面倒事1:神機適合試験
『ようこそ。人類最後の砦、フェンリルへ』
上方から降る威厳溢れる声。弾痕や斬り傷溢れる壁に囲まれた
どれもこれも要らん物ばかりだ、と彼––––––白鐘ケイトは大きく溜息を吐いた。
皆さんは分かるだろうか?今の状況が。
訓練所の中央に設置された、目の前で圧倒的な存在感を醸し出すこれまた物々しい赤い機械。たかがこの機械を置くのにこんな広い場所が要るのか、と最もな突っ込みをしたい所だが、所謂気にしたら負けという奴だ。
赤い表面を鈍く光らすこの機械は、何かを上下から挟むような造りになっていて、
…現実逃避は辞めよう。小学生でも分かる問いだ。
原因を探せ、何故こうなった。
確か5時間前フェンリルのおっさんに何かの検査だと言われ着いて来たら、訓練所の扉の前に連れてかれて、「おかしいなー」と思いながら訓練所に入ったら、これだった。
…はい神機適合試験ですね分かります。
今直ぐあのおっさんに詰め寄って、「嘘つくなクソ野郎」と怒鳴りたい所だが、残念ながら今自分に課せられた行為は、
「はぁ……」
やだなー。
今後の結末は考えたくない、と目の前の光景から逃げようと先程自分に掛けられた声の根元を見ると、強化ガラスで守られた別紙から此方を観察している方々が三人居た。
要するに俺はモルモットなんだ。神機に適合するかどうかの。
俺はモルモットになったつもりで「キュイーン」と鳴いてみる。返事は無い。うん、当たり前だな。
『––––––緊張しているようだな。リラックスしてくれたまえ。その方が良い結果が出やすい』
別に緊張している訳では無い。目の前の現実と今後の展開から逃げようとしているだけだ。
ていうか「キュイーン」と鳴きながら緊張する奴がどこに居る。
しかも良い結果なんて出なくていい。良い結果=神機に適合→
確かに俺は今までフェンリル––––––いや、全世界に対して
だけど実際ここでうじうじ迷ってても仕方無いんで、さっさと終わらせよう。面倒臭いし。
Side:観察者達
「彼は…大丈夫なのかい?」
隣に立つ白衣姿の男性___「ペイラー・榊」の声で、ヨハネス・フォン・シックザールは思考の海から現実に戻った。
今回極東支部に、待望の新型神機使いが来る。
全世界屈指のアラガミ出没率を持つ激戦区である極東支部は常に人員不足だ。別の部隊同士での人員の貸し借りなんて日常茶飯事なほど。
だから本来、新しく人員が配属されるのはとても良い事だ。しかも期待の新型である。
人類の守護者であるフェンリル極東支部の支部長として喜ばなければならない事だ。
––––––だが、極東支部の支部長であるヨハネスを含む、今回配属される新型神機使いの過去について知る者達は諸手を挙げて喜ぶ事は出来なかった。
「…分からない。何も起こらなければいいのだが…」
榊の疑問は配属された青年の過去を知る者からしたら最もな疑問で、そしてその過去が深いだけに疑問に対する返事も濁さざるを得なかった。
そんな彼らの困惑など知る由も無く、真下に見える訓練所に立つ青年は設置された機械の窪みに腕を置いた。
「szdxfcgvhbjんkmくぁwせdrftgyふじこlpーーー!!」
声にならない悲鳴を上げながら、窪みに置いた右腕を中心に全身に広がる激痛に耐える。
まぁ少し痛い位だろうと思って、軽い気持ちで腕を機械の
窪みに置いたらこのザマだ。
体の中の全てをかき混ぜられるような、全ての細胞が壊され、再生成され、循環していくような感覚が痛みと共にやって来る。
本来ケイトは面倒事は避ける性格だ。ケイトに適合した神機が無かったら、ケイトは好きでこんな目には遭わない。遭おうとはしない。
「––––––っつ〜…」
暫く痛みに悶えていたら、突如痛みが無くなった。
機械の上の部分がガシャン、と音を立てて腕から外れ、黒い煙が上がる。
