剣魂    作:トライアル

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このお話でなんと! 事件の首謀者と天才ゲーマーの正体が分かっちゃいます!



第百五十一訓 オフ会をするなら人の多い場所で!

 SAOが存在する別の世界へ転移してしまった近藤、土方、沖田の三人。元の世界へ帰れる方法を模索する中で、ある事件が発生してしまう。ゲーム機に子供が吸い込まれたらしく、現在彼らは子供の保護者であるお爺さんの案内の元、そのゲーム機が置いてあるゲームセンターへと向かっていた。深澄や伊東らは子供の行方を気にする一方で、近藤らはさらにこの事件にサイコギルドが絡んでいると勘繰っている。

 そして一行はようやく、事件現場となったゲームセンターに到着。早速店内に入っていく。

「これです。このパズルゲームを孫と遊んでいた時、急に画面が光って、孫だけがゲームの画面に吸い寄せられたんです」

「そんなことが……お店の人にはもう言ったの?」

「伝えましたが、気のせいと門前払いされました」

「まぁ、無理もねぇか。こんな非現実的なことが起きちゃ」

 お爺さんの説明を聞き、土方は思わず憤った反応を示す。既に店員には事情を話したがまったく相手にされず、途方に暮れたお爺さんはわざわざ公園まで助けを呼びに来たのが事の経緯らしい。現在の孫の行方が心配で、お爺さんはまったく落ち着いていなかった。

 皆もお爺さんの気持ちに寄り添う一方で、沖田は今更ながらあることに気が付く。彼もやっと別世界の伊東やトッシーの存在に気付いたのである。

「今更ですが、なんで伊東とヘタレオタクがいるんですかい?」

「かくかくしかじかだ。詳しくは前の話を見返して来いよ」

「へいへい」

 近くにいた土方に聞くも、その説明を彼は省略してしまう。沖田は適当な返事で、薄っすらとこの世界の住人だと把握していた。

 その一方で伊東は、摩訶不思議な事件を目の当たりにして、その解決策に頭を悩ませてしまう。

「どうする、伊東巡査?」

「こういう時は手がかりが第一になるが、いかんせんこれだけでは……」

 深澄が心配そうに伊東へ聞くも、彼は困惑した表情で弱音を吐いていた。手がかりすら見つからない状況に、どう太刀打ちして良いかまったく分からないのである。それは伊東のみならず、深澄やトッシーらも同じであった。

「お孫さんって、もしかしてゲームの世界に吸い込まれちゃったのかな?」

「その可能性も否定しやせんが、意外と簡単なトリックかもしれやせんよ」

「トリック? どういう意味だ、総悟?」

「前に俺達が戦った敵で、鏡の中を行き来する奴がいたでしょう。そいつと同じ能力を持っているなら、さらわれた孫はゲームの中じゃなく、まったく別の場所に移動したかもしれないってことです」

「ダークライダーのことか。確かにその可能性もあり得るかもな」

 深澄の問いに、沖田はスラスラと思ったことを返答している。彼曰く、以前に戦ったダークライダーと同じ異世界の技術が悪用されていると睨んでいた。例に挙げたダークライダーの一体であるリュウガと同じく、特殊な能力で孫がゲームの中ではなく、現実の別の場所に引き込まれたと推察する。近藤や土方も沖田の説明に納得する中で……深澄はいまいちダークライダーのことが理解出来ていなかった。

「ダークライダー? 何それ?」

「未知なる侵略者ですかねぇ。別の世界の技術を使って、俺達の前に立ちはだかった謎の存在でさぁ。まぁ、この世界にいるのかは不透明ですが」

 沖田の補足を聞いてもなお、深澄はまったく分かっていない。ひとまず真選組の反応から、厄介な奴らであることだけは把握していた。

 各々が事態の進展に手探りで考えていく中……ふとトッシーはあるものを見かけている。

「ん? これは……」

 彼が目にしたのはゲームの筐体に付けられた取り出し口。これはパズルゲームを一定の条件でクリアすると、その取り出し口から景品が落ちてくる仕掛けとなっている。一見何の変哲もない取り出し口だが、トッシーは薄っすらとその穴から不自然な輝きを見つけていた。途端にトッシーの表情は、何かを閃いたように驚いている。

