神機の精神体との邂逅という貴重な体験をしてからも、アリサはいつもと変わらない毎日を過ごしていた。
そんなある日のことである。アリサは任務を終わらせ、少し体を休ませようと自室に向かっていた。カードキーを懐から取り出し、扉の鍵を開けて部屋の中に入ると...
〈〈〈こんちわー〉〉〉
「___人の自室に勝手に入らないでください!!」
...何故か三人の人間が部屋の中で呑気にお茶を飲んでいた。
人間というと少し語弊がある。
解ったと思うが、ライトと美琴ともう一人である。
「...美琴さん、貴方ってそんな人の自室に不法侵入する様な性格でしたっけ...?」
〈巫女にもたまには
ニコッ、と笑う美琴に対して、オヨヨ、と泣き崩れるアリサ。そこには対照的な構図が出来上がっていた。
「___それより、貴方誰です?」
ライトと美琴ともう一人の内、もう一人の方に聞く。
黒色の癖っ毛に、橙色の波紋状の眼。女に見えるが、男にも見えなくも無い中性的な顔立ちだ。
〈レンと言います〉
「あぁ、リンドウさんの」
「レン」という名前で思い出す。ライトと美琴が言っていたリンドウの神機の精神体だ。
どうやら精神体の三人組がアリサの部屋を会合場所としているようだ。
「...それで、なんで
〈あぁ、お前の想い人...コホン、ケイトについて伝えたい事があってな〉
「___お、お、想い、人ってわわわ、訳では___///」
〈〈顔真っ赤にしてしどろもどろになって、何回も噛みながら言ってる人の言葉なんて信じ様も無いですね〉〉
「美琴さん!?レンさんも!?」
美琴とレンにダメ出しされ、羞恥で顔を真っ赤にしキャーと叫びながらアリサは何故かライトに掴みかかる。ライトはもうグロッキー状態だ。
〈...う...っぷ...〉
〈___流石にやめてあげて下さい〉
「......ちっ...分かりました...」
レンと美琴に宥められて、ようやくアリサはライトの首から手を離した。
〈げほっげほっ...。___で、俺はお前に聞きたいことがある〉
「ケイトについて何か教えてくれるんじゃないんですか?」
〈まぁ待て。...俺が聞きたいのは、
___アリサの表情が、変わった。
Side:ケイト
「予想外です。予想外犬です」
いやもう何言ってんだついにトチ狂ったか、と内心で自分に突っ込みを入れる。
あれから取り敢えず贖罪の街にLet's goって感じで嘆きの平原から出発して、どうせまた面倒な別のところに着くんだろ、と嘆いてたら...
贖罪の街、着きました。
いや初めてだよ目的の場所に着いたの。俺涙出ちゃいそう。
「久し振りの人口建造物ウハウハ」
只今教会の隠し部屋みたいな所で寝そべって食事の最中だ。人口の建造物ってやっぱり温かく感じる。
「頂きまーす」
先程ちゃっちゃと狩ってきたザイゴートと、その堕天種(マグマ)のコアを口に含む。ザイゴート堕天種(電気)は要らん。油揚げ味とかなんだよ。塩豆大福の味を期待した俺はなんなんだよ。
(これからは暫くここに住むか…)
これ以上無い程の好物件だしな、と内心で独りごちる。人間からもアラガミからも見つかりにくい人口の隠し部屋だ。近くにアラガミもよく彷徨いているし、パーフェクトである。
「さてと______!?」
突如今まで感じなかった気配を後ろに3つ感じて、食事を中断し慌てて飛び退いた。飛び退きながらも、食いかけのザイゴート堕天種(マグマ)のコアは左手で掴んでおく。
右腕を
「(おかしいな...。いきなり気配が表れるなんて。この3人何者?)」
〈___
〈___人を驚かせるのはどうかと思いますよ、ライト〉
〈いいんだよ美琴。どうせ俺の持ち主なんだから〉
〈それ説明に成って無いよ
〈うるせぇレン〉
「いやお前ら誰だし」
気付かない間に自分の背後をとっていた三人___ライトと美琴とレンとやらに警戒しながら聞く。神機を持っていないから
〈なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け___〉
〈〈私達は神機の精神体です〉〉
「説明ぶっ飛ばし過ぎだって...」
〈世界の破壊を防ぐため、世界の平和を守るため___〉
〈〈うるさいですからライトは黙ってて下さい〉〉
「
(てか、ライトって奴俺に激似してね...?)
