GOD EATER 〜暗殺者の贖罪〜   作:KETAKETA

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面倒事10:失った記憶 〜下編〜

「アリサが起きた?」

 

第一部隊の一同が首を傾げる。

ケイトが起きて、部分的な記憶喪失である事が判明してから二週間。アリサは意識が戻ったら錯乱→鎮静剤という事の連続で、もう少しアリサが「起きる」のは遅くなると思っていたが...。

ケイトは皆とも顔合わせらしき事を済ませ、以前と同じような感じで接する事が出来ている。今アリサが起きてもケイトがヘマをして記憶喪失がアリサに発露するのは無いだろう。多分。

 

「アリサの様子はどうなんだ?」

「錯乱してしまった時の事に触れられると少し不安定になりますが、顔を合わせて話す事は出来ると思います。リンドウさんも生きていて、ケイト君も見当たる所に怪我は無いので『自分は誰も傷付けずに済んだ』と思えるでしょう」

 

リンドウと医者が話している。若干不安定なようだが問題は無いようだ。よかった、とコウタは息を吐く。

話を聞くと、ヴァジュラ種にまだトラウマ(?)があるようなので戦線復帰は難しいという。それはそうだろう。

医者に連れられ一同はぞろぞろと病室に向かう。

 

「アリサ、入るぞ」

「...どうぞ」

 

ケイトがノックし、皆が病室に入った。やはりあの時の事が後ろめたいのか、アリサは目線を合わせず俯いている。

 

「おーい、アリサぁ。どうしたぁ?」

「...えっ!?」

 

リンドウがアリサに声を掛けると、アリサはとても驚いたようだ。あの時自分が殺してしまったと思っていたのだろうか。目を丸にしている。

 

「あの時ケイトが助けてくれてな。若干ケイトが傷を負っちまったが問題無い。皆元気だ」

「という訳でお前が気に病むことは無い訳だ(俺記憶喪失したけど)。リンドウさんも元気、俺も元気で結構じゃねぇか(記憶喪失したけどね?)。早く復帰してくれ、な?最近任務が増えて疲れてんだ。サボってた分きっかりやって貰うぜ」

「やめなさいよケイト君。みっともない。...けどまあその通りよ。貴方は前の事は気にしなくていいわ」

「...はい」

 

リンドウとケイト、サクヤがアリサに話しかける。しかしケイトの演技は完璧だ。言っている事はともかく。

 

「...あれ?俺等出番無いんじゃね?」とソーマに視線を送るとソーマは端っこで腕を組んでボッチしている。

 

(構って欲しいんだな...)

「素直になれよソーマ。構って欲しいなら___」

「...殺すぞコウタ」

 

ソーマに神機向けられました。ツンデレですね。分かります。

あれ?神機って無断持ち出し禁止じゃね?

 

 

 

Side:ケイト

 

俺が記憶喪失らしきものになって二週間経ちました。どうも、ケイトでーす(≧∇≦)

俺は自分の事と、周りの人の事を綺麗さっぱり忘れちまったらしくて、あれからアナグラ全体に挨拶周りに行くことになっちまった。

感想、めんどくさい事になった。「楽しかったです。また行きたいです。」なんて書けそうも無い。遊園地じゃあるまいしな。

しかも俺の上官___リンドウさんにお願いされてから俺は今までの事を勉強するハメになった。コウタの阿呆さや、リンドウとサクヤさんの関係(←コウタ談)、そして大事な蒼穹の月であった事。

蒼穹の月の時からずっと錯乱状態であった(らしい)アリサも戦線復帰はまだ難しいが少し安定したらしい。

間接的にリンドウさんを殺してしまったと思ってるみたいで、リンドウさんを見た時すごい驚いていた。

実際アリサにとって俺の記憶喪失を隠したら今までと全く同じ環境だ。得に負い目も無くなるから戦線復帰が可能かもしれない。記憶喪失したけどなッ!