「まさか!?」

「おい、どうした?」

「トッシー、何か見つけたの?」

 そして何かを確信し、急に取り出し口の中を探っていた。急なトッシーの行動に土方や深澄が問いかけるものの、彼は異変を探すのに夢中となっている。皆がトッシーの狙いをいまいち分かっていない中で、彼はあるものを手にして一行に披露していた。

「やっぱり……これでござるよ!」

「これ?」

「って、転移のチップ!?」

 そう。トッシーが見つけたのは、数分前に彼が話していた転移のチップである。ゲーム内のマップを自在に移動できるアイテムが、何故かこの現実の世界に存在していた。話を断片的に聞いていた近藤、土方、深澄、伊東の四人は、チップの存在に驚嘆としてしまう。しかしその話を知らない沖田とお爺さんは、何のことだがまったく分かっていない。

「いやぁ~一瞬見えた輝きの正体がこれだったとは、探って良かったでござるよ」

「って、そのチップが今回の件と何か関係あるんですかい?」

「十分あるでござるよ! 転移のチップは別の場所に瞬間移動する能力を持つもの。つまり……アナタのお孫さんは、ゲームを介してどこか別の場所に連れ去られた可能性が高いということでござるよ!」

 トッシーは自信満々に、自身の推理を一行に向けて話していた。現実にあるはずがないチップがゲーム内と同様の効果を発揮し、お爺さんの孫が別の場所に転移したとトッシーは考えている。手がかりは見つかったものの、まだ確証を得ない中の推理に、仲間達は半信半疑な反応を示していた。

「なぁ、深澄君。あのチップって、そもそも本物なのか?」

「どうだろう……ファングッズとしてのキーホルダーはあるけど、このゲームの景品には無かったはずだから」

 近藤は深澄に気になったことを聞いている。チップが何の効力も持たない偽物であると疑いをかけていた。なお深澄曰く、このパズルゲームの景品にチップは何一つ入っていないとのこと。

「確かにその可能性はあるな。だがもしそうだとしても、お孫さんは一体どこに飛ばされたというのだ?」

 伊東もトッシーの可能性は否定しなかったものの、やはりそれでも気になることが多い。何よりも現在の孫の居場所がまだ特定できておらず、仮に転移のチップが機能していたとしても、どこに孫が移動したのかはまったく分からずじまいなのだ。

 と伊東がトッシーに質問を投げかけた時、彼は常備していた無線機からある通信が入り込んでいる。伊東は即座に応対していた。

「はい、伊東ですが……えっ!? 近くの廃工場に誘拐犯らしき不審者がいた!?」

「何!?」

「おっ」

 その通信を聞き入れると、彼は仲間の警察官から思わぬ情報を耳にしている。それは不審者に関する通報だったが、驚くほどに現在の状況と一致していたのだ。ゲームセンターより近い廃墟と化した工場にて、子供を連れた怪しげな男が入ったとのこと。仲間の警察官からは、現場に一番近い伊東へこの一件を一任しようとしている。

「分かりました! 僕が行きます……!」

 伊東は威勢よく返事をして、無線の通信を遮断した。もちろん近くにいた近藤やお爺さん達にも、包み隠さず先ほどの通信の内容について共有していく。

「どうやらこの近くの廃工場に、子供を連れ込んだ不審な男がいると通報が入ったみたいなんだ」

「それはわしの孫なのか……!?」

「可能性は高いと思います。これから僕が現場に行きますので、お孫さんの特徴を教えてもらえますか」

「えぇ。明るい茶色の長い髪に……」

 最初にお爺さんへ例の情報について話し、併せてさらわれた孫の特徴についても事細かに聞いている。人間違いが起きないよう、入念に確認を取っていた。

 伊東が警察官としての仕事を進める一方で、土方と深澄は事件解決に向けたきっかけを作ったトッシーに大変感謝している。

「おい、お前。やるじゃねぇか」

「さっすが、トッシー! 推理通りに進んでいるんじゃない?」

「いや~。それほどでもあるでござるよ」

 二人に褒められて、彼は満更でもない表情を浮かべていた。自分自身の読みが当たり、トッシーは鼻を高くしている。

「よしっ! そうと決まったら、俺達もお孫さんを助けに行くぞ」

「乗りかかった船ですからねぇ。最後まで付きやいますよ」

 状況が好転へと向かいつつある中で、近藤と沖田も俄然お孫さんの救出に意欲的となる。あわよくばサイコギルドに関することや、自身が元の世界に戻る方法もこの一件で探ろうとしていたのだ。