よく見ると
「___てか、『神機の精神体』って何?いやそもそもあんたら誰?」
〈ライトだ。最悪な事に俺はお前の神機の精神体だ〉
〈美琴と申します。アリサさんの神機の精神体です〉
〈レンです。僕はリンドウの神機の精神体です〉
「うん分かった。俺はお前等の事が永遠に理解出来ないことが分かった。...で、『神機の精神体』って何だよ?」
〈それは俺が答えよう!〉
先程の落ち込み様が嘘のように元気良く立ち上がるライト。
だが___
〈私が答えさせて頂きます。
〈ライトは黙っててね〉
〈くそぅ...〉
美琴とレンに再び黙殺され、呆気なく再び膝を折るライト。自分に瓜二つだから、見ててどうしても物悲しく感じる。
〈私達は神機の制御コア___『アーティフィシャルCNS』において形成された擬似人格です〉
「(アーティフィシャルCNS?くそ、面倒だからってサカキ博士の講義聞いてなかったのが仇になったのか...)…へ、へぇ。で?」
〈そうか、お前講義聞いてなかったからな。アーティフィシャルCNSなんて分かる筈が無いか〉
「___ばれた!?」
呆れた様にケイトに対して言うライトの言葉に、ケイトが驚く。
〈なんだかんだ言って俺等は、
「…まぁ、別にどうでもいいや。めんどいし。...あ、質問。お前等は他の奴から見えんのか?お前等、精神体という如何にも姿見えなさそうな奴等じゃん」
〈通常の状態では私達の姿は、
「ふぅん。要するに自由自在って訳か」
〈まぁそういう事ですね〉
ふむ、とザイゴート堕天種(マグマ)のコアを再び齧りながら情報を整理する。この自分にそっくりなライトという青年は俺の神機で、白い巫女服を纏っている美琴という女性がアリサの神機。それで性別不明のレンという奴がリンドウさんの神機。
...まぁ、あれだ。
「それで、お前等何をしに来たの?」
〈アリサから頼まれた事があってな〉
どうやらこの三人は実際アリサと面識が有るようだ。アリサは元気だろうか。
「___頼まれたこと?」
〈あぁ、『ケイトの記憶を戻してあげて下さい』だってよ〉
「___!...成る程ねぇ...」
確かにライトはケイトの失った記憶を知っているだろう。アリサがライトにそれを頼んだのは妥当とも言える。
「...って、えぇぇ!?俺が生きてる事アリサにバレてんの!?もしやお前が教えた!?」
〈俺はなんも言ってねぇよ。お前の身体から落ちた黒い羽からバレたみたいだ。つまりアナグラの全員がお前が死んでない事を知ってる〉
「迂闊だった...」
おぉぉ、とケイトは頭を抱える。自分が死んだ事がバレたら捜索隊もまた増えるだろう。そう簡単に見つかりはしないが。
(まぁここはそうそうバレないか)
流石に教会の何の為かは分からない隠し部屋までは調べない筈だ。いざとなったら再び気絶させて逃亡すればいい。
「___まぁいいや。...で、お前は俺の記憶を元に戻す事は出来んの?」
〈簡単だな。感応現象を使えば出来る。...だが、結構グロいぞ。赤い夢を見ることになるが、いいか?〉
「俺は昔に何やってたんだよ...」
〈
「
〈御名答。その通りだ。___ここからは感応現象で見せるぞ〉
そう言うや否や、ライトはケイトの右腕に触れた。
頭の中に、数々の映像と音声が流れ込んでくる。
『___《チェックメイト》で、
虚ろな目を向ける
場面が切り替わって行く。
『___や、止めろぉ!お、俺が何をしたって言うんだ!』
