やっぱり強かったです。帝王。
やあ。一人でピターに立ち向かう蛮勇青年ケイトです。
本来ならさっさと逃げて饅頭食べて茶飲みながらだらだらして寝たいんだけど...
ここ、「嘆きの平原」なんだよね(ーー;)
嘆きの平原の由来はあるゴットイーターが「あぁ、こんな平たい場所では逃げてアナグラに戻って饅頭を食べる事も出来ない!」って叫びながら殺された事から来てます。
あ、フラグ立った!それ俺だ!恋愛フラグじゃない!死亡フラグだ!
...やばい、現実逃避してた。
帝王ことピターさんはさっさと捕喰にでも向かえばいいのに、何故か俺に執着してくる。
「おっと」
ピターの右腕を避け、正面にバク転しながら切り刻んでいく。バスターの重さによる遠心力が無いと出来ない芸当だ。
さっきからマントを重点的に攻撃していく。ヴァジュラ系統ってマント破壊すりゃ自爆するんだよなー。
〈ギャオオオオオオオオオオ!!〉
「ぐふっ!」
突如ピターが電気の塊を生成し体の周りに回転させる。溜め動作が見られなかったから不意を付かれる形となった。
一回下がらないとな____
「____!しまった!」
下がれない。てか動けない。どうやらスタン状態となってしまったようだ。
不味いなー。運が悪い。
〈ギャオオ!〉
「ぐへっっ!!」
ピターが振り回した右腕が直撃して大きく吹っ飛ぶ。瓦礫に頭から強く突っ込んでしまい、脳にぐわんと音が鳴り響いた。
(爪が当たってたら死んでたな...)
ケイトの首筋に冷汗が垂れる。頭がくらくらして、上手く立ち上がれない。
ピターが余裕の足どりで近づいてくるのを見て、神機を支えに何とか立ち上がった。
「おらっ!」
ピターの突進をなんとかいなし、胴体の下あたりを潜り抜けながら腹部に神機を深々と突き刺し斬って行く。
ピターの腹部から血が大量に漏れ出し、ケイトに降りかかる。ピターの胴体の下を潜り抜けた時には、ケイトは血塗れになっていた。
〈ギャウ....!〉
「どうやら効いてくれたみてーだなぁ」
ピターの動きが大きく鈍り、ケイトは倒れそうになる体に鞭を奮いながら岩場を使って三角跳びの容量で上空に跳んだ。
上空でチャージクラッシュを溜め切り、ピターに叩き込む。
メリッ、という音と共に神機がマントを突き破り胴体に深々と突き刺さった。
〈グギャアアアアアアアアア!?〉
「んな!?」
痛みに絶叫するようにピターが叫びながら無我夢中び暴れる。ケイトは神機を持ったまま吹き飛んだ。
地面を何回か転がり体勢を立て直すと、目の前に口を大きく開いて跳びかかってくるピターの歯が迫る。
(ヤバい!!)
