(今回来た新人君、何か訳アリならしいわね)
橘サクヤは、神機を持って隣に立つ新人のケイトを見て内心で呟いた。
今日は嘆きの平原でサクヤがケイトを担当する実地演習だ。大抵近接型神機使いは遠距離型神機使いとの連携を学ぶ為、アナグラで有数の実力を持つ遠距離型神機使いであるサクヤと実地演習を行う。
昨日の夜_____サクヤはケイトと実地訓練したリンドウからケイトについて話を聞いていた。
『...珍しいわね。貴方が新人の事をそこまで気にするなんて』
『まぁな。やっぱり新型ってのもあるが、新入り___ケイトは少し訳アリなみたいなんだ』
『訳アリ?どうゆうこと?』
『今日の実地演習でな...』
(緊張している筈の実地訓練で、『死ぬな』と言われてそれを拒否をして、『アラガミに無惨に喰い殺される』って言うなんて...)
「...確かに何かあるみたいね」
「___?どうしましたサクヤさん」
おかしな様子のサクヤを不思議に思ったケイトに声を掛けられ、「おっといけない」と慌てて我に帰った。
ただケイトを見るだけでは何も無い普通(面倒臭がり家だが)の新人だ。だがサクヤの衛生兵としての勘が告げている。「こいつは何かあるぞ」と。
「___いえ、ただの考え事よ。それでは、ブリーフィングを始めるわ。今回はコクーンメイデンの討伐。前衛はあなたで私は後方からバックアップ。必ず後方支援の届く範囲で動く事。これは旧型式遠距離型神機使いとの戦術の基本ね。」
「...へーい。だけどたかが
「ブッ!...いいえ、相手がたかが
アラガミを薩摩芋変異種と言うぐらいだ。
「___へぇー。まぁどうでもいいや、面倒だし。
「...敬語はさっさとかなぐり捨てちゃうのねあなた。別に敬語使えって言ってる訳じゃないけど」
「うん。まぁ一応敬意は払ってますけどね。...敬語なんて面倒だし」
「無駄話は終わりにして、さっさと始めるわよ」
「りょーかい。では行きますか!」
飛んでくるレーザーや弾丸の間を縫うようにして、ケイトはコクーンメイデンに向かって駆けた。
目の前まで迫った敵を倒すためにコクーンメイデンは針を体から放出させるが、ケイトはしゃがみ紙一重でそれを避け、神機を大きく振りコクーンメイデンを真っ二つにする。
「...ちっ」
紙一重過ぎて避け切れ無かったか、と針にほんの少しだけ抉られた背中をさする。
やはり短剣の方が使いやすい。...使いたくは無いが。
神機を振った勢いで大きく一回転して捕喰し、コアを抜き取ったのを確認した後もう一体のコクーンメイデンへと突っ込む。再びコクーンメイデンは全方位へと針を飛ばそうとするが、サクヤのレーザーで急所を貫かれダウンした。
「とどめっと!」
チャージクラッシュをダウンしたコクーンメイデンにお見舞いし、コクーンメイデンの胴体を一刀両断する。
「お疲れ!新人としては素晴らしい動きだったわよ」
「いやー、サクヤさんの射撃のお陰様で」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。あ、もうヘリが到着したみたいね」
そして二人は迎えのヘリに乗り込み、帰還した。
「どうだったサクヤ、新入りは。」
「ほぼ完璧だったわよ。バスターを持っているのに死角を付いた素早いステップ。ただ....」
「ただ?」
「あの子はバスター・タワーシールド・ブラストっていった感じで重い神機パーツばかりを使っているでしょ?けど、あの子にはショート・バックラーの方が合うと思うの」
「ん?どういうことだ?今とはほぼ正反対じゃねぇか」
「バスターを振り回す筋肉はあり得ない程持ってる。けど、折角の身のこなしが重い神機のせいでだいぶ無駄になってるわ。...それよりリンドウ。コウタ君、だっけ____はどうだった?」
「まだ危なっかしい所はあるが、なかなか上手いな。後々伸びるだろうな。表裏無く開けっぴろげでいい奴だ」
「ふふ、そうね。後、明日は___」
「ああ、ソーマとエリックとの実地演習だ。何も起きなきゃいいんだがなぁ」
リンドウが切実な表情で呟く。
しかし現実は、リンドウの望みのように進まないのであった___。
本日は鉄塔の森。視界の遮断物が多い為、アラガミの分断がし易い。
しかし中央の池(?)からグボログボロなどのアラガミが跳び出して奇襲して来たりするから、なかなか怖かったりする。
「しかし遅刻し過ぎたか...。今回の同行者が居ないな」
30分間遅刻してしまったのだ。もう待ちきれず倒してしまったのかもしれない。
だったらここに来るだけ無駄足であったという事だが、
気配を探って同行者を探して見る。微かに感じた話し声と舌打ち(←誰に対してかは考えない事にした)を頼りに同行者に近付く。
「...遅い!!」
「遅刻とは華麗じゃないね」
「すいやせん」
何とか合流した。取り敢えず今回の同行者であるフードを被った青年とふざけた格好をした青年に謝っておく。
「まぁそれより...君が例の新人君かい?(相当な遅刻魔として)噂は聞いているよ。僕はエリック。エリック・デア=フォーゲルヴァイデ」
「噂」という言葉に隠れた言葉は聞こえなかった事にしよう。I cant hear it.