右腕にはごつごつとした赤い腕輪が付いていた。
成る程、「
…違うよな、多分。
知らない間に強く握っていた右手に、武器の様な物が握られている。何度も見たことがあるから分かる、神機だ。
目立つのは刀身。だが柄から上の部分に銃のような物が収納されていて、盾の様な物も付いている。
(ふむ。万能型って事か)
何だか気持ち良くなって、神機を上に掲げてみる。訓練所の証明に刀身が反射し、きらりと光った。
思ったより軽く、動きに面倒な支障は無さそうだ。
上に掲げたままにしていた神機から、突如黒い触手のような物が出て、腕輪に刺さる。
すると腕輪を装着した右腕が一瞬黒くなり、元に戻った。
…大丈夫だよな?俺。
『––––––おめでとう。これで君は極東支部初の新型ゴッドイーターだ』
最初に掛けられた声と同じ声が掛けられる。
今までで
…新型かー。だったら今までの人達は旧型神機使いって言われんだろうなー。
今まで自分達が最新の神機使いだったのに、いきなり「旧型」って呼ばれたらどうなるか––––––勿論不快だろう。
自分の前に自分達から「新型」の称号を奪った『新型』神機使いが居たらどうなるか––––––当然不愉快だろう。
…この上で自分の最低な過去がバレたらどうなるか––––––最悪な結果になる。
(面倒くせーことになったな...)
バレたのなら虐めや暴力などは当然の報いとして受けるが、その上で新型云々に関する恨みも積み重なるのは御免だ。
『––––––体調が悪い場合は、直ぐに申し出るように』
––––––ありゃ、聞いてなかった。
神機適合試験を終え、少し休もうとアナグラのエントランスに向かうと、ソファに一人の青年が座っていた。俺より年下だろうか?
青年に軽く会釈をして、ソファに座る。残念ながら俺は落ち着きがあるタイプでは無い。暫くすると足を無意識にぶらぶらさせて居た。ふと隣を見ると、青年も同じように足をぶらぶらさせて居る。
…この青年とは気が合いそうだ。
「___ガム、食べる?」
じっと視線を向けていたら、青年はケイトがガムを欲しがっていると思ったのか青年が親切そうに聞いてくる。
わざわざ断る理由も考えるのも面倒なので貰おうとしたら、
「あ、今噛んでる奴で最後だった。ごめんごめん」
(...あ、無いんか)
人間数え間違いなどよくある。それについては言及しないのが一番。
謝ってくる青年に別に気にしなくていいと伝えて、ふかふかの背もたれに頭を傾けた。
Side:コウタ
(やる気無さそうな奴だなー)
それが、コウタが感じた先程エントランスに入ってきた青年の第一印象だった。
真紅の色の寝癖だらけのボサ毛に、美しい碧色の死んだ眼。同じ男の筈なのに、何故か見惚れてしまうほどの端正な顔立ち。だけど覇気の欠片も無いのは今にも眠りそうな眼のせいだ。
真面目そうにしてたら頼りになりそうな美青年だが、こんなこの世の全てが面倒な様な表情をしていたら台無しだ。
(...いや、そんな事は無い!人は見かけに寄らないって言うじゃないか!多分この青年も熱い所が…あ…る…ハ……ズ?)
目の前の青年を自己の中で好印象にしようと頑張るが、なんだか足をぶらぶらしながら欠伸をしている青年を見ると、自信が無くなってきた。
(––––––諦めちゃいけない!こういう時こそ、会話をして調べるんだ!)
そうと決まれば、早速話しかけてみよう。
「ガム、食べる?」
さぁどうする。これで受け取ろうとせずに「別にいいよ」などと遠慮すれば性格に希望はある。
青年の表情を見ると、「断る必要無ェし、貰うかー」といったような表情をしている。…何か希望が、無くなってきた。
…あれ?そういえば肝心のガムが無い。やべぇぜ。
「あ、今噛んでるので最後だったみたい。ゴメンゴメン」
青年はどうでもよさそうな顔をしている。ふん、悪かったな!馬鹿で!