無意識に神機を持った右腕を突き出し、_______喰われた。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
右腕を喰われ腕輪による偏食因子の制御が出来なくなり、アラガミ化するのを堪えるように蹲る。今はアラガミ化しないように堪えるのが精一杯だ。
そうすればピターが襲ってこないな、と激痛を堪えながら目を開けると、目の前には白い髪の体にボロボロの衣服を纏った少女(?)がピターと対峙していた。
「・・・・・え?」
少女がピターに手を突き出すようにすると、ピターが渋々といったように立ち去って行った。
(駄目だ...。色々と聞きたいけど意識が・・・)
少女がこっちを振り向くと同時に、ケイトの意識が飛んで行った。
「腕輪からの生命反応が消失しました!それにディアウス・ピターと思われる大型種アラガミが立ち去って行きます!」
「そんな!」
エントランスにヒバリの声が響き、休んでいた第一部隊達が悲痛な声を上げた。
「クソッタレが・・・」
「まさか、ケイトが・・・」
「新入り・・・」
「ケイト君・・・」
各々が認めたくないように呟く。
腕輪からの生命反応の消失。それは即ち神機使いの死を表す。
実際は、腕輪と神機が回収されてから
因みにアリサは医務室で休んでいる。ヴァジュラを見た時の衝撃と、ケイトの行方不明が重なって精神が不安定なのだ。
「第一部隊の面々に、報告だ」
「ツバキさん・・・?」
エレベーターから降りてきたツバキが報告書(らしきもの)を持ちながら第一部隊に近付いた。
「調査隊の調査の結果、現場___嘆きの平原では白鐘ケイトの姿は見つからなかった。代わりにディアウス・ピターと推測されるアラガミの大量の血液と、白鐘ケイトの物と思われる血液が発見された」
「...居なかったのか」
「ああ。まだはっきりとは断言出来ないが、生存の可能性は極めて低いと言える」
ツバキの言葉に第一部隊の面々が下を向く。
______生存の可能性が低い。
昨日の夜まで一緒に居た存在が、もう居ないかもしれない。
「第一部隊にはこれまでと同じように広範囲の遊撃に当たって貰う。腕輪と神機の回収は第三部隊の者がする」
「・・・分かった。行こうぜ」
暗い様子のリンドウに言われ一同が黙って任務を受注して出撃して行く。
______各々が色々な思いを心に渦巻かせながら...
ケイトがMIAと認定されてから一ヶ月と一週間。捜索隊達がケイトの腕輪と神機を捜索しているが、未だ見つかって居ない。
例え生きていたとしても、それだけの間飲み食いをしていなかったら生きていられないだろう____とアナグラの者達は半ば諦めたように今は亡き人のように話す。
そんなある日の事、突如第一部隊の収集がかけられた。
「____白鐘ケイトの者と思われる腕輪信号が見つかった」
出撃ゲートの前に集合した第一部隊の面々に、ファイルを持って表れたツバキが告げた。
明らかに動揺した第一部隊を落ち着かせるようにツバキが言葉を続ける。
「場所は鎮魂の廃寺。近くには大型のヴァジュラ種と思われるアラガミの反応がある。____十中八九ケイトとアリサを襲ったディアウス・ピターだろう」
「じゃぁ今回は
「だが!」
ツバキがいきり立つコウタの言葉を遮って声を張り上げた。エントランスに居る者の視線がツバキに集中する。
「『
「...分かりました」
「今回の討伐対象はディアウス・ピター。極めて危険な相手であるので、第一部隊の全員に出撃してもらう。優先順位を間違えるなよ。第一の優先事項はディアウス・ピターの討伐だ。最近のヴァジュラ種の活動の活発化もこのアラガミのものと思われる。今回の任務を成功させたらヴァジュラ種の活動も沈静化するだろう」
「...了解だ」
ソーマの返事と共に第一部隊の者達は解散し、各々が準備を初める。
ディアウス・ピターはヴァジュラの上位互換と言ってしまえばそれまでだが、ヴァジュラとは比べ物にならない電撃の威力を持つ。又電撃の制御も格段に良く、ゴットイーターをしっかりホーミングして電撃を連続で飛ばしてくる難敵だ。
