「ケイト...何をしにきた?」
リンドウは自分の盾となっているケイトに声を掛けた。
あの時他の奴らは逃がしたと思い、自分は無事に戻れないと直感で分かっていても安心してこのアラガミと戦えた。
「俺はお前らにアナグラに戻れと言っただろ!?何でお前がここに来てい_____ぬわっ!?」
リンドウがケイトに逃げ無かった事を問い詰めようとした瞬間、体が浮遊感に包まれた。
何があったのか分からない内に、どこかの地面に落下し、背中に鈍い痛みが走る。
どうやら、ケイトが
「...おい
ドゥゥゥゥゥン
ケイトが中から撃ったモルターが通路の天井に直撃し、瓦礫の山がさらに高くなる。
これではもうリンドウは中に入れない。その代わり
「___リンドウさん!あんたこそアナグラに戻れ!あんたは生きるべき存在だ!」
瓦礫の中から声が聞こえる。数十分前の状況の立場を入れ替えたようであった。
リンドウからすると、第一部隊隊長として部下を守る為に戦いたい。だが、この瓦礫の高さであったら入れないであろう。
しかし、ケイトは先程瓦礫の山を飛び越えて来たのだ。もしかしたら___上手く逃げられるかもしれない。
希望的観測だと言うのは分かっている。だが、そうするしか現状はどうしようも無かった。
「.........くそっ!必ず戻る!絶対に生きていろよ!」
「___りょーかい、善処しますよっと!」
教会を脱出し、リンドウは走りながら帰投ヘリを呼ぶ。
(自分のせいで、俺のせいで
「______くそォォォォォォォォォ!」
リンドウは自分の無力を呪って吠えた...。
ホールド状態から解放され、臨戦態勢になる女ヴァジュラに警戒しながら、ケイトは呟く。
「何をしに来たかねぇ、強いて言うなら...」
〈ギャォォォォォォ!〉
大きく吠えたアラガミに向かって左腕を伸ばし、神機を持った右腕を背中の後ろに構える。
「___死に場所を求めに来た!!」
上から降り注ぐ夕陽の光も有り、その姿は、まるで死地に赴く戦士のようだった...。
「リンドウ!!」
「リンドウさん!!」
リンドウだけでなくケイトまでも居なくなり、暗い雰囲気になっていたアナグラに、リンドウが慌てたように帰還して来た。
それに気付いたツバキは、リンドウに近付いて話しかける。
「リンドウか。無事で何よりだ。それより、ケイトは知っているか?」
「知っている...。ケイトは俺を助けて、俺が中に入れないように瓦礫をさらに高くした上で閉じ込められた」
「...どういうことだ?」
「つまりケイトは___俺を守って最期に死ぬつもりだ!」
「何だと!?」
アナグラ内に衝撃が走った。
「
「瓦礫の高さはどれくらいだ!」
「恐らく10メートル強!ゴットイーターでも飛び越えられない」
「...それなら案がある」
突如表れたソーマが口を開いた。皆の視線がソーマに集まる。中にはソーマを疎む視線もあったが。
「ちょうど
「___どうするんだ?」
「まず俺が瓦礫の山に向かってジャンプして、コンマ一秒ほど遅れてもう一人が俺の足元までジャンプする」
「成る程ね...。あの時ケイト君とソーマがやったやつね」
「そうだ。...で、後に飛んだ奴が俺の足の底にバスターの刀身の腹を当てて上に思いっきり振り上げればいい。あの時は近くの建物を越した。10mの瓦礫の山程度楽々に越せるだろう。」
そう。ついさっきヴァジュラに止めをさした「アレ」である。
あれの発案は、元は上空で「ウルトラマン...ソウッ!」とする為であったり無かったりする。
「だがソーマ。それでお前が向こうに辿り着いたとする。で、どうやって帰るつもりだ?」
「...考えて無かった。」
「はぁ...。」
リンドウが溜息をつく。再び、アナグラに暗い雰囲気が漂った。
____突如、コウタが口を開いた。
「ねぇ、それってソーマが紐を体にでも結びつけてやりゃぁいいんじゃない?」
「「「「「何!?」」」」」
「....え、どこか可笑しかった?」
コウタが怯んだ。
「コウタに先を越されるとはな...」←リンドウ
「まさかコウタにね...」←サクヤ
「...コウタごときに越されたく無かった...」ボソッ←ソーマ
「あのコウタが....だと...?」←ツバキ
「___ねぇ皆さん酷くない!?」
アナグラに明るさが戻る。
「だが、バスター使いはどうするんだ?」
「俺が行きます」
突如別の方向から声が聞こえた。そこには先程任務から帰ってきたブレンダンが居る。
「そうだ!ブレンダンという奴が居たか!」
「___忘れないで下さいツバキさん...。俺だってアナグラの一員だ。誰かの役に立ちたい。」
「これで人員は整ったな。...今から捜索任務を与える!ケイト、アリサを除いた第一部隊と、ブレンダン・バーデル!救出したケイトに伝えろ!『無事に戻った場合のみ懲罰を免除する』とな!」
「「「「「了解!」」」」」
「近くにはまだアラガミが居るかもしれん。気を付けて掛かれ。...絶対に生きて帰れよ!」
ツバキが言い終わると同時に5人は動き出す。全ては、仲間である白鐘ケイトの為に...