俺は懲りずに話しかけた。
「アンタも適合者なの?」
コウタの問いかけに、目の前の青年は首を縦に振った。
まぁ腕輪も付けてるしそうだろうな。
「年は…俺と同じか、少し年上っぽいけど。まあ、一瞬とはいえ俺のほうが先輩ってことで。よろしく!」
「…んで、『一瞬』早い先輩。アンタ名前は?」
うおー。尊敬されようとは思わなかったけど「尊敬」の一欠片も無いわー。
「俺は藤木コウタ!今日適合した旧型神機使いだ!」
「俺は白鐘ケイト。別に覚えなくていーよ。面倒だしこちらも覚えないから。」
白鐘ケイトっていうのかー、へー。...って
「––––––オイオイオイ!!覚えろよ!てか覚えてくれよ!」
「分かった覚えるから覚えてやるから、10000fc頂戴。又は饅頭100個奢って」
「何故そこで金をせしめる!?」
「別にどっちでもいーよ。...おっ、誰か来たようだぜ」
Side:ケイト
うーん、弄りがいある奴だな。気に入ったわー。
…っと、そうだそうだ。誰か来てるんだったな。
そしてエレベーターから降りてきた人を見て、驚いた。
「…このご時世少ねぇだろうが、よくセクハラされたりしなかったな」
「ねぇ!エレベーターから降りてきてこっちを睨みつてくるおっかなそうな女性に対して最初に言う言葉それ!?」
「静かにしろ!!」
おっと、怒られちまったぜ。
––––––俺は怒りっぽい奴は面倒だ。昔から極東には「短気は損気」という名言がある。
「お前らは入ってきてそうそう静かにするという事を知らないのか!…まぁいい。立て」
「「はい?」」
「立てと言っている!」
「は、はい!」
コウタが慌てて立ち上がる。
...え?俺?別に俺は
「白鐘ケイト、立て」
「え、何で?別に座ってても話は聞けrゴヴァッ⁉︎」
言いかけた途中で頭に走った激痛。どうやらコイツが手持ちのファイルの角で頭を引っ叩いたようだ。なんちゅー怪力。
「…白鐘ケイト。そして藤木コウタ。つまらないことで死にたくなかったら、私の命令にはすべてYESで答えろ。いいな?」
「ハイじゃだめ?」
又ファイルを振り上げられる。ハイ、すいませんでした。
「これから予定が詰まっているので、簡潔に話すぞ。私の名前は『雨宮ツバキ』。お前たちの教練担当者だ」
うわ、ツイてねぇ。このあと一歩で三十路の鬼ky…。ハイ、すいませんでした。
「この後の予定はサカキ博士のメディカルチェックを済ませた後、基礎体力の強化、基礎戦術の習得、各種兵装の扱いなどのカリキュラムをこなしてもらう。...今までは守られる側だったかもしれんが、これからは守る側だ。分かったら返事をしろ!」
「はい!」
「りょーkグゴバァ!?」
再び頭に走る激痛。さっきより1ランク上の痛みだ。
くっ…なかなか怒りっぽい教官だ。
ツバキは未だこっちを睨みつけている。
「…了解」
ツバキはフゥ…と溜息を付いた後、話を続けた。
「さっそくメディカルチェックを始めるぞ。まずは白鐘、お前からだ。榊博士の部屋に一五○○までに行くように。それまでこの施設を見回っておけ。今日からお前らが世話になるフェンリル極東支部。通称アナグラだ。メンバーに挨拶の一つもしておくように」
「了解」
俺が返事をしたら、目の前の鬼ky…もといツバキはもう用が無いといったように去って行った。
「ねぇ、ケイト。俺のメディカルチェックは?」
「…あ」
☆主人公紹介☆
名前:白鐘ケイト
年齢:19
性格:面倒くさがり
容姿は紅髪碧眼。端正な顔立ちをしている。
好きな物:和菓子,和食,昼寝,ソファ
苦手な物:洋菓子,洋食,勉強,ツバキさん,書類
性格:面倒臭がり
成績:演習編(5段階評価)
射撃:0
近接:5
回避:5
探知:5
勉強編(5段階評価)
国語:1
数学:1
理科:0
社会:2
英語:0