呂布の子孫と成りて……   作:ヴォルト

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12話

 

 

 一人、また一人と、禍の団の魔法使いの首を方天画戟(グラム)で何処ぞの妖怪首置いてけな薩人マシーンの如く斬り落としていく。

 

 弱い。

 

 テロリストって言っても所詮身体を鍛えてない魔法使い(ニンゲン)だ。

 

 念のために紫の炎〈奔霄〉を方天画戟に纏わせて魔法の障壁やら術式を無効化しながら斬っている。 

 

 

 

 そんな作業をするように首を斬っていたら一分かからないくらいで全滅させちまった。

 

 やっぱり音速で移動するのは反則くさいかな。でも曹操はこれに対応してくるんだよな。

直線の移動ならその移動してくる直線上に槍を合わせればいいって何だよ。

 

 

 未だ空間が止まったままだから首を斬った瞬間、魔法使いの身体が空間停止の影響を受けてしまい、空中で首がとれた状態で止まっている。この状態でも血が噴き出しているモノは無い。斬ると同時に切り口が焼けて止血しているからだ。

 

 これって空間停止が消えたら魔法使いだったモノが地面に落ちて血や肉が飛散してグラウンドが悲惨な事になりそうだな。

 

 “ひさん”だけに…………うん、無いな。

 

 

 校舎に向かって飛んでいくとアザゼルと褐色の女悪魔が出てきた。

アザゼルと戦ってるって事はアレもテロリストか。

 

 ……微かに龍の力を持っているな。丁度良いグラムの餌だ。

 

 

「……(ドラゴン)は…黙って…その(チカラ)斬られろ(喰われろ)

 

 そんな訳で褐色の後ろに回って首をチョンパして龍の力を喰う。グラムの反応から欠片でも美味しい様だ。

 

 あれ?アザゼルが纏っている金色の鎧から龍のオーラがぷんぷんするな。グラムが喰いたいって呪詛放ってるけど、どうしよう。

 

 

 あ、空間停止が消えた。

 

 やっぱりグラウンドに赤い華が咲いちまったな。

 

 

 

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 校舎に居た動ける者は魔法使いを蹂躙する八色の炎の軌跡に魅せられ口を開け言葉を失っていた。

本来音速で動けば衝撃波(ソニックブーム)が生まれるが、絶地の力で空気抵抗や摩擦を無視して動けるので衝撃波による爆音が無い静かで綺麗で残酷な蹂躙だった。

 

 

 

「あれが呂布の力か…。デュランダルを碌に使いこなせない私とグラムを手足の様に使いこなす呂布。はぁ、自信を無くすな、これは……」

 

「ゼノヴィアはまだデュランダルを継承してそこまで日は経ってないんだろ?今度ストラーダの爺さんでも喚んで稽古して貰える様に頼んでみるか?大剣使いはウチにはゼノヴィアしか居ないからな」

 

「すまない曹操。頼んでも良いか?」

 

「構わんよ、仲間の為だからな。リーダーとしてこれぐらい当然の事だよ」

 

 

 曹操とゼノヴィアの会話に上司が不敵な笑みを浮かべそうだなと考えるデュリオとその稽古にご一緒したいと考えるヴァーリがいた。

 

 その後、禍の団の旧魔王派と名乗る悪魔が来て、アザゼルが挑発してそのまま外に出ていった。

 

 

 自分で戦うなら呂布に任せる必要ないだろ、と考えながら呂布がアザゼルを殺さないかちょっと心配になる曹操だった。

 

 

 

 

 

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 褐色悪魔の首をスッポーンと飛ばしてグラウンドに華を咲かせたオレはグラムの呪詛を引っ込めていた。

 

「呂布、お疲れさん。流石は英雄組最強だな」

 

「……ん、歯応えがなかったらな、余裕」

 

「くくく、だろうな」

 

 

 近付いてきた曹操とハイタッチをしながら会話する。何かしながらの会話はオレらにとっては日常茶飯事。喋るよりも手を動かせという事だ。

 