俺はとりあえずリンドウさんの言葉の後をつぐ。

 

「という訳でお前が気に病むことは無い訳だ(俺記憶喪失したけど)。リンドウさんも元気、俺も元気で結構じゃねぇか(記憶喪失したけどな?)。早く復帰してくれ、な?最近任務が増えて疲れてんだ。サボってたぶんきっかりやって貰うぜ」

 

実際疲れたしな。一人でヴァジュラ二体行くという半殺しもあった。

隣でサクヤさんが俺を嗜めるが、疲れたんだ!俺の代わりに働いて休ませてくれ!

あ、そうそう。記憶喪失になっても性格は引き継がれてるみたいで、ツバキ教官が残念そうに溜息を付いていた。

趣味は昼寝と寝坊と和菓子です☆不得意は掃除と早起き!(キラッ)

...あれ?なんか寒気が。

 

「...皆さんすいません。私のせいでご迷惑をお掛けしました」

「いやいや!気にすんなって!早く元気になってくれよな!」

「日頃はウザいだけですが、今回は感謝します。コウタ」

「何それ酷ェ!」

 

何処でも誰でもどんな時でも虐められるキャラ、コウタ。

さっきまでコウタとソーマが居ないなーと思っていたら、コウタはどうやら居たらしい。ソーマは居ない____

 

「...居る」

「すみませんでしただからいつの間にか持ってた神機でチャージクラッシュしないで下さいお願いしますソーマさん」

 

...あれ?ソーマなんで神機持ってるんだ?

 

 

 

私が錯乱してしまってからどうやら三週間経ってしまっていたらしい。

アリサは下唇を強く噛んだ。

今回は良かった。リンドウさんは助かったし、助けに行ってくれたケイトも元気だった。

____けど、

もしやって来たアラガミが第一種接触禁忌種だったら?もしリンドウさんが私のせいで怪我をしていたら?もしケイトが助けに行くのが間に合わなかったら?もしケイトが助けに行ったまま帰らぬ人となったら?

仮定の話だって人は笑うかもしれない。そんな事を気にしても意味がないだろうと。

それでも私のせいでそうなる可能性があった。皆に高飛車に接して上から目線であった自分のせいで二人が死ぬ可能性があった。

もし自分にトラウマに打ち勝てる強さがあったら、

 

「...皆さん。すみませんがちょっとケイトに話があるんです」

 

一種不思議そうな顔をした皆だったが何も言わずケイトを残して出て行く。

病室にはアリサとケイトの二人が残った。

 

「ケイト。お願いがあります」

「ん、何?」

 

誰も失わず守れる強さがあったら、

 

「私に...戦い方を教えて下さい」

 

___もう誰も失いそうにならずに済む。

 

 

 

 

「えー、本日も仕事日和ですー。ですが、ケイト君は働きたくありませーん」

 

私は、教えを乞う人を間違えたかもしれない。

昨日、アリサのお願いをぶつくさ言いながらケイトは承諾してくれた。してくれたのだが、

 

「約束の時間の1時間遅れってどういう事ですか....」

 

明日の朝8:00からと特訓の約束を取り付け、ケイトにしては早過ぎないかと思っていた矢先に、1時間の遅刻。

お願いしている立場だから偉そうに言えない。我慢、我慢としていたがついに待ち切れずケイトの部屋に突撃。

 

「すいませーん」

 

ノックをしても反応無し。中からスピーと静かな寝息が聞こえる。

 

「..........」

 

バキッ

容赦無くケイトの自室の扉を蹴り飛ばしたアリサが見たもの、それは_____

 

「すぴぃ〜すぴぃ〜」

 

ベットで幸せそうに寝ているケイトの姿だった。

寝ているケイトの寝顔を撮影し、ケイトを叩き起こす。

 

「んー?何ぃー?ふわぁ」

「起きて下さい!今日一緒に特訓してくれる約束じゃないですか!」

「いいじゃんあと5分...。」

「良くありません!」

 

ケイトが寝癖だらけの髪をぽりぽりとかく。目も死んだ魚の目だ。

ふとケイトが驚いた表情をする。

 

「...扉壊れてる」

「私が蹴り壊しました」

「品性疑うわー」

「私は1時間も遅れるあなたの神経を疑います」

 

修理費は自分で出してもらおう。1時間も遅れたのが悪い。

 

