叶うはずもない願いを心の中で思い、朱鞘に剣を収めた。

 

 そして、こちらに向かって駆け出している立香とマシュに手を挙げて迎え入れた。

 

 どうやら二人にはあのミイラたちが見ていない様子だったので好都合だった。若い二人にあのミイラと引き起こした悲劇を見せる必要もないし、見せたくもなかった。

 

 あの二人にはまだ見せるのは早すぎる。サイガの願いとしては。

 

(知らずに生きてほしいな)

 

 人間が引き起こした願いの為に人を殺し、叶えようとしたが結局は殺されたという残酷さを。

 

 ――それは無理の話と分かっていながらもそう願わずにはいられなかった。

 

 

 * * * * *

 

 

 黄金騎士の伝説が本当であったこと興奮気味な二人とロマンを抑えるのを苦労したが、何とかカルデアに戻ってきた三人。

 

 残留思念と禁書のことを黙り通すことで、二人は気にするそぶりはなかった。

 

 知る必要もないことだとサイガは思うが、これからまだ過酷な旅路が続く――何かを切っ掛けに知るかもしれない。

 それまでの間はサイガが引き受けるつもりだ。

 

 だが、何かしらの出来事でそれを知ったときは――。

 

(一緒に引き受けてやるからな、マスター)

 

 甘い考えかもしれないが、まだ二人は幼い……成長するまでは大人が守ってやるべきだ。

 

 サイガはそう決意して白コートを翻して部屋に向かった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、ネロの縫いぐるみが?」

 

 自室に戻ったサイガが見たのはベットの上に寝そべったネロのぬいぐるみが転がっており、そして机の上には赤いコートが綺麗に折り畳まれていた。そしてコートの上には一枚の手紙があった。

 

「……何々『サイガよ。白コートも似合うが、やはりお前にはローマである紅とマークがよい。至高の芸術家である余が創ってやったぞ、着てみるといい!』か」

 

 赤いコートを広げると、煌びやかな装飾華美がされていた。しかし、煌びやかと云っても白いコートと同じ装飾品がつけられ、牙狼の紋章の隣にはローマの紋章があった。

 

 サイガが着ている白コートと同じように作られた、赤いコートを見て、サイガは感銘を受けたように息を吐いた。

 

「うわっ、紋章の隣にローマって……器用だな相変わらず。まぁ、折角作ってくれたんだし、機会があれば着てみるか」

 

 そう言ってサイガは赤いコートを再び畳み直して、ベットに転がる。丁度真下にいたネロのぬいぐるみを優しく抱きしめて。

 

 縫いぐるみ特有の柔らかさに頬が緩みそうになったものの――ふと気づいた。

 

「…………あれ、そういえば鍵をかけておいたよな? それなのに、ネロはどうやって部屋に入れたんだ?」

 

 更に気づいたことがある。寝転がったベットのシーツが若干湿っているような、更に若干粘々しているような……何かの体液が付いているのだが。

 

 これは一体何なのだろうか……もしかしてネロが入ってきたのと関係があるのだろうか。

 

「気のせいだよな、うん。 さっさと寝よう」

 

 サイガは震える声を何とか抑えながら、ベットの掛布団を被って目を瞑った――布団に漂うネロ独特の香りを感じながら……。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。