 動けるようになった賈駆とイリナ、ゼノヴィアも曹操の後に続いて来ていた。

 

「これだけの魔法使いを一人で倒したってスゴいしか出てこないわ……」

 

「呂布の力は武神とも対等に戦える程なのよ。身体を鍛えてない魔法使いに負けるわけ無いでしょ。そもそも、呂布は相手の弱点になる手段を複数持っているから倒せない敵の方が圧倒的に少ないのよ」

 

浄化(グラニ)龍殺し(グラム)。これだけでも悪魔と龍は勝つ可能性がほとんど無いな。今代の二天龍は両者ともに悪魔だから相性が最悪どころの話じゃないな。白い龍はハーフだがあまり関係無さそうだな」

 

 

 上からイリナ、賈駆、ゼノヴィアのコメントだ。

 

 

「さて、テロリストの殲滅は終わったので続きをしましょうか」

 

 曹操の言葉に三勢力のトップは首を縦に振る。

少し経った頃に赤龍帝とリアス・グレモリーがテロリストに利用された眷属を連れて戻ってきた。その中には黒歌の妹の白音もいた。

 

 ……てか会談会場の近くに眷属を置いてくるなよ。そのハーフ吸血鬼は神器が制御出来ないから危険って理由で旧校舎に封印してたとかじゃなかったか?

なのにそいつを大事な会談会場の近くに置くってどうなん?

 

黒歌の妹と一緒だったから大丈夫?テロリストに利用されてんじゃねーか。

冥界に封印しておけよ。

一般人の事考えろや。

態々此方に置いておく理由にはならねーだろ。

引きこもりなら学校にいる必要ねーだろ。

そんな事で学校を私物化すんな。

冥界に引きこもれや。

 

幼少期の虐待が原因?

引きこもりの理由になっても、神器の制御が出来ない言い訳にはならんだろ。

だったら同じ様な事されてるヴァーリの事を知っても同じ事が言えんのか?

ヴァーリはめっちゃ使いこなしてるだろ。

後少しで禁手を進化させる事が出来そうとか言ってたぞ?

制御する気があるか無いかの違いだ。

 

 ……とか言っても悪魔どもは聞く耳持たないだろうな。彼奴等は自己完結するから話が通じない。

あー、モヤモヤする。

 

 

 

 

 

(呂布の奴、何かイライラしてやがるな。歯応えがなかったのが原因か?それとも人外どもの対応にイライラしてるのか?だとしたら早めに終わらして帰らんとな)

 

 

 曹操は呂布の二本のアホ毛が荒ぶっていることを確認した。

アホ毛を視れば感情が表情にでない呂布の機嫌が判る。アホ毛を視て呂布の機嫌を理解できれば呂布検定二級が貰える。なおそれを判断するのは曹操(呂布検定一級持ち)と斉天大聖である。

 

 

 賠償金等の受け渡し人に堕天使側にはヴァーリを、天使側にはデュリオかヴァスコ・ストラーダ、悪魔側にはソーナ・シトリー(眷属も含む)を指名した。悪魔側はこれに抗議したが曹操は一蹴。受け入れないという事は須弥山に敵対する事を意味すると告げて黙らした。

 

 ソーナ・シトリーを指名したのは悪魔の中ではマシな部類だったからに過ぎない。

 

 英雄組に所属している者は右手の甲に特殊な紋章があることを見せて区別するように釘を刺して会場から立ち去ろうとした時。

 

 

「おい、待て!話は終わってねーだろ!」

 

 赤龍帝兵藤一誠が待ったをかけた。

 

 いくら神滅具を宿していようが今は下級悪魔。一勢力のトップが集う会談での発言権は無い。発言したいならトップに発言の許可を貰ってからだ。

 

此処に悪魔の上層部(老害)どもが居れば王の教育不足だとネタにされ笑われているだろう。

そしてぶちギレて印象を更に悪くさせる。権力者が相手を煽るのはデフォだ。柳の葉の如く受け流さなければ相手のペースに乗せられてしまう。

相手がシスコンの魔王だろうと関係ない。挑発に乗れば陥れ、乗らなければ嗤う。

所詮前政権を政治手腕で奪ったのではなく、暴力で奪った連中と視ている老獪は悪知恵を働かせるだろう。

 