 無論深澄も近藤らと同様に、やる気を高めている。

「それじゃ、みんなで……!」

「いや、お前はトッシーと一緒にお爺さんについてやれ」

「えっ!?」

 しかし、土方からは一方的に留守番を命じられてしまう。突き放すような対応に、彼女はまったく納得がいっていなかった。

「ちょっと! 私もお孫さんを助けに行かせてよ!」

「気持ちは分かるが、危険な目に遭ったら元も子もないだろ。相手がさっき言ったダークライダーなら猶更だ。孫なら俺達で助けに行くから安心しろ」

「ガキの出る幕じゃないんでさぁ」

「だからさっきの公園で待っていてくれよな!」

 そう。近藤らは深澄の身を案じて、彼女をこの一件から遠ざけようとしている。ゲームを介して人をさらう時点で危険性は跳ね上がっており、一般人が対応するには難しいと三人は判断していた。その為に廃工場への潜入やお孫さんの救出は、伊東と共に行うことに決めている。深澄にはトッシーと共にお爺さんのそばへつくように説得していた。

「お孫さんの容姿は大方把握した。これから廃工場に向かうが、君達も向かうか?」

「あぁ。アンタ一人じゃ、流石に難しいだろ」

「変なバケモンが出てきても、俺達が叩き切るから安心してくれ!」

「ありがとう、助かる……では、一緒に!」

 真選組の面々が同行してくれることに、伊東は一種の頼もしさを感じている。彼らへの恩を感じつつ、ひとまずは目的地である廃工場に向かっていく。ゲームセンターを出て、東の方向へと四人は歩みを進めていた。

「はぁ……本当に大丈夫でしょうか」

「心配は無用でござる。警察官の伊東殿と愉快な仲間達がついているから、きっとお孫さんを取り戻してくるでござるよ!」

 一方で未だに心配を拭いきれないお爺さんを、トッシーは優しく落ち着かせている。伊東や真選組が必ず取り戻してくれると信じて、彼らの帰りをゆっくりと待つことにしたのだ。

「深澄殿もそう思うでござるよね? って、アレ? 深澄殿!? アレ……トイレでござるか?」

 トッシーは深澄にも同意を求めたものの、なんと肝心の彼女は付近にいない。彼はトイレでてっきり席を外していると思っていたものの……深澄は既にゲームセンターを退店しており、こっそりと土方らの跡を追いかけていたのだ。

「いくら真選組と警察官でも、絶対人手が足りないでしょ。私にも出来ることがあると思うし、ただ待っているだけなんてもったいないよ!」

 彼女は何も出来ない自分が嫌で、お孫さんの救出にも何か役立てることが無いか模索している。やや不満げのある表情で四人の跡を追って、彼らには内緒で廃工場に向かっていたのだ。なお肝心の土方らは、深澄の尾行にまったく気付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は変わって、こちらは町から程近い場所にある廃工場。既に閉鎖されて施設自体は使われていないのだが、時折不良のたまり場として使われ、オカルト的な話題も上がるいわくつきの廃工場として一部の人間に知られている。故に誰も近づこうとしないのだが……この日だけは違っていた。一人の男性が子供をこの廃工場に引きずり込んでいる。あることを試す為に。

「ねぇ……かえしてよ! おじいちゃんにあいたいよ!」

「嫌だね。お前がこの世界にいるアイツなら、余計に帰してたまるかよ。お前の仲間には散々僕の計画を邪魔されたからな……僕の運命を変える為、犠牲になってもらおうか!」

 スーツ姿の男性は誘拐した少女に向かい、水色のデバイスを差し向けていた。デバイスの先端にはチェーンソーのような鋭利な刃物が展開されており、少女はそれを見た瞬間に恐怖で泣きそうになってしまう。

