ようこそ適当主義者のいる教室へ   作:キルルトン

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原作2巻になります


ウミガメのスープ

 夏は嫌いだ。

 日本は温暖湿潤気候であり、夏場は高い気温と湿度により途轍もなく不快な暑さを感じさせる。更には蝉の鳴き声のうるさい事この上ない。おまけに蚊には刺されるは良いところが見当たらない。地球上で最も人間を殺している生物だぞ。まぁ、1位が人間じゃなくてよかったが……まぁ2位だけど

 少し脱線したが要するに俺、新道 輝は夏が大嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

 7月1日。中間テストを無事に乗り切ってからの初めてのポイント支給日。クーラーによって快適にされた自室で俺はケータイを使いポイントが振り込まれているか確認して見た。

 俺の所持しているプライベートポイントは『2446万ポイント』それが『2451万ポイント』に変わっている。5万ポイント入った……つまり、クラスポイントが500ポイントだったと……いやないだろ。それはないだろ。これはいったい、どういう事だ? 

 …………結構考えても、これだ! っと言えるものが思い浮かばないし。取り敢えずこのままだと遅刻するから学校へ行こう。

 

 

 

 

 

 

「危なかった……」

 俺は何とか遅刻せずに済んだ。それもギリギリもいいとこ始業のチャイム1分前だった。俺が席に着くとほぼ同時に茶柱先生が教室に入ってきた。

 

「おはよう。なんだ、今日は空気が違うな」

「佐枝ちゃん先生! 俺らもしかしてまたポイント0だったんすか!? 朝見たら振り込まれてなかったんすけど!」

「なるほど、そのせいか」

 …………あれ……おかしいな。ちゃんとポイントは振り込まれているはずだぞ。俺だけに振り込まれているのか? 

 

「そう結論を急ぐな。Dクラスが頑張ったことは学校側もしっかり把握している」

 そう言いながら、持ってきていた巨大な紙を取り出して、黒板に貼り付ける。

 

「では、今月のクラスポイントを発表する」

 広げられた紙には5月の初めに見たのと同じ全クラスのクラスポイントが記載されていた。

 

「あまり良くない傾向ね……まさか、もうポイントを増やす方法を見つけ出したのかしら」

 堀北が不安そうに呟いた理由は、Aクラスのクラスポイントだ。1004clと、入学時よりもわずかに上回っているのだ。他のBクラスも663cl、Cクラスも492clとわずかに増やしている。

 だが、堀北と違ってクラスに大半は他のクラスのポイントのことなど眼中にない。

 肝心なのはDクラスのポイント。

 そこには……87clと表示されていた。

 

「87ってことは……8700ポイントってことか!? よっしゃあ!」

 池の歓喜の声を皮切りに、クラス中が騒ぎ立つ。その気持ちも分かるがうるさい。

 

「喜ぶのは早いぞ。他クラスの連中はお前たちと同様にポイントを増やしているだろ。差は縮まっていない。これは中間テストを乗り切った1年へのご褒美みたいなものだ。各クラスに最低100ポイント支給されることになっていただけにすぎない」

 喜ぶ生徒らを諌め他のクラスのポイントに注目させる。

 

「がっかりしたか堀北。まあ、クラスの差が余計に開いてしまったからな」

「そんなことはありません。今回の発表で得たこともありますから」

「得たことって?」

 池が立ったまま堀北に聞く。クラスの視線が集まる中堀北は答える気がないのか黙り込んだ。それを見かねてなのか、平田が代わりに答える。

 

「僕たちが4月、5月で積み重ねてきた負債……つまり私語や遅刻は見えないマイナスポイントにはなっていなかった、ということを堀北さんは言いたかったんじゃないかな。そうでなければ僕たちにポイントは入らないからね」

 そもそも学校……もとい茶柱先生がSシステムの説明の時に言ってはいたが、どうやら堀北はその話を信じていなかったようだ。まぁ、もし嘘だったらクラスポイントを稼ぐの諦めたくなるけど。俺のせいで。

 そして、平田の説明により新たな謎が現れた。

 

「あれ? でもじゃあ、どうして俺たちにポイントが振り込まれていないんだ?」

 クラスポイントが87上がったならプライベートポイントで8700ポイントを振り込まれていなければおかしい。その疑問に対して茶柱先生は淡々と答えた。

 