飛び散る鮮血。叫ぶ
更に場面が切り替わって行く。
『___暇だな』
繋がれた両手。閉じ込められた
そして
_________目の前が真っ暗になる_________
「___いやもう
ライトがケイトの腕を離したと同時に、ケイトは現在に戻って来た。急激な失った記憶の流入で、若干頭が痛い。
〈てめぇは悪くないのに、肝心のてめぇが洗脳されてた事を知らないからなぁ...。なぁ『紅い風』?〉
「やめいその呼び名。
まだ痛む頭を抑えながら、ライトを小突く。「紅い風」。風と共にその場を
そして自分の神機が重装備な理由も良く分かった。短剣を握り軽装備で
〈で、お前の記憶は戻ったのか?〉
「あぁ
感慨深気に呟く。人類の守護者である
今は洗脳されていた事を知っているからまだ己を許せるが、それを知らなかった時の自分はだったのだろう。気付かない間に人を殺していた自分に対する嫌悪感、
「よく自殺して無かったよな俺...」
〈そこは俺も激しく同意だ。まぁ自殺するより、命を懸けて人を守る方が有益な事だと思ったんだろうな〉
「成る程ねぇ...」
〈...で、お前は記憶を思い出した訳だが、あんな自分を許せるか?〉
「うぅん...」
ライトの問いに考え込む。面倒だけど避けられない命題だ。今の内に答えを出した方がいいだろう。
___うん、許せるかと言ったら
「...自分は、許せないね」
〈だろうな〉
「___へ?」
「だろうな」とあっけらかんと言い切ったライトに驚く。テンプレ的に、ここでライトが何か言って来ると思ったんだけど。
___ああそうか。今俺の前に居るのは俺と同じ姿で、俺の内心を読み取る事が出来る性格が捻くれた
〈てめぇ...〉
「(うん威圧感が怖い。無視ろう)___で、これからどう動くかな」
〈さり気なく無視したお前を原型を留めない位叩きのめしたいが、確かにどうするつもりだ?己の罪を知り尚、のうのうと生きていくつもりは無いだろ〉
「うーん...まずは」
服に積もった埃を手でパンパン、払いながら立ち上がる。
「___まずは、
ーーーノルンにおける『白鐘ケイト』の検索結果ーーー
類稀なる気配察知能力を持ち、隠密行動を得意とする事から、集団においての索敵・奇襲行動に優れる。
ミッション「蒼穹の月」において、狭所で「プリティヴィ・マータ」と戦闘し、左腕を食い千切られ負傷。
又復帰後、ミッション「ランページ」で討伐対象「クアドリガ」の討伐直後「ディアウス・ピター」と遭遇。アリサ・イリーニチナ・アミエーラ狙撃兵を逃がすため囮となる。
その後腕輪と神機が発見され一度「
ーーー此処から先は、フェンリル本部外秘とするーーー
白鐘ケイト(15)
ロシア支部周辺にて、ロシア支部所属の
短剣を持ち
逮捕直後行われた精神鑑定から何らかにより深い催眠を掛けられていた事が判明。4年後新型神機に適合した為解放される。
後半から美琴とレンが空気になっている件について(笑)
いきなりですが、精神体達の大まかな台詞の見分け方を説明します。
ライト=男口調。てか実際男だけどね。一人称が「俺」
美琴=レンとは区別付きにくいかも。違いは絶対に台詞から敬語が抜けない事と、精神体同士以外の名前の後に「君」or「さん」を付ける事。一人称が「私」
レン=敬語が一般的だけどたまに素が出る。名前に「君」or「さん」を付けない。一人称が「僕」
分かりにくいでしょうが、頑張って読み取って下さい