 現在の少女は男性により手足を縄で縛られていて、身動きの取れない状態となっていた。故に体の自由が利かず、逃げ出せない状態が今もなお続いている。必死の抵抗で解放を訴えかける少女だが、当然男性は聞く耳を持とうとしない。このまま彼の思惑通りに事を進めようとした……その時であった。

「待ちやがれ!」

「そこまでだ、誘拐犯!」

 なんと間一髪のところで、近藤、土方、沖田、伊東の四人が廃工場に乱入する。土方と伊東は早速声を荒げて、男性に向かいけん制していた。

 一方の男性は、潜伏先がバレたことに大きく動揺してしまう。こればかりは彼にとっても、予想外だった様子である。

「何!? どうしてここがバレた!?」

「運悪く見つかっただけですがねぇ」

「それと転移の仕掛けを見抜いたゲーマーのおかげでもあるけどな!」

 慌てふためく男性に対し、沖田と近藤は思ったことを返事していた。トッシーらのおかげで無事に潜伏先を割り出せたと彼らは痛感している。

「おい、てめぇか! 俺達をこの世界に転移させたのは!」

「お前もサイコギルドの一味なんですかい?」

 そして畳みかけるように、強気な姿勢で男性を問い詰める土方と沖田。さり気なくサイコギルドとの関連性についても聞いてみると……男性の態度は一変している。

「サイコギルド……そこまで知っているとは。お前達、何者だ!?」

 すると男性は暗がりから、光が差し込む場所まで歩みを進めていた。見えづらかった容姿が露わになると、伊東は途端に驚嘆とした表情を浮かべている。

「あ、あれは……」

「どうしたんだ、先……伊東巡査?」

「間違いない。彼こそがつい先月に刺殺された男だ……」

「何だと!?」

「ってことは、こいつが噂のゾンビか……?」

 そう。彼が驚いていた理由は、男性の正体が数日前に刺殺された被害者と酷似していたからだ。写真で見た通りの容姿に、伊東は驚きを隠しきれていなかった。そんな彼の反応をくみ取り、土方や沖田らも男性に対し警戒心を剥き出しにしている。

 そんな男性の容姿は、グレー色のスーツを着用していた。きちんとした身なりをしている中年っぽい風貌をしているのだが、顔つきや節々の態度からそこはかとない怪しさを醸している。

 その一方で男性はと言うと、いたって冷静な反応を示していた。

「チッ、そこまでバレているなら仕方ない。正直に話してやるよ」

 男性は開き直った態度となり、自身の素性や目的について、余裕そうな表情でスラスラと話していく。

「僕の名は柳井。この世界とは違う時間軸から来た男さ」

「違う時間軸?」

「正確には2026年の4月。既にSAOが完全攻略された世界線から、僕は来ているのさ」

「はぁ? つまり殺された奴とは別人ってことかよ」

「おいおい、それって……」

 男性こと柳井は律義にも自己紹介を交わす。自分が違う時間軸から来たことも明かして、つい先月に殺害された柳井とは別人であることを強調していた。ややこしい説明に土方らは億劫に感じていたのだが、対する沖田はあることを頭に浮かばせている。その疑問を確かめようと問いかけようとするも、柳井の説明はまだ続いていた。

「僕はそこである男と遭遇し、こう言われたのさ。このままでは死ぬ運命にあると。その運命を変える為、俺達に手を貸せってね」

「まさかそれがサイコギルドってことですかい?」

「ご名答。僕はサイコギルドに入り、ある使命を言われたのさ。この時間軸にいるとある女を連れ去り、このデバイスに入っている特殊なウイルスに感染させろと。そうすれば僕の望んだ異世界、アンダーワールドに連れて行ってくれるってね!! もちろんゲームセンターに転移のチップを仕掛けたのもこの僕さ。ずっとあの子が来るのを待っていたんだよ……!」