「姉上はああ言っていたが____」
三十分後、各自準備を整え神機を持って出撃ゲート前に集合した皆に、いつになく真剣なリンドウが言った。
「今回はケイトの
「ふむ。それは仮にも第一部隊の隊長であるお前が教官の命令に逆らう事を明言したという訳か?」
「あ、姉上・・・!?」
突如リンドウの後ろから表れたツバキに、リンドウが何か言う前にツバキの分厚いファイルの角が脳天にぶち当たった。
黙って頭を抱えるリンドウを尻目に、ツバキがいつもより柔らかい表情で第一部隊の面々を見渡す。
「ふん、どうせお前らが私情を挟まずに任務を遂行出来るとは思っていない。だから私情を挟むなら憎きピターをしっかりと討伐し、ケイトの敵を討って来い!」
「よっしゃー!行こうぜ皆!」
「...フン、何が来ようとブッタ斬るだけだ」
「言われたからにはしっかりと敵を討たなきゃいけないわね」
「盛り上がっている所悪いが、俺まだ頭痛いんだよね」
ツバキの激励に四者四様の返事を返す。ツバキは一人黙って俯いているアリサに近寄った。
「...アリサ」
「...」
「アリサ・イリーニチナ・アミエーラ!返事をしろ!」
「はいぃ!?」
本名をツバキに叫ばれたアリサが慌てたように返事(?)をする。
「今回の任務では!両親及び白鐘ケイトの敵を討って来い!」
「はい!」
大声に驚いたアリサがこれまた大声で返事をする。それを周囲のみんながその時のツバキはどこぞの熱血選手松岡○造さんに雰囲気がそっくりであったという。
____モット、モットアツクナレヨ!!
「____っつ!んあ?」
右腕に走る軽い痛みに目を覚ましたら、目の前から白い「何か」が自分から逃げて行ったのが見えた。
自分が寝ていた場所を見たら無人の屋内のようだった。気温から察するにここは鎮魂の廃寺のどこかの家屋だろう。
「俺生きてたのか・・・」
記憶があっても無くても俺は死にかけだな、と苦笑いする。
何故自分が生きているのか。恐らく原因はあの時ケイトとディアウス・ピターとの間に飛び込んできた白い少女だろう。
ピターを倒してくれたのかもしれない。
(いや、あの時少女は神機持ってなかったし、ピターは自分から帰っていったような...?)
捕喰要求に突き動かされているアラガミを神機を使わずに追い払う事が出来る_____
「アラガミ、か・・・」
面倒な存在に助けられたものだ。
講義は寝てたからよく分からんが、オラクル細胞が人間だけ捕喰しまくったら人型アラガミになるのだろうか?
「ぐぅ!?ぐわあああああああああ!!」
そこまで思考を巡らせたら突如右腕に激痛が走る。腕輪ごと喰われたのだ。痛くない筈がないし、後数十分でもしたらアラガミ化してしまうだろう。
痛みに悶えているとさっきケイトから逃げて行った白い何かが慌てて走ってくるのが見えた。予想通り、ピターから救ってくれたであろう少女(アラガミ?)であった。
アラガミの少女が半ばアラガミ化しているケイトの右腕に手を被せるようにする。
何をするんだろう、と思っていたら右腕の痛みがどんどん引いて行き、少女が手を離した時には青白く光る物が右腕に埋め込まれて、痛みは無くなっていた。
(予想通り、アラガミか・・・)
講義中寝てても分かるもんだ、と再び苦笑する。さっきの右腕の痛みで心が病んだのだろうか。苦笑ばっかりしている気がする。
アラガミの少女はケイトの目の前にちょこんと座り込み、黄色く大きい目でケイトを見つめている。
「なぁー、お前」
「・・・?」
ケイトが話しかけてみるが分かっていないようで、「?」という表情をされた。
言葉は知らないんだろうな、と予測を立ててみる。
「言葉、話せるか?」
「コトバ・・・?」
少女から発せられた声は不思議な声であった。ただの少女の声じゃないし、アラガミの声と言われても違う気がする。
ここは言葉を教えておくか、と何と無く思う。
人間の姿でもアラガミだと分かったら殺されてしまうだろう。だったら、アラガミだと分からないように言葉を話せればいい。
どうせすることがないのだ。暇潰しにはなるだろう。
まず自分を指差して、「ケイト」と言ってみる。
「ケイト・・・?」
目の前のアラガミの少女は不思議そうに首を傾げた後、ぱっと嬉しそうに笑ってケイトを指差して叫んだ。
「ケイト!!」
愉しいな。ちょっと、張り切って教えるか。