GOD EATER 〜暗殺者の贖罪〜   作:KETAKETA

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面倒事17:連れていかれた少女

「うーーーーー」

「くそったれくそったれくそったれくそったれぇ...」

 

アナグラの某ツンデレ青年の口癖を連呼しながらケイトは苛立っていた。

隣ではアラガミの少女が不満そうに地団駄を踏みながら唸っている。

手を出したら噛まれそうだ。

 

(それより・・・)

「___なんでアラガミが全然居ないんだよ!?」

「おなかスイター!!」

 

見た目10歳程度の少女の隣でギャーギャー騒いでいる19歳の青年。うわ情けねぇ。

とは言っても隣の少女も騒いでいるからおあいこだ。

 

「いやマジで腹減った...」

 

とっくのとうに慣れてしまって、俺らの主食はアラガミだ。「人間失格だ」とか騒ぐなら堕ちた人(フォールマン)にちゃんとした飯持って来いってんだ。

そしてここ一帯にはいつもコンゴウやボルグ・カムランが彷徨(うろつ)いているので、そいつらを狩っては食っている。

しかし何故かここ最近アラガミが少ししか居ない。居るのはオウガテイル程度で、しかも襲われたらたまったものじゃないから毎回この少女に食べさせる羽目となっている。

だから俺は今慢性的な空腹。そしてこの少女も空腹。

 

「弱ったな...」

(ここ最近この一帯を中心に戦力投入してるのかなぁ...)

 

これでもまだ食べ盛り。(アラガミを食べているが)3日間満足に物を食べられなかったら腹が減る。

特に隣のアラガミの少女は驚異的な胃袋の持主で、沢山アラガミを与えないと自分が襲われて食べられかねない。

さてさてどうしたものかとアラガミをもう一度探し始める。

____次の瞬間

 

「___討伐完了っと!」

「___簡単だったな...」

「(___!?)」

 

今居る所から遠くの場所から聞こえる声に慌てて身を潜める。

見つかったら不味い。そりゃ見つかりそうになったら気絶させればいいのだが、遭遇の危険性は避けるに越した事は無い。

ましてや自分はもう「KIA(戦死)」に認定されているだろう。表面上の死人は出しゃばらないに越した事は無い。

それより___

 

(さっきの声、コウタとリンドウさん!?)

 

コウタは兎も角、リンドウさんを相手に姿を見られずに気絶させるのは不可能に近い。

姿を隠しながら耳を澄ませるとアリサの声が聞こえた。ソーマやサクヤの声も薄々と聞こえる。

 

(ちょっと会いたい気もするけどな・・・)

「自分は『堕ちた人(フォールマン)』だし___」

「___やったー!たべものー!」

「んな!?」

 

懐かしさを感じ物思いに耽って居たらアラガミの少女が向こうに行ってしまった。

 

(しまった!)

 

足音を鳴らさず見つからないように、けれど少女を見失なわないようにケイトは少女を追いかけて行った。

 

 

 

Side:アリサ

 

 

「博士・・・何でここに?」

 

当然の疑問がすっと口から出た。

あれから事件から立ち直ったアリサは、通常通り任務をこなしていた。たまにリンドウさんに「無理するな」と言われるが、出来るだけ無理はしないつもりだ。

そしてここ最近素材集めの為か、サカキ博士の頼みで鎮魂の廃寺一帯のアラガミを集中的に討伐していた。

久し振りのハードスケジュールだった、と思う。

そして今回もう定例となった鎮魂の廃寺に到着し、リンドウさんとサクヤさん、コウタの四人でシユウを討伐した。

楽勝に倒せたシユウを捕喰しようと神機を捕喰形態(プレデターフォーム)に変形させたら、サカキ博士が突然ソーマを引き連れてここに来たのだ。

 

「説明は後だ。とにかくそのアラガミをそのままにして、ちょっとこっちに来てくれるかな?」

 

サカキの言葉に皆が渋々と頷き、サカキの居る所に集まった。

ソーマが連れて来た理由をサカキに訪ねるが、サカキは答えない。どうやらソーマも理由を知らないらしい。

そこで息を潜めてじっと待つ。

サカキ博士が懐から懐中時計を取り出してちらっと眺めた。月がもう頭上に登っている。

 

「___来たよ!!」

 

その静寂は興奮したようなサカキの歓声に近い声により中断した。

皆が視線を倒したシユウに向ける。

 

「...人?」

 

何処から現れたのかシユウの残骸に推定10歳程度の少女が歩み寄っていた。そしてシユウの残骸を食べ始める。

 

「...ヒィッ!?食べた!?」

 

それを見たコウタが思わず声を上げた。サクヤやソーマも何も言ってないが表情は硬い。

するとその少女がコウタの声に反応しこちらに振り返った。

 

「「「「「「・・・」」」」」」

 

その場に居る全員が息を飲む。そしてその少女は、

 

「コンバンワ!!」

 

と礼儀良く礼を此方にした。

 

 

 

迂闊だった、としか言いようがない。

ケイトは大きく舌打ちした。

気配を殺す事は得意だから見つかりはしなかったが、突然の危機に慌て過ぎて近くの気配を探す事を怠っていた。

 

(まさかあのクソマッドサイエンティストの謀略とはね・・・)

 

アラガミの少女が研究対象として欲しいだけで人(アラガミ?)を極限の空腹状態にするとはなんて卑劣なんだ。

しかもあのクソマッドサイエンティストは「もう一つは居ないみたいだね・・・」と言っていた事を見るにケイトの存在は気付かれている。まだまだ炙り出しを続けるつもりだろう。