話をしながら何度も髪を掻き上げているこの青年___エリックは、相当のナルシストなのだろう。髪の毛の色は自毛の様だが。
そしてフードを被った青年はソーマと言うらしく、「次遅刻したら殺す」と神機を向けられた。
___だから意識を目の前の二人に集中させていたせいか、その瞬間は突然来た。
「___君もせいぜい僕を見習って、華「...くそナルシスト!上だ!」...え?」
エリックの頭上から襲い掛かって来た存在に気付き、エリックの言葉を無理矢理遮った。
髪を掻き上げる体勢のまま
〈ギャオオオオオォォ!!〉
「ぐああっ...!!」
「迎えうつ」と言うものの、エリックを突き飛ばした直後だったので神機を構える暇もなく、オウガテイルに腹を喰い千切られた。あのままエリックが突っ立っていたら頭がもげていただろう。
腹に走る激痛に薄れゆく意識の中、最後に聞こえたのは_____
「___ぼ、僕は『くそナルシスト』なんていう華麗じゃない名前じゃないよ...」
____という状況を全く理解していないエリックの調子外れな声であった。
Side:ソーマ
「クソッタレが...!」
自分の神機を振り回しながら、ソーマは悪態を付いた。
あの時自分がもっとオウガテイルの存在に早く気付いていれば、こんな事にはならなかった。
そう思うと、「何の為の化け物の力だ」と自分を罵りたくなる。
「___エリック!そこの新入りを運んで救援を呼べ!このオウガテイルは俺が殺る!」
「わ、分かった!よしここは僕が華麗に新入り君を運んでみs」
「さっさと行け!」
「分かったって!」
ったくあの華麗野郎は...
目の前のオウガテイルを斬り伏せ、チャージクラッシュでトドメをさす。
(もう
アラガミの血に塗れた神機を肩に担ぎながら、ソーマは新入り___ケイトの無事を願った。
「こ、こは...........?」
目を覚ましたら病室の薄汚れた白い天井が写る。どうやら自分は存命してしまったようだ。
「____っつ!」
体を起こそうとしたが、起こせなかい。たとえゴットイーターであろうともアラガミに腹を食いちぎられたら仕方が無いのか。
「うぅん...」
ベットの隣の物体がもぞもぞ動く。コウタだ。ケイトが起きるのを待ってるうちに寝てしまったらしい。
「おーい」
へんじはないただのしかばねのようだ。
「___勝手に殺すな!」
あ、起きた。
「.....は!起きたんだなケイト!良かった〜心配したんだぞ!」
「えっ...と、誰だっけ?10000fcくれなかったから覚えてないや...」
「こんな時まで忘れなくていいよ!コウタだよ!コウタ!」
「100000fc」
「1ケタ増えてるよね!?」
いややはりコウタは弄りがいがある。まさに弄られキャラ。
「天性のマゾだな」
「違うからね!?」
「___ほうほう元気そうな怪我人だな」
「(ビクゥ!)」
コウタの肩が跳ねる。ケイトも恐る恐る病室の入り口を見てみると___
そこには拳を握り締めた
「「ギャーーーーーーーーーーーーー!!」」
Side:コウタ
「「ごめんなさい」」
頭にタンコブを作って頭を下げる俺とケイト。実際ケイトは起きられないから目礼しか出来ない。
(ねぇなんで俺も?俺はただ心配して見てただけなのに...)
当然の疑問が台所のイニシャルGのように湧き上がる。しかしその疑問はツバキさんの前で口に出さない。ここ二週間で得た経験則だ。
だから、
「(おいケイト!なんで俺もなんだよ!)」
「(いいじゃねぇかバカラリーオタク!)」
「(違う!バガラリーだ!!)」
「私に隠れて秘密会議か...」
ケイトとこそこそ話していたらゴッドイーターの聴覚を無駄に活用されて、ツバキに気付かれてしまった。
「「(=゚ω゚)イヤコレニハワケガ」」
「問答無用!」
ゴン!!
病室に再び音が鳴り響いた。
Side:ソーマ
「ソーマ、新型の新入りの事で少し話がある。第一部隊隊長からの命令だ」
そう言われて渋々リンドウの部屋に行ったら、案の定サクヤも居た。
「ソーマ、ケイトについて何か違和感を感じなかったか?」
リンドウの問いに、どう答えればいいかが分からなくなる。
自分からしたら違和感など幾らでもある。「何故あんなに遅刻出来るのか」や「何故配属から二週間で(遅刻魔として)噂が流れるのか」など。
だがリンドウ達が求めている答えは違うのだろう。
「...俺には関係無い」
「残念だったわね。ソーマ。一緒にミッションに行ったんだから関係無い筈が無いわ」
「チッ...。クソッタレが...」
確かにそうだ。同行したのに関係無いは通じない。
「___
ソーマは仕方無く
人は誰だって自分の体を差し出すのは一瞬は躊躇う。それは人間として当然の防衛本能で、別に勇敢だったら躊躇わ無い訳では無い。
それを躊躇わ無いのは自分が死ぬ事を望んでいる者しか無い。
「
「色々と根が深そうね」
話している2人を尻目に、ソーマは物思いに耽る。
「...俺は
「
オウガテイルに腹を喰われてから、1日で平気に動けるようになる俺ってだいぶ
病室の医師が「あり得ない」と騒いでいたが、多分その医師は新人なのだろう。
「面倒くせぇ...」
もう色々と。とにかく色々と面倒臭い。
ツバキさんに拳骨を脳天に数回落とされて、一回昇天しかけた。やっぱり、
そしてその後
「
万屋で買った饅頭を口に頬張りながら、熱々のお茶を飲む。そのほんわかした雰囲気にそぐわない
「整理整頓は俺の敵___っと」
来てから一週間でケイトの自室は茶袋や団子の竹串や饅頭の包みで溢れかえって居た。放って置けばイニシャルGがどんどん湧いて来るだろう。
だがまあ大丈夫だ。イニシャルGが湧けばコウタの部屋にでも逃げればいい。
「
死ねば楽になるのかなー