 柳井は時折狂気を滲ませながら、自身がサイコギルドに加入したことをあっさりと明かしていた。エイジや金本の時と同様に恐らくシャドームーンより未来を見せられて、その未来を変えるべく組織の言う通りにしていると思われる。エイジらの件は近藤達にとって知らないものの、柳井がサイコギルド、ひいてはこの転移騒動に一枚嚙んでいることは薄っすらと確信していた。

「どうやら俺達の読み通りだったな」

「間違いねぇ。奴さえ捕まえれば、何か情報を聞き出せるかもしれないな。ここはそっと油断を誘い……」

 近藤、土方共に柳井を貴重な情報源と判断し、彼を刺激しないように慎重な行動を取ろうとしていたが、

「そんな詐欺まがいな話を信じたんですかい。要するにただのパシリってことか。いやぁ~こんな大人にはなりたくですねぇ」

「お、お前! なんだその見下した態度は!?」

何のお構いなしに沖田だけは柳井を存分に煽っている。彼のことを鼻で笑いつつ、相手の地雷を的確に踏んでいた。なお彼の煽りに、近藤と土方は大きく気を引かせてしまう。

「おい、総悟! 何やってんだ! 奴を興奮させてどうすんだよ!」

「いや、俺はあるがままのことを言っただけですよ。やーい、一生人生モブキャラってこのV字ヘアーも言ってやした」

「てんめぇ!! さり気なく俺になすりつけるなよ!」

 仕舞いには柳井の悪口を土方に転嫁している。傍若無人な沖田の態度に、土方も怒り心頭になって声を荒げていた。

 仲間内で勝手に一触即発な雰囲気と化す一方で、伊東は冷静にも柳井の言ったことを受け取り、さらなる疑問を彼にぶつけていく。

「おい、待て! つまり君は、この世界の柳井ということではないのだな?」

「あぁ、そっちの僕のことか? そいつならとっくに始末したよ」

「何!? お前が犯人なのか?」

「まさかこの世界にいると思っていなくてね……たまたま遭遇して面倒を起こす前に、倒しておいたんだよ。すぐに遺体が見つかったのは、計算外だったけどな」

 柳井はあっさりとこの世界線にいた自分を殺害したことを自白している。彼との遭遇は柳井にとっても想定外だったらしく、どうにも出来なくなり葬ったとのこと。人を殺めたにも関わらず平然と装う柳井に、近藤ら四人は気を引かせていた。すると土方は、怒りに満ちた表情で柳井に反論している。

「おい……お前がサイコギルドにどう唆されたのかは知ったこっちゃねぇよ。だがな、無関係な異世界の自分まで消して、組織に言われるままガキを拉致して、挙句の果てにウイルス感染させるだぁ? 未来を変える為に悪行を重ねるなんざ、本末転倒じゃないのか?」

「君のしていることは十分な犯罪だ! 例え別の世界の人間だろうと、ちゃんと罪は償ってもらうぞ!」

「子供に危害を加えようなら、俺達真選組が相手になるぞ!」

「覚悟しやがれ、犯罪者」

 土方に続き、伊東、近藤、沖田も柳井に敵意を向けている。幾ら自分の未来を変える為とはいえ、平然と犯罪を繰り返し正当化する柳井に、四人は揃って怒りを燃やしていたのだ。

 その四人の迫力に柳井本人も圧倒される中で、彼はふとある話が頭をよぎっている。

「真選組……アイツの言っていた異世界の侍って奴らか?」

 それはサイコギルドから断片的に語られた異世界の侍の件であった。真選組が強者であることは既に知らされており、彼は厄介な奴らを敵に回したと内心後悔をしている。

「おにいさんたち! はやくたすけて!」

「おい、黙ってろ! こいつだけは渡さないぞ! 僕の運命を変える為にも!」

 咄嗟に近藤らへ助けを求める少女に、柳井は声を荒げて彼女を一喝した。追い詰められてどうにも出来なくなった柳井は、少女をウイルス感染する前に、近藤達を倒すことを決めている。苦し紛れの表情のまま、柳井は懐から黄緑色のベルトを取り出し、それを腰に装着していた。

