あるのは、ご都合主義的な展開と設定あるのみ。
「……え?」
サイガは上司の言葉に唖然とした声を上げた。
信じられないといわんばかりの表情を浮かべる彼に、上司ことのっぺらぼうは面白そうに語った。
「だぁかぁらぁ! 君の子供がいるんだよっ、あの世界に! いやぁ、若いっていいねぇ!」
「あっ、え、いや、だって俺は……サーヴァント、でしょ? 子供なんて作れるわけが……」
「あぁそこね……いや、彼女も結構したたかってところかな」
のっぺらぼうは思い出す――サイガと彼女の睦事を。といっても殆どは彼女がすべて仕込んだことだが……そしてお互いに激しく求めあった際に、そこでも彼女側が何かをしたのだがそこは置いておこう。
因みに、その彼女は魔術師ではないが普通の一般人でもないことを伝えておこう。
そんなことを露知らないでいるサイガは考えるのを放棄したのか、ため息をつきながらも彼女を思い出しつつ想いを馳せる。
「彼女は……とても強い女性でしたよね」
どんな不運や運命にも見舞われても、決して彼女は後悔せず後ろを見ずに前だけを振り向いて立ち向かった。
何度も立ち上がってはその運命と戦ってきたのだ。
「……そうさ、だから人間は面白い。 どんな理不尽な事に襲われても、様々な悪意を受けても、あきらめずに前へ進むことをあきらめない――時に止まることがあっても己を奮い立たせて立ち向かうそんな人間が好きだ」
のっぺらぼうは満足気に頷いてはサムズアップをする。サイガはそんな上司に同意するようにうなずいた。
「さてさて、そんな君の子供を幼少期から見守っていこうか……と言いたいところだけどさ」
「あぁはいはい、仕事でしょ? さっさと終わらせて俺の子供とやらを――」
サイガはやけくそ気味になりながらも上司の依頼をこなそうと腰を上げかけた際――。
「いや、君の子供と一緒に仕事してもらうから傍らで見守ってあげなよ」
まさかの発言にサイガは驚愕の表情を浮かべると同時にのっぺらぼうは厭らしそうに笑みを浮かべた。
「さすがは君の子供ってところかな? どうも運が悪いようだ……お父さんと同じようにブラックな仕事に携わることになったんだからさ」
「はっ、いやえっ、どういうことですか!?」
「どうもこうも。君の子供、歪んだ歴史を直す旅に出たようでさぁ……丁度君もその旅に参加してもらおうと思ってね。というわけで、行ってきて頂戴?」
「ちょっ――!」
最後までサイガの言葉が紡がれることはなく、のっぺらぼうが指を鳴らして強制転移されてしまった。
勿論その転移方法というのは、言うまでもなく、落ちていくものである。
『あっ、因みにねぇ、子供の名前なんだけど――』
『藤原立香と董(かおる)っていうんだってさっ! 会えたらよろしく言っときなよぉ!』
サイガが特異点となっている地点に召喚されてから数日が経った
サイガがいる場所は闇に覆われている森林。
樹木や草木に覆われており、方向感覚が鈍るほどに周囲は同じような景色ばかりだ――しかしそれを下もせずに歩き進める。
白いコートを羽織り、腰には朱鞘の剣を差す彼は足取りを迷いなく進んでいく。時に北東、北西、東南――まるで自らの進む方向が分かっているように。
やがて、とある地点に到着した際に軽く腕を伸ばす――瞬間に虹色の薄い壁が発現して手を弾いた。
サイガは朱鞘から剣を引き抜いては自らの足元を勢いよく突き刺す。
バジィと電気音と共に破裂音が響くと同時に、薄い壁は解けていくように消えていった。
「……やっぱり結界か」
剣に突き刺さっている機器――魔力を帯びた道具だ。
しかもこれは侵入を拒む結界を張る道具であり、同時に今から入る小国を外部からの存在認識を消す結界も含まれた二重結界。
これほど強力な道具も、それを作製するサーヴァントは聞いたことがない……そして強力な結界を張ってまで一体を目的としているのだろうか。
しかし、考えても何も始まるわけがない――彼はいつも通りに仕事をこなす。
「さてと、お仕事に行きますか」
サイガは剣を朱鞘におさめて、破壊した結界の向こう側に歩き出していった――歴史上に壊滅した筈の小国を目指して。
「おっと……その前にお客さん」