「今回、少しトラブルがあってな。1年生のポイント支給が遅れている。おまえたちには悪いがもう少し待ってくれ」

「えー、学校側の不備なんだから、お詫びでポイント追加とかないんですか?」

「私に言われても困る。まあ、トラブルが解決され次第、問題なくポイントは振り込まれるはずだ。ポイントが残っていれば、の話だが」

 また、茶柱先生は意味深なセリフを残しホームルームを終えた。俺にとってはクラスポイントが残っていようがどうでもいい。それよりも気になるのは他、3クラスのポイントだ。ここでいくら考えても、実際どうかはわからないし直接聞くか。

 俺はすぐにケータイを取り出し、メールを打った。

 するとすぐに返信がきた。

 

『では、お昼休みに『クックー』で会いましょう』

 

 

 

 

 

 

 この学校にはカフェが複数ある。そのうちの1つはカフェ『パレット』女子率が高く学校でもかなりの人気スポット。以前に高円寺と昼飯を食べた場所でもある。

 そして、ここはカフェ『クックー』。パレットと違いひとけがなく、よく閑古鳥が鳴いている。それ故にここは絶好の密会スポットでもある。

 

「ご機嫌よう。輝くん」

 カツン、カツンと杖をつきながら俺の席の正面へ向かうのは俺の友達、Aクラスの有栖だ。そしてその後ろを追従するのは有栖いわく友人(従者)の神室。さらに新しく白髪のイケメンが加わっている。

 このイケメン……まさか……

 

「よっ! 有栖、神室。それに……もしかして、夕影か?」

「ご名答。久しぶりだな、輝」

「おお! 夕影。なんだよ、久しぶりじゃねぇーか!ハハハ!」

 有栖と一緒にいた白髪イケメンは俺の幼馴染である赤樹(あかぎ)夕影(ゆうえい)だった。因みに白髪なのは染めたのではなくアルビノだからだ。

 

「いや〜。なん年ぶりだ? 確か最後にあったのが小3の春あたりだから……」

「そんな事より、新道。坂柳にどんな用なわけ」

 おっと、そうだった。再会が嬉しくて忘れてた。改めて、俺は有栖に目を向ける。

 

「……なに簡単な話だよ。誰かと勝負するんなら一声かけて欲しかったな〜って思っただけだよ」

「はい?」

 俺の言い分に有栖は全く理解できていないように首を小さく傾げた。いやいや、しらばっくれても無駄だぞ。

 

「そりゃあ、A様からしたら0ポイントのDなんて気にも留めないのはわかるよ。でも、仲間はずれにするのはよくないだろ。一声かけるぐらいの優しさは持とうよ」

「あの、輝くん。おっしゃっている意味がわからないのですが」

 一体いつまで、しらを切る気なんだ。

 

「しらばっくれんのもいい加減にしろ! AからCで裏でなんか色々しているのはわかってんだぞ!」

「「「………………」」」

 ……な、なんだ。この間は……

 

「因みに、そう思う根拠は……」

「クラスポイントだ」

 正確に言えばポイントの増加具合だ。

 Aクラスは6月で917ポイント。Bクラスは639ポイント。Cクラスは470ポイント。そしてDクラスは0ポイントだった。

 

 それが

「今回の支給は最低、100ポイントもらえるのに随分と減ってるね。Bクラスもちょっとしか増えてないしCクラスに至っては22ポイントしか上がってないね。そして、頂点のA様がなんで底辺のDと同じ量のポイントしか貰えてないの、ねぇなんで?」

「差が縮んだんでしょ。喜べば?」

「そうだな、文句を言われる筋合いがどこにもないんだが」

 そこまで、バッサリ言い切るなよ。有栖に至ってはクスクス笑ってるし。

 

「なんで笑ってんの?」

「ふふっ。すみません。まさか、輝くんが仲間はずれにされたという理由で怒っていたと思うと、つい……クス」

 本気で怒ってやろうか、いっそのこと。

 

「先に言っておきますと、私の知る限りAクラスはまだどのクラスにも攻撃をした覚えもされた覚えもありません」

「それじゃあ何か、実力で俺たちと同じ87ポイントしか上げられなかったと」

 それはないだろ、それが本当ならポイントの差がここまで広がってない。

 