「何!? それは……」

「まさかお前……!」

 見たことのある素振りを目にして、近藤、土方、沖田の三人は、柳井の次なる行動を察している。そう。サイコギルドと関係がある以上、彼も前例と同じくダークライダーに変身しようとしていたのだ。

「知っているのか。なら話は早い。そうさ……僕もサイコギルドから貰ったんだ。異世界で暗躍したダークライダーの力をね!」

〈デュアルガッシャット!!〉

 柳井は真っ黒のゲームカセットのようなアイテムをベルトに装填。そのままベルトに付属されたピンク色のレバーを引っ張り、ベルトから出現された液晶が全身を包み込んでいく。

「変身!」

〈ガッチャーン! マザルアップ!! 悪の拳強さ! 闇のパズル連鎖! 悪しき闇の王座! パーフェクトノックアーウト!!〉

 彼の肉体はゲームキャラのような外見に姿を変え、胸部には体力ゲージのような表示が付けられて、腰元にはボロボロの腰マントを着用した。ギザギザとした突起物の付いた頭部に、赤と青の複眼がマスクに付けられる。それ以外のパーツは黒かグレーの色に統一されて、ダークライダーの変身が瞬く間に完了していた。

 そう。柳井は仮面ライダーエグゼイドの世界で暗躍したダークライダーの一体、アナザーパラドクスの力をサイコギルドから受け取っていたのだ。彼の右手には水色のデバイス……いやガシャコンバグヴァイザーⅡが装備され、展開されたチェーンソー部分を近藤らに向けて差し向けていく。

「やっぱりか……」

「まさかアレは君達の言っていた」

「そうだ。ダークライダーの力を奴も持っていたのか……!」

 アナザーパラドクスに変身した柳井を目の当たりにして、近藤ら真選組の三人はより一層の警戒心を露わにしている。一方で伊東は、初めて目にしたダークライダーの存在に今までに感じたことの無い恐れを感じていた。未知なるダークライダーに慄く四人だが、柳井の暴走を止める為、誘拐された少女を助けるためにも、果敢に彼へ立ち向かうと決めている。なお肝心のアナザーパラドクスは、変身した時点で自身の勝利を確信していた。

「どうだ、僕が変身した姿は! その名は仮面ライダーアナザーパラドクス。格闘ゲームとパズルゲームの力を持ち、ゲーム内のアイテムを現実に具現化することも出来るとのことだ」

「つまり転移のチップが現実にあったのも、そのダークライダーの力ってことですかい?」

「その通り! この力を使って、お前らを倒してやるよ!」

 アナザーパラドクスは自身の能力を律義に紹介しながらも、早速その力の一片を披露している。廃工場一体を疑似的なゲーム空間として展開し、アクションゲームやファンタジーゲームで見かけるようなブロックや宝箱が辺りに散らばっていた。特異なフィールドを作り出し、自身に有利な展開に持ち込もうと彼は考えている。

 それでもなお、四人は臆せずにアナザーパラドクスへ立ち向かうとしていた。

「伊東! お前はあのガキを頼む! こいつは俺達が相手してやる!」

「その隙にあの子を助けるんだ!」

「あぁ、分かった!」

 伊東へ少女の救出役を任せ、真選組の三人は刀を鞘から抜いて、臨戦態勢を整えていく。狙いをアナザーパラドクスに定めて、真っ向から彼に立ち向かおうとしている。

「さぁ、来い!」

「行くぞ!」

 アナザーパラドクスの挑発と共に、戦いは一瞬にして始まっていた。

「フッ、ハァ!」

「そこだ!」

「はぁ!」

 アナザーパラドクスは強化された身体能力を元に、威勢よく真選組の三人へ攻撃を仕掛けていく。右手に装備したチェーンソーを振り回し、攻めの姿勢を崩さずに上手く立ち回っている。

 一方で近藤、土方、沖田は、それぞれが得意とする剣術でアナザーパラドクスと対峙した。近藤は力強く、土方は確実に、沖田は隙を与えない一刀を次々と繰り出していく。

「そこでっせ!」

「何!? ぐはぁぁ!」

 無論戦況は次第に真選組側へと偏り、アナザーパラドクスは対照的に追いやられてしまう。幾らダークライダーに変身したとはいえ、相手は幾戦もの修羅場を潜り抜けている異世界の武装警察達。戦闘の経験値に関しては彼らに軍配が上がり、戦い慣れていない柳井は次々とその猛攻に対応出来なくなっていた。

