ミッション名:ランページ
討伐対象:クアドリガ
出撃場所:嘆きの平原
同行者:アリサ・イリーニチナ・アミエーラ(第一部隊新兵)
スタングレネード持ち込み数:8
____________悲劇が、起こる
「本日はクアドリガ討伐でーす。眠いんでアリサ君に討伐を頼もうと思いまーす」
「なんで開始早々やる気の欠片も無い言葉が出るんですか!?」
「だって眠いんだもん。お前の寝相が悪いせいで全然眠れなかったー」
「貴方のせいでしょう!?」
アリサの頭の中に今朝の出来事が浮かび上がる。
ガァァァン!
『ぎゃごっ!?』
『きゃあぁ!?』
ケイトとアリサは、ベットから頭から落ちた。
ケイトの頭が床に直撃し音を鳴らす。
『いっつ〜〜...』
『いたたた...』
揃ってぶつけた頭を抱える二人。アリサはケイトに引っ張られる形となって落ちただけなのだが。
榊に頼まれてから二人は同室となっている。と言っても基本二人は外を出歩いているので室内で二人きりというのは睡眠時しかない。
____睡眠時しかないから、睡眠時に不便の皺寄せが来る。
『ケイト寝相悪過ぎます!』
『...悪かった』
正座しながら叱られるケイト。と言ってももう6:00近くだから起きる時間帯としては問題無い。
今回の任務は7:00からだから丁度いいかもしれない。
『せっかく起きたんだから行きますよ。任務』
『・・・スピー』
「任務」と聞いた瞬間寝始めるケイト。アリサはそれに気付かず任務の内容を説明して、先に出て行った。
____任務出撃時間直前になって、アリサは未だ寝ているケイトに気付いたという。
「アリサが悪いな」
「どこをどうとったら私が悪くなるんですか!?」
未だ口論を続ける二人。
情勢は圧倒的にケイトに分が悪い。ケイトが負けを認めるのは時間の問題だろう。
それから、ようやくケイトが負けを認めた時に、
「俺の眠気はお前のせいだっ!」
〈ギャオォ!?〉
「絶対違いますから!」
やほー、クアドリガに絶賛八当たり中のケイトです。
片手でチャージクラッシュをクアドリガの排熱機関に叩き込む。片手で神機を振り回すのはもう慣れたが、
ソーマもバスターを片手で振り回す事は出来るようだが、片手でチャージクラッシュは出来ないらしい。ホント自分が不安になって来た。
考えている途中にクアドリガのミサイルが飛んで来る。かなり高性能なホーミング機能が付いているので、ギリギリまで近付けてから神機の刀身でミサイルを逸らしながら避ける。...自分よりアラガミの方が射撃が上手いって、どういうことだろな?
「せいやっ!」
ケイトがクアドリガを捕喰しバーストモードになり、入手したアラガミバレットを3つアリサに受け渡した。アリサがリンクバーストLv3状態となる。
二人が連携してクアドリガの前面装甲を重点的に攻撃する。二人共バーストモードなので、クアドリガの必死の攻撃も軽々と避けられた。
〈グオオオオオオオォォォ!!〉
クアドリガの突進をアリサが後ろに大きく跳躍して避け、空回りしたクアドリガがケイトに突っ込んでくる。
ケイトはクアドリガの突進力を利用して、充分に溜めきったチャージクラッシュを叩き込んだ。
〈グガァァァ!〉
バキッという粉砕音と共に、クアドリガの前面装甲が結合崩壊を起こした。そこにアリサが銃口を向け、濃縮アラガミバレットを放つ。
凄まじい轟音と共に銃弾が爆発し、クアドリガが倒れた。
(____あの威力だとコアも残っていないだろう)
ケイトは息を吐く。濃縮アラガミバレットをもし人間に撃ったらどのようになるのだろう。少し気になってきた。
「あー終わった終わった________」
〈ギャオオオオオオオオオオオ!!〉
「___!?」
平原に獣の声が広がる。
ケイトは体を固まらせ、アリサの方向に振り向いた。
〈ギャオオオオオオオオオオオ!!〉
____そこにはアラガミを見て震えて座り込むアリサと、弱者を前に降臨する絶対的捕喰者____帝王、ディアウス・ピターが居た...。
動けない。
両親の仇。両親を喰らったであろうアラガミ。
その存在を前にして、神機を握る事はおろか立つことも出来なかった。
カラン________
神機が手から滑り落ちる。
持たなきゃ。戦わなきゃ。
頭がそう指示するけど、仇討ちの気持ちより恐怖が先に出る。
〈ギャオオオオオオオオオオオ!!〉
目の前のアラガミ、ディアウス・ピターが吠える。
こいつを倒す為に戦術を死ぬほど勉強した。訓練した。
____なのにそれを前に何も出来なくてどうする。
ピターが余裕の様子でゆっくりと歩み寄ってくる。
ピターが腕を大きく振り上げた。腕の先には、尖った爪。アリサは思わず目を瞑る。
私は、無力だ。
____死を覚悟した。
ガン!!