「とりあえず行きますよ!」

「うーん、あと30分...」

「寝顔の写真公開しますよ」

「分かりました今すぐ準備します!!」

 

ケイトがどったんばったん暴れ回っている。

ふとアリサは先ほど撮った寝顔の写真を見てみた。

 

「あら可愛いい寝顔しているじゃないですか」

「/////_____っ!?た、頼む次から遅れないから見るのもやめて消してくれーー!!」

「それじゃぁ足りませんね」

「ぎゃぁーーーーーー!!」

 

...話は現在に戻る。

ケイトはアリサが目の前で画像を消したのを確認してからようやくほっとした表情になった。

____バックアップは取っているが。

 

「今日は何の討伐だっけ?」

「貴方に特訓して貰う筈なのに何で貴方が覚えて無いんですか」

「めんどくさいから」

「...寝顔」ボソッ

「え!?ちょ、ちょい待ち消したんじゃないの!?」

「バックアップです」

「頼む頼むからホント頼むからバックアップ消してくれ頼むからウロヴォロスの前で単体で放り出されていいから消して!!」

 

なかなか弄りがいがある。だが残念な事にそろそろアラガミの出現場所に近付いて来ている。ふざけるのもここまでだろう。

 

「今回の討伐対象はシユウと近くにいるオウガテイル、ザイゴートとコクーンメイデンの討伐です」

「鳥人と雑魚三兄弟か」

「まぁそういうことです。...ってかなんでまた立場が逆っぽい感じなんですか」

「お前の方が優秀だよ。...お、ターゲットの出現だぜ?」

 

視線を戻すと前方にシユウとオウガテイル3匹、そしてザイゴート2匹。

 

「アリサは周りのザイゴートとオウガテイルを討伐してくれい。あいつらの連携は厄介だから。シユウは俺が引きつけるが危なかったら直ぐに逃げろよー?仮にもお前は病み上がりなんだから」

「分かりました。...行きます!」

 

誰も失わないようになるために、アリサは最初の一歩を踏んだ。

 

 

 

まぁ危なっかしい所もあるけど基本問題無かったな。

 

ケイトはシユウを捕食しているアリサを眺めていた。

以前のレベルは知らないが、高飛車で作戦に従わなかったりした(らしい)所は改善されているようだ。蒼穹の月にリンドウさんを危ない目に合わせてしまった負い目もあんのかな。別にどっちでもいいが。

右手で持った神機を地面に突き刺し左腕を眺める。日常生活に支障は無い。神機を両手で振り回したりは出来ないが。

 

「...ケイト」

 

呼ばれて視線を寄越すと深刻そうな顔でこっちを見ているアリサが居た。

 

「ん?どうしたアリサ」

「本当の事を、教えて下さい」

「...どういう事?」

 

アリサが言う「本当の事」、恐らく蒼穹の月での事だろう。だが俺は知らないし、記憶喪失の事も言ってはいけない。リンドウさんの頼みぐらいは、聞いて守ってあげる可愛い(生意気な)部下になってやろう。

俺は出来る限り平静を装った。

 

「『蒼穹の月』での事です。貴方がリンドウさんを助けた後、一体何があったんですか?」

「...リンドウさんを助けてから、ヴァジュラと戦ったよー」

「ただのヴァジュラですか?」

「うん、そうだよ。ちょっとヤバかったから少し傷を負っちゃっ______」

 

えぇと、ヴァジュラだよな?リンドウさんはヴァジュラ種って言ってたからヴァジュラだよな?ここでプリティヴィ・マータじゃないよな?

俺が嘘をつこうとするとアリサが悲しそうな顔で黙って首を横に振った。

 

「あの時リンドウさんを襲ったのは、ただのヴァジュラではありません。プリティヴィ・マータです。...後、『腕』を見せて下さい」

 

マータ落ちキターーーーーー!!(≧∇≦)

やべぇ笑えねぇ。上官の命令が一週間で砕け散るとか笑えねぇ!