 

 

 

 兵藤一誠の発言を要約すると……イリナとゼノヴィアを返せ、だそうだ。

 曹操と自分と闘って自分が勝てばイリナとゼノヴィアを解放しろって、何様だ。

フェニックスに勝った?相手が舐めプしてたから勝てただけだろ。そんなのを勝ったなんて言わん。

 

 

「ハァ…何でこうなるんだ?」 

 

 曹操のため息と呟きが虚空に消える。

 

 

「イリナとゼノヴィアを絶対に返してもらうぞ!」

 

 

 盛大な勘違いをしている赤龍帝は神器武器を出して構える。

  

「まあ、負けるつもりなんて無いんでね。ほら、先手は譲るよ下級悪魔の兵藤一誠。胸を貸してやるから掛かってきな」

 

 出していた聖槍を仕舞い、構えらしい構えをせず掛かってこいと手首を曲げ挑発する。 

 

 大声を出しながら走るが曹操にはゆっくりにしか感じない。

左の大振りを左半身を後ろに下げて外側に回る様に避けて足を引っ掛ける。赤龍帝はそのままヘッドスライディングした。

 

 

「諦めろ下級悪魔。武道の経験も無い素人に負ける俺ではない。神器すら使ってない俺にその様では絶対に勝て────」

 

「うるせーーー!」

 

 現実を突き付けただけなのにいきなりキレてオーラが膨れ上がった。

 

 そして籠手から小さな光の球が何個か出てきて詠唱を始めた。

 

 

「我、目覚めるは───」

 

 それが覇龍だと判った曹操はこのままだと周りに危険が及ぶと判断し気絶させようと動こうとした瞬間、青色の炎が覇龍を使おうとした赤龍帝を焼いたのを見て構えを解いた。

 

 

 紅髪の悪魔が喚いてるが無視して気配を探る曹操。龍のオーラが霧散した事を確認し息を吐く。

覇龍を使おうとして青色の炎に焼かれたと思われた赤龍帝は無傷の自分に疑問符を浮かべていた。

曹操は相棒(呂布)の頼もしさを再確認し、すぐ近くに民家があるのに覇龍を使おうとした事をネタに赤龍帝兵藤一誠の封印指定を提案。

 

 反対されるが現実を突き付けただけで暴走する様な情緒不安定な奴を人間界に置くなと言い須弥山の帝釈天、北欧のオーディンにこの事を報告する事を告げ、ソーナ・シトリーにだけ連絡先を教え賠償金の準備ができ次第連絡をしてください、とだけ言って本拠に転移した。

 

 

 

 

 

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 須弥山のトップとは思えない格好をしている帝釈天に一本の電話が掛かってきた。

 

「もしもし、どうしたよ曹操。ちょっと訊きてぇ事があってよぉこっちから掛けようと思ってたとこだぜ」

 

『そうだったのか。すまない、帝釈天よ。出来れば至急師匠ら連れて此方に来て欲しい』

 

「HAHAHA、どうした。お前らじゃあ対処出来ねぇのか?」

 

『ああ、英雄組では対処出来ない問題だ』

 

「…………何があった」

 

『オーフィスが家にやって来た』

 

「HA?マジで?マジで言ってる?」

 

『マジだ。今、ゲオルクの創った空間内で呂布が超越禁手(オーバー・バランス・ブレイカー)使って相手をしてるから早く来てくれ』

 

「分かった。暇な奴連れてそっち行くから戦えんガキどもを此方に送ってもらっても構わん」

 

『感謝する』

 

 

 

 

 

 通話が切れた携帯を尻のポケットに突っ込み自身の武器であるヴァジュラを手に須弥山全体に届くであろう声で暇をしているであろう猿、坊主、河童、豚、龍を呼び出し英雄組に向かうのだった。

 

 

 

 

 


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