そんなサイガの目の前に現れたのは、両足に備わった車輪と両腕に剣を差す黒装束たちだった。
しかし、彼らから発する雰囲気はただ無感情しかない。
戦場においては何かしらの感情が発せられるのだが、彼らからは特に何もない……。敵の様子に疑問を感じるが、両腕の剣が向けられたことで、サイガは剣を抜いて対峙する。
「……邪魔をするなら、容赦はしない!」
サイガは知らない。目的地に、彼の子供たちが仲間とともに人理修復の為に滞在していることに。
* * * * *
藤原立香と
母子家庭で至って普通の人生を歩んでいた――だがとある日を境に運命が彼らを導いた。
カルデア、人理修復、サーヴァント、魔術。
二人にとっては非日常的な事ばかりであるも、持ち前のポジティブさと前向きで進んでいく――やらなければならないことだと言い聞かせて。
そんな二人に従い慕って付いていく仲間たち。今日も二人は人理修復のために、レイシフトする。
二人がたどり着いた先は――過去に滅亡した小国が謎の復活をした地だった。
その小国に出現するエネミーと対峙しながら、夕焼けが見えるころに小さな村を発見した。
探索は明日以降と決定し、休息していた際、董は気分転換の為に散歩をする最中で教会に入った。
「うっわぁ……っ」
教会の奥にあるステンドグラスの絵柄を見て、感銘の息をつく。
その絵柄は外套を翻す光り輝く鎧を纏った狼の騎士――そして董は騎士の腰に描かれている紋章を見て、「あれ?」と言葉を発した。
董はいつも首に掛けているペンダントを取り出しては、紋章とペンダントを比較して見る。
「似てる……母さんが創ったのと同じ」
狼の騎士の紋章『▲』と同じ形状で造られた黄金のペンダント。そしてステンドグラスの騎士を始めて見るのに何故か懐かしく感じる。董は不思議な感情に満たされた。
「あっ、いたいた! 姉さん、何しているんだよ……ってあれ?」
そのとき、弟の声が聞こえて董は振り向く。
弟――藤原 立香は呆れたように腰に両手で添えながら歩いていく最中、狼の騎士を目に留まり董と同じように見つめる。
「……立香もやっぱり感じる?」
「……うん、言葉に上手く言い表せないけど、たぶん俺も姉さんと同じ感じになってるよ」
双子だからこそ言葉を多く紡がなくとも理解し、そして互いの感情を疎通が出来る。
その後も立香と董は立ち尽くし見つめていた。後輩である盾の少女が探しに来るまで、ずっと。
真夜中、事件は起こった。立香と董が泊まった村に突如奇襲されたのだ。
各家は炎に包まれ、火事となり惨事となっていく中で更に多くの畏敬が村の住人たちを襲い掛かっていたのだ。
その畏敬は両脚の車輪で滑走し、両腕に備わった剣と槍を武器で人々――男女関係なく斬られ、貫かれていくなかで若々しい娘と子供たちは誘拐されていく。
『っなんなんだっあれは!? サーヴァントでも幻獣でもないっ、何も反応がなかったぞっ!?』
『ぼやいている暇はないぞ、ロマン! 私たちは即刻に敵のサーチだっ、立香くんと董くんは敵の退治を頼む!』
画面越しのロマンとダヴィンチの言葉に反応したのか畏敬・アポストルフは村人の攻撃はやめて、標的を変えた。
二人の言葉にうなずき返答した立香と董は、即座に仲間たちに命じる。
「マシュ、ロビン、術ニキ!」 「マルタ姐さん、ネロ、ジャンヌ!」
立香と董は自分の仲間であるサーヴァントたちに命を下す――あいつらを倒せと。
それに応じてサーヴァントたちは霊体化していた身体を現界しては、各々の武器を取り出して戦いへと繰り出していった。
二人がともに行動しているサーヴァントたちは計六名で英霊――約一人はデミサーヴァントと言われる特殊なものだが――と謂われる彼らにとっては問題なかった。
襲い掛かってくるアポストルフたちを各サーヴァントたちは薙ぎ払っていく。
マシュの盾が押しつぶし、弾き飛ばし。
ロビンのボウガンの矢が貫き、串刺しにする。
術ニキことクーフーリンの、ルーン魔術が焼き払い、光弾で消し飛ばす。
ネロの剣は鮮やかに綺麗な赤い斬撃を繰り出し斬り捨て。
マルタの杖から発せられた光弾は敵を吹き飛ばす。