「生きて戻って来い、ケイト...」
先程と打って変わり、閑散としたエントランスの中でツバキは呟いた。
〈ギャオオオオオオオオ!〉
「はぁぁぁぁぁ!」
目の前に女ヴァジュラの鋭く尖った爪が迫る。ケイトはそれをギリギリで躱し、躱した勢いを利用して爪に大剣を叩き付ける。
女ヴァジュラが爪が折れた痛みに悶絶している隙に、ケイトは腰をひねりながら逆手で持った神機を、リンドウの攻撃で傷付いている女ヴァジュラの左肩に叩き付け、返す刀の要領で再び叩き付ける。
〈ギャァ!?〉
左肩が根元から千切れ、女ヴァジュラが大暴れした。闇雲に振り回す右腕を刀身で上手くいなし、所々右腕を切り刻むんで行く。
突如マントに冷気を溜める動作をしたので、攻撃を中断して離れた。離れた瞬間、女ヴァジュラの周囲に大吹雪が舞う。
「うおっ!?」
吹雪が止むと同時に銃携帯に変形させ正面から突っ込み、凍った床を滑りながら胴体の腹の部分にモルターを連続で叩きこむ。
バキッという音と共に胴体が結合崩壊を起こした。
〈ギャウ...!?〉
女ヴァジュラが倒れこむ。ケイトは正面からチャージクラッシュを叩き込み、そのまま捕喰しようとし_____
「ぐあっ!?」
女ヴァジュラが最期の足掻きとばかりに飛ばした氷針がケイトの横腹を大きく抉る。
痛みを耐えながらコアを捕喰し、女ヴァジュラは絶命した。
「ふぅ...うぐっ...!こんな手負いじゃぁあの瓦礫の山は飛び越えられないな......。」
抉られた脇腹を抑えながら、ケイトは座り込む。
これで終わった____。
________訳では無かった
「確かにここはアラガミの捕喰場だけどさ....」
正面斜め上を情けない目で見ながら言う。
「別にさっきより強そうなモンが今来る必要無いんじゃない?」
アラガミが通る獣道に、また新たなアラガミが降臨していた。
今回もヴァジュラ種。その顔は人間のようだが、髭(?)が顎から生えている。
ディアウス・ピター。「帝王」と呼ばれる存在である。
「おやっさん。帰ってくんない?」
ケイトはこれまた情けない声で頼むが、帝王は聞く耳を持たない。
「ったく、しょうがねぇ。最期は帝王と相打ちって事にすっか!」
今日の昼ご飯を決めるような軽い口調で言いながら、戦士は帝王に立ち向かって行った。
〈ギャオオオオオオオオ!!〉
「てりゃぁぁ!」
両者共に動き出すのは同時だった。
ピターは爪を、ケイトは神機を繰り出す。
ピターの爪が当たる寸前にケイトはしゃがみ込み爪をかわす。
「ぐうっ!?」
爪が通った後の風圧で吹き飛ばされそうになるのを堪えながら、ケイトはピターの腕を斬る。
(今のは当たってたらヤバかったな.....)
ケイトの首筋に冷汗が垂れた。
爪の攻撃を避け、少し体勢を崩したピターの胴体の下をくぐりながら、胴体を神機で深く真一文字に斬り裂いていく。
尻尾に辿り着き、ケイトは尻尾を強く神機で叩き斬り、完全に斬り裂くには及ばずに刺さったままの神機を軸にピターの真上へと跳ぶ。
〈ギャオオオオオオオオ!〉
ピターが慌てて後ろを振り返り腕をくりだすが、既にそこにケイトは居ない。
ケイトはチャージクラッシュを充分に溜め、ピターの無防備な背中のマントに叩き込む。落下の勢いもあいまってマントが一撃で結合崩壊を起こした。
_____だが、
「ぐあっ!?」
ピターがマントに溜め込んだ電気を体の周りに放出し、それはチャージクラッシュの後に体勢を崩していたケイトに直撃した。
「くっ、そ.......」
体中から煙が上がり、スタン状態になって動けない。
ピターが飛びかかって来た。
(___やられる!)
直前にスタン状態から解放され避けようとするが、
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
左腕が、喰われた。
「___う、ぐっ...」
堪え切れぬ痛みに思わず座り込む。ピターが近付いて来るのを見て立ち上がろうとするが、立てなかった。
「...死、ぬ....んだ...な...」
ピターの腕が大きく振りかぶられる。ケイトは死を覚悟して目を瞑った。
途端、今までの出来事が頭を駆け巡る。走馬灯という奴だろうか。
数々の
(まともな人生送ってねぇなぁ...。生まれてから多くの罪を犯して、贖罪の為にゴットイーターになって助けられたのは3人、か...)
ピターの爪が体を抉る。ケイトは大きく吹き飛ばされ瓦礫の山に体をぶつけた。
(結局は罪作りなゴミってことか...。ここで肉の欠片も残さず御馳走様して貰えれば葬式しなくていいから楽だな...)
薄れ行く意識の中、獣道から一人の少女が降りてきたのを視界に入れたのを最期、ケイトは完全に意識を失った。