 

「...『左腕』に何も無いよ?」

「私は『左腕』なんて言ってませんし、だったらなんでバスターを片手で持つんですか?左腕も一緒に持った方が強いでしょう」

 

しまった。してやられた。一本取られたよ。

リンドウさんを襲ったアラガミはただのヴァジュラと考えていた。しかも、バスターを片手で持ってるのは不自然か。けど最初の理由は別にリンドウさんの説明不足だよな?

アリサは少し怯んだ俺の左腕を捕まえ服を肩まで捲り上げる。少し冷たい外気に触れた左腕の付け根には、まだ縫った後が残っていた。

 

「___これは何ですか?」

「料理にミスっただけで___」

「貴方のキッチンに包丁は無いでしょう。しかも貴方が料理したら部屋のキッチン___いや、部屋が吹っ飛んでいるでしょう」

 

さり気に酷い事言われたぁーーーー!?ヤヴァイ、ケイトの精神力(HP)はもう0よ!

さらにアリサは俺の右腕を捕まえる。俺に逃げ場は無い。

ヤバい。怒られるか。

アリサは黙って俺に近付き____強く抱き付いて来た。

 

「...え?」

「___貴方が私の為に嘘をついているのは分かります。だけど、私は自分のせいで傷付いた人から目を逸らしたくないんです」

「俺は_____ぐ!?」

 

何とか誤魔化そうとアリサを見たら青色の瞳を潤ませて俺を黙って見つめていた。口がふるふる震えている。

____どうしよう。俺多分女の子の泣き顔弱いよ。力が出ない。「ほらほら、飴ちゃん要るかい?」ってやったらアリサ泣き止むかな。

...無いな。...あ、けど、前パニック起こした時饅頭口に突っ込んだら大人しくなったような?「それ窒息してるだけだーッ!」とかいう突っ込みは無し。

___半ば現実逃避している俺をなんとか連れ戻すことに成功した。

 

「うぐっ...ひぐっえぐっ。うう......。」

「わわわ分かったから!お願い話すから泣かないで!」

「ひぐっ.....」

「ああもう!」

 

俺はもう投げ出したくなった。

____仕様が無い。もう話すか。リンドウさんの説明不足が悪い。腕の方は俺の治癒力が悪い。いや、確かに今までより何故か更に治癒力が挙がって、もう神機使い(ゴッドイーター)のレベルでもあり得ない程だけど、根元から食い千切られた腕を完全修復するには至らないようだ。

 

「...俺はリンドウさんを助けた後、良く覚えてないけどリンドウさんを襲ってたアラガミと戦って、左腕を喰われた『らしい』」

「『喰われた』って...しかも、『らしい』って言うのは...」

 

アリサが認めたくない現実から逃げるように首を横に振っている。

俺も、正直言いたくないんだけどね...。

 

「恐らく予想通り。自分と周りの人間について全て忘れてる。まぁ要するに、記憶喪失だろうってよ」

「そんな...」

 

アリサがまた泣き出しそうな顔をしている。

___待て!泣かないでくれ!

 

「大丈夫だ多分。大体はリンドウさんから聞いてるし、性格も変わってないらしいしな。気にすんな。多分。多分な。『多分』って主張したの忘れちゃ駄目だぞ」

「私のせいで.....」

「気にすんな」

 

相変わらず泣き顔のアリサが見たくなくて思わず抱き締める。アリサの泣き声も少し収まった。頼む!恥も外聞も捨て無い(・・)からホント大泣きしないで!俺のスタミナがどんどん削られて行くぞ!

 

「安心しろー。俺は基本そのままだ。多分。うん、多分ね。これも多分だけど。だから泣かないでくれ。お願い頼むから泣かないでねちょっとアリサぁ!?」

「うぅ....うわぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

アリサが俺に抱きしめられたまま泣き叫ぶ。

困ったな...。これじゃぁ俺が泣かせたみたいだ。いや、俺が泣かせたんだよな...(泣)

 

「今日一日話を聞くよ。...寝顔バラされたく無いしな。だからバックアップ消してね?」

「...嫌です。消しません」

「えぇぇぇぇぇ!?」

 

弱ったな...。これじゃ永遠にパシリだ。

 

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