「簡単な話です。現在、Aクラスは2つの派閥に二分されているんです」

 その言葉で俺は納得した。

 あーあれか、強すぎるが故に起こる内乱か。

 Aクラスは全員が学校側が良品……エリートと認知した人たち。それ故に、自分が指揮したい奴らが多いのか知らんが、そういう奴らが潰しあって最終的にあの結果と……

 

「そう考えると、よくポイント増やせたな」

「おそらく、輝くんが考えてるよりも大人しいですよ」

「えっ! 監視カメラが無い場所でリンチしたりとかしてないのか?」

「よく思いつくな。そんな物騒な発想」

 そうかな、クラスメイトじゃあ学校に報告しても自滅になるから下に付くか敵対する派閥を作るか入るぐらいしか無いと思うんだが。

 

「ってことは、夕影も有栖の派閥ってことか?」

「えぇ。もちろん」

 まあ、この状況で別の派閥だったらおかしいもんな。

 

「そんなことより輝くん。今回、私を呼びつけたのはそんなくだらないことを聞くためなんですか? いつものようにゲームはしないんですか?」

 俺が有栖に会う理由は基本的にゲーム勝負をする為だ。今回みたいに何かの情報を聞くのは初めてだ。

 故に、有栖にとってはまたゲーム勝負に誘われたと思っていたのか。

 

「そうだな……ついでにひと勝負したいが……」

 手元にはチェス盤も、将棋盤も、トランプもない。ジャンケンとかだと味気ないし……

 

「…………よし、『ウミガメのスープ』をやろっか」

 

 

 

 

 

 ウミガメのスープ。正式名称は水平思考パズルと言い、1人が問題を出し、他の人は、イエス・ノーで答えられる質問を出す。ただ、問題と関係ない質問にのみわからないと答えられる。質問者は、出題者が考えているストーリー、あるいは物を推測して語る。そして、すべての謎を説明できたとき、このパズルは解けたことになる。

 

「質問の回数は15回まで。先に相手の問題を解いてなおかつ自分の問題を解かせなかった方が勝ち。ただし、15回以内で解けない理不尽な問題だった場合は無効として相手の勝利とする。勝者は、20万プライベートポイントを貰う。あと、答えを変えるのを防ぐためにあらかじめ答えをナプキンに書いておくこと……で、いいか」

 俺が確認を取ると有栖が「質問、いいですか?」と聞いてきた。

 

「15回以内で解けない理不尽な問題というのは、どう判断するのですか?」

「単純な多数決だ。ここにいる全員で決める」

 俺の答えに「なるほど」と納得してくれたようだ。

 

「もう、いいか?」

「はい、構いませんよ」

 有栖の了承を得て、ウミガメのスープが始まった。

 

「じゃあ、俺からいかしてもらう。問題『その行為は本来は愛がなければできないが、私には欲しいものがあった。それを手に入れるため、私はその行為を行った。初めてで怖かった私に中年のおじさんが大丈夫、痛くしないから安心してと言うと私をベットで横にさせて、そのイチモツを私に挿入した。やはり、痛かった。血も出た。行為が終わった後、私は入れられた場所をさすりながら眺めると少し幸せな気持ちになった』はい、私は何をしていたでしょうか?」

「変態」

 俺の問題に神室が短く呟いた。

 

「第一声が変態は流石に酷いぞ」

「変態以外にどう言えばいいの?」

「なんだぁ、神室。答えわかったのか? 言ってみ、言ってみ。絶対違うだろうけど」

「輝くん。問題を答えるのは私ですよ」

 俺が神室を挑発していると有栖が横槍を入れて来た。

 

「ああ。悪い悪い。それじゃ、質問どうぞ」

「はい。その答えは……献血です」

 …………あれ? いきなり答えた。

 

「いきなり、答えるのか? 質問は?」

「不要です。それで、正解ですか? 不正解ですか?」

「…………正解」

 悔しいが正解だ。俺はテーブルに置いたナプキンを裏返し答えを見せた。書いていたのは、もちろん『献血』だ。

 

「ふふっ、そうですか。正解だとわかっていても、実際に正解だと言われると嬉しいものですね」

「なんですぐにわかったんだ? 結構自信あったんだが」

 ご満悦の表情を浮かべる有栖に尋ねた。当てられても納得はするが、質問しなかったのが驚きだ。

 