だから恐らくここのアラガミはケイトを見つけるまで狩られ続ける。食料確保も難しくなるだろうから、生活拠点を移した方がいいかもしれない。

思い立ったが吉日。早速荷物を纏めて____としたいところだが生憎荷物はこの体一つだ。

 

「鉄塔の森辺りがいいなぁ」

 

歩くのは面倒だが、取り敢えず随分長く居た鎮魂の廃寺を後にした。

 

 

 

「「「「ええええぇぇぇぇ!?」」」」

「なんだと...!?」

 

場所は変わってサカキのラボラトリ。ソーマがサカキにこの少女について説明を求めた所、帰ってきた答えは「この少女はアラガミだ」ということだった。

「アラガミ」という言葉を聞いた瞬間に皆が少女から飛び退く。

 

「___今、何て...!?」

 

信じられないようにサクヤがサカキに聞く。それはそうだ。人間型のアラガミなんて聞いた事が無い。

 

「ふむ、何度でも言おう。これはアラガミだよ」

「えっ...ちょっ...危ない!アリサ俺を盾にしないで!」

 

サカキがサラッと口にした言葉に反応して少女から皆が更に距離を取る。

アリサは神機を持っていない時のアラガミに対しての恐怖により、思わず近くのコウタを引き寄せ盾にした。

 

「まぁ、落ち着きなよ。これは君達を捕喰したりはしない。...知っての通り、アラガミには偏食という特性がある」

「アラガミが個体別に独自に持っている捕喰の傾向...私達の神機にも応用されている特性ですね」

「そう。まぁ君達神機使いにとっては常識だね」

 

神機というのも一応はアラガミで、生身の人間が使ったら神機に喰われてしまう。

だから神機の使用者は神機が「食べたく無い」と思わせるような細胞___偏食因子なるものを定期的に摂取しなければならない。

そして体内に取り込む偏食因子に適合した者が、神機使い(ゴッドイーター)になれるのだ。

このレベルの知識は神機使い(ゴッドイーター)として持っているのは当然である。

 

「...知ってた?」

「...当たり前だ」

 

_____一人例外が居るが。

 

「そしてこの子の偏食の傾向は自分よりもより高次な存在に向けられているみたいなんだ。つまり、我々は食物の範疇に入っていないんだよ。...まぁ、本当に空腹の時は人間であろうと何であろうと構わずガブリ!...だろうけどね」

「「「「(ほっ・・・)」」」」

 

少女から距離をとっていた者達がホッとしたように警戒を解く。

ソーマはアラガミであることに抵抗感があるようで、未だに警戒を緩めず少女から距離をとっている。

 

「はいはーい!博士!質問!」

「はいコウタ君」

「さっきからこの子が言っている『コンバンワ!』とか『ヨロシク!』とかってなんですか?」

 

コウタの言う通り、鎮魂の廃寺からアナグラに連れてくる際にこの少女は『コンバンワ!』や『ヨロシク!』と言い、意味が分かってるのか分かってないのか頭を下げている。

 

「・・・ふむ。まぁ恐らく他の神機使い達が話しているのを覚えたりしたんじゃないかな?まぁどちらにしても、この子の学習能力はすこぶる高いようだね」

 

そこからのサカキの話を纏めると、このアラガミの少女はオラクル細胞の「取り敢えずの進化」の袋小路に迷い込んだような存在で、脳は人間の脳に酷似しているらしい。

アリサやサクヤ達は理解出来ているが、リンドウは冷や汗を垂らしながらうんうんとひたすら頷いているだけで、コウタはもう脳内がショートを起こしてしまっているようで体から煙が出ている。

 

「最後に、この件は私と第一部隊の君達だけの秘密にしておいてほしい...いいね?」

「だけどよ...姉上と支部長には報告しねぇと...」

 

サカキの言葉に日頃不真面目なリンドウすら思わず口を挟む。

サカキはその言葉ににやりと笑うと、言葉を続けた。

 

「つまりリンドウくん、...君は、天下に名だたる人類の守護者であるゴッドイーターがその最前線であるアナグラに秘密裏にアラガミを連れ込んだと、そう報告するつもりなんだね?」

「_____!...けど、一体何の為に?」

「言っただろう、これは非常に興味深い研究のサンプルなんだ!どういう進化の果てに神を名乗るに至ったのか、どういう進化をしてきたのか、とても興味深い。我々は共犯なんだ!それを忘れないでほしいね」

 

してやられた、とリンドウは臍を噛む。自分は第一部隊の隊長なのに、第一部隊の隊員を巻き込んでしまった。

 

「(君だって、今している調査に、余計な邪魔を入れられたくはないだろう?)」

「(_________!?)」

 

リンドウに詰め寄り耳元で囁かれたサカキの言葉にリンドウは動揺を隠せなかった。

 

(なんでサカキのおっさんが、本部からの要請を知ってやがる!?)

 

黙ったリンドウを満足そうに眺めてからサカキはリンドウから離れる。

 

「仲良く頼むよ...ソーマ、君もね」

「____ふざけるな!!人間の姿をしていようが化け物は化け物だ...」

 

サカキからソーマに向けられた言葉にソーマが反応し、普段から物静かな彼から予測がつかないような静音で怒鳴る。

怒鳴り声によりシン___と静かになったラボラトリから、ソーマは顔を俯かせて出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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