「大丈夫か、嬢ちゃん!」

「えっ? おまわりさん?」

「そうだ。今、助けてやるからな」

 一方で無事に少女の元へ辿り着いた伊東は、ひとまず少女の手足を縛っている縄をほどこうとしている。このまま彼女を助けようとした……その時であった。

「させるか!」

〈停止!〉

 アナザーパラドクスは伊東にある妨害工作を仕掛けていく。近くにあった宝箱を破壊し、黄緑色のチップ……いや、エナジーアイテムを入手し、早速それを伊東に向けて発動する。

「な、なんだこれは……」

「おまわりさん、どうしたの!?」

「体が動かないんだ……」

 そう。エナジーアイテムの効果で、伊東はまるで金縛りにあったかのように体が動かなくなってしまった。どんなに力を入れようと、謎の力が働いて思い通りに体を動かせない。伊東の苦しみに悶える様子に、少女も心配そうに彼を見つめている。

「おい、お前! 先生に何をしたんだ!?」

 不可思議な光景を目の当たりにして、近藤がアナザーパラドクスに問い詰めると、彼は吐き捨てるように笑いながら返事をしていた。

「ハハ。このフィールド内にあるエナジーアイテムを活用したまでさ」

「エナジーアイテム?」

「転移のチップみたいなもんですかい?」

「その通り! このアナザーパラドクスは、エナジーアイテムを自在に使い、操ることが出来るんだ。こんな風にな!」

〈高速化! マッスル化!〉

 アナザーパラドクスが固有の能力を解説した上で、彼は有無を言わさずにそれを活用していく。近くにあったブロックを砕き、二つのエナジーアイテムを同時に発動していた。

「はぁぁ!」

「何、ぐはぁ!」

「近藤さん! うっ!」

「たぁ! 攻撃と素早さ特化ってことですかい?」

 急激に上がった素早さと攻撃に対応できず、近藤ら三人は強制的に怯まされている。沖田の言う通り、マッスル化で全体の攻撃力を、高速化で素早さを飛躍的に上げていたのだ。

「ハハハ! こいつさえあれば、僕はどんなことだって出来るんだ! 大人しく降伏するんだな!」

 調子に乗ったアナザーパラドクスは、真選組に向かって全面降伏を要求する。エナジーアイテムで幾らでも戦況を変えられる為、彼らにとっての勝ち目はないと彼は判断していた。

 だがしかし、近藤らは伊東を含めてまったく諦めようとしていない。

「トシ、総悟! 立てるか?」

「当たり前でさぁ……これしきで負ける俺達じゃないんでさぁ」

「同じくだ。降伏なんか眼中にねぇよ……!」

「……必ず君を助け出すからな!」

 近藤らは刀を再度握りしめて。伊東は力づくで停止の効果を解こうと踏ん張りを見せていた。エナジーアイテムの効果をちらつかせてもなお、まったく諦めようとしない真選組の面々に、アナザーパラドクスは一種の面倒さを感じ取っている。

「まったく諦めない悪い奴らだな!」

 半ギレしながらも彼は、次なるエナジーアイテムを使い、より戦いを有利に進めようとしていた。だがしかし、

「させるかぁぁぁぁ!」

「何!?」

「あ、あれは……」

「深澄君じゃないか!」

またしても廃工場に乱入者が駆け込んでくる。その正体は公園で待機を命じられたはずの深澄であった。彼女は展開されたゲームフィールドに入ると同時に、そのフィールドで入手したあるものをアナザーパラドクスに投げつけていく。それは相手の自由を一時的に奪うエナジーアイテムの混乱であった。