最後はジャンヌの旗の薙ぎ払いによって、戦いは終了。しかし、勝利したその油断をつかれた――。
「きゃっ……!」
「姉さんっ!?」
「先輩っ!」
村のはずれにあった森林から一つの影が現れたかと思いきや、董が捕まり、森林へと連れていかれたのだ。
一瞬だけ茫然したものの、即座に彼らは切り替えてはその影を追いかけた――――。
董を誘拐したアポストルフは両脚の車輪を動かして、指定された地点まで向かっていた。
「このっ、離してよ!」
アポストルフは殴られるが、まったく意図も介さずに、寧ろそんな彼女を煩わしく感じたのか彼女の腹部を拘束している片腕だけ強く締めることで黙らせた。
「……ぅぇっ!」
腹部を締め付けられたことで息苦しさと肉体的苦痛に悲鳴を上げて、力が抜けていく董。
ようやく黙った彼女に対してアポストルフは興味も示さず。両脚の車輪を動かして、足場の悪い森林を駆け抜けていく。
しかし、前方に立ちふさがる一つの白い人影。アポストルフは片腕の剣を振り上げてそのまま突き刺そうとしたが――腕が吹き飛んだ。そして今度は首が斬り飛ばされて、地面に無造作に転がっていく。
主の命令を叶えられることがなく、意識を閉ざされたアポストルフは霧散して最初からいなかったように消えていった。
アポストルフに抱えられていた董は地面に投げ出される。
だが地面に頭が叩きつけられるその前に白い人影に抱えられて救出され、董はゆっくりと地面に横たわられる。
「っぅ……あ」
助けてくれたその人に礼を言おうとする董だが、先程まで圧迫されていたためか上手く言葉が紡ぐことが出来なかった。さらに言えば苦しさのあまりか涙目となって、助けてくれた人の顔も上手く見れなかった。
「あまりしゃべらないで、ゆっくり呼吸して」
その助言通りに董はゆっくりと深呼吸を繰り返すことで少しずつ落ち着きを取り戻していく。そしてようやく喋り、見れるようになったことで、助けてくれた人を見ることできるようになった。
「大丈夫、もうあいつは倒したし、怖いものなんてないよ」
その人物は白いコートを羽織り、腰元には朱鞘が差されていた。そして片腕には血塗られている剣が握られている男性で、明らかに一般人ではないのが分かる。
だが董はそんな彼を恐怖や戸惑いを感じることなく、寧ろ安堵感しかなかった。一体なぜあったこともないこの人物にここまで心が寄せられるのか、董自身も不思議に感じていた。
「ごめんね……助けるのが遅くなっちゃって。かならず攫われた人たちも一緒に助けるから」
そう言って男性はそのまま董を抱き上げようとしたが――――。
『その娘をよこせ』
「っどうやら、そのまま待ってもらおうかな。ちょっとお客さんが来ちゃったからさ」
森林の木々の影から現れた両腕に鎌を備えた赤い悪魔――その身体は肩幅は広く巨体な上に、2メートルほど身体であった――が現れた為に、彼は剣を構える。
『邪魔をするな、人間。 喰ってしまうぞ』
「……お前ごときに食べられるほど、俺の腕は弱くないよ」
彼、サイガは不敵に笑うと同時に剣の切っ先を相手に向けて云った。
『ふざけるなっ!』
それに劇場した悪魔は見た目とは裏腹に素早い動きと鎌による強烈な斬撃が襲い掛かる。だが、サイガはその動きについていき、鎌の斬撃も受け止めるか弾くかのいずれかで流していく。
悪魔と人の剣舞に思わず見とれてしまう董だったが、やがてその剣舞も終わりを迎える。サイガの繰り出した蹴りが悪魔の腹部を捉えて、太い木に叩きつけられたことで。
そしてサイガは頭上に剣先が大きな円を描くと同時に、その軌跡が作った空間の裂け目から召還された金色の鎧が全身に装着される。そして、手にした剣からは殻を破るかの如く牙狼剣が顕れる。
『お、黄金騎士っ!?』
悪魔の驚愕と戸惑いの声を耳にして、董も驚愕しながらただ現れた黄金騎士牙狼をじっと見つめていた。
ペンダントと同じ紋章を持ち、金色に輝く鎧の騎士――実在する騎士を見て、生まれたのはやはりあの時の不思議な感情。
この感情は一体何なのだろうか……董はその疑問を抱いた。
『お前の夜はここまでだ!』
双子設定と黄金騎士家系のぐだーずを考えたのはいいが、番外編もここまでだ!
続き? 期待しないでもらいたい。