「実は、昔似た問題を解いたことがあるんです」

 なるほど。ていうか、俺も昔見た問題を少し変えただけなんだが……もしかして、有栖が言ってた問題ってそれだったりして。

 

「では、今度は私の番ですね。問題『私が公園の公衆トイレで用を足している時、突然、見知らぬ男性が現れ、私を攫いました。1週間後、私は監禁された場所でジャンプして死にました』以上です」

「最後の方ちょっと、雑だな」

「「………………」」

 俺の率直な感想に神室と夕影はジト目で「そこじゃないだろ」と訴えかけているように感じた。

 

「では、輝くん。答えを言ってください」

「待て坂柳。いきなり答えを聞くのはおかしいぞ。まずは、質問だろ」

「問題ありません。ね、輝くん」

 問題あるよ! ……けど、質問はしたくないよな。向こうが質問せずに答えたんだし、こっちも質問無しで答えたい。

 

「ああ。ただ、ちょっと考える時間が必要だがな」

 流石にポッと答えは出せないわ。少し深思しないと───

 有栖の出した問題を要約すると

 私という人物が公園のトイレで用をたしている間に知らない男が現れ私を連れ去った。その1週間後に私は監禁された場所でジャンプして死んだ。

 これから分かるのは、登場する人物は『私』と『私と面識のない男』の2人だけ。場所は『公園のトイレ』と『監禁された場所』の2ヶ所。

 そして、わからないのは……まず、なぜ私という人物はトイレの鍵を掛けていなかったことと私の死因。

 鍵を掛けていなかったのは、私の性別が男性でう○こでなく小便だったなら納得いく。もしくは、鍵を掛け忘れただけか。

 死因の方は、ジャンプしての辺りから転落死か。

 普通に考えれば、誘拐され監禁。脱出を試みた結果の転落死。

 …………と、いう答えでないのはわかっている。

 ウミガメのスープではこう言ったミスリードに惑わされずに答えを導き出すものだ。

 それを考えた、上で俺の知っている問題内容から推測すると───

 

「───監禁されたのは……『竈馬(かまどうま)』だ」

「…………正解です」

 俺の答えに対して有栖は笑みを浮かべて答えの書いてあるナプキンを返して見せた。

 ナプキンに書いてあったのは『竈馬』正解だ。

 

「ふぅー。よかった、よかった」

「ねぇ、なんで答えが竈馬なの? ……て言うか、竈馬ってなに?」

 俺が正解してホッとしていると神室が答えな理由を聞いてきた。

 

「ああ。まず、竈馬ってのはコオロギの仲間で別名、便所コオロギって言ってトイレによく居るんだよ。そんで、竈馬を攫ったのは虫好きの男で虫カゴに監禁していたんだろう。竈馬はジャンプ力が凄くてな、飼育していたカゴにぶつかって死ぬって事例があるほどだ」

 わかったかと聞いて、神室はわかったと納得した。

 

「流石です。ウミガメのスープでは出てくる人物を別の生き物と思わせる手は、よく有りますが質問をしなければ難しいと考えました」

 全くだ。普通なら「私という人物は人間ですか?」と聞いてから答える方が確実だもんな。

 

 

 

 

 

 

 それからも問題を出し合い共にミス無し。流石に有栖も質問はしている。

 しかし、ヤバイな……有栖が答えられない問題が思いつかない。

 これまで出した問題傾向から見て、有栖の知識量と思考力はヤバい。質問の方も必要な情報を的確に聞いてくるし……

 こうなってくると、15回の質問1つでも意味のない質問をしたら到達できない問題に……したら、きっとしたら理不尽な問題として反則負け食らうよな。

 俺は、問題を思案しながら神室の方を見てみた。すでに勝負に興味を無くしたのかついていけないと悟ったのかずっとスマホをいじっている。

 てか、神室がわかって有栖がわからない問題とか……あった! 

 

「有栖。悪いがこれで終わらせてもらうぜ」

「随分と自信があるようですね。いいでしょう、存分に楽しませてください」

 意気揚々と答える有栖に俺は心の中で謝罪する。

 すまない、有栖。この問題は、楽しめる要素がないただのクソ問だ。

 そして、問題を聞いた有栖は質問もせずに負けを認めた。




私はウミガメのスープをやった事はありません。ネットで調べた程度です。
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