「・・・え?」
瞑ってた目を開く。目の前には頼れる赤い背中。
ケイトが、飛び出してギリギリシールドを展開したのだ。
ピターも負けじと腕に体重をかけていく。シールドごと破壊するつもりなのだろう。
「アリサ!逃げろ!」
ピターに押されながらなんとか持ち堪えているケイトが叫ぶ。
状況的に見たらそれが最善なのだろう。
____だけど、自分の無力のせいでこれ以上失いたくない。
「...嫌です」
「黙れ!!俺は一時的とはいえお前の特訓を任された!つまり一時的に上官だ!っつーわけでこれは上官命令だ!」
「嫌です!!」
「いい加減にしろ!」
ケイトがピターの眼前でスタングレネードを炸裂させ、一旦離脱する。それと同時にホールドトラップを自分達の方向に2つ設置した。
ケイトがアリサに向き合う。
「いいかアリサ。俺は戦術理論とかうーたらかんたら面倒だから勉強してねぇが、ここではどうすれば最善なのかなんて少し考えりゃ分かる。はっきり言って今取り乱してるお前は足止めにもならん足手まといだ」
「・・・だからって」
「お前の両親を襲ったのが
スタングレネードから解放されたピターがホールドトラップに引っかかる。
____残りのホールドトラップは一個。
「だーーっ!物分り悪ぃなぁ!いいかここはまずお前が逃げろ!その後に俺はホールドトラップでも使って逃げ延びる!分かったら返事!」
___
「・・・生きて帰ってきて下さいね?」
「あったりめーだ。俺は一時的にもお前の上官に選ばれた男だ。これくらいなら逃げれるさ。いいから逃げろ」
ホールド状態から解放されたピターが、又別のトラップに引っかかる。
____残された時間は後8秒。
「行ってこい。大丈夫さ。俺ならなんとかなるさ。多分」
「・・・はい」
「よし行け!ヘリの手配は宜しくな!饅頭とっといてくれよ!」
アリサが走り去って行く。それと同時にピターがホールド状態から解放され、アリサを追いかけようとした。
ガンッ
ピターの胴体が何かに阻まれる。
目の前にはタワーシールドを展開したケイト。
〈・・・・・?〉
「お前の相手は俺だぜー?帰ってくれてもいいけどよ」
ケイトとピターの戦いが、始まった。
「___帰還しました...」
「アリサ、ケイトはどうしたー?」
暗い様子で帰還したアリサにコウタが気楽そうに話しかける。
「それが...」
アリサは唇を噛み締めながら事実を話す。コウタの顔が真っ青に染まった。
アナグラの雰囲気も暗くなる。
「おいおい、マジかよ...」
「二人目の『死神』ってことかぁ?」
エントランス階下の一般神機使い達がひそひそと話す。因みに、彼らは一人目の『死神』はソーマと思っていた。
他の神機使い達のアリサに対する誹謗中傷によってアナグラの雰囲気が一層暗くなる。
____その時
「おいお前ら!何が『死神』だよ!ソーマもアリサも死神なんかじゃないぞ!」
エントランスにコウタの抗議する声が響いた。アリサが驚いたように顔を上げる。話していた神機使い達も話していた言葉を止めて、コウタを見た。
「___おいおい何言ってんだよ。例えば一人目の『死神』のソーマは今までであいつに関わった奴が何人も死んでる。そこの生意気な新型も下手したらリンドウも死んでたし、もう一人の新型も今回死んじまうんじゃねぇか。全て事実だぜ?」
「違う!ケイトはまだ__」
「生きてるってか?違わねぇよ。ヴァジュラの上位互換種を新人のひよっこが倒せる訳無いだろ?今頃死んでるって」
「いい加減に__」
「いいんですコウタ」
怒ろうとしたコウタをアリサの言葉が遮る。
「いいって・・・」
「いいんです。この人達が言う通り全部私のせいです。前は左腕で済んだかもしれないけど、今回はもう・・・」
「そんな・・・」
泣きそうな顔で言うアリサの言葉に、コウタが絶望の表情を見せる。
「だから、いいんです。私はケイトを殺してしまった。直接じゃないけど、結果がそうなんです。ソーマさんが『死神』かは知らないけど、私は____」
「そこまでにしとけ」
突如アリサの言葉を遮る声が発せられる。その張本人____リンドウは皆の視線が集中しているのを気にせず、真っ直ぐアリサに歩み寄った。
「リンドウさん...」
「ケイトは死んでねぇよ。あいつはマータを狭所で一人で倒せるほどの実力だ。...楽観視出来る訳じゃないが、まだなんとかやり合ってるだろ」
「そうか!ケイトは強いんだな!だったら今すぐ救出に行かないと!」
「その通りだコウタ。...アリサ、お前は懺悔するより前に今はあいつを助け出す事だけを考えろ。ヒバリさん、ケイトの生存反応は?」
「まだあります。ケイト君の近くには大型種のアラガミが一体。...これが、恐らく先程のディアウス・ピターでしょう」
「OKだ。それじゃぁ今すぐ____」
「待て!!」
今すぐ救出に向かおうとしたリンドウ達に待ったの声が掛かる。声の元は____ツバキだった。
「どういうことだ姉上。今すぐ助けに行きゃ間に合う__」
「待てと言っている。第一部隊はこれまでと変わらずアナグラ付近のアラガミ討伐に向かえ。捜索は第二部隊、第三部隊に行かせる」
「そんな...!」
「...諦めろアリサ。新人一人がいなくなっただけで第一部隊全員が捜索に行ってどうする。ケイトもそんな事は望まぬ筈だ。いいな?リンドウ」
「ちっ...」
「分かったならいい。お前らはもう任務に行け。アリサ、お前もだ」
「___はい...」
渋々と言った感じで彼らは任務に出撃して行く。
____その間に、時は進んでいると知らずに