〈混乱!〉

「な、何!? うぅ、頭が……!」

 そのチップの効果を早速発動し、アナザーパラドクスは一時の状態異常に陥ってしまう。彼が混乱している間に、深澄は真選組の三人の元へ駆け寄ってくる。

「おい、どうして来た! ここは戦場だぞ!」

「関係ないって! 私にも出来ることがあって、来ただけだから! それに……ゲームをこんな下らないことに利用するアイツがどうしても許せないし!」

「深澄君……」

 土方から幾ら説得されようとも、深澄の怒りは収まることは無かった。何よりもゲームの力で自身の悪事に利用するアナザーパラドクスもとい柳井を許せず、つい体が動いてしまったとのこと。深澄の強い正義感に、近藤らは彼女の本気を感じ取っていた。

「下らないだと……! ふざけるな!」

「きゃ!?」

「深澄君!?」

 すると混乱状態が解けたアナザーパラドクスは自身を侮辱されたことに激高。装備していたガシャコンバグヴァイザーⅡからビームを放って、深澄の足元へ容赦なく被弾させていく。彼のけん制攻撃を受けて、深澄は近くの壁まで吹き飛ばされてしまう。さらに彼女の持っていたバッグから、大事にしていた携帯用ゲーム機も放り出されている。

「まずはお前から消えろ!」

「不味い……! おい、逃げろ!」

 さらにアナザーパラドクスは再度深澄へ向かいビームを解き放とうとしていた。深澄を守ろうと沖田達も急いで彼女の元へと向かう。

「だ、誰か……助けて!」

 今にも発射されるビームに恐れを抱き、つい弱音を吐いてしまう深澄。自身の死が頭をよぎり、窮地を救ってくれるヒーローを頭に思い起こしていた。もはや絶体絶命の危機であるが……次の瞬間、深澄の持っていた携帯用ゲーム機の画面が、突然強い光を放っていた。

「はぁぁぁ!」

「何!? ぐはぁぁあ!?」

 その光からなんと人影が現れて、アナザーパラドクスへ向けて手にした大剣を振りかざしていく。思わぬ人物からの追撃に、アナザーパラドクスは地面に叩きつけられていた。

「だ、誰だ……!?」

「あのゲーム機の中から出てきた……!?」

 予想外の助っ人の登場により困惑する近藤ら四人。しかし深澄は、早くもその正体を察していた。

「俺を呼んだのは君か?」

「もしかして、天才ゲーマーのエム!?」

 そう。深澄を助けたこの男性こそが、彼女が憧れる天才ゲーマーのエムである。金髪で大人びた顔立ち、体程の大きなバスターソードを携えた男性で、防具服に加えて青いローブを身に纏っている。なぜゲーム機を介して助けに来たなど、多くの謎を抱えたまま助けに来たエムだが、土方らには既視感のある風貌であった。

「って、お前かいぃぃぃぃぃ!!」

 彼らは元の世界でも天才ゲーマーのエムに会ったことがある。ゲーマー星人を探す中で見つけた伝説的なハンターと……その正体はただの無職(長谷川泰三)だったのだが、伊東やトッシー、ミツバの例に沿うと、このエムも中身はただの無職なもかもしれない。土方の無情なるツッコミが廃工場内に鳴り響いていた。

 果たしてエムの正体とは? そしてアナザーパラドクスを無事に打ち倒すことが出来るのだろうか?




 今回のお話は如何でしたでしょうか。まさかの人物がダークライダーに変身しましたね! ということで以前に出したクイズの答えは、柳井と仮面ライダーアナザーパラドクスでした。彼を敵役に選んだのは、小物感がちょうどよく、目的の為ならほいほい主を変えそうな浅はかさがあったからですね。それと彼が語った時間軸の意味。この違和感の答えは、恐らく次々回で明らかになるかと思います。
 そして天才ゲーマーエムの正体は……そうです。銀魂のモンキーハンターオンライン篇で登場した伝説のハンターエムでした。確かにこっちも同じ永夢と同じ愛称ですね笑 アナザーパラドクスの展開したゲーム空間を利用して、現実へとやって来たアバターで、そのアバターの主は未だ不明ですね。同じく次々回で明かす予定となっています。
 さぁ、異世界探訪篇もいよいよクライマックスです!






次回予告

深澄「くらいなさい!」

土方「こいつでしめぇだ!」

次回 運命を変える者達
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